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序章
1話 蜘蛛の糸
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~『赤塚清世』の現在~
私は、親友となった『百田もこ奈』、こと『犬宮もこ奈』の無念を晴らすべく、父と姉には内緒で4年間動き続けた。
姉の恋人を奪い、姉にもこちゃんを嗾けて、もこちゃんには悪いけど殴り合いの喧嘩までさせて……私は、出来た長く想い続けた彼氏に内緒で、危険な捜査活動をして……。
ようやく手掛かりを見つけたと思ったら、今度は黒幕の一味に尾けられていたなんて。
「おい…お嬢ちゃん……何か探してるのかい?」
「…いいえ、何でもないですよ?」
真後ろから急に、顔がピアスだらけの三十路ぐらいに見える男性に、下衆っぽい口調で声を掛けられた。
「ウロチョロされても迷惑なんだよ……それこそ、かわいいJCなんかが、ここら辺歩き回ってちゃー……そういうことになるわな!」
「何のことですか?」
「惚けんな……体売りて―んだろ?」
「は?」
男は品定めするような目で、私の全身を根目回した。
気持ち悪くて、少し身動ぎをすると、男は余計に興奮したような息遣いをする。
相手が中学生と知っても尚、体を求めようとする淫猥な思考と言葉遣いをする男だ。
不快感しかない。
「君の探し物を見つけるにはな……取引がいるんだよ……それなりの大きな対価が必要じゃなーか?」
「……止めてください。」
私は、横の進路を塞がれてないのを確認し、急いで退散しようとした。
しかし、腕を掴まれて引き寄せられる。
「何だよ、つれねーな…………おー、頬っぺたなんかスベスベのぷにぷにじゃねーか。」
「触らないでください……大きな声出しますよ?」
顔などの触られても比較的に抵抗されなさそうな箇所を、入念に触り、弄ってくる。
恐怖が全身を襲い、抵抗する声が震えて、弱弱しくなるのが分かった。
「おーおー…良いのかい……声が聴こえれば聴こえる程、溜まってる奴らが寄って来ちまうぞ?」
「…………いやっ‼」
徐に胸元へ手が伸びてきて、反射的に払い除けた。
すると、男は鬱陶しそうな怒りの表情を見せ、一瞬の間に硬直した。
私は、その隙をついて駆け抜けた、次の瞬間、肩甲骨辺りに鋭利な痛みを感じ、それが次第に感覚と共に鈍くなっていった。
確実に切られたと感じたが、同じ痛みが続いて、筋肉が無意識に硬直して動かなくなった。
何かで刺されたのだと、走馬灯のような世界で判った。
そこからは、次々に刃物が振り下ろされ、薙がれ、時に器用かつ巧妙な手付きで切られて、私は次第に無残な姿になり、痛みも体温も、触覚そのものも、無感覚で一切を喪失した。
私は、今どんな姿をしているのだろう。
巴直君は、私を見て嫌いになったりしないかな?
お姉ちゃんやお母さんが、がっかりしないかな?
お父さんが、私の姿を見て、次から冷たくなったりしないかな?
だけど、あの後で、偶然私を、もこちゃんが見つけてくれた。
見て直ぐに、泣きながら私を安全なところへ引き摺ってくれて、痛かったけど、頑張って応急処置もしてくれた。
そして、閉じることができなくなった目に、濡れたハンカチを掛けてくれて、救急車を呼んでくれた。
見えなかったけれど、声で分かる。
本当に必死だったんだ。
何故か寒くなってきて、震えだしてくると、私に向かって叫んでくれた。
「生きて……私の大事な友達が、またお父さんたちみたいに、目の前で死なないで……ぜっちゃん……どんな姿になっても…どんなに体が駄目になっても…………死なないで……ただ……生きていてよっ……約束だから……守ってくれないと、絶交だからね‼‼」
私は、必死の力で頷いた。
……そうだ……約束したんだ。
私は、自分で宣言した約束は、果たしたんだ。
だけど、もこちゃんの約束は、今意識を手放せば……楽になろうとしたら……絶対に果たせない。
笑っていて欲しい、私の大事な人みんなが、悲しい思いをしちゃう。
みんなを裏切ってしまう。
私は、何か方法はないかと思い、目が開かないからと、手を動かして、声を振り絞った。
「みんな……私……生きてるよ……。」
「……きよちゃん?」
「清世?」
「……お母さん……お姉ちゃん……もこちゃんは?」
すると、握り慣れた、親友のゴツゴツとして、柔らかい手が握られた。
あ……来てくれたんだ……。
「ぜっちゃん‼」
「もこちゃん……約束守ったよ……?」
「良かった……本当に……良かった~っ‼」
親友の頬っぺたが、私の手の甲に触れた。
柔らかくて、すべすべしていて、丸い頬っぺたに温かい、少し粘っこい液体が伝って、私の手に当たった。
あー……泣いてくれているんだ……。
心配かけて、本当にごめんね?
私は、もう大丈夫だと思い、再び意識を手放し、楽になった。
今度は、死ぬほど痛くて、しんどいから、いい加減寝たい。
私は、親友となった『百田もこ奈』、こと『犬宮もこ奈』の無念を晴らすべく、父と姉には内緒で4年間動き続けた。
姉の恋人を奪い、姉にもこちゃんを嗾けて、もこちゃんには悪いけど殴り合いの喧嘩までさせて……私は、出来た長く想い続けた彼氏に内緒で、危険な捜査活動をして……。
ようやく手掛かりを見つけたと思ったら、今度は黒幕の一味に尾けられていたなんて。
「おい…お嬢ちゃん……何か探してるのかい?」
「…いいえ、何でもないですよ?」
真後ろから急に、顔がピアスだらけの三十路ぐらいに見える男性に、下衆っぽい口調で声を掛けられた。
「ウロチョロされても迷惑なんだよ……それこそ、かわいいJCなんかが、ここら辺歩き回ってちゃー……そういうことになるわな!」
「何のことですか?」
「惚けんな……体売りて―んだろ?」
「は?」
男は品定めするような目で、私の全身を根目回した。
気持ち悪くて、少し身動ぎをすると、男は余計に興奮したような息遣いをする。
相手が中学生と知っても尚、体を求めようとする淫猥な思考と言葉遣いをする男だ。
不快感しかない。
「君の探し物を見つけるにはな……取引がいるんだよ……それなりの大きな対価が必要じゃなーか?」
「……止めてください。」
私は、横の進路を塞がれてないのを確認し、急いで退散しようとした。
しかし、腕を掴まれて引き寄せられる。
「何だよ、つれねーな…………おー、頬っぺたなんかスベスベのぷにぷにじゃねーか。」
「触らないでください……大きな声出しますよ?」
顔などの触られても比較的に抵抗されなさそうな箇所を、入念に触り、弄ってくる。
恐怖が全身を襲い、抵抗する声が震えて、弱弱しくなるのが分かった。
「おーおー…良いのかい……声が聴こえれば聴こえる程、溜まってる奴らが寄って来ちまうぞ?」
「…………いやっ‼」
徐に胸元へ手が伸びてきて、反射的に払い除けた。
すると、男は鬱陶しそうな怒りの表情を見せ、一瞬の間に硬直した。
私は、その隙をついて駆け抜けた、次の瞬間、肩甲骨辺りに鋭利な痛みを感じ、それが次第に感覚と共に鈍くなっていった。
確実に切られたと感じたが、同じ痛みが続いて、筋肉が無意識に硬直して動かなくなった。
何かで刺されたのだと、走馬灯のような世界で判った。
そこからは、次々に刃物が振り下ろされ、薙がれ、時に器用かつ巧妙な手付きで切られて、私は次第に無残な姿になり、痛みも体温も、触覚そのものも、無感覚で一切を喪失した。
私は、今どんな姿をしているのだろう。
巴直君は、私を見て嫌いになったりしないかな?
お姉ちゃんやお母さんが、がっかりしないかな?
お父さんが、私の姿を見て、次から冷たくなったりしないかな?
だけど、あの後で、偶然私を、もこちゃんが見つけてくれた。
見て直ぐに、泣きながら私を安全なところへ引き摺ってくれて、痛かったけど、頑張って応急処置もしてくれた。
そして、閉じることができなくなった目に、濡れたハンカチを掛けてくれて、救急車を呼んでくれた。
見えなかったけれど、声で分かる。
本当に必死だったんだ。
何故か寒くなってきて、震えだしてくると、私に向かって叫んでくれた。
「生きて……私の大事な友達が、またお父さんたちみたいに、目の前で死なないで……ぜっちゃん……どんな姿になっても…どんなに体が駄目になっても…………死なないで……ただ……生きていてよっ……約束だから……守ってくれないと、絶交だからね‼‼」
私は、必死の力で頷いた。
……そうだ……約束したんだ。
私は、自分で宣言した約束は、果たしたんだ。
だけど、もこちゃんの約束は、今意識を手放せば……楽になろうとしたら……絶対に果たせない。
笑っていて欲しい、私の大事な人みんなが、悲しい思いをしちゃう。
みんなを裏切ってしまう。
私は、何か方法はないかと思い、目が開かないからと、手を動かして、声を振り絞った。
「みんな……私……生きてるよ……。」
「……きよちゃん?」
「清世?」
「……お母さん……お姉ちゃん……もこちゃんは?」
すると、握り慣れた、親友のゴツゴツとして、柔らかい手が握られた。
あ……来てくれたんだ……。
「ぜっちゃん‼」
「もこちゃん……約束守ったよ……?」
「良かった……本当に……良かった~っ‼」
親友の頬っぺたが、私の手の甲に触れた。
柔らかくて、すべすべしていて、丸い頬っぺたに温かい、少し粘っこい液体が伝って、私の手に当たった。
あー……泣いてくれているんだ……。
心配かけて、本当にごめんね?
私は、もう大丈夫だと思い、再び意識を手放し、楽になった。
今度は、死ぬほど痛くて、しんどいから、いい加減寝たい。
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