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Infinity編
14話
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最近は油断していると、貫士が何かを口に突っ込んでくる。チョコレートや飴ならまだましだ。寛人の気持ち的に全然ありがたくはないが、少なくとも無事でいられる。
この間は基希と三人で外の撮影があったが、その休憩時に欠伸をしていたらいきなりアメリカンドッグを突っ込まれた。そして思い切りむせた。
「フランクフルトのがよかった?」
「そういう問題じゃねぇ……喉の奥まで突っ込みやがって」
「なのにちっともエロくねぇなお前」
「エロくなるわけねぇだろ……!」
「は? スイ見ろよ、普通に食っててエロいぞ」
「マジで……」
「カンジ。やめてくれない? ゴンもつられない」
「は。つまんねぇ野郎だよな」
「……ごめん」
とはいえむせるくらいはまだましだ。一昨日は凜太と貫士でコンビニエンスストアに潜入しておでんを買ってきたらしく、寛人はその後無理やりつき合わされた。
「つかお前ら何でまだ未成年なんだよ。スイ何でいねーんだよ。おでんっつったらポン酒だろが」
「知るかよ、一人で飲んでろよ」
「何なら俺、つき合って飲むよー」
「ざけんなフウタ」
「馬鹿かよフウタ」
「こーゆー時だけ罵倒すんの声揃えてくんのやめてよね。つか、真面目なゴンゴンはわかるけど、カンジなら飲め飲めって言いそうなのにねー!」
確かにそうだと寛人も貫士を見れば鼻で笑ってくる。
「ばぁか、んなことしてみろ、スイに殺されんだろが。フウタのためじゃねぇ。俺は俺が大事なんだよ」
「何それ。むしろカンジらしすぎ」
本当にな!
呆れながら、やはり貫士は基希に対して一目置いていると言うのだろうか。他に対してと扱いが違う気がした。
エロいとかそういや言ってたしな……。
何となく面白くない気がする。そんなことを考えていると、またいきなり貫士が口に突っ込んでくる。
「って、あっつぁ……!」
肉まんなど比じゃない勢いで熱い。手に乗せることもできないので皿へ思い切り吐き出した。皿には吐き出された熱々のがんもどきが鎮座ましましている。
それを一瞬唖然と見た後に寛人は貫士の胸元をつかんだ。
「てめ……っ殺す気かよ……っ?」
「あ? んなわけねぇだろ。がんも、うめーだろが。だからくれてやったってのに何怒ってんだよ?」
「怒るわ……! つか怒りしか湧かねぇんだわ……!」
「ぶっは……っ、カンジとゴンゴン、コントしてるみたい」
「してねぇ」
「してねぇよ……! こんな命懸けのコントとかごめんだ!」
「命懸けぇ? は。大げさだなゴンちゃんは」
「ふーん。じゃあ命懸けじゃなきゃコントありなの?」
貫士も最悪だが凜太も忌々しい。寛人は改めてそう思った。口が悪くても葵のほうが一億倍マシだ。葵も偉そうだが馬鹿な分かわいげがある。
凜太は普段学校の成績はいまいちらしいが、それはただ単にやる気がないだけだ。言動は一見馬鹿みたいだが、わかってやっている節がある。ハッカーの件にしても、仕事をさせないと言われた時の試験結果にしても、多分その気になれば相当できるはずだと思われる。
以前クイズ番組に出てた時も初めはやる気がなさそうに見えたが、途中からばんばん答えて最終的に優勝していた。後で本人に聞けば「前から気にくわないヤツが別のチームにいてさー。意外にも当ててきたんだよね」とかわいく笑って答えてきた。ろくでもない。
そして貫士は言わずもがなだ。基希は頭がよくても性格もいいので問題ないが、この二人は本当に食えないと寛人は思っている。
それでも凜太は基本的に何かしてくるわけではないのでさほど警戒することもない。やはり問題は貫士だ。
あいつ絶対次に言う機会あれば思い切り文句つけてやる。
イライラ思っていたら、わりとすぐに機会だけは訪れた。
「……何の用だよ」
夜も遅い時間に自宅のインターホンが鳴るので訝しげに確認すれば貫士だった。寛人は居留守を使おうと思ったが「いんのわかってんぞ」とインターホン越しに言われ、つい渋々出てしまった。
「カードキー落としたんだよ」
面倒くさいといった様子だが答えてきた貫士に、寛人は呆れた顔を向けた。
「はぁ? どこに」
「エレベーターの隙間」
「ぶは。マジかよ。馬鹿じゃね」
「るせぇな、いいから中、上がらせろ」
嫌だと言う前に貫士は勝手に靴を脱いで入っていく。
「あ、おい、勝手に入んな。つか、管理人に言やーいーじゃねえか。エレベーター管理してっとこに連絡とってくれんだろ。んなもん、一時間もありゃ対応してくれんじゃねぇのかよ。時間外だろうが誰かいんだろよ、エレベーターの管理なんだからよ」
「るせぇな。それまで待ってられっかよ。明日言う。だからここで寝るわ」
「はぁっ? 何勝手に……つか何脱いでってんだよっ?」
リビングまで来ると、貫士はいきなり服を脱ぎ出した。それらをソファーに無造作に投げていく。
「風呂貸せ」
「だから何で偉そうなんだよっ? つかそれなら脱衣場で脱げ」
「いちいちうるせぇな」
「煩くもなるわ……!」
貫士が風呂へ入ったところでハッとした。なぜ自分は結局部屋へ上がることも風呂も許しているのだと。
この間は基希と三人で外の撮影があったが、その休憩時に欠伸をしていたらいきなりアメリカンドッグを突っ込まれた。そして思い切りむせた。
「フランクフルトのがよかった?」
「そういう問題じゃねぇ……喉の奥まで突っ込みやがって」
「なのにちっともエロくねぇなお前」
「エロくなるわけねぇだろ……!」
「は? スイ見ろよ、普通に食っててエロいぞ」
「マジで……」
「カンジ。やめてくれない? ゴンもつられない」
「は。つまんねぇ野郎だよな」
「……ごめん」
とはいえむせるくらいはまだましだ。一昨日は凜太と貫士でコンビニエンスストアに潜入しておでんを買ってきたらしく、寛人はその後無理やりつき合わされた。
「つかお前ら何でまだ未成年なんだよ。スイ何でいねーんだよ。おでんっつったらポン酒だろが」
「知るかよ、一人で飲んでろよ」
「何なら俺、つき合って飲むよー」
「ざけんなフウタ」
「馬鹿かよフウタ」
「こーゆー時だけ罵倒すんの声揃えてくんのやめてよね。つか、真面目なゴンゴンはわかるけど、カンジなら飲め飲めって言いそうなのにねー!」
確かにそうだと寛人も貫士を見れば鼻で笑ってくる。
「ばぁか、んなことしてみろ、スイに殺されんだろが。フウタのためじゃねぇ。俺は俺が大事なんだよ」
「何それ。むしろカンジらしすぎ」
本当にな!
呆れながら、やはり貫士は基希に対して一目置いていると言うのだろうか。他に対してと扱いが違う気がした。
エロいとかそういや言ってたしな……。
何となく面白くない気がする。そんなことを考えていると、またいきなり貫士が口に突っ込んでくる。
「って、あっつぁ……!」
肉まんなど比じゃない勢いで熱い。手に乗せることもできないので皿へ思い切り吐き出した。皿には吐き出された熱々のがんもどきが鎮座ましましている。
それを一瞬唖然と見た後に寛人は貫士の胸元をつかんだ。
「てめ……っ殺す気かよ……っ?」
「あ? んなわけねぇだろ。がんも、うめーだろが。だからくれてやったってのに何怒ってんだよ?」
「怒るわ……! つか怒りしか湧かねぇんだわ……!」
「ぶっは……っ、カンジとゴンゴン、コントしてるみたい」
「してねぇ」
「してねぇよ……! こんな命懸けのコントとかごめんだ!」
「命懸けぇ? は。大げさだなゴンちゃんは」
「ふーん。じゃあ命懸けじゃなきゃコントありなの?」
貫士も最悪だが凜太も忌々しい。寛人は改めてそう思った。口が悪くても葵のほうが一億倍マシだ。葵も偉そうだが馬鹿な分かわいげがある。
凜太は普段学校の成績はいまいちらしいが、それはただ単にやる気がないだけだ。言動は一見馬鹿みたいだが、わかってやっている節がある。ハッカーの件にしても、仕事をさせないと言われた時の試験結果にしても、多分その気になれば相当できるはずだと思われる。
以前クイズ番組に出てた時も初めはやる気がなさそうに見えたが、途中からばんばん答えて最終的に優勝していた。後で本人に聞けば「前から気にくわないヤツが別のチームにいてさー。意外にも当ててきたんだよね」とかわいく笑って答えてきた。ろくでもない。
そして貫士は言わずもがなだ。基希は頭がよくても性格もいいので問題ないが、この二人は本当に食えないと寛人は思っている。
それでも凜太は基本的に何かしてくるわけではないのでさほど警戒することもない。やはり問題は貫士だ。
あいつ絶対次に言う機会あれば思い切り文句つけてやる。
イライラ思っていたら、わりとすぐに機会だけは訪れた。
「……何の用だよ」
夜も遅い時間に自宅のインターホンが鳴るので訝しげに確認すれば貫士だった。寛人は居留守を使おうと思ったが「いんのわかってんぞ」とインターホン越しに言われ、つい渋々出てしまった。
「カードキー落としたんだよ」
面倒くさいといった様子だが答えてきた貫士に、寛人は呆れた顔を向けた。
「はぁ? どこに」
「エレベーターの隙間」
「ぶは。マジかよ。馬鹿じゃね」
「るせぇな、いいから中、上がらせろ」
嫌だと言う前に貫士は勝手に靴を脱いで入っていく。
「あ、おい、勝手に入んな。つか、管理人に言やーいーじゃねえか。エレベーター管理してっとこに連絡とってくれんだろ。んなもん、一時間もありゃ対応してくれんじゃねぇのかよ。時間外だろうが誰かいんだろよ、エレベーターの管理なんだからよ」
「るせぇな。それまで待ってられっかよ。明日言う。だからここで寝るわ」
「はぁっ? 何勝手に……つか何脱いでってんだよっ?」
リビングまで来ると、貫士はいきなり服を脱ぎ出した。それらをソファーに無造作に投げていく。
「風呂貸せ」
「だから何で偉そうなんだよっ? つかそれなら脱衣場で脱げ」
「いちいちうるせぇな」
「煩くもなるわ……!」
貫士が風呂へ入ったところでハッとした。なぜ自分は結局部屋へ上がることも風呂も許しているのだと。
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