詩集『刺繡』

新帯 繭

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固くて解けず
結ぶための長い歳月が
相手との強い関係を
口ほどにも多く物語る

それは漢字と同じく
糸のようで
細くて見えない
だけど結び目が太い
まるで矛盾したもの

お互いに嫌だなぁ
この人好きだなと
嫌悪も片思いも
どちらもそういう『絆』

結ぶのは嬉しい
誰であろうと純粋に
良し悪し関係なく
ただ喜ばしいもの
それ故に思慮が必要

人を選べと大人は言う
それに歯向かう子供時代
それにようやく気付くのは
大人になってからだった
人を選べと言う大人に
非道なものだと憤慨した
しかし選ばない方が
余程非道なことだった

固くて太い
短くて脆い
『絆』という
人と人とを繋ぐ糸
それのいと難しさに
喜び何度も苦労する
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