詩集『刺繡』

新帯 繭

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変装という自由の名の虚偽

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イマドキは服装というものが自由だ
毎日違う服で見渡す限り十人十色だ
男性がズボンしか履かない時代も終わった
男性がスカートで御洒落するのも当たり前
ゴスロリを着飾るのも自由なのだ
女性がする男性っぽい少年っぽい服装は
最早『男装』という言葉を用いない
ヴィジュアル系やモード系と混ぜられる

自由とは幾つもの虚偽で成り立っている
自由なんて嘘っぱちで詐欺のようなもの
みんな自由を口にしながら
『常識』や『普通』という言葉の柵で
自分を自分で雁字搦めにして他人を巻き込む
誰も本当は自由なんて求めていないんだ
必要なのは決められた道を示す一本道
それを厳しく先導する独藍屋なのだ

世の中はそんな鎖に辟易している人々がいる
今まで虐げられてきた人たちだ
そういったマイノリティはラウドになり
サイレントマジョリティを責め立てる
今ある『自由』というファッションは
その攻撃を革命と銘打った象徴なのだろう
誰かに向けて強烈に印象付ける国境の壁だ
自由の可視化というベルリンの壁崩壊を
服という武器を持って行っているのだ

自由は嘘八百で成り立っている
何処にも自由というものは存在しない
ただのイデアに夢を見ているだけだ
そのイデアに少しでも近づけるのが
ファッションという手段しかない
変装という名の虚偽で世界を揺るがす
それこそが自由と平和を齎してくれる
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