詩集『刺繡』

新帯 繭

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春は青い
これは決められていることだ
それに準えて
若い思春期の頃を
『青春』という
イマドキは『アオハル』なんて
文字って呼ぶらしい
なんだか男の子の名前みたいだ

丁度この時期だろうか
旧友との別れと
新しい出会いが
まるで椿の花を逆再生するように
同時に味わうのは限定ものだ


植物や動物は
寒さが明けて動き出す
しかし始まりではない
終わりに向かってのクライマックス
冬にエネルギーを蓄えて
しっかり休んだ体と心で
ただ只管に良い最期を目指して
万全の準備を調えるのだ
できることなら一番心地よい季節に
気持ちの良い終幕を迎えたいのだ
ヒトも虫も鳥も猫も……

『恋』の季節でもある
いわゆる『リア充』は
みんな春に準備が終わっている
夏やクリスマスに起きる
メモリアルな恋もあるけれど
運命的でもないと
ただの間に合わせになってしまう
そこまで孤独が嫌いなのだろうか
ならば出会いも特別な
『春』という季節に
思い切りのきいた一歩を
踏み出そうではないか

春は特別だ
特に何かがあって
何かが変わるわけでもない
それでも特別なのだ
私たちも生き物だからかもしれない
子どもの頃から特別なことを
沢山経験してきたからかもしれない
春は『特別に青い』
晴れ渡る空の色も
春雨で潤う川面も
茂利は帰る山や叢も
みんな一際青く感じる
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