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第二章 出会い

48話

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 助けてもらって以来、気づけばリフィはフォルたちとよく行動するようになっていた。宿が同じなのもありお互い食事に誘い合ったりが多いだろうか。あとはギルドの依頼も臨時でしばらくはチームを組んでいる。ギルドで何か依頼を受けようとしていた時にフォルから「臨時でチームを組まないか」と声をかけられたのがきっかけだ。ギルドに慣れていないので臨時チームを組んでもらえると助かるとのことだった。リフィとしても一人と一匹でだと受けられる依頼は限られているので助かる。今までは自分が参加しても足をひっぱらないと断言できそうな依頼があればチームに参加させてもらってたまに討伐系の依頼も受けていた。

「リフィは剣も使えるんだな」
「はい。兄や従……兄の友人に教えてもらって。でも筋力が一向につかないのである程度覚えてからはあまり上達した気はしません……」
「まあ元が……いやその、無理をしてもな」
「はい」

 フォルはたまに歯切れが悪い時がある。おそらくフォルなりにリフィを気遣ってくれているのかもしれない。最初の印象は大事だと聞いたことがあるが、それならリフィの最初の印象は気絶して倒れているところと、疲労がたまってフラフラだったところだろうか。

 ……ならろくでもないよね。

 挽回したいなとは思うが、それで無理をしてまた迷惑をかけるくらいならリフィとしては微妙だが、か弱い少年なのだと多少勘違いされたままのほうがマシだろう。
 ところで前にフォルが魔法より剣だと言っていたことはすぐに納得できた。本人曰く脳筋ではなく頭脳派なコルドはさておき、従者でいていまいち正体不明なくらい強かったシアンよりも強いかもしれない。
 リフィからすれば少々手こずるような魔物であってもあっさり倒してしまうだけでなく、その際の剣さばきはリフィが見ても素晴らしく、しっかり型の決まったそれでいて器用な振りをしているのが一目瞭然でわかる。コルジアもかなり上手いので、この二人がいれば自分は全く必要ないのではと思わざるを得ない。というかこの二人ならもっと高度で高額な依頼をいくらでも受けられそうだ。

「どうかしたのか、リフィ」
「えぇと……僕に付き合わせてしまっているようで……すみません」
「何でそんなことを思うんだ。俺たちもその、稼がないといけないしだな」
「フォルとコルジアなら間違いなくもっと高額の依頼を受けられますよ」
「それは別にいいんだ。俺たちはギルドにまだあまり慣れてないと言っただろう? 俺から臨時でチームを組まないかと誘ったんだ、君がそんなことで申し訳がる必要は全くないよ」
「そうでしょうか」
「そうです。リフィくんが気にすることではありません。むしろ面倒な手続きとかをお任せしてこちらが申し訳ないくらいですよ」

 フォルだけでなくコルジアも笑みを向けながら言ってくれた。リフィからすれば依頼に関する諸々の手続きなど大した手間ではないので全然釣り合わないと思うのだが、二人がそう言ってくれるのならありがたく受け入れさせてもらおうと改めて思った。予定よりも報酬が多く入ってくる分、また得意な薬草採取でもしてお礼をさせてもらえばいいかもしれない。
 今回は特定の魔物の爪と角を集める依頼を受けていたのだが、結局いつものようにあっという間に終わってしまった。一応「そこそこ難しい依頼だよ。結構強い魔物たちだから気をつけて」と受付で言われていたので二人にも伝え、リフィも警戒していただけについ唖然としてしまう。

「とりあえず倒したが……」
「まあ呆気なかったですね」
「いやしかし難しい依頼らしいぞ、コルジア」
「ということはこの後お約束のようにボスが登場して私たちに仕返しをしようとするのかもしれませんね」

 二人は冗談でなくそんな話をしている。リフィとしては「いえ、普通僕らからすればその魔物を倒すだけでも結構難しいんですよ」と言いたいが、多分言っても怪訝な顔をされそうな気、しかしない。

「あの、お……」

 とりあえずリフィが何とか一匹倒した時にはすでに全滅させていた二人に「お疲れ様です」と言おうとした時、二人の表情が真剣なものになり「リフィ下がって」とフォルに言われた。

「は、はい」

 突然言われて咄嗟に言われた通りにしてから「何だろう」と思っているとディルまでもが『身を潜めていろ』とリフィに言ってくる。こういう場合は問いかけるよりも言われた通りにするほうが大抵正解だと把握しているため、リフィはまず二人から離れずに岩陰に身を潜ませた。その後ディルに「それで、何」と聞く前に何故なのか即理由はわかった。

『な、にあれ』

 大蛇のような頭をした、だが体は全然違う獣のような恐ろしい姿をした魔物を目の当たりにしてしまい、リフィはさすがに青ざめた。隠れているのもあり、念のため心の中でディルに対して呟けば『ムシュフシュだな』とディルが返答してきた。

『……ディルのお友だち……?』
『何故そうなる。私のような神幻獣とあのような魔物を並べて考える時点で間違っているからな?』
『だってディルと似た頭をしてるよ……』
『蛇の頭を持っているだけだ。ライオンの上半身と鷲の下半身、そして蠍の尾を持つ霊獣だな。私と遠くはないながらに近くもない。そんな生き物だ』
『つ、強いの?』
『弱くは……ないだろうが……ああ、見るがいい。あやつらがもう倒した。ここで論じていても意味はないだろうな』
『えっ?』

 ディルの言葉に慌てて魔物のほうを見ると、実際に二人が既に倒し、何か素材になるものはあるかと覗き込んでいるところだった。
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