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15話 ※
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繋がりたくて堪らなかった。
「っぁ、っく」
激しい苦しさと痛みを覚えつつ、蓮は「やめないで」と柾に懇願した。
決して痛いことが好きな訳ではない。いつも腕を傷つける時も吹き出てくる血を思って興奮し震える他に、痛みを思って少し震えている。それでも欲しくて仕方がなかった。
そして好きな人を受け入れるという行為がこんなに切なくて嬉しくて堪らないものなのだと初めて知った。
柾は優しいのだろうと改めて思う。蓮を見て、中に入ったまま途中で動きを止めてきた。自分も性行為を知っているだけにそれがさほど容易いことでないのはわかる。
「あき、お……、動いて、くれ」
「でも」
「いい。お願い……」
さすがにこれ以上言うのは、言いたくないというより羞恥心を覚える。くっと唇を噛みしめると、柾が「痛いのに、ごめんね……」と呟いた後に律動を再開してきた。
自分の中をみちみちと占めるどっしりとした質感が奥を突き上げてくるのがものすごく感じられる。内臓を引き裂かれそうな程痛い。奥に入ったものが引いていく時も中が引き攣れ剥がれてしまうのではないかとさえ思える。それなのにもっとして欲しくて堪らない。
痛みを堪えた醜い顔を見られたくなくて腕で隠しながら唇を噛みしめる。
「蓮、蓮……、口、開けて……。噛んじゃダメだよ、ほら、開けて……」
ゆっくり腰を動かしながら、ふと柾が自分の指で蓮の口をこじ開けてきた。
「ん、ぅっ」
思わずその指を噛んでしまうも、ひるむことなくさらに口の中に入ってくる。そのまま指で口内を弄られた。口の中に指を入れられたことはなかったが、どこか気持ちがよくてつい夢中になってその指をしゃぶった。そうすることで気づけば普通に呼吸していた。
ふと、あまり浴衣が乱れていない柾に気づく。自分の浴衣は乱れすぎて腰の辺りで引っかかっているだけだというのにと思い、蓮はそれを乱したくなった。ぐっと手を伸ばし、柾の浴衣の中にその手を這わせた。その際に、腕で必死に先ほどまで顔を隠していたからか、ちゃんと巻けていなかったからか包帯がスルリと解けた。
あ、っと思い手を引く前に柾が蓮の腕をつかんでくる。
「退けないで。蓮の腕……細いのにちゃんと筋肉があって、白くて……そして赤くて……エロいよ……」
柾は切なげに言いながら、実際蓮の腕に舌を這わせてきた。沢山ある傷に舌が触れる。
「ぁ、あ……、っ」
柾の優しさに胸が熱くなる。と同時に赤い筋に這わせられる舌に、蓮は異常な程興奮した。実際は塞がっている傷なのだが、そこから溢れ出る血が浮かぶ。その血を舐めとる柾を思うと耐えがたい程体が震えた。触れられた時は先を濡らし硬くなっていた蓮の昂りは、柾のものが入ってきたことによる痛みで少し柔らかくなっていた。だがそれが一気にそれこそ痛い程硬く膨れ上がる。
「だ、だめ、っだめ、だ……っ、だめ……っ」
自分でも何に駄目だと言っているのかわからなかった。
傷を舐めること?
それだけで血を連想してしまう自分?
連想した内容に興奮すること?
それで今にも達しそうになっている自分?
――全部だ。
「おねが、やめ……、っぁ、あっ」
駄目だ、やめてと言いながらも興奮が収まらず、蓮は気づけば痛い筈だというのに自ら腰を動かしていた。これでは柾との行為関係なく達してしまうようなものじゃないかと、興奮したままも泣きそうな気分になる。
「蓮……、蓮……」
だが優しい柾の声を聞いてハッとなる。情けない程に興奮している蓮に対して相変わらず優しく触れ、傷つかないようにと気遣うように動いてくる柾にそして胸の奥が激しく疼いた。腕から離れた柾をぎゅっと抱きしめる。
好きだ。
改めて思った。
もうなんでこんなに好きになっていたかすらわからないけれども、好きだ。
何かある毎に好きになる。今は優しくてそして蓮を満たしてくる柾に身も心も疼いている。
大丈夫、きっと大丈夫だと蓮は思う。
「っ、秋、尾……っ」
気づけば痛みすら忘れていた。柾が昂りを扱いてくるのもあって、自分の中の奥で柾が弾けるのを感じながら蓮も大きく体を震わせた。
蓮を綺麗にしてくれた後、柾はすぐにシャワーを浴びることもせずにうとうととした蓮が意識を手放すまでずっとそばで髪を撫でてくれていた。
花火を一緒に見たこの日以来、二人の関係はより恋人のようになった気が蓮はしている。それまでは付き合うことになったと言っても知り合ってから付き合うまでと何ら変わらなかった。柾に「付き合おう」と言われる前も後も同じように学校などで毎日顔を合わせていたし、タイミングが合えば飲みに行ったりしていた。
だが花火の日に初めてキスをし、その上一気に最後まで進んだからか今は二人で居る時の空気まで変わったような気がする。柾が優しいのは初めて知り合った時から変わらないが、そこに甘さが加わったような気がする。
同情で付き合ってくれているだろうにと思うと、たまに心底、心苦しくなる。行為中に柾が「好きだよ……」と囁いてくれることはあるが、睦言の一種だと思っている。
それでも、もちろん嬉しくて堪らなくはある。
「お前、最近楽しそうに笑うな」
アルバイト中、智也がふと言ってきた。
「え? そ、そう?」
「ああ。いいことだけどなんかあったのか?」
「……べ、別に」
蓮はふい、と顔を逸らした。だが色の白いは七難隠すというのは女性にだけ当てはまるのだろう。赤くなっているのがすぐにばれてしまい、蓮は自分の肌の色を呪う。
「絶対いいこと、あったんだろー! 俺にも教えろよ」
「煩いな。ちゃんと仕事しろよ」
「バイトに言われる筋合いねぇよ。ああでも」
何だとばかりに蓮が見ると、ふっと笑った後に智也が付け加えるように言ってきた。
「悩み事も増えてんのか? 楽しそうな反面、たまにお前妙に辛そうな時もあんぞ」
「……」
咄嗟に言われ、蓮は黙ったまま顔をまた少し逸らす。
いくら親の代わりのような叔父だからとはいえ、さすがに性癖までは言ったことはない。智也は昔から蓮を見てきているので親のことはもちろん知っているし、あまり社交的ではない蓮を心配してくれている相手だ。それでも言えないし、自分の性癖はきっと多分誰にも言えない。
「……まあ色々あんだろうが、なんかあれば言えよ?」
黙った蓮にため息をつき、智也は蓮の頭をくしゃりと撫でた後にコーヒーを淹れだした。
「うん、ありがとう智也さん」
「こんにちはー」
その時、いつの間に店にやってきていたのか柾が二人に近づいてきた。
「やあ、いらっしゃい秋尾くん」
「コーヒー、飲みにきました」
ニッコリ微笑む智也に柾もニコニコしながらカウンターに座る。
「……テーブル片づけてくる」
別に感じる必要もないのに変にそんな笑顔に威圧感すら感じ、そしてなんとなく気まずくて、客が去った後のテーブルをとりあえず片づけに行こうとしたら「蓮」と柾に呼ばれた。
「なに」
「今日、何時まで?」
「……七時」
「じゃあ後一時間か。俺、それまでコーヒー飲んでるから、一緒に帰ろうよ」
「……家、全然違うだろ」
なんて答えたらいいか分からなくて顔を逸らしつつテーブルに向かうと「えー別にいいだろ」と楽しげな柾の声が聞こえてきた。
別に気まずくなる理由などないのに、と片づけながら思う。多分智也に言われたことのせいだろうなとだがなんとなく分かっていた。
辛そう。
顔に出しているつもりはなかったけれども、出ていたのか。
「っぁ、っく」
激しい苦しさと痛みを覚えつつ、蓮は「やめないで」と柾に懇願した。
決して痛いことが好きな訳ではない。いつも腕を傷つける時も吹き出てくる血を思って興奮し震える他に、痛みを思って少し震えている。それでも欲しくて仕方がなかった。
そして好きな人を受け入れるという行為がこんなに切なくて嬉しくて堪らないものなのだと初めて知った。
柾は優しいのだろうと改めて思う。蓮を見て、中に入ったまま途中で動きを止めてきた。自分も性行為を知っているだけにそれがさほど容易いことでないのはわかる。
「あき、お……、動いて、くれ」
「でも」
「いい。お願い……」
さすがにこれ以上言うのは、言いたくないというより羞恥心を覚える。くっと唇を噛みしめると、柾が「痛いのに、ごめんね……」と呟いた後に律動を再開してきた。
自分の中をみちみちと占めるどっしりとした質感が奥を突き上げてくるのがものすごく感じられる。内臓を引き裂かれそうな程痛い。奥に入ったものが引いていく時も中が引き攣れ剥がれてしまうのではないかとさえ思える。それなのにもっとして欲しくて堪らない。
痛みを堪えた醜い顔を見られたくなくて腕で隠しながら唇を噛みしめる。
「蓮、蓮……、口、開けて……。噛んじゃダメだよ、ほら、開けて……」
ゆっくり腰を動かしながら、ふと柾が自分の指で蓮の口をこじ開けてきた。
「ん、ぅっ」
思わずその指を噛んでしまうも、ひるむことなくさらに口の中に入ってくる。そのまま指で口内を弄られた。口の中に指を入れられたことはなかったが、どこか気持ちがよくてつい夢中になってその指をしゃぶった。そうすることで気づけば普通に呼吸していた。
ふと、あまり浴衣が乱れていない柾に気づく。自分の浴衣は乱れすぎて腰の辺りで引っかかっているだけだというのにと思い、蓮はそれを乱したくなった。ぐっと手を伸ばし、柾の浴衣の中にその手を這わせた。その際に、腕で必死に先ほどまで顔を隠していたからか、ちゃんと巻けていなかったからか包帯がスルリと解けた。
あ、っと思い手を引く前に柾が蓮の腕をつかんでくる。
「退けないで。蓮の腕……細いのにちゃんと筋肉があって、白くて……そして赤くて……エロいよ……」
柾は切なげに言いながら、実際蓮の腕に舌を這わせてきた。沢山ある傷に舌が触れる。
「ぁ、あ……、っ」
柾の優しさに胸が熱くなる。と同時に赤い筋に這わせられる舌に、蓮は異常な程興奮した。実際は塞がっている傷なのだが、そこから溢れ出る血が浮かぶ。その血を舐めとる柾を思うと耐えがたい程体が震えた。触れられた時は先を濡らし硬くなっていた蓮の昂りは、柾のものが入ってきたことによる痛みで少し柔らかくなっていた。だがそれが一気にそれこそ痛い程硬く膨れ上がる。
「だ、だめ、っだめ、だ……っ、だめ……っ」
自分でも何に駄目だと言っているのかわからなかった。
傷を舐めること?
それだけで血を連想してしまう自分?
連想した内容に興奮すること?
それで今にも達しそうになっている自分?
――全部だ。
「おねが、やめ……、っぁ、あっ」
駄目だ、やめてと言いながらも興奮が収まらず、蓮は気づけば痛い筈だというのに自ら腰を動かしていた。これでは柾との行為関係なく達してしまうようなものじゃないかと、興奮したままも泣きそうな気分になる。
「蓮……、蓮……」
だが優しい柾の声を聞いてハッとなる。情けない程に興奮している蓮に対して相変わらず優しく触れ、傷つかないようにと気遣うように動いてくる柾にそして胸の奥が激しく疼いた。腕から離れた柾をぎゅっと抱きしめる。
好きだ。
改めて思った。
もうなんでこんなに好きになっていたかすらわからないけれども、好きだ。
何かある毎に好きになる。今は優しくてそして蓮を満たしてくる柾に身も心も疼いている。
大丈夫、きっと大丈夫だと蓮は思う。
「っ、秋、尾……っ」
気づけば痛みすら忘れていた。柾が昂りを扱いてくるのもあって、自分の中の奥で柾が弾けるのを感じながら蓮も大きく体を震わせた。
蓮を綺麗にしてくれた後、柾はすぐにシャワーを浴びることもせずにうとうととした蓮が意識を手放すまでずっとそばで髪を撫でてくれていた。
花火を一緒に見たこの日以来、二人の関係はより恋人のようになった気が蓮はしている。それまでは付き合うことになったと言っても知り合ってから付き合うまでと何ら変わらなかった。柾に「付き合おう」と言われる前も後も同じように学校などで毎日顔を合わせていたし、タイミングが合えば飲みに行ったりしていた。
だが花火の日に初めてキスをし、その上一気に最後まで進んだからか今は二人で居る時の空気まで変わったような気がする。柾が優しいのは初めて知り合った時から変わらないが、そこに甘さが加わったような気がする。
同情で付き合ってくれているだろうにと思うと、たまに心底、心苦しくなる。行為中に柾が「好きだよ……」と囁いてくれることはあるが、睦言の一種だと思っている。
それでも、もちろん嬉しくて堪らなくはある。
「お前、最近楽しそうに笑うな」
アルバイト中、智也がふと言ってきた。
「え? そ、そう?」
「ああ。いいことだけどなんかあったのか?」
「……べ、別に」
蓮はふい、と顔を逸らした。だが色の白いは七難隠すというのは女性にだけ当てはまるのだろう。赤くなっているのがすぐにばれてしまい、蓮は自分の肌の色を呪う。
「絶対いいこと、あったんだろー! 俺にも教えろよ」
「煩いな。ちゃんと仕事しろよ」
「バイトに言われる筋合いねぇよ。ああでも」
何だとばかりに蓮が見ると、ふっと笑った後に智也が付け加えるように言ってきた。
「悩み事も増えてんのか? 楽しそうな反面、たまにお前妙に辛そうな時もあんぞ」
「……」
咄嗟に言われ、蓮は黙ったまま顔をまた少し逸らす。
いくら親の代わりのような叔父だからとはいえ、さすがに性癖までは言ったことはない。智也は昔から蓮を見てきているので親のことはもちろん知っているし、あまり社交的ではない蓮を心配してくれている相手だ。それでも言えないし、自分の性癖はきっと多分誰にも言えない。
「……まあ色々あんだろうが、なんかあれば言えよ?」
黙った蓮にため息をつき、智也は蓮の頭をくしゃりと撫でた後にコーヒーを淹れだした。
「うん、ありがとう智也さん」
「こんにちはー」
その時、いつの間に店にやってきていたのか柾が二人に近づいてきた。
「やあ、いらっしゃい秋尾くん」
「コーヒー、飲みにきました」
ニッコリ微笑む智也に柾もニコニコしながらカウンターに座る。
「……テーブル片づけてくる」
別に感じる必要もないのに変にそんな笑顔に威圧感すら感じ、そしてなんとなく気まずくて、客が去った後のテーブルをとりあえず片づけに行こうとしたら「蓮」と柾に呼ばれた。
「なに」
「今日、何時まで?」
「……七時」
「じゃあ後一時間か。俺、それまでコーヒー飲んでるから、一緒に帰ろうよ」
「……家、全然違うだろ」
なんて答えたらいいか分からなくて顔を逸らしつつテーブルに向かうと「えー別にいいだろ」と楽しげな柾の声が聞こえてきた。
別に気まずくなる理由などないのに、と片づけながら思う。多分智也に言われたことのせいだろうなとだがなんとなく分かっていた。
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