ドラマのような恋を

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Infinity編

16話 ※

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 早く出したくて堪らない状態にまで高ぶらされたというのに、痛いほど興奮した寛人のものから貫士の手が離れていく。そんな、と思いつつもだが触ってくれなどど懇願したくない。かといって貫士の目の前で我慢できず自分で扱くのも忌々しい。
 震えるような吐息を抑えようとしつつ、寛人はただ貫士を睨んでいた。

「涙目っていいよな」

 寛人に睨まれていることなど全く気にすることなく、むしろ貫士は楽しげだ。

「……泣いて……ねぇ……」
「まぁ、まだな。涙目ってだけだわな」

 ニヤニヤしながら新たに濡らしたらしい指を、今度は寛人の尻穴へ持ってきてゆっくりと周辺を弄っている。

「……っ、やめ、ろ」
「あ? お前も無駄な努力するよな。やめろって言われて俺がやめたこと、そんなになくねぇ?」

 ほぼ、ない。

 こいつ、ほんっと俺のこと、嫌い過ぎだろ……。

 いっそ情けない気持ちにさえなりそうだ。基希の言うことなら聞くのにと思い出す。やはり貫士と基希は何かあるのかもしれない。
 基希は男だが、女しか好きそうにない貫士が嫌っている寛人にすらこういうことができるのだ。本人も男女の拘りなんてない的なことを言っていた。やはり基希とは何かある。

 ……スイも男に興味なさそうだけど……でも本人綺麗だし……ムカつくけどこいつも綺麗だ。やっぱ男女関係ねぇってタイプかもしんねぇ。

「考えごととか余裕だな?」

 ハッとしたとたん、尻に違和感を覚えた。ゆっくり指が入ってくるのがわかる。訪れるであろう気持ち悪さと不快感に唇を噛みしめたが、襲ってくるのは負の感覚ではなかった。
 もぞもぞした違和感はあるものの、一向に寛人のものの高ぶりもおさまらない。いや、おさまらないどころかさらに堪らなくなった。

「く、そ……」
「覚えてんぞ。この辺だろ」

 ゆっくり奥へと進んできた指を、少しすると途中で恐らく曲げるようにしてきた。とたん、小さな電気が走ったような感覚がした。

「なぁ、今、先ちょっと出ただろ」

 今も覆い被さるような体勢の貫士がとてつもなく楽しそうに寛人を見てくる。

「……死ねよクソ野郎……」
「お前の喘ぎ声変わってんなぁ」
「こ、れ喘ぎ声、じゃねぇだろが……!」
「あ? でもすげぇよさそうじゃねぇかよ」

 先ほどから貫士は中の同じところをすりすり擦ってくる。その度に寛人は脳まで響きそうな刺激を覚えていた。今やもう、耐えられない勢いで射精したい。

「指、増えてんのわかる? ヤベーよなここ、こんなに広がるもんなんだな?」
「知、るかよ!」

 すでに「やめろ」「離せ」「抜け」といったことを言うことすら諦めていた。貫士が言った通り、寛人がいくら言っても聞いてくれないだけでなく、むしろ喜ばせている節すらある。
 おまけに今やめられても正直なところ、寛人のものはどうしようもないほどに高ぶらされている。ここまでくると、もう「抜きたい」としか考えられなかった。
 とはいえ「触って」「扱いて」とお願いなど絶対したくない。なるべく反応せず飽きてもらうか、さっさとことを進めてもらうしかない。
 飽きてくれたら一番だった。その場合はトイレへ行くだけだ。ただ進められると、もしかしたら貫士のものを入れられるかもしれない。それは嫌だ。本気で嫌なのだが、とにかく今はそれよりも何よりもひたすら射精したかった。

「あ、あ……、あっ、あっ」
「ケツに指突っ込まれていきそう?」
「……っ」

 いつの間にか漏れていた声に、寛人はまた唇を噛みしめる。

「唇噛んでもお前が痛いだけじゃね。別に俺は気にしねーから好きにすりゃいいけどよ」

 ああ、そうだろうよ、お前は俺が嫌いだもんな!

 また睨みつけるも「涙目」と楽しそうにされただけだった。

「まぁまぁ、いきなさいよ」

 丁寧語のようでいて全く丁寧な感じが伝わってこない偉そうな様子で、貫士は指で穴の口を広げてはローションを足し、指を増やしているのか中で動かしてくる。そして寛人がまずいと思ったところを執拗に弄ってきた。

「っひ」

 堪え方がもうわからない。どうしようもなくて、気づけばあれほど待ち望んでいた射精感が極限まで募り、思い切り吐き出していた。びくびく腰の辺りが痙攣する。

「マジで中でいけんだな」

 少し驚いたような声だったが、寛人には反応することすらできなかった。腹立たしいのも忘れて、射精後の満足感と虚無感に呆然としていると、だが「終わってねぇぞ」と足を持ち上げられた。相変わらず反応することもできない間に、それが入ってきた。

「は……っん、ぅ」

 圧迫されて苦しい。ただ、多少痛みに近いピリピリしたようなひきつれ感はあるが、前回のような痛みはなかった。

「えらく大人しくね?」
「……死ね」

 別に受け入れているわけではない。ただもう抵抗する気力がない。あと予想外に痛くなく、ならもういっそ早く終わればいいとも思っていた。
 だがそれをどう思ってか、したり顔で満足されるのはムカつく。

「は。それでこその寛人じゃねーか」

 寛人、と呼ばれてもぞもぞした。多分これは──そう、不快なのだと思われる。

「中、締まった」

 なのに楽しげに言われ、寛人は無駄だとわかりながらも貫士を睨みつけた。

「熱こもった目で見てくんなよ、煽られっから」
「……睨んでんだよ……!」
「あーそうかよ。そうだろな」

 やはり意に介することなく、貫士は適当な受け答えをしながらゆっくりと動かしてきた。

「う、ごくな」 
「無茶言うなよバカかよ」
「マジ死ね……」
「は。んなこと言うなら全部入れるからな」
「はぁっ? まだ全部……」
「入ってねぇよ」

 笑いながら貫士が寛人の太ももの裏を思い切りつかんできた。そして体をさらに埋めてくる。

「ぃ、あ……っ」
「いてぇ、んじゃなさそうよなぁ?」

 体の奥がゾクゾクする。表現し難い感覚に飲み込まれる。忌々しい、肉のぶつかるような音もひたすら受け入れ飲み込んでいるような音も聞こえているが頭に入ってこない。

 死ねって言っておきながら俺が死ぬ……! こんなの知らない。無理。マジで無理……。

 自分がまた達したことも寛人はわからなくなっていた。
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