詩集『刺繡』

新帯 繭

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夜空

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夜の空を見て
あなたは絵が描けるだろうか
ただ黒く塗りつぶして
そこに黄色か白の点で星を描き
月をあつらえて終わりではないだろうか

夜空は濃い藍色である
星のスパンコールを着飾り
何処までも濃くて
ダークな粒子が一欠けらとなり
それが海苔と同じ構造を持って
全てを押し潰すように
寛大に抱擁しているのだ

夜空と青空は同じものだ
それでいて表裏一体ではない
きっとどちらにとっても
互いに裏の顔ではないのだ
青空が光を失っても
きっと夜空にはならない

夜空は最果てまでも
まだ見ぬ無数の星々と生命を
平等に無感情に慈しみもせず
ただ厳かに畏怖を受けながら
終始無言で抱擁している
私達も一人一人が夜空なのだ

夜空が光を鬱陶しがるように
私達も光をウザったく感じるときがある
光は何処までも白一色だ
それは周囲までも染め上げてしまう
私達は自分の色を守ろうとして
その光を遠ざけようとしてしまう
それでも光が無くては
その自分の色の濃さに
ただ自分を見失ってしまう
黒一辺倒になるのだ
同時に光も自分を見失っている
本当は自分の色があるはずなのだ
鮮やかで煌びやかな色が
ただ強くあり過ぎて
酷く無理をしているのだろう
それを誰かと分かち合うことで
互いが支え合えるのかもしれない

「夜空の最果てまで
誰か連れて行っておくれ」
そう願っても
夜空すら叶えてはくれない
夜空は皆のものであって
誰のものでもなく
そしてそれは自分たちであるから
導かなくても
宇宙はきっとそこにある
オリオン座を眺めたところで
北極星を知覚に見たところで
その儚い憂いは
杞憂なのだと思い知る
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