詩集『刺繡』

新帯 繭

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優しさ

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優しさとは
思い浮かぶのは母
思いつくのは差し伸べる手
描くのはハートと鳩
広がるのはミルクの味
感じるのは柔かいウール
送るのは爽やかなそよ風

優しい人は
何でも許すのかい?
何かを頼めば断らないのかい?
ずっと紳士淑女なのかい?
否、違うだろう

慈愛の神は優しくない
それはあなたを見限っているからだ
獄卒の鬼は優しい
何故なら厳しさであなたを守るから

あなたに仕打ちをする人は
あなたをコンビニと思っている
「優しいね」と囃し立て
都合よく悪さに使う
そんなあなたは優しくない
ただ自分に甘いだけ
ただ怠惰に自分を傷つけて
他人を堕落させるだけ
そんなあなたは疫病神
そんなの周りが反吐を出す

本当に優しい人は
相手のことを見抜いてる
良いところも悪いところも
何もかもお見通しなのだ

付き合う相手を選ぶこと
付き合い方を変えること
接するときに態度が違うこと
それは一つの優しさだ
何一つ選べない人は
相手に流される人嫌い
何一つ変えられない人は
自分が無なくて
良いように見られたいだけの
偽善者にもなれない人

優しい人は偽善者だ
何かを期待できるから
人に優しくできるのだ
際限なく人に突くせるのだ
下心は活力源だ
そうでなければ動けない
報酬無きボランティアに
あなたずっと尽くせるかい?

コロコロ変わって
下心丸出しで
やたらと厳しい鬼は
どこまでも優しさが溢れてる
ときに慈愛を見せ
その厳しさを悔い
それでも尚相手のために
ストイックであろうとする

優しさとはストイックだ
何処までも追及すれば
答えは何一つ無く
見えるものは無限
それでも答えの見えた堕落より
隣に見える非道より
簡単な邪悪よりも
悪魔と取引をしてでも
優しさを求め
他人に好かれる道を
自ら嫌われることを引き換えに
常に追い求めていくのだ
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