たまらなく甘いキミ

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 俺を味わって、俺に触れて、立つの? お前が?

 本人は無口なほうだというのに見た目が秀でているせいか、完全に陽キャグループの中でも目立つ男だ。恋愛抜きにしても男女ともに一目置かれているような男だ。アルバイト先での様子しか知らなくても、そう思えるくらいだ。きっと普段もそんな感じなのだろう。

 そんなお前が、俺に? 何で?

 自慢じゃないが、結弦はどこをどう見ても普通だ。顔も、背も、人付き合いも。根暗とまではいかないし女性ともやり取りできるが、積極的に誘ったりできないし、男性相手でも目立つようなタイプに対して気後れしてしまう。自分の魅力を探そうにも「多分清潔にはしている」といったそれこそ至って普通のことしか浮かばない。

 そんな俺に立つ?

 いくら拓がフォークで結弦がケーキとはいえ、性的な目線で興奮するものだろうか。フォークではないので実際のところわからないが、少なくとも結弦はどれほどおいしいものを食べても、好きなものを食べても、勃起したことなどない。ついでに同性相手にも、ない。拓に対してこんなになっているくせに何を、と自分に突っ込みたいところだが、とにかく普段は、ない。

「何でって、興奮してるから」
「い、や……だから、何で……」
「何で、何でってうるさい」
「は? うるさいって、おま……っんんん? ちょ、何する気だよ……!」

 言い返そうとしたが、焦らずにはいられない状況を感じ取り、結弦は慌てて体ごと後ろに振り返ろうとした。

「動くなよ」
「そ、っう、動くわ! 動くに決まってんだろ! お前、俺に入れようとしてない? ねえ! む、無理だから。く、食わせるのはいいっつったけど、こういうこと、じゃ、ない……!」

 胸がやたらめったらドキドキしているのは恐怖と緊張のせいだ。決してときめいたり欲しくて疼いているのでは、ない。

「……ない、はず……」
「あ?」
「な、何でもねえから。じゃなくて! 何でもなくないわ。は、離せ。入れようとすんな!」
「いくら何でもいきなり入れたりしない。勝手に濡れもしないとこにそんなことするか。いくらフォークだからって俺を何だと思ってんだ。鬼か何かだと?」
「だ、だったら……」
「俺の、お前の太ももに挟んで」
「……、……は? や、やだ、よ」
「何で」
「な、何で、って。だ、だって、いやそれこそ何で!」
「出したいからだけど」

 それはわかる。それはわかるが、そうじゃない。

 何なの? フォークとケーキの関係で脳、バグってんの?

「俺、ケーキだけどでも! 男だけど! 男いける人だっけ?」
「どう見ても女には見えん。悪いけど。あと同性に対して基本興味ない」
「悪くねえわ……! じゃなくて! ま、さかと思うけどお前、実はうまいもん食ったり目の前にしたら勃起してその食い物にぶっかけたい変態なの?」
「言い方……。マジまさかだわ。ひどい変態扱いだな……そんなわけないだろ」
「だ、だったら! だ、だって俺……男相手に何で?」
「は? 今までさんざんキスしてて何言ってんだ」
「そ、れは……そ、そう、食事だろ……! でもこれは違うでしょ。って続けようとすんな……! ああもう! な、なあ。た、立ったのはさておき、自分で抜けばいいだろ」
「でもお前も腰、揺れてる」

 俺の煩悩マジ……!

 思わず両手で顔を覆った。その隙に挟まれた。足の間に硬い異物を感じる。しかも無機質ではない、熱くて生き物のような気配しかない。
 それはゆっくり前後してきた。その度に結弦の玉の部分や竿の根本辺りが擦れ、もどかしい。

「ふ、ぅ……」

 つい声が出そうになり、顔を覆っていた手を口に当てた。

「……はは。なあ、気持ちいいの?」
「う、るせ……、違、んぅ」
「は」

 後ろから動きながら、拓は結弦の首筋に唇を這わせてきた。

「ん。甘……」
「っぁ、あ、あっ」

 キスされたり舌を這わされたりだけでなく、拓の手が結弦のものを背後から扱いてくる。ただでさえ動かれると擦れて変な気分になっていた上に扱かれ、おまけに耳や首を唇で愛撫され、結弦が堪えられるはずなどなかった。
 ドクドク音が聞こえそうな気がするくらい思い切り出し、ぐったりしている結弦を仰向けにし、拓が結弦の足の間に体を入れてきた。さすがに「入れられるのでは」と戦々恐々とする余裕もなく放心していると、結弦が射精したせいで濡れた自分の手のひらをうまそうに舐めながら、今度こそ拓が自分で扱いている。放心状態だというのにその様子がどうにも煽情的に見えてしまう。動くこともできずにぼんやり眺めていると、拓はわざわざ結弦の腹の上に手で押し出すかのようにして射精してきた。

 ほんと、マジ、何なんだ。

 翌日、結弦は大学の講義もままならないといった状態だった。ひたすら悶々と答えの出ない疑問について頭の中がぐるぐるしていた。構内にあるカフェのテーブルに思い切り突っ伏していると「どうしたの」と声かけられた。そっとしておいてくれと思いつつ頭を上げると、昨日階段から落ちかけた結弦を助けてくれた旭日がニコニコ結弦を見ている。

「あ! 結崎、さん」
「覚えててくれたんだ佐野くん」
「いや、だって昨日のことだし俺、助けてもらったし。つか、結崎さんだって俺のこと、覚えてくれてるじゃないですか」
「うん。佐野くんはもうお昼食べて食後のコーヒーか何か?」
「いえ。これからです」

 食べようと思いつつ、まだひたすら「マジ何なの」とぐるぐるしていたため、カフェで座っているが何も食べていない。

「あれ、そうなんだ。講義が長引いたとか?」
「いえ。えっと、たまたま、です」
「? あ、ねえ。まだなら一緒に食べない? 俺も実はまだなんだ。よかったらおごるよ」
「え! じゃなくて、むしろおごるなら助けてもらった俺がおごる側ですけど」
「でも俺のが先輩だから」

 旭日は楽しげに微笑んできた。
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