吾等文学ニテ事件ヲ解決ス

序章

1話 悲しき関係

「おいッ、清世‼……何があったんだ‼」
「巴直君……。」
「清世……またいつもみたいにさ……甲高い声で下らない冗談言いながらでも話してくれよ。」
「巴直君……清世はね……貴方と一緒にいたくて、本当に好きで堪らなくて、同じ高校を受験しようとしてたんだよ。」
「お袋さん……。」
「芽衣のこともね……勿論、お姉ちゃんの元カレが恋人なのが、少し気まずかったらしいけど、それでも家族になりたかったから、嬉しそうに話してた矢先だったの。」
「ふぅっ……ぅおおおおおおおおお‼‼‼‼」

男子の感情が雄叫びの如く病室に広がった。
その姿からは、親友の妹との楽しくて、明るくて、美しい思い出ばかりが、スクリーンに映し出される映画の様にはっきりと見て取れた。
親友も四つん這いに、体を引きずるようにしてベッドに近付いていた。

「きよちゃん……痛かったね……苦しかったね……。」
「芽衣……大丈夫よ……きっと死なないから……。」
「お母さん……多分、無理だよ……きよちゃんが辛いだけだよ……。」
「そんなこと言わないでッ！」
「だって、いつも巴直君の話しながら、ずっと鏡を見ては必死でスキンケアとかメイクとかして、もっと好きになってもらいたいからってファッションまで勉強してさ……ずっと女になりたかったはずの、きよちゃんが、一瞬でこの有様だよ……せめて気が付かないうちに目覚めない方が幸せなんじゃないかと思っちゃうとさ……嫌なのに……生きていて欲しいのに……。」

一気に言い切ると、親友は妹に縋り付いて嗚咽を漏らし始めた。
下手に共感できない分、声すら掛けようもなかった。
私は、担任と共にベッドを囲み泣き続ける三人を見守るしかなかった。