桃色ハプニング

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18話

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 でも何故急に、と拓がまだ戸惑っていると頭をぽんと撫でられた。

「拓がほんとに悩んでそうだから」
「大兄……」

 これだから大が好きだ、と拓は思う。いつも基本ふざけた感じだし鬱陶しい勢いで絡んでくるし茶化してばかりだが、いざとなったらやはり「兄」なのだ。

「悪魔なんて普通に信じがたいんだけどさ。まぁ、お兄ちゃんは弟たちが大事で仕方ないんだよね、ぶっちゃけ」
「ぶっちゃけなくてもいつも大兄、出してきてるけど……」
「そこは格好つけた風にさぁ。ニュアンスニュアンス」

 ……まぁ、軽率にいざとなってもふざけてくるけど……。

 少し微妙な顔をしながら、拓は気を取り直した。

「でも大兄、見えないんでしょ。どやってりと兄守るの」
「それだけど……ごめん、絶対とは言えないな、情けないことに。とりあえず悪魔はお前にだけ姿、現してんだろ」
「……うん」
「ってことは俺が何の反応も見せなかったら向こうだって大して悪戯しないんじゃないのか」
「……それは……わからない……」

 わからないが、ただその可能性はある。最悪のパターンだと、大の見ている前で吏人を犯す可能性だってなくはないのだが、セオは粘膜のやり取りはしないと言っていた。悪魔の言うことだから信用できる訳がないのだが、一応今まで実際そこまでしてはこなかった。それに拓も大ですらライバル視を普段してはいるが、何だかんだ言っても大は吏人に対して親を除いたらこの世で一番安全だとも思っている。

「お前がずっとそばにいられたらそれが一番いいんだろけど……あれだろ、吏人には気づかれたくないし、ばらしたくないんだろ」
「……うん」

 知らないほうがいいと拓は思っている。多分、大もそれでいいと思っているから拓の考えを尊重してくれているのだろう。

「だからとりあえずお前が吏人のそばにいられない時は俺ができる限り守る。俺、お兄ちゃんだからな」

 ニヤッと笑うと、大は吏人の部屋へ向かった。拓はうろうろしながら待つしかなかった。いっそ駆けつけてもよかったのだろうが、吏人に「拓がいると宿題に集中できないから」と部屋に入るのを最初に断られている。それでも入ったとして別に吏人は怒らないだろうが、ただでさえ今日の拓が取っていた行動に違和感を覚えていたのもあり、ますます怪訝に思うだろう。

 でも……やっぱりどうしよう、やはり部屋に向かおうか……。

 拓が考えていると大が戻ってきた。

「り、りと兄は?」
「多分もうすぐ出てくるよ。風呂入る準備してる。俺は夕食の準備するからって先に出てきただけだしな」
「で、で? どうだったの? りと兄、変な風になった? 大丈夫だった?」

 心配過ぎて焦りながら聞くと、大が親指を上に立ててきた。

「よか……」
「って言っても一時はちょっとその、何か意味わからんくらいエロくなってお兄ちゃん困ったんだけど」
「っ全然オッケーじゃないだろそれ……!」
「あ、いやでも俺からしたら吏人はどんなにエロく……いや、可愛くても弟でしかないから……そこはほんと、死守……じゃなくて間違いないとこだから。とりあえず全く取り合わなかったし興味ないって態度のままだったからさ、悪魔も諦めたんじゃないかな、すぐいつも通り普通になったし」

 それはよかった、と言っていいのもなのだろうか。

 拓は何とも言えなかった。むしろ、意味がわからないくらいエロい吏人を拓抜きで大とセオに楽しまれただけなのでは? とはいえ、すぐいつも通りになったのなら、やはりよしと言えるのだろうか。

 というか、意味わかんないくらいエロい吏人、俺が見たいんだけど? やっぱずるくない? 許しがたくない?

 悶々としながらも、拓は急いで自分も風呂へ向かうことにした。既に入っていた吏人には「兄さんがいるのに」と焦られたが「夜の楽しみにとっておくから何もしない」と言えば安心してくれたようだ。
風呂では何も起こらなかった。
 その後一旦自分の部屋へ向かうと「クソおもんねぇんだよ」という声がする。セオか、と拓は振り返り睨みつけた。

「は?」
「何、お兄ちゃん味方につけてんだよ」
「……お前のためにならないことなら何でもやる」
「っち。だったら俺も、お前のためにならねぇことやろっかなぁ」
「……は?」
「大がお前に見える魔法とか、どうよ? 拓だと思い込んでの吏人はさぞ、大に対してエロくなるんだろなぁ?」
「ゲス……」
「今さら何言ってんだよ、俺、悪魔だぜ?」
「……もしそうだとしても、大兄は吏人を抱かないから意味、ないし」
「でも吏人がえーっと、愛佳だっけぇ? 元カノ。そいつに見えたらどうよ」
「……っ、大兄とその人はもうただの友だちなんだけど」
「でも元カノだろ? そいつがめちゃくちゃ大を求めてきたらどうよ? いくらあの理性の塊だろうが、元カノなら壁は脆いんじゃねぇの?」

 大ならいくら関係のあった女相手でも、既にいい友だちになっている相手に絶対手は出さない。間違いなくそう思うのだが、セオの言うように吏人に対してよりかは壁は薄いかもしれない。
 拓が口をつぐんでいると、セオは楽しげに続けてきた。

「お互い必死に求め合ってんのに実際は検討違いの相手なんだぜ? めちゃくちゃエロそうだろ? いやでも一番は大にはちゃんと吏人だと把握した上でやらかして欲しーんだけどな。まぁどっちも悪くねえよな。これなら俺が手を出さずとも楽しめるってもんだよなぁ?」
「……殺す」
「は? 俺を? どうやって?」
「それはこうやってだな」

 方法なんてもちろん分からない、それでもどうあがいてでもどうにかすると拓がセオを睨みつけていると背後から知らない声が聞こえた。

「……ぐ」

 拓が振り返ろうとする前にセオが膝から崩れ落ちた。
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