銀の髪を持つ愛し子は外の世界に憧れる

Guidepost

文字の大きさ
上 下
55 / 151
第三章 旅立ち

54話

しおりを挟む


「一つ、よろしいでしょうか?」

 戸惑った表情で黙っていたレザンが応えるように頷き、口を開く。

「はい、なんでしょうか?」
「先輩方は間違っています」

 うん。もうホンっト、色々と間違ってるよねっ!?

「ハウウェルはそんな、大して知りもしない、特になにもしていないような人にいきなり噛み付くような狂犬のような奴ではありません。もしハウウェルに噛み付かれたいというのならば、先輩方の方からハウウェルに嚙み付くべきです」

 コイツに期待したわたしがバカだった・・・

「それは違う!」
「なに? そう、か……ハウウェルはとうとう、なにもしていない一般人相手に因縁を付けたり噛み付いたりするようになってしまったのか……」

 沈痛な面持ちでわたしを見下ろすレザン。

「いや、そういうことじゃなくて! わたしは、なにもしてない人になにかしたりはしない。それ自体は間違ってなくもないけど、今ここで言うようなセリフはそれじゃないっ!!!!」
「うん? そうだったか?」

 きょとんと首を傾げるレザン。

「そ、そんな・・・」

 すると、悲痛な声を上げる先輩。

「被虐趣味のあるわたしに、ハウウェル様を責めろというのですかっ!?」
「くっ……やはり、ハウウェル様は一筋縄では行かないようですね。罵倒されたいわたし達に、罵倒しないと応えてくれないとはっ……」

 もうやだ、この人達・・・

「・・・ホンっト勘弁してください。わたし、人を詰って喜ぶような趣味も、詰られて喜ぶような趣味もしてないんで。マジ勘弁してください」
「そんな筈はありません! あんなに生き生きとした顔で彼を責め立てていたではありませんかっ!? そうです、ハウウェル様はまだご自分の才能を理解していないのですよ!」
「どんな才能ですか! というか、諸々のことはお断りします! では失礼!」

 と、ダッシュで空き教室から飛び出した。

「あ、ハウウェル様、まだお話が……」

 なんか言ってたような気がするけど、わたしはあの人達に関わりたくない。

 空き教室から、息が切れるまで遠ざかって・・・

「ぁ~・・・なんかもう、疲れた」

 全速力でしばらく走ったからというよりは、精神的な疲労だ。

 喧嘩売って絡んで来るような連中を相手にする方が、大分マシだよ。ああいう人達って、どう対処していいのかマジわかんない。友好的で腰の低い態度。でも変態さんとか・・・

「……前々から思っていたが、ハウウェルは癖の強い人にやたら好かれるな」

 全速力で走ったというのに、ちゃっかりと付いて来ていた体力おばけが全く息を切らした様子もなく、なにやら変なことを呟いた。

 聞かなかったことにしよう。

 うん、わたし別に変な人に好かれてないし・・・

✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰⋆。:゚・*☽:゚・⋆。✰



 ネイサンは、友好的な被虐趣味M体質の先輩達から逃げ出した。(笑)

しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢は3歳?〜断罪されていたのは、幼女でした〜

白崎りか
恋愛
魔法学園の卒業式に招かれた保護者達は、突然、王太子の始めた蛮行に驚愕した。 舞台上で、大柄な男子生徒が幼い子供を押さえつけているのだ。 王太子は、それを見下ろし、子供に向って婚約破棄を告げた。 「ヒナコのノートを汚したな!」 「ちがうもん。ミア、お絵かきしてただけだもん!」 小説家になろう様でも投稿しています。

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

RD令嬢のまかないごはん

雨愁軒経
ファンタジー
辺境都市ケレスの片隅で食堂を営む少女・エリカ――またの名を、小日向絵梨花。 都市を治める伯爵家の令嬢として転生していた彼女だったが、性に合わないという理由で家を飛び出し、野望のために突き進んでいた。 そんなある日、家が勝手に決めた婚約の報せが届く。 相手は、最近ケレスに移住してきてシアリーズ家の預かりとなった子爵・ヒース。 彼は呪われているために追放されたという噂で有名だった。 礼儀として一度は会っておこうとヒースの下を訪れたエリカは、そこで彼の『呪い』の正体に気が付いた。 「――たとえ天が見放しても、私は絶対に見放さないわ」 元管理栄養士の伯爵令嬢は、今日も誰かの笑顔のためにフライパンを握る。 大さじの願いに、夢と希望をひとつまみ。お悩み解決異世界ごはんファンタジー!

公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。

三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*  公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。  どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。 ※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。 ※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。

転生悪役令嬢に仕立て上げられた幸運の女神様は家門から勘当されたので、自由に生きるため、もう、ほっといてください。今更戻ってこいは遅いです

青の雀
ファンタジー
公爵令嬢ステファニー・エストロゲンは、学園の卒業パーティで第2王子のマリオットから突然、婚約破棄を告げられる それも事実ではない男爵令嬢のリリアーヌ嬢を苛めたという冤罪を掛けられ、問答無用でマリオットから殴り飛ばされ意識を失ってしまう そのショックで、ステファニーは前世社畜OL だった記憶を思い出し、日本料理を提供するファミリーレストランを開業することを思いつく 公爵令嬢として、持ち出せる宝石をなぜか物心ついたときには、すでに貯めていて、それを原資として開業するつもりでいる この国では婚約破棄された令嬢は、キズモノとして扱われることから、なんとか自立しようと修道院回避のために幼いときから貯金していたみたいだった 足取り重く公爵邸に帰ったステファニーに待ち構えていたのが、父からの勘当宣告で…… エストロゲン家では、昔から異能をもって生まれてくるということを当然としている家柄で、異能を持たないステファニーは、前から肩身の狭い思いをしていた 修道院へ行くか、勘当を甘んじて受け入れるか、二者択一を迫られたステファニーは翌早朝にこっそり、家を出た ステファニー自身は忘れているが、実は女神の化身で何代前の過去に人間との恋でいさかいがあり、無念が残っていたので、神界に帰らず、人間界の中で転生を繰り返すうちに、自分自身が女神であるということを忘れている エストロゲン家の人々は、ステファニーの恩恵を受け異能を覚醒したということを知らない ステファニーを追い出したことにより、次々に異能が消えていく…… 4/20ようやく誤字チェックが完了しました もしまだ、何かお気づきの点がありましたら、ご報告お待ち申し上げておりますm(_)m いったん終了します 思いがけずに長くなってしまいましたので、各単元ごとはショートショートなのですが(笑) 平民女性に転生して、下剋上をするという話も面白いかなぁと 気が向いたら書きますね

旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます

結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】 ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。

【完結】断罪された悪役令嬢は、全てを捨てる事にした

miniko
恋愛
悪役令嬢に生まれ変わったのだと気付いた時、私は既に王太子の婚約者になった後だった。 婚約回避は手遅れだったが、思いの外、彼と円満な関係を築く。 (ゲーム通りになるとは限らないのかも) ・・・とか思ってたら、学園入学後に状況は激変。 周囲に疎まれる様になり、まんまと卒業パーティーで断罪&婚約破棄のテンプレ展開。 馬鹿馬鹿しい。こんな国、こっちから捨ててやろう。 冤罪を晴らして、意気揚々と単身で出国しようとするのだが、ある人物に捕まって・・・。 強制力と言う名の運命に翻弄される私は、幸せになれるのか!? ※感想欄はネタバレあり/なし の振り分けをしていません。本編より先にお読みになる場合はご注意ください。

憧れのスローライフを異世界で?

さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。 日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。

処理中です...