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克雪は勿論泳げない。だから中学でも水泳部には見向きもしなかったし、授業の時は適当に隅っこでヘリをつかんでもがいていたくらいらしい。
ちなみに本人的にはもがいているのではなく立派にバタ足をしているのだが、どうにも傍から見るとヘリをつかんでいるにも関わらず沈みゆく何かが足掻いているようにしか見えなかったようだ。先生にも言われたらしい。
だから水泳部が夏以外何しているのかは完全に謎だし想像もつかないと言う。
「あれかな、夏以外はほぼ部活なしとか」
克雪に聞かれ、祥悟はとてつもなく微妙な顔で見た。とはいえ大抵無視しているが、今回は答える。
「そんな訳ないだろ。陸上トレーニングやら室内プール借りたりがっ……何か色々練習したりすんだよ」
合宿と言いかけた祥悟は即座に思いとどまり言うのを止めた。なんていうか目の前の変態相手に合宿があるとは物凄く言いたくなかった。ちゃんと十分通っているスイミングスクールでしっかり練習するから、合宿がどうかありませんようにと祥悟は内心祈る。
「しょーごくんが答えてくれた! やだ、もうこれ相思相愛だよね?」
「そんな訳あるかよ! どういう脳回線してんの……? ほんっとお前嫌だ。あの時助けるんじゃなかった」
「そんな事言っても絶対しょーごくんは次また俺が溺れてるの見ても助けてくれるよ、俺わかるもん」
「ない」
「即答? もう冷たい! でもカッコいい抱いて欲しい!」
「だからそれやめろよ!」
祥悟がドン引きして嫌がっても、クラスの周りは既にもう慣れているのかどちらかというと妙に応援されていて、克雪的にはとても嬉しいし、祥悟的には泣きたい。
できれば部活ではそういう事にならなければいいなと思いながら祥悟はついてくる克雪をもうひたすら無視する事にして水泳部の部室へ向かった。
公立ではあるが、進学校で文武両道を目指しているからか、この学校は体育系の部活に対して優しいというかとても場所をとってくれている。立地が田舎というのもあるが、広い敷地内に校舎とグラウンドの他に、大きなテニスコートもあるし弓道場もある。体育館はボール系の部活とそれ以外の部活もできるようにか第一と第二と大小の違いはあれど二つある。もちろん屋内ではないがプールもあるし体育用倉庫の他にそれぞれの部室もあった。
水泳部の部室は着替え自体はプールにある更衣室で行うため、一応ロッカーはあるが基本的には集合場所的なものになっている。
そしてこの学校の水泳部に女子は無いらしい。入部して最初に挨拶をした時に先輩達が悲しげに言っていた。
祥悟は別に水泳が好きで入っただけなので悲しくともなんとも無かったし、克雪に至っては「俺はしょーごくんが居るから十分です!」と言って先輩達に怪訝そうな顔をされていた。
それはそうだろう。男子部員目当ての男子など聞いた事もないと祥悟は口を引きつらせながら思ったものだ。そしてせめて先輩に対してぐらい、物怖じして大人しくしてくれとそっと思っていた。
「だからまあ、男子だろうがマネージャーしてくれるだけでもありがたいよ。女子部員がいないだけじゃなくマネージャーもいなかったからな」
まさかのマネージャー宣言と祥悟は思っていたが、克雪は意外にも歓迎されていた。
「ちーす」
「ほんひはーっ」
追いついてやたらくっついてくる克雪を思いっきりぞんざいに引きはがしながら祥悟が部室に入る。それに続いて顔を祥悟の手で思いきり押されて変な発音になりつつも克雪も挨拶しながら入った。
「遊馬!」
二人よりも先に来ていたのは同じ新入部員の一年、雷 秋薫(らい あきしげ)だけだった。隣のクラスである秋薫は落ち着いた感じの兄タイプの性格からか、割と他の一年にも慕われたり頼られたりしている。だが祥悟に対しては何故かそっけない。よほどの用事がないと話しかけてこないし、こちらが何らかで話しかけても無視はしないが必要最低限しか答えてこない。
別に克雪のようにべたべたして欲しい訳では絶対無いが、嫌われているんだろうかと思うような態度を取られるのもどこか落ち着かないと祥悟は最初思っていた。
だがその秋薫はどうにも克雪はお気に入りらしい。何かとニコニコ話しかけている。その違いは何だと祥悟も最初ムッとしていたが、慣れた今では別に気にならない。
「雷、もう来てたの、早いね!」
「最後の授業が俺のクラスの担任、鬼センセーだったからな。無駄話とか無くて楽だよ」
「鬼せんせーカッコいいよね! あ、でもしょーごくんの方がカッコいいよ! 浮気じゃないよ!」
ニコニコして言った後に克雪は慌てて祥悟に弁明する。
「いや……何も言ってないしむしろそうして欲しい」
祥悟はまた飛びつきに来ようとした克雪を思いきり手を伸ばして阻止した後に自分のロッカーに置いておきたいものを入れに移動した。
「遊馬相変わらず日坂にくっついてんの?」
「うん」
「あいつのどこがいいの?」
妙な会話をしないで欲しい、と祥悟は微妙な顔をしながらロッカーに荷物を入れた。
「全部だよ、むしろよくないとこ見つけられないくらい!」
「そうなん? 俺にはわかんないな」
「いいよ別に雷わかんなくて! ライバルは少ない方がいいもん」
「いやまずそういう意味で興味ねぇけど……無理」
「あんなにカッコいいのに!」
「わからない方がいいんだろ? どっちなんだよ」
「わからなくていいよ!でもしょーごくんあんなに素敵なのにわからないのも不思議だなって」
「お前ならわかるけど。お前可愛いし」
「俺は可愛いよね、知ってるよ!」
ほんとやめてください。
祥悟はどうにも居たたまれない思いだった。
その会話おかしくないか? ていうかせめて俺のいない時に好きにしろよ。
相変わらず顔をそらして違う事をしながらも祥悟は呆れたようにそっとため息をついた。そしてふと気付く。
『お前ならわかるけど。お前可愛いし』
それってどういう意味なんだ?
とはいえ二人の間に入って聞きなおすのも何だかおかしいしまぬけだと祥悟が思っていると先輩達も部室にぞろぞろと入ってきた。
その日はミーティングをした後で軽くグラウンドで走り込みとストレッチを交互にやった。
ストレッチでは克雪が「しょーごくんの背中押してあげる!ぎゅぅって」等と言ってきて祥悟の顔色を青くさせた。
「やめろそれだいたいなんか押す擬態語ぽくねぇ!」
言い返していると先輩が「遊馬、お前マネージャーなら他にもする事あんだよ。それにストレッチ手伝うなら全員差別なく、しろ」等と言いながら克雪の首根っことつかんで引き摺ってどこかに連れていったので祥悟はホッとした。
ミーティングでは今後の大会についての話だった。既に四月半ばにも大きな大会があったが、今後も五月、六月、と毎月のように大会はある。そして七月にはインターハイの予選も始まる。
だがらまだプールは使えなくともどこの学校の水泳部も色んな方法で練習を日々重ねていた。
それに水泳に関しては団体競技の他に個人競技もあり、それなりの記録を残すような生徒は大抵皆スイミングスクールにも通っている。
部長が祥悟達に話をしている間、克雪は別の先輩にマネージャーとしてやる仕事を教えてもらっていた。
「日坂、お前遊馬の事どう思ってんの」
克雪が連れていかれたのでホッとしてストレッチをしていると、とてつもなく珍しい事に秋薫から話しかけてきた。
「……どうって、どうもこうも……むしろどう思えと。ああそうか。変態だろうなって思ってる」
微妙な顔をしつつ答えると、不機嫌そうに見られた。
何だ? 不正解という事か?
「……遊馬は可愛いだろうが」
「……は?」
「いやまあいい。どうも思ってねえならはっきり拒絶しろよ」
「いや日々してるけどっ? ていうか何でお前にそんな事言われなきゃいけないんだ?」
克雪のマネージャー業に差し支えるとでも言われるのか?
座ったまま体を思いきり前屈させながら祥悟は怪訝に思った。
「俺は遊馬が好きだからな。言いたくもなるだろう」
「ああなんだ、そういう事………………は? え、な、え? は?」
「んだよその反応。うざいな」
「ウザいってだってお前、ちょ……」
「こらお前ら! 真面目にやれアホウが!」
祥悟が心底唖然としながら、実際鬱陶しそうに自分を見てくる秋薫に聞き返そうとするとその前に先輩がやってきて二人の頭をはたいてきた。
ちなみに本人的にはもがいているのではなく立派にバタ足をしているのだが、どうにも傍から見るとヘリをつかんでいるにも関わらず沈みゆく何かが足掻いているようにしか見えなかったようだ。先生にも言われたらしい。
だから水泳部が夏以外何しているのかは完全に謎だし想像もつかないと言う。
「あれかな、夏以外はほぼ部活なしとか」
克雪に聞かれ、祥悟はとてつもなく微妙な顔で見た。とはいえ大抵無視しているが、今回は答える。
「そんな訳ないだろ。陸上トレーニングやら室内プール借りたりがっ……何か色々練習したりすんだよ」
合宿と言いかけた祥悟は即座に思いとどまり言うのを止めた。なんていうか目の前の変態相手に合宿があるとは物凄く言いたくなかった。ちゃんと十分通っているスイミングスクールでしっかり練習するから、合宿がどうかありませんようにと祥悟は内心祈る。
「しょーごくんが答えてくれた! やだ、もうこれ相思相愛だよね?」
「そんな訳あるかよ! どういう脳回線してんの……? ほんっとお前嫌だ。あの時助けるんじゃなかった」
「そんな事言っても絶対しょーごくんは次また俺が溺れてるの見ても助けてくれるよ、俺わかるもん」
「ない」
「即答? もう冷たい! でもカッコいい抱いて欲しい!」
「だからそれやめろよ!」
祥悟がドン引きして嫌がっても、クラスの周りは既にもう慣れているのかどちらかというと妙に応援されていて、克雪的にはとても嬉しいし、祥悟的には泣きたい。
できれば部活ではそういう事にならなければいいなと思いながら祥悟はついてくる克雪をもうひたすら無視する事にして水泳部の部室へ向かった。
公立ではあるが、進学校で文武両道を目指しているからか、この学校は体育系の部活に対して優しいというかとても場所をとってくれている。立地が田舎というのもあるが、広い敷地内に校舎とグラウンドの他に、大きなテニスコートもあるし弓道場もある。体育館はボール系の部活とそれ以外の部活もできるようにか第一と第二と大小の違いはあれど二つある。もちろん屋内ではないがプールもあるし体育用倉庫の他にそれぞれの部室もあった。
水泳部の部室は着替え自体はプールにある更衣室で行うため、一応ロッカーはあるが基本的には集合場所的なものになっている。
そしてこの学校の水泳部に女子は無いらしい。入部して最初に挨拶をした時に先輩達が悲しげに言っていた。
祥悟は別に水泳が好きで入っただけなので悲しくともなんとも無かったし、克雪に至っては「俺はしょーごくんが居るから十分です!」と言って先輩達に怪訝そうな顔をされていた。
それはそうだろう。男子部員目当ての男子など聞いた事もないと祥悟は口を引きつらせながら思ったものだ。そしてせめて先輩に対してぐらい、物怖じして大人しくしてくれとそっと思っていた。
「だからまあ、男子だろうがマネージャーしてくれるだけでもありがたいよ。女子部員がいないだけじゃなくマネージャーもいなかったからな」
まさかのマネージャー宣言と祥悟は思っていたが、克雪は意外にも歓迎されていた。
「ちーす」
「ほんひはーっ」
追いついてやたらくっついてくる克雪を思いっきりぞんざいに引きはがしながら祥悟が部室に入る。それに続いて顔を祥悟の手で思いきり押されて変な発音になりつつも克雪も挨拶しながら入った。
「遊馬!」
二人よりも先に来ていたのは同じ新入部員の一年、雷 秋薫(らい あきしげ)だけだった。隣のクラスである秋薫は落ち着いた感じの兄タイプの性格からか、割と他の一年にも慕われたり頼られたりしている。だが祥悟に対しては何故かそっけない。よほどの用事がないと話しかけてこないし、こちらが何らかで話しかけても無視はしないが必要最低限しか答えてこない。
別に克雪のようにべたべたして欲しい訳では絶対無いが、嫌われているんだろうかと思うような態度を取られるのもどこか落ち着かないと祥悟は最初思っていた。
だがその秋薫はどうにも克雪はお気に入りらしい。何かとニコニコ話しかけている。その違いは何だと祥悟も最初ムッとしていたが、慣れた今では別に気にならない。
「雷、もう来てたの、早いね!」
「最後の授業が俺のクラスの担任、鬼センセーだったからな。無駄話とか無くて楽だよ」
「鬼せんせーカッコいいよね! あ、でもしょーごくんの方がカッコいいよ! 浮気じゃないよ!」
ニコニコして言った後に克雪は慌てて祥悟に弁明する。
「いや……何も言ってないしむしろそうして欲しい」
祥悟はまた飛びつきに来ようとした克雪を思いきり手を伸ばして阻止した後に自分のロッカーに置いておきたいものを入れに移動した。
「遊馬相変わらず日坂にくっついてんの?」
「うん」
「あいつのどこがいいの?」
妙な会話をしないで欲しい、と祥悟は微妙な顔をしながらロッカーに荷物を入れた。
「全部だよ、むしろよくないとこ見つけられないくらい!」
「そうなん? 俺にはわかんないな」
「いいよ別に雷わかんなくて! ライバルは少ない方がいいもん」
「いやまずそういう意味で興味ねぇけど……無理」
「あんなにカッコいいのに!」
「わからない方がいいんだろ? どっちなんだよ」
「わからなくていいよ!でもしょーごくんあんなに素敵なのにわからないのも不思議だなって」
「お前ならわかるけど。お前可愛いし」
「俺は可愛いよね、知ってるよ!」
ほんとやめてください。
祥悟はどうにも居たたまれない思いだった。
その会話おかしくないか? ていうかせめて俺のいない時に好きにしろよ。
相変わらず顔をそらして違う事をしながらも祥悟は呆れたようにそっとため息をついた。そしてふと気付く。
『お前ならわかるけど。お前可愛いし』
それってどういう意味なんだ?
とはいえ二人の間に入って聞きなおすのも何だかおかしいしまぬけだと祥悟が思っていると先輩達も部室にぞろぞろと入ってきた。
その日はミーティングをした後で軽くグラウンドで走り込みとストレッチを交互にやった。
ストレッチでは克雪が「しょーごくんの背中押してあげる!ぎゅぅって」等と言ってきて祥悟の顔色を青くさせた。
「やめろそれだいたいなんか押す擬態語ぽくねぇ!」
言い返していると先輩が「遊馬、お前マネージャーなら他にもする事あんだよ。それにストレッチ手伝うなら全員差別なく、しろ」等と言いながら克雪の首根っことつかんで引き摺ってどこかに連れていったので祥悟はホッとした。
ミーティングでは今後の大会についての話だった。既に四月半ばにも大きな大会があったが、今後も五月、六月、と毎月のように大会はある。そして七月にはインターハイの予選も始まる。
だがらまだプールは使えなくともどこの学校の水泳部も色んな方法で練習を日々重ねていた。
それに水泳に関しては団体競技の他に個人競技もあり、それなりの記録を残すような生徒は大抵皆スイミングスクールにも通っている。
部長が祥悟達に話をしている間、克雪は別の先輩にマネージャーとしてやる仕事を教えてもらっていた。
「日坂、お前遊馬の事どう思ってんの」
克雪が連れていかれたのでホッとしてストレッチをしていると、とてつもなく珍しい事に秋薫から話しかけてきた。
「……どうって、どうもこうも……むしろどう思えと。ああそうか。変態だろうなって思ってる」
微妙な顔をしつつ答えると、不機嫌そうに見られた。
何だ? 不正解という事か?
「……遊馬は可愛いだろうが」
「……は?」
「いやまあいい。どうも思ってねえならはっきり拒絶しろよ」
「いや日々してるけどっ? ていうか何でお前にそんな事言われなきゃいけないんだ?」
克雪のマネージャー業に差し支えるとでも言われるのか?
座ったまま体を思いきり前屈させながら祥悟は怪訝に思った。
「俺は遊馬が好きだからな。言いたくもなるだろう」
「ああなんだ、そういう事………………は? え、な、え? は?」
「んだよその反応。うざいな」
「ウザいってだってお前、ちょ……」
「こらお前ら! 真面目にやれアホウが!」
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