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第四章 白き竜
103話
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抱擁を解いた後にリフィは「フォルとコルジアはどこ? 無事なの?」と聞いた。するとディルは目を細めてくる。何か考えているのだろうか。
「ディル?」
『あやつの見た目……リフィルナのトラウマを引き起こすやもしれんからな……』
「え? ど、どういうこと……? フォル、そんなに怪我がひどいの?」
リフィは血の気が引くのがわかった。頭に水を被ったかのような冷たさを感じる。
『……だがいずれは知ること……それが今日というだけのことと考え……どのみち呪いを解くには戻らねばならんし、そうなると正体も否応なしに知ることとなる……』
「ディル? 何を言ってるの? 本当にどういうことなのっ? 僕が気絶している間に何があったの? 二人はひどいの……?」
思わずぎゅっとディルの体をつかむと、ディルは我に返ったかのようにハッとしてきた。
『なんだって?』
「なんだって、は僕が言いたいよ。ディルが言ってること、全然わからない。二人はもしかしてかなりひどい状態なの?」
『……い、いや。違う。ちょっとまだ私も混乱ではないが気持ちが色々と高ぶってしまっているのか、考えが漏れたようだ。まだまだ未熟でしかない……。安心しろ、あの二人は怪我一つない』
「ほ、本当? 本当に?」
『ああ』
「っよかった」
ホッとしたからだろうか、足の力が抜けてリフィはその場にへたり込んだ。
『まだ具合が悪いのか……?』
「違うよ。ディルだって今元気でしょ? それと同じ。僕も元気だよ……でもディルが変なことぶつぶつ言うから心配で心配で。でも大丈夫だって知って力、抜けちゃったんだよ」
『それはすまない。まさか考えが漏れるとは。昔の私にはまだ程遠いのだろうな……。とにかく気にするな。あやつらは明日、明後日には逆立ちで全力疾走すらできるようになっているだろうよ』
「えぇ……? それはちょっと見たいかも……。とりあえず無事なら会ってお礼言いたい。二人はどこ?」
『……うむ、そうだ、な。では案内しよう』
ディルに促され、リフィも歩き出す。ふと、途中で何かを踏んだ。精霊の光があっても夜だ。足元は薄暗いため、リフィは確かめるためにも屈んでそれを拾った。
「……通信機?」
『リフィルナ? どうした』
「あ、ううん。大丈夫」
慌ててまた歩き出しながら、リフィは自分の鞄を念のために調べようとして、改めて自分の服や鞄も炎でやられる前のままだということに気づいた。あれほど炎に包まれたら焼けてボロボロになっているはずだ。顔などは今見えないが、手も綺麗なままだし、こういったこともリフィが元気であることと同じ理由なのだろう。
やはり自分の通信機は鞄の中に入っていた。拾ったものも明るいところで見たら誰のものかわかるだろうか。もしかしたらフォルのものかもしれないと、とりあえず一旦はそれも鞄の中にしまうことにした。
「ねえ、ディル」
『どうした?』
「僕の命だけでなくおそらくは酷い火傷とか諸々を治してくれたのは……」
『最終的に完全に治療してくれたのは精霊たちだ。私はそなた同様、弱っており何もできなかった。本当に未熟で情けないことに。だがな、精霊たちのいるここへ運ぶにもそなたも私も本当に死にかけていた。それを何とか救ってくれたのはフォル、……だ』
「フォルが……」
『瀕死のそなたにずっと癒しの魔法をかけていた。魔力が枯渇する寸前までだ』
「そ、んなことしたら……」
『ああ、下手をすれば死んでいたのはあやつだったかもしれん』
「なんてこと……」
『待て、そなたがそれを申し訳なく感じれば感じるほど、あやつにとっても辛いことであるのだと知っておくがいい』
「でも」
『逆に考えてみろ。もしあやつが瀕死の状態だった場合、そなたはきっと魔法を使って治そうとするだろう?』
「うん」
『まずその時点でそなたのことだ、もっと前に守れたかもしれないのにとか考えるだろう』
「そ、うかも」
『かも、じゃなくて間違いなくそうであろう。そしてその上、あまりにも状態がひどくていくら魔法を使っても治る様子がないとなると、そなたは諦めるか?』
「まさか!」
『そうだろうな。あやつに限らず、そなたは船でも自分の魔力の限界なんか過りもせずひたすら皆を治していた。あやつ以上に馬鹿者だからな、そなたは』
馬鹿者、と言いながらもディルは優しい眼差しを向けてくれた。
『そうしてようやく回復の兆しが見えたその後、治ってもそなたに対してひたすら申し訳ながってこられればどんな気持ちになる?』
「……治ったのは嬉しい、けどちょっと悲しい、かな。どうせなら治ったことを喜んで欲しい」
『あやつがそなたと同じように思わんと、どうして思える?』
「……そ、っか。で、でも一度くらいは謝ってもいいかな? だって謝らないなんて無理だよ」
『まあ、それくらいは』
「うん」
『自分で考えることだ』
「ここで突き放すのっ?」
『フフ。ところでリフィルナ』
「何?」
気づけば足が止まっていたため、二人ともまたゆっくりと歩きだした。
『そなたはキャベル王国へ戻る気はあるか?』
「え……? 何故急にそんなこと聞くの?」
『そなたに魔力をほぼ使い込んで今頃横になっているであろうあやつと約束があってな。だが事情はまた改めて話そう』
「うん、わかった。……僕は別に戻ってもいいよ。コルド兄様にも会いたいし、それに……」
アルディスのことも実際どうなるか、どう思うかなどわからないが、多分大丈夫なのではとほんの少しだが思えている。
リフィが言いかけたところでディルが足を止めた。見れば少し先にあるテントの前にコルジアがいた。
「ディル?」
『あやつの見た目……リフィルナのトラウマを引き起こすやもしれんからな……』
「え? ど、どういうこと……? フォル、そんなに怪我がひどいの?」
リフィは血の気が引くのがわかった。頭に水を被ったかのような冷たさを感じる。
『……だがいずれは知ること……それが今日というだけのことと考え……どのみち呪いを解くには戻らねばならんし、そうなると正体も否応なしに知ることとなる……』
「ディル? 何を言ってるの? 本当にどういうことなのっ? 僕が気絶している間に何があったの? 二人はひどいの……?」
思わずぎゅっとディルの体をつかむと、ディルは我に返ったかのようにハッとしてきた。
『なんだって?』
「なんだって、は僕が言いたいよ。ディルが言ってること、全然わからない。二人はもしかしてかなりひどい状態なの?」
『……い、いや。違う。ちょっとまだ私も混乱ではないが気持ちが色々と高ぶってしまっているのか、考えが漏れたようだ。まだまだ未熟でしかない……。安心しろ、あの二人は怪我一つない』
「ほ、本当? 本当に?」
『ああ』
「っよかった」
ホッとしたからだろうか、足の力が抜けてリフィはその場にへたり込んだ。
『まだ具合が悪いのか……?』
「違うよ。ディルだって今元気でしょ? それと同じ。僕も元気だよ……でもディルが変なことぶつぶつ言うから心配で心配で。でも大丈夫だって知って力、抜けちゃったんだよ」
『それはすまない。まさか考えが漏れるとは。昔の私にはまだ程遠いのだろうな……。とにかく気にするな。あやつらは明日、明後日には逆立ちで全力疾走すらできるようになっているだろうよ』
「えぇ……? それはちょっと見たいかも……。とりあえず無事なら会ってお礼言いたい。二人はどこ?」
『……うむ、そうだ、な。では案内しよう』
ディルに促され、リフィも歩き出す。ふと、途中で何かを踏んだ。精霊の光があっても夜だ。足元は薄暗いため、リフィは確かめるためにも屈んでそれを拾った。
「……通信機?」
『リフィルナ? どうした』
「あ、ううん。大丈夫」
慌ててまた歩き出しながら、リフィは自分の鞄を念のために調べようとして、改めて自分の服や鞄も炎でやられる前のままだということに気づいた。あれほど炎に包まれたら焼けてボロボロになっているはずだ。顔などは今見えないが、手も綺麗なままだし、こういったこともリフィが元気であることと同じ理由なのだろう。
やはり自分の通信機は鞄の中に入っていた。拾ったものも明るいところで見たら誰のものかわかるだろうか。もしかしたらフォルのものかもしれないと、とりあえず一旦はそれも鞄の中にしまうことにした。
「ねえ、ディル」
『どうした?』
「僕の命だけでなくおそらくは酷い火傷とか諸々を治してくれたのは……」
『最終的に完全に治療してくれたのは精霊たちだ。私はそなた同様、弱っており何もできなかった。本当に未熟で情けないことに。だがな、精霊たちのいるここへ運ぶにもそなたも私も本当に死にかけていた。それを何とか救ってくれたのはフォル、……だ』
「フォルが……」
『瀕死のそなたにずっと癒しの魔法をかけていた。魔力が枯渇する寸前までだ』
「そ、んなことしたら……」
『ああ、下手をすれば死んでいたのはあやつだったかもしれん』
「なんてこと……」
『待て、そなたがそれを申し訳なく感じれば感じるほど、あやつにとっても辛いことであるのだと知っておくがいい』
「でも」
『逆に考えてみろ。もしあやつが瀕死の状態だった場合、そなたはきっと魔法を使って治そうとするだろう?』
「うん」
『まずその時点でそなたのことだ、もっと前に守れたかもしれないのにとか考えるだろう』
「そ、うかも」
『かも、じゃなくて間違いなくそうであろう。そしてその上、あまりにも状態がひどくていくら魔法を使っても治る様子がないとなると、そなたは諦めるか?』
「まさか!」
『そうだろうな。あやつに限らず、そなたは船でも自分の魔力の限界なんか過りもせずひたすら皆を治していた。あやつ以上に馬鹿者だからな、そなたは』
馬鹿者、と言いながらもディルは優しい眼差しを向けてくれた。
『そうしてようやく回復の兆しが見えたその後、治ってもそなたに対してひたすら申し訳ながってこられればどんな気持ちになる?』
「……治ったのは嬉しい、けどちょっと悲しい、かな。どうせなら治ったことを喜んで欲しい」
『あやつがそなたと同じように思わんと、どうして思える?』
「……そ、っか。で、でも一度くらいは謝ってもいいかな? だって謝らないなんて無理だよ」
『まあ、それくらいは』
「うん」
『自分で考えることだ』
「ここで突き放すのっ?」
『フフ。ところでリフィルナ』
「何?」
気づけば足が止まっていたため、二人ともまたゆっくりと歩きだした。
『そなたはキャベル王国へ戻る気はあるか?』
「え……? 何故急にそんなこと聞くの?」
『そなたに魔力をほぼ使い込んで今頃横になっているであろうあやつと約束があってな。だが事情はまた改めて話そう』
「うん、わかった。……僕は別に戻ってもいいよ。コルド兄様にも会いたいし、それに……」
アルディスのことも実際どうなるか、どう思うかなどわからないが、多分大丈夫なのではとほんの少しだが思えている。
リフィが言いかけたところでディルが足を止めた。見れば少し先にあるテントの前にコルジアがいた。
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