ヴェヒター

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3Wednesday

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「青葉……は、嫌いじゃ、ない……」

 慶一は掠れた声で囁くように言ってくる。

「嫌いじゃない? 何その曖昧な言い方。そんなんじゃちっともわかんねぇじゃん」

 睦は一旦動きを止めていた自分のものを慶一の中の襞に激しく擦りつけながら律動させた。解すどころか濡らすことすらしなかったそこだが、今ではいい具合に解れ、そして主に睦が一度出した精液のおかげで、ぱちゅぱちゅと音を立てて滑っている。
 途端慶一が小さな悲鳴のような喘ぎ声をあげてきた。

「気持ちいーの? 慶一くん。あは、淫乱。そんなに床にまるでキスするくらい顔を擦りつけてさ?」
「ぁ……、ぁあ……、ぅんっ、んん」

 歯を食いしばっているようなくぐもった声が聞こえてきた。睦はニッコリ微笑む。

「気持ちいーのはいいけどさぁ、聞いたことにちゃんと答えるくらいの理性はあるよねぇ? そーだね、質問変えようか。流河のこと、好き?」
「す、きじゃ……ひ、ぁ……、ない……」

 動かすとまた慶一が声を漏らしてくるので睦はまた動きを止めた。

「じゃあ、嫌い?」
「……好きじゃ、ない」
「そんなこと聞いてねぇし。嫌い?」

 慶一の尻を軽くはたくと、睦はもう一度聞いた。思いきり叩くつもりはない。自分でもひねた性格だとは思っているが、直接の暴力はそれこそ好きじゃない。殴る蹴るといった暴力もしかねないと思われることはあるが、実際相手にキレても今まで暴力を振るったことはない。

 ……まあ、レイプは暴力と同じだけどねー。

 内心思っていると、慶一が恐る恐るといった感じで「きら、い」と小さな声で答えてきた。

「よくできたね! いい子だね、慶一くん。ご褒美にちょっと動いてあげるね」

 睦は微笑むと動きを止めていた中を抉りこむようにして突き上げた。

「っひ、あ……っ」
「かわいいよ、慶一くん。じゃあね、俺のことは? 好き?」

 また動きを止めた睦の言葉に、慶一は再度恐る恐るといった様子で今度は顔を向けてきた。

「さっきも言わなかったっけ? 俺の顔、見ろなんて俺、言ったぁ? 質問にだけ、ね、答えてくれるぅ?」
「……好きじゃ……」
「好き? 嫌い?」
「……普通」

 こいつ、馬鹿なんじゃなかろうか。

 睦はうつ伏せ這いつくばっている慶一を見おろした。

「どっちかって聞いてんのに普通って何。お前、馬鹿なの?」
「……お前のこと、別に好きじゃないけど嫌いでもない。……ただ、怖い」
「へえ? ……まぁ、いーわ、何かもぅ。じゃあ、ね、最初に戻るわ。あおのことは? 好き? 嫌い?」
「……わからない」
「は?」
「嫌いじゃ、ない」

 慶一は小さな声で答えてきた。ふざけているのだろうかと睦は慶一を見るが、床に顔を向けている慶一にふざけた様子はない。睦は舌打ちすると、また激しく腰を動かした。

「お前マジ頭わりぃの? 好きか嫌いかもわかんねぇの?」
「ぁっ、ひ、あっ、あっ……も、い、や……だ」
「るせぇよ、そんなこと聞いてねぇし」

 一度射精したからか、睦はなかなか達しない。そういえば立て続けにしたことないな、などと考えていると慶一から掠れた声が聞こえてきた。

「あ? 何?」
「そんな……簡単に、好き嫌いに……分かれ、ない……」
「は? 何で? どっちかでしょ? 俺は慶一くんのこと、これでも好きだよ? あおも好き。流河は嫌い。ほら、こんなに簡単じゃねーの。馬鹿なんじゃね?」

 馬鹿と言いながら、睦は肉をぶつけ合うような音を立て、思い切り慶一の奥に自身を打ちつける。

「ああっ、ひっ」
「何かしら、あるでしょ? 慶一くん、俺のこと怖いの、何で? ん、は……、こやって、酷いこと、するから? 流河嫌いなの、何で? あの性格? それとも大好きなお兄さん取ってきた人の弟だから? ねえ、何かしら、あるくない? ねえ?」

 ひたすら激しく律動を繰り返しながら言った睦の言葉を、聞いているのか聞いていないのか、慶一は息も絶え絶えといった感じのまま達したようだ。苦しげな声を漏らしながらも体を大きく震わせてきた。睦もようやく、さらに突き立てまた思いきり中へ出す。

「怖い相手に犯されてイくんだ? 淫乱慶一くんは。あーあ、あおに見せたかったなぁ……。つか、さっきあおに会ってたよね? 何してたの?」

 ずるり、と抜いた後で聞くと、息を切らせながらも慶一は「な、んで……」と答えてきた。一応学習能力がないわけでもないらしい。ここでまた無視するか躊躇でも見せたら、さらに何か言ってやろうと睦は思っていた。

「ん? 何で知ってるかって? それくらいわかるよねぇ。で、何してたの?」
「……ぐ、うぜん会っただけ、だし、あいつが、柔道部で何やら、してたのを……連れ戻した、それ、だけ……」

 苦しそうな様子の慶一は掠れた声で囁くように言う。その様子に、今度は煽られるどころかだんだん睦は昂っていた気持ちが冷めてきた。
 慶一が青葉とこっそり会っていたと、睦も思っていない。偶然なのは間違いないくらいわかっている。最近青葉はよく柔道部に行っていたのも知っているし、逆に慶一がそんなことを知らないであろうこともわかっている。それでも、偶然だろうが会っていたんじゃないかと気づいただけで妙におかしなくらい腹が立った。

 俺のあおなのに。俺の玩具の慶一くんなのに。何で? 何で俺に向いてないの?

 そして気づけばこうして連れ込んで、慶一を犯していた。
 本当は一人で慶一に絡む気なんてなかった。青葉の、恐らく初恋の相手を自分一人でいたぶるつもりなんて、なかった。だから青葉に意地悪した後も、ずっと何もしなかったというのにと、睦はだんだん冷静になってきた頭で思う。

「……あお、どこ行ったの?」

 ぼそり呟くと、慶一がまた睦のほうを向こうとしてきた。今はさっきよりも、もっと見られたくなかった。さっきの怒りに任せた顔よりもきっともっと情けない顔している。

「俺の顔を見ろなんて、言ってないっつってんだろ……。あお、どこ……」

 すると慶一はまた顔をうつ伏せて呟いた。

「……多分、教室……」
「……そう」

 睦は立ち上がった。慶一は先ほどから全然動かない。いつもなら嫌そうに自分の体を隠そうとするのに、尻はさすがに落としているが、むき出しのまま動かずにいた。多分、睦のせいなのだろう。
 着ていたサマーベストを脱ぐと、睦はそれを慶一に被せた。

「……ちょっと、待ってて。誰も入らないよう、しておくから……」

 その言葉には返事がなかった。構わず睦はドアへ向かう。

「……ごめん」

 聞こえていないかもしれないほど小さな声で謝ると、そのまま教室を出て鍵をかけた。

 こんなことがしたかったんじゃない……。

 ただ、青葉が自分から離れそうなのが寂しくて腹が立って、そして羨ましくて。気に入っている慶一が自分じゃなく青葉を気にしてそうでイライラして。だから意地悪したかっただけだった。
 一年生のフロアへ向かいA組に入ると、青葉が誰かと楽しげに喋っていた。
 青葉は睦よりも純粋に色んなことを楽しんでいる。それを改めて目の当たりにしたが、もうイライラする元気もない。

「むつじゃん。どーしたの? 生徒か……じゃね。風紀は?」

 睦に気づいた青葉はニコニコまっすぐ睦に駆けつけてきた。

 ああ、そうだ。あおは他に興味を持とうが誰かを好きになろうが、きっとこうして自分を好きでいてくれる子だった。なのにもう、それを壊してしまったのかもしれない。

 心臓が痛い。睦はだが何とか微笑むと、青葉を教室の外に連れ出した。

「あお、ごめんねぇ。ちょっと慶一くんに無茶、しちゃったぁ。これ、鍵」
「……は?」

 青葉はポカンと睦を見てきた。だがすぐに目に非難の色が走る。

「おま……、……っ」

 何か言いかけたが、青葉は睦の手から鍵を奪うと振り返ることなく駆けだして行った。
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