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序章

1話 百田サイド

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~一方、『百田家』にて~

私の家は、荒れ果てている。
一応、賃貸のアパートだが、養夫婦のいう『兄貴』とかいう連中が、家賃を肩代わりだけして、後は殴る蹴るなどの暴力沙汰を家で済ませては、苦情を言いに来た大家さんを脅して黙らせて、上機嫌で帰っていく。
私は、それを平然とした顔で見ていなくてはいけない。
でなければ、今度は私が殺されるからだ。
私の実父母を殺したのは、養夫婦を『兄貴』だ。
理由は、『父が柔道五段の警察官』だったから。
実母の又従兄妹に当たるという養母と結婚している養父にとっては、とても都合が悪く、頭の悪いことに、加担させようと脅しをかけたが、実父は暴対で、逆に組そのものがリークされてしまい、その責任を鉄砲玉として養父が負う羽目になった。
腹を立てて、その日の晩に、実父母の寝込みに奇襲して、その後で実父の立場を喪失させるために、私を瀕死に陥るまで殴り付けて、切りつけて、痣だらけ血塗れにして、変な家紋みたいなのが書かれた日本刀を握らせて、せせら笑いながら家を出ていった。
養父は何度か、小さい頃に面識はあった。
普通に、笑いながら遊んでくれるオイちゃんだと思っていた。
だけど、私の部屋に入るなり、お気に入りの下着と、洋服たちが全部持っていかれて、体を起こして部屋に入ってみると、私の字とよく似た字で書かれた、在りもしない嘘八百の日記が置いてあった。
部屋も私を切りつけたときに、刃物についていた血で、汚されていた。
隣の部屋からは、大きな悲鳴が聞こえた。
それが、次々とマンション全体に広がっていく。
私は、それを聞きながら、実父母にそっと、

「ごめんなさい。」

と囁いた。
まだ意識があった実父母は、目を少しだけ開けて、息を大きく吐き出した後、

「お前は、負けるなよ……お前は悪くない。」
「あなたは、いつまでも私たちの可愛い子どもだから、ずっと見守っているね……。」
「もし……何かあったら、父さんの同僚の……『玉ノ井さん』っていうひとか、『赤塚さん』ってひとを頼りなさい……そのひとが、きっと……ふぁあああ……。」

これが、私の『本当のお父さんとお母さん』の最後の言葉だった。
私は、喉を潰されていた所為で、『ごめんなさい』の後は、言葉を返すことができなかった。
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