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20(終)※
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「も、むり、だって……」
拓との性行為にもある程度慣れた気がする。とはいえ慣れたのは尻が、というのだろうか。もちろんしっかり解さないとまだ痛みは当然あるだろうが、きちんと手順を踏んでいればそこはもはや快楽しか拾わない。
正直、自分の尻がこの先どうなるのか、心配ではある。あと、あんなものが出入りして痛まないどころか気持ちよさしかない今の自分は少々怖い。
そして慣れたのは尻がだとあえて言うのは、拓との行為自体には多分まだまだ慣れそうにないからだ。
気持ち、よすぎて……死ぬとしか思えん。
多分、性交だけだとここまで快楽に溺れて息もできないといった事態にならなかったのかもしれない。だが拓との行為には「食事」も大抵含まれている。
他のケーキって、どうなの……? 俺、こいつに舐められたり噛まれたりしたとこから全部溶けていきそうでしかないんだけど。
食べられながらするセックスがこれほど結弦にとって退廃的でいて忘我しそうなほど官能的快楽を得られるものだとは。
俺、マゾか何かなの?
フォークに食べられるケーキに特殊な何かが分泌されたり、もしくはケーキを食べるフォークに分泌されるといった話は全く聞いたことない。いくら相対数がかなり少ないとはいえ、起こり得ることなら授業で習わなかったとしても、どこかで耳にするのではないだろうか。
それを拓に言えば「お前が俺を好きすぎるからじゃないか」と真顔でふざけた答えが返ってきた。
「んなわけねえんだよ」
「は」
「その小馬鹿にしたような笑いやめろ」
「絶対そうだろ。あとだいたいお前、快楽に弱い」
「……よ、わくねえ」
「もしくは本当に食べられること考慮して、あれじゃないか。フォークに対して抗体持つ感じで痛みとか和らげる、エンドルフィンみたいな脳内麻薬でも出てんじゃないか?」
「そ、れはヤバいのでは」
「やばくない、やばくない」
「おい! 適当なこと言いながらまた食おうとしてんじゃねえよ……!」
そんな感じで、フォークである拓もちゃんとした答えを持っているわけではなさそうだった。よって今も理由はわからない。
「無理じゃないだろ」
無理だと何とか言葉にしながら拓を押そうとしたが、相変わらずびくともしない。とはいえ今の結弦はどのみち快楽に震えて力もまともに出そうにない。
拓は囁きながら結弦にキスしてきた。深く口内を貪られながらまた律動を始める。何度も解され濡らされたそこは、しっかり拓を咥え込みながら痙攣するように収縮しているのが自分でもわかった。もう何度達したかわからない。
「む、り。むり。っぁ、あっ、あ」
硬く太く熱い芯が、むず痒さすらある自分の中を余すことなく擦り、抉り、吸いつくしていく。
突かれても引かれても、駄目、だって……。
おまけにようやく唇へのキスが離れても、止まらない律動のまま首や肩、胸などを舐められ、吸われ、齧られていく。
「待って、怖、い……怖い、むり、こわ、いっぁ、ああ、あっ」
本当にこのまま食べられてしまうのではと思うくらい激しく食んでくるせいで、どこもかしこもますます敏感になっていく上に本気で怖い。なのに死ぬほど気持ちいい。
「俺も、無理。お前、甘すぎてたまんない……全部食いたい……」
「む、りぃぃああっ」
またやってきた激しい快楽の波に、結弦は体をびくびく震わせながらそろそろ意識を手放しそうだった。
ところで旭日は結弦を見かけると、今もにこやかに近寄ってくる。拓とつき合ってからすぐ、結弦は言いにくいながらも何とかそれを旭日に伝えたし「そっか。それは残念。だけどおめでとう」などと間違いなく言われた。だから聞き逃されているのでも勘違いされているのでもないはずだ。
「今日もかわいいね佐野くんは」
「……あの……。俺は絶対かわいい部類じゃないと思います、し、その、俺は三坂くんとつ、つき、つき、つ、つき合って、るので……」
「あはは。ほら、今もかわいい。それに君があいつとつき合ってるのはちゃんと知ってるよ、君からもう少なくとも三回くらいは聞いてるし」
「な、なら」
「でもそれと俺が君にかわいいって言うのは別でしょ」
別? 別なのか?
「そう、です……か?」
「だって浮気しよう、とか言ってないよね俺」
「はい」
「あれと別れて俺とつき合おうとも言ってないよね」
「はい」
「ただ君に話しかけてるだけだし、かわいいなあって思うからそれを正直に伝えてるだけだよね」
「確かに」
「問題ある?」
「えっと、そっか。ない、ですね」
確かにそうだと結弦は頷いた。
「問題しかないんだよ」
だが拓にたまに聞かれるため、話した出来事など言えばとてつもなく微妙な顔か、しかめ面で言われる。その時は毎回、いつも以上にひたすらねちこく食べられている気がするし、ひたすらぐったりする気がするのだが、気のせいだろうか。拓に聞いても「さあな、どうだろうな」などと返ってくるので確証はない。今もそうだった。
「お前ほんと、あれだわ」
そ
結弦が息を乱してぐったりしていると、呆れたように言ってくる。
「あれって何だよ。っていうかまた馬鹿にしてんだろ」
「は。たまになら甘い味のスパイスにもなるから悪くないけど、いい加減学習しろ」
「それ言うならお前もな、いい加減もう少し俺食うの、調整しろよ……!」
「無理」
「無理とか言うな。こないだはとうとう……その、あれだ」
「ああ、あれ。お漏らしじゃなくて潮吹いただけだろ」
「だけとか言うな……! それだとしても嫌だわ……!」
「悪くない味だったけど」
「もうほんとお前、いっぺん地獄落ちろ」
「素直じゃないのはよく知ってるけど、たまにはちゃんと俺に言えよ」
「何をだよ」
「たまらなく好きだって」
にやりと皮肉そうな笑みを浮かべた拓は、のぼせながら顔を引きつらせている結弦の唇に舌を這わせてきた。
拓との性行為にもある程度慣れた気がする。とはいえ慣れたのは尻が、というのだろうか。もちろんしっかり解さないとまだ痛みは当然あるだろうが、きちんと手順を踏んでいればそこはもはや快楽しか拾わない。
正直、自分の尻がこの先どうなるのか、心配ではある。あと、あんなものが出入りして痛まないどころか気持ちよさしかない今の自分は少々怖い。
そして慣れたのは尻がだとあえて言うのは、拓との行為自体には多分まだまだ慣れそうにないからだ。
気持ち、よすぎて……死ぬとしか思えん。
多分、性交だけだとここまで快楽に溺れて息もできないといった事態にならなかったのかもしれない。だが拓との行為には「食事」も大抵含まれている。
他のケーキって、どうなの……? 俺、こいつに舐められたり噛まれたりしたとこから全部溶けていきそうでしかないんだけど。
食べられながらするセックスがこれほど結弦にとって退廃的でいて忘我しそうなほど官能的快楽を得られるものだとは。
俺、マゾか何かなの?
フォークに食べられるケーキに特殊な何かが分泌されたり、もしくはケーキを食べるフォークに分泌されるといった話は全く聞いたことない。いくら相対数がかなり少ないとはいえ、起こり得ることなら授業で習わなかったとしても、どこかで耳にするのではないだろうか。
それを拓に言えば「お前が俺を好きすぎるからじゃないか」と真顔でふざけた答えが返ってきた。
「んなわけねえんだよ」
「は」
「その小馬鹿にしたような笑いやめろ」
「絶対そうだろ。あとだいたいお前、快楽に弱い」
「……よ、わくねえ」
「もしくは本当に食べられること考慮して、あれじゃないか。フォークに対して抗体持つ感じで痛みとか和らげる、エンドルフィンみたいな脳内麻薬でも出てんじゃないか?」
「そ、れはヤバいのでは」
「やばくない、やばくない」
「おい! 適当なこと言いながらまた食おうとしてんじゃねえよ……!」
そんな感じで、フォークである拓もちゃんとした答えを持っているわけではなさそうだった。よって今も理由はわからない。
「無理じゃないだろ」
無理だと何とか言葉にしながら拓を押そうとしたが、相変わらずびくともしない。とはいえ今の結弦はどのみち快楽に震えて力もまともに出そうにない。
拓は囁きながら結弦にキスしてきた。深く口内を貪られながらまた律動を始める。何度も解され濡らされたそこは、しっかり拓を咥え込みながら痙攣するように収縮しているのが自分でもわかった。もう何度達したかわからない。
「む、り。むり。っぁ、あっ、あ」
硬く太く熱い芯が、むず痒さすらある自分の中を余すことなく擦り、抉り、吸いつくしていく。
突かれても引かれても、駄目、だって……。
おまけにようやく唇へのキスが離れても、止まらない律動のまま首や肩、胸などを舐められ、吸われ、齧られていく。
「待って、怖、い……怖い、むり、こわ、いっぁ、ああ、あっ」
本当にこのまま食べられてしまうのではと思うくらい激しく食んでくるせいで、どこもかしこもますます敏感になっていく上に本気で怖い。なのに死ぬほど気持ちいい。
「俺も、無理。お前、甘すぎてたまんない……全部食いたい……」
「む、りぃぃああっ」
またやってきた激しい快楽の波に、結弦は体をびくびく震わせながらそろそろ意識を手放しそうだった。
ところで旭日は結弦を見かけると、今もにこやかに近寄ってくる。拓とつき合ってからすぐ、結弦は言いにくいながらも何とかそれを旭日に伝えたし「そっか。それは残念。だけどおめでとう」などと間違いなく言われた。だから聞き逃されているのでも勘違いされているのでもないはずだ。
「今日もかわいいね佐野くんは」
「……あの……。俺は絶対かわいい部類じゃないと思います、し、その、俺は三坂くんとつ、つき、つき、つ、つき合って、るので……」
「あはは。ほら、今もかわいい。それに君があいつとつき合ってるのはちゃんと知ってるよ、君からもう少なくとも三回くらいは聞いてるし」
「な、なら」
「でもそれと俺が君にかわいいって言うのは別でしょ」
別? 別なのか?
「そう、です……か?」
「だって浮気しよう、とか言ってないよね俺」
「はい」
「あれと別れて俺とつき合おうとも言ってないよね」
「はい」
「ただ君に話しかけてるだけだし、かわいいなあって思うからそれを正直に伝えてるだけだよね」
「確かに」
「問題ある?」
「えっと、そっか。ない、ですね」
確かにそうだと結弦は頷いた。
「問題しかないんだよ」
だが拓にたまに聞かれるため、話した出来事など言えばとてつもなく微妙な顔か、しかめ面で言われる。その時は毎回、いつも以上にひたすらねちこく食べられている気がするし、ひたすらぐったりする気がするのだが、気のせいだろうか。拓に聞いても「さあな、どうだろうな」などと返ってくるので確証はない。今もそうだった。
「お前ほんと、あれだわ」
そ
結弦が息を乱してぐったりしていると、呆れたように言ってくる。
「あれって何だよ。っていうかまた馬鹿にしてんだろ」
「は。たまになら甘い味のスパイスにもなるから悪くないけど、いい加減学習しろ」
「それ言うならお前もな、いい加減もう少し俺食うの、調整しろよ……!」
「無理」
「無理とか言うな。こないだはとうとう……その、あれだ」
「ああ、あれ。お漏らしじゃなくて潮吹いただけだろ」
「だけとか言うな……! それだとしても嫌だわ……!」
「悪くない味だったけど」
「もうほんとお前、いっぺん地獄落ちろ」
「素直じゃないのはよく知ってるけど、たまにはちゃんと俺に言えよ」
「何をだよ」
「たまらなく好きだって」
にやりと皮肉そうな笑みを浮かべた拓は、のぼせながら顔を引きつらせている結弦の唇に舌を這わせてきた。
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