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冗談じゃない、と大聖は何とか避けた。秀真はホストしているくらいだし、キスどころか大聖が想像もつかないようなありとあらゆる経験を積んでいるのかもしれないが、性的なことどころかキスさえ大聖はまだ誰ともしていない。
別に恋愛や何やらに夢見るタイプではないし、男だけに性的なことには人並みに興味はあるものの、さすがにキスくらい好きな相手とちゃんとした状況で初めてを迎えたい。
「あんたいい加減にしろよな」
「あれー? キスは駄目とか、俺ぇ、もしかしてこないら先輩に無理やり連れられたMせーかんの店ぇまた連れてこられてんの? えぇー? いやでもここ、俺ん家じゃねぇ? あー出張ぅ?」
「は?」
「あー待ってきんちょーするーけどこーふんもー」
こいつは駄目だ、と大聖はますますドン引きしながら抜け出そうと試みた。だが何を勘違いされたのか「擦ったらやべーってぇ」などと囁きかけられる。怒りを覚え「いい加減に」と言いかけながら秀真を見ると、酔っているせいか変な勘違いして興奮しているせいか、経験値がほぼ全てゼロという大聖としては何となく目のやり場に困るような様子に見えた。
「俺ぇ、やられるばっかは落ち着かねーから、舐めていー?」
「駄目に決まってんだろ」
「もープレイ始まってんかよぉ」
はは、と笑みを浮かべつつ秀真は大聖のシャツを少し乱しながら舌を這わせてきた。
「いい匂いする……」
そりゃ風呂入ってたからな……!
そう言い返したいが、慣れないことされて変な声になりそうで、大聖はむしろ手で口を押えた。
はっきり言って、自分にも引く。破廉恥なことなどしたくないし、ましてや相手は犯罪者かもと初見で怯えさえしたくらいの一見不審な男だ。だというのに下着だけの姿で少し息を荒げながら迫ってくる様子に心穏やかでいられない。
人並みに興味はあるし、不能ではないので多分これも人並み程度には自慰もするが、どうしてもしたくて堪らないといった性の悩みを抱えるほどではないはずだった。だというのに今、大聖は自分のものがそれなりに痛みを感じるほど反応していることに、何より引いている。
「頼む、やめてくれ、離せ」
「んん……はぁ……新人しゃん? 大丈夫、俺ぇ、わりと優しいし、いい子でいるからさぁ……。ちゅーはしねーし、あと本番もしねーよぉ、安心してぇ? ああそいやさぁこないだはさぁ、れな姉しゃんに新しい世界教えてもらってさー、それがこぇぇのにやべぇの何のってぇ」
酔っているくせに喋り過ぎだろ、というか怖いのにヤバいの意味がわからないんだよ……!
「新人しゃんもぉ、俺に入れるぅ?」
「……は?」
「俺ぇ、普段お客しゃんとはぁ、滅多にしねぇんだよ、これでもぉ。でもさー太客とかさぁ、あとこっそりつき合ってるとかー、ね、わかるだろぉ」
「何一つわかるわけないだろう……!」
「ぇえ? とにかくさぁ、普段ならぜってぇ俺ぇ、そーゆープレイ、しねーのにさぁ。つかしたくねぇのにさぁ、れな姉しゃんにはさぁ、マジ勝てなかったっつーかぁ」
本当に何言っているのかわからない。だというのに先ほどから馬鹿なことしか言っていない秀真の醜態を見ていると、大聖の下肢がズキズキひたすら疼いて仕方なかった。
もしかして「入れる」というのは、尻の穴のことを言っているのだろうか。いや、しかしあんな部分にいくら巨大ではないとはいえ、これまた多分人並みなサイズのものが入るとは思えない。そもそも秀真は女相手に一体何をしたというのか。
大聖がどうしたらいいのかわからず戸惑っていると、秀真が体勢を変えてきた。体重をかけないまま馬乗りのように跨った状態に、今こそこの場から這ってでも逃げるべきだというのに、笑みを浮かべながらほぼ裸で大聖をぼんやり見ている秀真から目が離せない。
「何だよぉ? あーローションー? んぁーたいせーのクソやろーがどっかやってなきゃぁ、多分ここぉ」
どうやらクソ野郎と言われたようだ。本人に向かって第三者と話しているつもりでクソ野郎と言われることにシュールな気持ちでいると、何やらごそごそしていた秀真が「これなぁ」と筒状の容器を差し出してきた。
未経験で、そういったDVDなども見ない大聖でも、それが何かくらいはさすがに知っている。顔や体に使う美容液を今出してくるはずがないことも鑑みて多分、性行為を潤滑に行うためのローションだ。
「そ、そんなものをどうしろと……」
「新人しゃんはとぼけんの上手いねぇ……れな姉しゃんは綺麗な女なのに俺のケツに塗りたくんのぉ、上手かったけどぉ」
本当にこいつは女と何しているのか。
心底呆れて引いているのに、好奇心が抑えられない。
「ぬ、塗ればいいの、か?」
「そぉ」
下着しかつけていない秀真をうつ伏せにしようとすると、本人も酔いながらそのつもりなのか大人しくされるがままだった。恐る恐る脱がせる。女性の裸を見たことないからかもしれないが、後ろから見ると秀真の尻だというのに妙に扇情的に見えた。男のわりに手入れでもしているのか、綺麗な尻をしているからかもしれない。おまけに見てしまった穴に、ますます大聖の下肢がズキズキした。そこに言われるがままローションを垂らし、言われるがまま恐る恐る指を入れる。信じられないことに、指は案外スムーズに飲み込まれた。その様子がまた目の毒というのだろうか。
その後のことは緊張と興奮と何か色々な感情がいっぱい過ぎて、大聖はあまり覚えていない。ただ、秀真相手に童貞を失ったことだけはわかっている。
別に恋愛や何やらに夢見るタイプではないし、男だけに性的なことには人並みに興味はあるものの、さすがにキスくらい好きな相手とちゃんとした状況で初めてを迎えたい。
「あんたいい加減にしろよな」
「あれー? キスは駄目とか、俺ぇ、もしかしてこないら先輩に無理やり連れられたMせーかんの店ぇまた連れてこられてんの? えぇー? いやでもここ、俺ん家じゃねぇ? あー出張ぅ?」
「は?」
「あー待ってきんちょーするーけどこーふんもー」
こいつは駄目だ、と大聖はますますドン引きしながら抜け出そうと試みた。だが何を勘違いされたのか「擦ったらやべーってぇ」などと囁きかけられる。怒りを覚え「いい加減に」と言いかけながら秀真を見ると、酔っているせいか変な勘違いして興奮しているせいか、経験値がほぼ全てゼロという大聖としては何となく目のやり場に困るような様子に見えた。
「俺ぇ、やられるばっかは落ち着かねーから、舐めていー?」
「駄目に決まってんだろ」
「もープレイ始まってんかよぉ」
はは、と笑みを浮かべつつ秀真は大聖のシャツを少し乱しながら舌を這わせてきた。
「いい匂いする……」
そりゃ風呂入ってたからな……!
そう言い返したいが、慣れないことされて変な声になりそうで、大聖はむしろ手で口を押えた。
はっきり言って、自分にも引く。破廉恥なことなどしたくないし、ましてや相手は犯罪者かもと初見で怯えさえしたくらいの一見不審な男だ。だというのに下着だけの姿で少し息を荒げながら迫ってくる様子に心穏やかでいられない。
人並みに興味はあるし、不能ではないので多分これも人並み程度には自慰もするが、どうしてもしたくて堪らないといった性の悩みを抱えるほどではないはずだった。だというのに今、大聖は自分のものがそれなりに痛みを感じるほど反応していることに、何より引いている。
「頼む、やめてくれ、離せ」
「んん……はぁ……新人しゃん? 大丈夫、俺ぇ、わりと優しいし、いい子でいるからさぁ……。ちゅーはしねーし、あと本番もしねーよぉ、安心してぇ? ああそいやさぁこないだはさぁ、れな姉しゃんに新しい世界教えてもらってさー、それがこぇぇのにやべぇの何のってぇ」
酔っているくせに喋り過ぎだろ、というか怖いのにヤバいの意味がわからないんだよ……!
「新人しゃんもぉ、俺に入れるぅ?」
「……は?」
「俺ぇ、普段お客しゃんとはぁ、滅多にしねぇんだよ、これでもぉ。でもさー太客とかさぁ、あとこっそりつき合ってるとかー、ね、わかるだろぉ」
「何一つわかるわけないだろう……!」
「ぇえ? とにかくさぁ、普段ならぜってぇ俺ぇ、そーゆープレイ、しねーのにさぁ。つかしたくねぇのにさぁ、れな姉しゃんにはさぁ、マジ勝てなかったっつーかぁ」
本当に何言っているのかわからない。だというのに先ほどから馬鹿なことしか言っていない秀真の醜態を見ていると、大聖の下肢がズキズキひたすら疼いて仕方なかった。
もしかして「入れる」というのは、尻の穴のことを言っているのだろうか。いや、しかしあんな部分にいくら巨大ではないとはいえ、これまた多分人並みなサイズのものが入るとは思えない。そもそも秀真は女相手に一体何をしたというのか。
大聖がどうしたらいいのかわからず戸惑っていると、秀真が体勢を変えてきた。体重をかけないまま馬乗りのように跨った状態に、今こそこの場から這ってでも逃げるべきだというのに、笑みを浮かべながらほぼ裸で大聖をぼんやり見ている秀真から目が離せない。
「何だよぉ? あーローションー? んぁーたいせーのクソやろーがどっかやってなきゃぁ、多分ここぉ」
どうやらクソ野郎と言われたようだ。本人に向かって第三者と話しているつもりでクソ野郎と言われることにシュールな気持ちでいると、何やらごそごそしていた秀真が「これなぁ」と筒状の容器を差し出してきた。
未経験で、そういったDVDなども見ない大聖でも、それが何かくらいはさすがに知っている。顔や体に使う美容液を今出してくるはずがないことも鑑みて多分、性行為を潤滑に行うためのローションだ。
「そ、そんなものをどうしろと……」
「新人しゃんはとぼけんの上手いねぇ……れな姉しゃんは綺麗な女なのに俺のケツに塗りたくんのぉ、上手かったけどぉ」
本当にこいつは女と何しているのか。
心底呆れて引いているのに、好奇心が抑えられない。
「ぬ、塗ればいいの、か?」
「そぉ」
下着しかつけていない秀真をうつ伏せにしようとすると、本人も酔いながらそのつもりなのか大人しくされるがままだった。恐る恐る脱がせる。女性の裸を見たことないからかもしれないが、後ろから見ると秀真の尻だというのに妙に扇情的に見えた。男のわりに手入れでもしているのか、綺麗な尻をしているからかもしれない。おまけに見てしまった穴に、ますます大聖の下肢がズキズキした。そこに言われるがままローションを垂らし、言われるがまま恐る恐る指を入れる。信じられないことに、指は案外スムーズに飲み込まれた。その様子がまた目の毒というのだろうか。
その後のことは緊張と興奮と何か色々な感情がいっぱい過ぎて、大聖はあまり覚えていない。ただ、秀真相手に童貞を失ったことだけはわかっている。
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