吾等文学ニテ事件ヲ解決ス

序章

1話 『清世』サイド

～『赤塚清世』の視点～

私が、友達との待ち合わせに、出掛ける時。
お姉ちゃんが、学校から帰ってきた。
明日から夏休みだが、ちっとも浮かれられそうにない。
理由は、今から遊ぶ友達は、正直あまり好きではない友達だ。
向こうから一方的に誘われて、仕方なしに行ってくるのだ。
いっその事、バックレたい。
だけど、そういうことをすれば、きっと一緒にクラスで居心地が悪くなるだろう。
だから、私は律義にも、約束を守るのだ。
しかし、門を出た瞬間に、怖いお姉ちゃんがいた。
中学生のヤンキーだ。
ひょっとすれば、『スケバン』っていうのだろうか？
でも、何処か寂しそうなのだ。
気になって仕方なくて、気が付いたら、私はその子の所へ駆け寄っていた。

「こんにちは……家の近くで、どうしたんですか？」

向こうは驚いた顔をしていた。
その表情は、本当に悪い人ならしない、少し気弱に見える表情だった。
私は、怖がらずに、ズケズケと踏み込んだ。

「まさか、お姉ちゃんの友達？」
「お姉ちゃん……？」
「うん、『芽衣』のこと。」
「ああ……うん、そうだよ？」

私の勘違いのようだ。
幾ら小学生でも、分かるほどに動揺していた。
何に、そこまで余裕が無いのだろう？
私は、相手を傷つけないために、そのまま勘違いしている体で話を続けることにした。

「へえ……意外だなー。」
「何で？」
「だって、お姉ちゃんは、結構ヤンキーみたいな人が、嫌いなんだもん。」
「そうなんだよ～……不思議だよね？」

何が、「そうなんだよ～」だ。
何とも白々しい。
だけど、その顔は本当に悲しそうだった。
その姿が、嫌だってことは伝わってくる。
なら、本当は真逆の人なのではないだろうか。

「……ということは、あなたは、きっといい人だね！」
「そうかな……ありがとう。」

褒めると、スッキリしたような、何とも嬉しそうな顔をした。
このひとは、何かきっと訳ありなのだろう。
私は、直感でそう思った。
私は、その後話続けて、どういう訳か友達になっていた。