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7話
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それにしても、とセオは吏人を見た。ぶつかり倒れた相手は吏人に謝られつつ拓に睨まれ、気まずげにそそくさとこの場から離れている。吏人は周りを気にすることもなくシャツを脱いで絞ろうとして、気づいた拓に慌てて止められていた。
「こいつ、気にしなさすぎだろ」
笑いつつもセオは呆れてまた吏人を見た。あまりに予想通りに動いてくれる中、そこだけは予想外だった。セオとしてはもっと焦り戦くところが見られると思っていたのだが、変に思いつつも吏人は「まあいいか」くらいな気軽さで毎回流している気がしてならない。
茶髪でピアスを開けてはいるが、性格は真面目そうだし素直だ。なのでてっきり不可解な出来事にもっと怯えたり困ったりするかと思っていた。
ちなみに長男の大は吏人よりも明るい茶髪をしていてピアスも開けており、何より三人の中でも一番明るい性格をしているが、本人の周りの友人から察するに結構真面目らしい。
──さっき改めて、腹は結構黒そうだとは思ったけどな。
よくわからないのが三男の拓だ。上の二人と違って黒髪で格好も特に気にしないようだが、真面目そうにも見えない。頭はいいらしいが、吏人しか興味がないのもあって授業も吏人が絡めば平気でサボる。セオからすれば無愛想にしか見えないが、女にはモテているし男から嫌われている様子もない。この間はたかだか寝癖で周りが密かに騒いでいた。
「ねぇねぇ、幅田くん、寝癖……」
「あの拓くんが寝癖作ってる……」
「ほんとだ、可愛い。でもたまにあるよね」
「直してあげたい……でも言えない」
女が何人かでそんなどうでもいいことを楽しそうに言っている中、拓にとある男が近づいていく。
「幅田、お前寝癖ついてんぞ。鏡見た?」
「見てない」
「おま、せっかく作りいいのに無造作かよ、ざけんな」
「どうでもいい」
「なにそれ。ったく。直してやろうか?」
「別にいい。俺は気になんない」
これまたどうでもいいことを拓と男が話していると、女たちが敵意を持って男を見だした。
「何あいつ」
「うざ」
「邪魔」
「死んでよし」
「……なぁ、幅田……なんか俺、ひょっとして女子に睨まれてね?」
「知らない」
こんな調子だった。
──ほんと拓はよくわからねーよな。
じっと拓を見るも、セオが見えていない拓は今も吏人しか見ていない。というか今はわりと吏人の濡れたシャツに釘付けの様子だ。そして吏人はそれに気づくことなく「シャツ脱いで体操服着たい」と気持ち悪そうにシャツの袖を片方の手でつまんでいる。
「お前は素直過ぎんのか?」
セオは吏人に顔を近づけて聞くが、もちろん吏人も聞こえていないどころか見えてもいない。
「俺の体操服持ってきてあげるから吏人はその格好でうろつかないで」
「このまま一人でここに立ってろと?」
「……ううん。こっち来て」
拓が吏人を引っ張った。そして近くの部屋へ入れた。
「部屋っつーか、確か『教室』だっけか」
ここにいる色んな人間の会話を断片的に耳にして覚えた言葉の一つだ。人間の言葉はどの国だろうが理解できるし話すこともできる。だがセオは吏人たちの取り巻く環境には疎い。仕事で人間を多々堕落させては来たが、大抵働いている人間ばかりだった。仕事に関しては子どもには基本手を出す気はない。
「子どもっつっても見た目は俺と変わんねーし、こいつらヤることヤってっけどな」
今も拓は使われていなさそうな教室に吏人を連れ込むとそのまま抱き寄せてキスをし、次に吏人の濡れたシャツの上から胸元に舌を這わせ始めた。
「ちょ、拓」
「何でシャツの中、何も着てないの」
「シャツにうつったら何かまぬけだろ……」
「じゃあ乳首うつんのはいいの」
「普通はうつらないし……!」
「今現に凄いやらしーことになってる……」
「ちょっと……拓……お前が舐める、から……だろ」
「舐めなくても濡れてエロくなってた。誰かがそれ見るとか嫌過ぎ。許さないから、そんなの」
「……っん」
駄目だわ、こいつら絶対ここでおっぱじめるわ。
セオは呆れたように思いながらも近づいた。もちろん、悪戯をするためだ。散々拓に胸を弄られている吏人の顔はセオとしても見応えがある。
「色気、やっぱあんだよなぁ」
快楽に顔を歪ませ、目を潤ませている様子は結構堪らない。
人間は性別に拘るほうなのかは知らないが、悪魔としては別に好みであれば何でもいい。ちなみに吏人と拓が血の繋がった兄弟で好き合っているということもセオからすれば何とも思わない。そんなことを気にするのは人間くらいだ。人間が考えた宗教では神たちも禁止しているらしいが、別に天使どもも特に気にしていないだろう。
ただ「近親相姦を犯している」ということに人間が戦きつつも抗えないといった様は楽しいし、それにより罪を犯したと嘆き、堕ちていくのならセオとしても儲けものでもあるのでむしろ歓迎といったところか。
「拓……も、無理」
「ん……もうちょっと我慢して……吏人……。もう少し、広げないと……」
つか、マジでおっぱじめる気だわこいつら。罪の意識どうしたよ。
ニヤリと笑うと、背後から拓に覆い被さるように抱きしめられ、後ろを弄られている吏人を覗き込む。壁に手をついて俯いている吏人の表情は、やはりとてもいい。
このままキスしてーな。
そう思い、これじゃあまるで吏人を好きみたいじゃないかとセオは自分に苦笑した。
「こいつ、気にしなさすぎだろ」
笑いつつもセオは呆れてまた吏人を見た。あまりに予想通りに動いてくれる中、そこだけは予想外だった。セオとしてはもっと焦り戦くところが見られると思っていたのだが、変に思いつつも吏人は「まあいいか」くらいな気軽さで毎回流している気がしてならない。
茶髪でピアスを開けてはいるが、性格は真面目そうだし素直だ。なのでてっきり不可解な出来事にもっと怯えたり困ったりするかと思っていた。
ちなみに長男の大は吏人よりも明るい茶髪をしていてピアスも開けており、何より三人の中でも一番明るい性格をしているが、本人の周りの友人から察するに結構真面目らしい。
──さっき改めて、腹は結構黒そうだとは思ったけどな。
よくわからないのが三男の拓だ。上の二人と違って黒髪で格好も特に気にしないようだが、真面目そうにも見えない。頭はいいらしいが、吏人しか興味がないのもあって授業も吏人が絡めば平気でサボる。セオからすれば無愛想にしか見えないが、女にはモテているし男から嫌われている様子もない。この間はたかだか寝癖で周りが密かに騒いでいた。
「ねぇねぇ、幅田くん、寝癖……」
「あの拓くんが寝癖作ってる……」
「ほんとだ、可愛い。でもたまにあるよね」
「直してあげたい……でも言えない」
女が何人かでそんなどうでもいいことを楽しそうに言っている中、拓にとある男が近づいていく。
「幅田、お前寝癖ついてんぞ。鏡見た?」
「見てない」
「おま、せっかく作りいいのに無造作かよ、ざけんな」
「どうでもいい」
「なにそれ。ったく。直してやろうか?」
「別にいい。俺は気になんない」
これまたどうでもいいことを拓と男が話していると、女たちが敵意を持って男を見だした。
「何あいつ」
「うざ」
「邪魔」
「死んでよし」
「……なぁ、幅田……なんか俺、ひょっとして女子に睨まれてね?」
「知らない」
こんな調子だった。
──ほんと拓はよくわからねーよな。
じっと拓を見るも、セオが見えていない拓は今も吏人しか見ていない。というか今はわりと吏人の濡れたシャツに釘付けの様子だ。そして吏人はそれに気づくことなく「シャツ脱いで体操服着たい」と気持ち悪そうにシャツの袖を片方の手でつまんでいる。
「お前は素直過ぎんのか?」
セオは吏人に顔を近づけて聞くが、もちろん吏人も聞こえていないどころか見えてもいない。
「俺の体操服持ってきてあげるから吏人はその格好でうろつかないで」
「このまま一人でここに立ってろと?」
「……ううん。こっち来て」
拓が吏人を引っ張った。そして近くの部屋へ入れた。
「部屋っつーか、確か『教室』だっけか」
ここにいる色んな人間の会話を断片的に耳にして覚えた言葉の一つだ。人間の言葉はどの国だろうが理解できるし話すこともできる。だがセオは吏人たちの取り巻く環境には疎い。仕事で人間を多々堕落させては来たが、大抵働いている人間ばかりだった。仕事に関しては子どもには基本手を出す気はない。
「子どもっつっても見た目は俺と変わんねーし、こいつらヤることヤってっけどな」
今も拓は使われていなさそうな教室に吏人を連れ込むとそのまま抱き寄せてキスをし、次に吏人の濡れたシャツの上から胸元に舌を這わせ始めた。
「ちょ、拓」
「何でシャツの中、何も着てないの」
「シャツにうつったら何かまぬけだろ……」
「じゃあ乳首うつんのはいいの」
「普通はうつらないし……!」
「今現に凄いやらしーことになってる……」
「ちょっと……拓……お前が舐める、から……だろ」
「舐めなくても濡れてエロくなってた。誰かがそれ見るとか嫌過ぎ。許さないから、そんなの」
「……っん」
駄目だわ、こいつら絶対ここでおっぱじめるわ。
セオは呆れたように思いながらも近づいた。もちろん、悪戯をするためだ。散々拓に胸を弄られている吏人の顔はセオとしても見応えがある。
「色気、やっぱあんだよなぁ」
快楽に顔を歪ませ、目を潤ませている様子は結構堪らない。
人間は性別に拘るほうなのかは知らないが、悪魔としては別に好みであれば何でもいい。ちなみに吏人と拓が血の繋がった兄弟で好き合っているということもセオからすれば何とも思わない。そんなことを気にするのは人間くらいだ。人間が考えた宗教では神たちも禁止しているらしいが、別に天使どもも特に気にしていないだろう。
ただ「近親相姦を犯している」ということに人間が戦きつつも抗えないといった様は楽しいし、それにより罪を犯したと嘆き、堕ちていくのならセオとしても儲けものでもあるのでむしろ歓迎といったところか。
「拓……も、無理」
「ん……もうちょっと我慢して……吏人……。もう少し、広げないと……」
つか、マジでおっぱじめる気だわこいつら。罪の意識どうしたよ。
ニヤリと笑うと、背後から拓に覆い被さるように抱きしめられ、後ろを弄られている吏人を覗き込む。壁に手をついて俯いている吏人の表情は、やはりとてもいい。
このままキスしてーな。
そう思い、これじゃあまるで吏人を好きみたいじゃないかとセオは自分に苦笑した。
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