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第四章 白き竜
113話
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不思議に思いながらも、多分今までに読んだ物語の影響なのだろうとリフィルナは納得することにした。冒険ものの話を好むリフィルナに、コルドはよく魔法の世界が描かれている本をくれていた。その中にそういった描写があったのだろう。
「でも私、そんな魔法円を上手く使えるように思えませんが」
「ああ、でもリフィによって洞窟の入り口が開いたりしていたし、きっと大丈夫だよ。その魔法円の使い方はディルが教えてくれるだろうし」
『その場にいれば間違いなくそなたは使うことができる』
その魔法円も眷属契約をしている者なら使えるということなのだろうかと首をそっと傾げつつ、リフィルナは「わかりました」と答えた。
「君に頼ってばかりになるね」
「そんなこと! むしろぼ、私が皆を頼ってばかりだったから、もし私を頼ってもらえる場面があるのなら大歓迎でがんばります」
その後、ずいぶん元気そうにはなったもののコルジアに「大事を取って今日はもう休んでいてください」と言われたフォルスは言われた通り大人しく休むことにしたようだ。リフィルナも「私の兄に連絡しておきます」と言ってフォルスのテントから出た。呪いのことを聞いた際に、コルドにも呪いについて伝えていいと確認をしている。コルドはアルディスの呪いについて調べると言ったものの中々情報がなくて、と言っていた。きっとフォルスから聞いたことをコルドも知りたいだろうし、たくさんコルドに助けてもらったリフィルナにとっては決して無関係ではないため、伝えていいとフォルスに言ってもらえてホッとしていた。
テントを出るともう少しだけ、リフィルナはこの場所を堪能することにした。竜や精霊たちに「明日ここを出るね」と別れの挨拶をしたり、歩ける範囲で周りを見てまわる。滝のちかくにあった像は近くで見てもやはり結構朽ちているせいで、少女らしいという程度しかわからなかった。どんな人物の像だったのか気になっていたので残念に思う。少し先まで歩くと建物らしき跡もあった。きっともう下手をすれば何百年とこのままだったのかもしれない。そこも蔦がたくさん巻きついていてほとんど緑色といった様子だしボロボロに朽ちていた。そのため中へ入るのは危険そうなので外から様子を窺うしかできなかった。ただ、竜が使う建物には少なくとも見えなかった。先ほどの像といい、もしかしたら大昔はここにも人間が多少はいたのかもしれない。
「……綺麗なだけじゃなくて神秘的だなあ」
ゆっくりと傾き始めた日の光に優しく照らされたそこはとても美しい光景だったが、同時にリフィルナにとって何故かとても寂しく切なく感じられた。
その後ようやくコルドと連絡を取った。
『どうしているか気になって仕方がなかったんだぞ。心配めちゃくちゃしたんだからな』
確かにこの島へ入ってからずっと連絡を取っていなかったのだ、当然だろう。
「ごめんね」
『いいよ、リィーが今、元気そう。それが何よりだから。で?』
「で? ああ、連絡したのはね」
『じゃなくて。それも聞きたいけど先に聞きたいことがある。元の姿に戻ってるじゃないか。あれほど満月以外は頑なに少年の姿を貫いていたってのに』
どことなく嬉しそうに見えるコルドに苦笑した後でリフィルナはフォルスのことなどを説明した。よく助けてくれていたフォルがフォルス・ガルシアであったこと、彼には実は最初からばれていたことなどを言うとコルドは驚いたり笑ったりしていた。
『アルディス王子のことは本当に大変だったんだろうなと俺も思うよ。それにしても何でそんな呪いにかかってしまったんだろうな。たまたまなのだろうか?』
「えっと、それはわからない、かな」
『何故とか何も言ってなかった? リィーも気にならなかったのか?』
「うん」
『……まあ、いい、か。とりあえずアルディス王子とは接点ができたから、また俺のほうからも呪いのことを、フォルス王子の許可を得た上でお前から話を聞いたと伝えておく』
「うん」
『お前も、よかったな。初めてのお友だちと仲直り、できて。それにずっと仲間でいてくれた相手とも変わらず仲良くして欲しいと言われて』
「……うん!」
『まあそれとこれとは別だから、二人の王子との関係性については俺としてはちゃんと……』
「コルド兄さま?」
『ああ、いや。何でもない。あと俺から提案がある』
「何だろう」
『まさか直接王宮へ行きはしないんだろう?』
「うん。フォルがね、いくら王子だとしてもそれはさすがにしないって言ってた。そうだよね、王宮に突然乗り込むとかさすがにまずいよね」
あはは、と他人事のようにリフィルナが笑うとコルドが続けてきた。
『もしフィールズ家の敷地へ来ようとしているならそうじゃなく、前にお前の命を救ってくれたあの森の泉あるだろう、そこで待ってるから、そこを目的地にしてくれ』
「フィールズ家は私も避けたいと思ってるよ。だからどこかいい場所を明日までにお互い考えておこうって言ってたんだよ。どうやら魔法円で行きたいとこへ向かう場合、明確なイメージがいるみたいだから適当に願っても発動しないかもで」
『じゃあ決まりだ。あの森の泉で待っている。楽しみにしているよ、リィー』
コルドはとても嬉しそうに微笑んできた。
「わかった。うん、私もコルド兄さまに会えるの、とても楽しみ」
明日、フォルたちに提案してみようとリフィルナも笑みを浮かべながら頷いた。
「でも私、そんな魔法円を上手く使えるように思えませんが」
「ああ、でもリフィによって洞窟の入り口が開いたりしていたし、きっと大丈夫だよ。その魔法円の使い方はディルが教えてくれるだろうし」
『その場にいれば間違いなくそなたは使うことができる』
その魔法円も眷属契約をしている者なら使えるということなのだろうかと首をそっと傾げつつ、リフィルナは「わかりました」と答えた。
「君に頼ってばかりになるね」
「そんなこと! むしろぼ、私が皆を頼ってばかりだったから、もし私を頼ってもらえる場面があるのなら大歓迎でがんばります」
その後、ずいぶん元気そうにはなったもののコルジアに「大事を取って今日はもう休んでいてください」と言われたフォルスは言われた通り大人しく休むことにしたようだ。リフィルナも「私の兄に連絡しておきます」と言ってフォルスのテントから出た。呪いのことを聞いた際に、コルドにも呪いについて伝えていいと確認をしている。コルドはアルディスの呪いについて調べると言ったものの中々情報がなくて、と言っていた。きっとフォルスから聞いたことをコルドも知りたいだろうし、たくさんコルドに助けてもらったリフィルナにとっては決して無関係ではないため、伝えていいとフォルスに言ってもらえてホッとしていた。
テントを出るともう少しだけ、リフィルナはこの場所を堪能することにした。竜や精霊たちに「明日ここを出るね」と別れの挨拶をしたり、歩ける範囲で周りを見てまわる。滝のちかくにあった像は近くで見てもやはり結構朽ちているせいで、少女らしいという程度しかわからなかった。どんな人物の像だったのか気になっていたので残念に思う。少し先まで歩くと建物らしき跡もあった。きっともう下手をすれば何百年とこのままだったのかもしれない。そこも蔦がたくさん巻きついていてほとんど緑色といった様子だしボロボロに朽ちていた。そのため中へ入るのは危険そうなので外から様子を窺うしかできなかった。ただ、竜が使う建物には少なくとも見えなかった。先ほどの像といい、もしかしたら大昔はここにも人間が多少はいたのかもしれない。
「……綺麗なだけじゃなくて神秘的だなあ」
ゆっくりと傾き始めた日の光に優しく照らされたそこはとても美しい光景だったが、同時にリフィルナにとって何故かとても寂しく切なく感じられた。
その後ようやくコルドと連絡を取った。
『どうしているか気になって仕方がなかったんだぞ。心配めちゃくちゃしたんだからな』
確かにこの島へ入ってからずっと連絡を取っていなかったのだ、当然だろう。
「ごめんね」
『いいよ、リィーが今、元気そう。それが何よりだから。で?』
「で? ああ、連絡したのはね」
『じゃなくて。それも聞きたいけど先に聞きたいことがある。元の姿に戻ってるじゃないか。あれほど満月以外は頑なに少年の姿を貫いていたってのに』
どことなく嬉しそうに見えるコルドに苦笑した後でリフィルナはフォルスのことなどを説明した。よく助けてくれていたフォルがフォルス・ガルシアであったこと、彼には実は最初からばれていたことなどを言うとコルドは驚いたり笑ったりしていた。
『アルディス王子のことは本当に大変だったんだろうなと俺も思うよ。それにしても何でそんな呪いにかかってしまったんだろうな。たまたまなのだろうか?』
「えっと、それはわからない、かな」
『何故とか何も言ってなかった? リィーも気にならなかったのか?』
「うん」
『……まあ、いい、か。とりあえずアルディス王子とは接点ができたから、また俺のほうからも呪いのことを、フォルス王子の許可を得た上でお前から話を聞いたと伝えておく』
「うん」
『お前も、よかったな。初めてのお友だちと仲直り、できて。それにずっと仲間でいてくれた相手とも変わらず仲良くして欲しいと言われて』
「……うん!」
『まあそれとこれとは別だから、二人の王子との関係性については俺としてはちゃんと……』
「コルド兄さま?」
『ああ、いや。何でもない。あと俺から提案がある』
「何だろう」
『まさか直接王宮へ行きはしないんだろう?』
「うん。フォルがね、いくら王子だとしてもそれはさすがにしないって言ってた。そうだよね、王宮に突然乗り込むとかさすがにまずいよね」
あはは、と他人事のようにリフィルナが笑うとコルドが続けてきた。
『もしフィールズ家の敷地へ来ようとしているならそうじゃなく、前にお前の命を救ってくれたあの森の泉あるだろう、そこで待ってるから、そこを目的地にしてくれ』
「フィールズ家は私も避けたいと思ってるよ。だからどこかいい場所を明日までにお互い考えておこうって言ってたんだよ。どうやら魔法円で行きたいとこへ向かう場合、明確なイメージがいるみたいだから適当に願っても発動しないかもで」
『じゃあ決まりだ。あの森の泉で待っている。楽しみにしているよ、リィー』
コルドはとても嬉しそうに微笑んできた。
「わかった。うん、私もコルド兄さまに会えるの、とても楽しみ」
明日、フォルたちに提案してみようとリフィルナも笑みを浮かべながら頷いた。
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