ケーキと幼馴染

Guidepost

文字の大きさ
上 下
19 / 20

19話 ※

しおりを挟む
 確かに何本かの指で解されてた筈だし、何度も弄られていたからまさかこんなに痛いとは思っていなかった。
 稀斗は何とかちゃんと息を整えようとする。今は一旦ある程度挿ったのか、祐真のものは同じところに留まったままだった。挿ってきた時あたりが一番きつかったかもしれない。自分にもあるものだから何となくわかるが、多分カリの部分が苦しかったのじゃないだろうかなどと、どうでもいいことを考える。そうして気をそらそうとするのだが、やはり苦しい。

「……きぃ……やっぱり、痛い? 苦しい? ご、ごめんね、俺、抜いたほうが、いいよ、ね……」

ある程度挿れて多分慣れるまでジッとしてようと思ったのだろうが、祐真は祐真で苦しそうだった。もちろん稀斗の苦痛とは違う意味で苦しいのだろうが、それでも堪えてる感じが伝わって来る。

「……いい。ここまでしといて、何、それ。最後まで、やれば」

 力のない声しか出なかったが囁くように言うと祐真が後ろから「っきぃ!」と抱きついてきた。その際に祐真のものが中で動き、稀斗はまた歯を食いしばった。

「あ、ご、ごめ……」
「い、いから……動、け」
「……っ」

 ここまでくればもういっそ最後まで、それもなるべく早めにしてくれたほうがありがたいという気持ちが伝わったのか、祐真が動き出す。

「きぃ、きぃ……、好き」
「っふ、っく……、ぅう、んっ」

 祐真のものが貫くように挿ってきてはずるりと音が聞こえそうな程抜けていくのがわかる。熱されすぎて感覚がおかしくなっているのかというほどに、痛みが今もなお感じるのに祐真のものがどう動いているのかが物凄く伝わってきた。
 キスされて体に触れられて、と流されていたのは祐真に弱いからという他に快楽に流されているせいだと思っていたが、今これほどに苦痛だというのに、稀斗はやはりひたすらされるがままだ。

「ぁ、っく……」

 次第に自分の後ろがどうなっているのかもだんだん麻痺してきた。もちろん痛みは残っているのだが何がどうなっているのかわからなくなってきている。祐真のものも、ただそこにあるという圧倒的な質量しかもうわからない。
 とはいえ、ただひたすら苦痛というわけでもなかった。言い様のない感覚が微かにある。
 稀斗はそのか細い糸のような感覚になんとかすがりつこうとしていた。

「っん、ぅ、うっ」
「きぃ……」

 祐真が少し動きを緩やかにしながら囁いてきた。そして稀斗のものに手が伸びてくる。

「……ぁ」

 思わず吐息が漏れた。

「好き。どうしようもなく好き」

 絞り出すように囁きながら、祐真の手が後ろから稀斗のものを扱いてくる。
 先程変な風に何度も達したものの、まだ一度も射精していなかった稀斗のそれは一旦小さくなっていたが瞬く間にまた大きく、硬くなった。後ろは相変わらず辛いはずなのに、と稀斗は違う意味で涙目になりそうだった。

「あ、あっ、ああ」
「きぃ、楽? ちょっとは気持ちよくなれる? きぃ……好きだよ、きぃ」

 祐真は前を扱きながら少し動きを早めてきた。

「ひ、ぁ……っ」

 やはりきついことはきついのだが、先程必死になってすがりつこうとしていたか細い糸が少し明確になった気がする。

「あ……ぁ、ぁ」

 苦痛なほどの祐真のものなのに、もっとちゃんと捉えたくて仕方がなくなってくる。何かまた表現しがたいものが腹の辺りに渦巻いてる気がした。だがそれが何かわかる前にぬるりとしていた亀頭を何度も扱かれ、そちらに気が行った。

「ん、ぁ……あっ」

 弱い部分を完全に知られており、苦痛しかなかったはずの稀斗だが呆気なく熱を放出した。

「っき、ぃ……っ」

 その途端、祐真が切なげな声をあげて思い切り稀斗の中を突き上げてきた。

「……ぁ」

 一瞬、稀斗の意識が飛びそうになった。だが何とか手を握りしめる。ずるりと祐真のものが抜けたのを、どこか遠い意識が感じとっていた。
 放心状態でしばらくぼんやりしていると祐真が色々と世話を焼いてきていた。

「きぃ、大丈夫……?」

 いつの間に持ってきていたのかわざわざ濡れタオルで稀斗の体を拭きながら、祐真はおずおずといった様子で聞いてきた。

「あちこち痛い」
「そ、そうだよね、ごめんね……」

 ぼそりと答えると目を潤ませている。稀斗はため息をついた。

「……頭出せ」

 呟くと祐真は恐る恐るといった風に横になっている稀斗に差し出してきた。

 殴られると思ったんだな。

 稀斗は手を伸ばし祐真の頭を思い切りつかんだ後、撫でた。

「き、ぃ……?」
「んな謝んな。何か俺が無理やりされたみたいだろ……」
「だ、だって」

 祐真がぎゅっと抱きしめてくる。

「重い」

 のしかかってくる祐真をずいっと力なく押し込もうとしながらも、稀斗はぶっきらぼうに呟きつつ考えていた。
 祐真と本当に最後までしてしまった。もう後戻りが完全にできなくなった気がする。それに快楽に流されているのかもと思っていたが、そうではないともわかった。あんなに苦痛でさえあったというのに、やはり自分はどこか「まあいいか」と思っている。これが「そういうこと」でなければ何だというのだ。

「ゆう」

 名前を呼びかけると祐真が心配そうに稀斗を見てきた。稀斗は相変わらず力ないまま呟いた。

「俺、もしかしたらお前のこと……好きかもしれない」

 祐真は目を見開いたまま固まる。

「悪い。かもしれない、としか言えねえ。でも多分そうじゃないだろうか……」

 言いかけている途中でだが、稀斗は続けられなくなった。

「きぃ……、きぃー……好き、好き……ありがと……嬉し……」

 固まっていたはずの、自分よりもずっと大きくて恰好もいいはずの祐真が思いきり泣きじゃくりながら稀斗を抱きしめてきたからだ。

「……ばかやろ……。でっかい図体して相変わらず、すぐ泣いてんじゃねえ……」

 突き離すように言いながらも、稀斗はひたすらぎゅっと抱きしめところどころで嗚咽をあげてくる祐真の背中にそっと手を回した。

「ほんと、お前は……」

 ぽんぽん、とゆるく背中を叩くと祐真が「かもしれなくても、いい。きぃ、好きだよ、俺がきぃの分まで大好きだから」とくぐもった声で切なげに漏らす。

 ああ、俺、やっぱこいつのこと、どうしようもねえわ。

 稀斗はそっとため息をつきながら、回した腕の力を少し強めた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

不良兄と秀才弟

Guidepost
BL
* この物語は近親愛表現がメインとなります。 苦手な方はご注意ください。 相賀 総司(あいか そうじ)の容姿は決して悪くない。 ……が、派手な見た目とろくでもない成績が原因なのか、モテた記憶もない。 総司には二卵性双生児の弟、針谷 幾斗(はりや いくと)がいる。 名字が違うのは二人の両親が既に離婚しているからで二人も別々に住んでいる。 幾斗は総司と比べものにならないほど頭も良く、明らかに女子にモテる。 そんな幾斗に対して総司は基本喧嘩腰で、幾斗も総司に呆れてはいるようだったが…… (R指定の話には話数の後に※印)

そんな和菓子にキャラメリゼ

まりの
BL
清彦は和菓子職人一筋のバツイチ中年。歳の離れた弟に連れられて行った洋菓子店で美貌の天才パテシェから謎の言葉をかけられて始まるおかしな関係。いろんな意味で「甘い」お話。 ※自サイトからの移植です

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる

ひきこ
BL
後天性Dom 暴走系年下ワンコ × 後天性Sub 開き直り系医師。 旧題「DomとSubにはふいにおちる」 医師の真崎は、数年前に第二性が発覚したSubだった。 Domとのプレイがなければ体調が悪くなるのはわかっているが、三十路も過ぎた可愛げのない男のSubにそんな相手が簡単に見つかるはずもなく煙草の本数だけが増えていく。 そんなある日、担当患者の青年が後天的なDomだと判明。 他人事とは思えず同情しつつも、無自覚に放たれるグレアはあまりにも眩しすぎた。だから淡々と事実を説明して専門科に引き継げば仕事は終わりのはずだった。 ──それなのに、また俺に診てほしいって? ああもう、無闇に圧をかけるんじゃない! 結局放っておけなくて世話を焼いてしまううち、このでかい男が可愛く見えてくるし体調も悪くないから困ってしまう。 気づけば外堀まで埋められて、戸惑いながらも一途な彼に絆され愛おしい存在になっていく話。 表紙イラスト きすけ様(X: @zb_qrq )ありがとうございます!

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

崩れる天球

辻河
BL
・高校時代から片思いし続けていた友人に実はずっと執着されていて、酔い潰れた拍子に分からせセックスされる話 ・長年片思いして来た攻め(星野涼/ほしのりょう)×攻めのことは好きだが引け目を感じている受け(三上聡/みかみさとる) ・♡喘ぎ、濁点喘ぎ、淫語等の要素が含まれます。

理香は俺のカノジョじゃねえ

中屋沙鳥
BL
篠原亮は料理が得意な高校3年生。受験生なのに卒業後に兄の周と結婚する予定の遠山理香に料理を教えてやらなければならなくなった。弁当を作ってやったり一緒に帰ったり…理香が18歳になるまではなぜか兄のカノジョだということはみんなに内緒にしなければならない。そのため友だちでイケメンの櫻井和樹やチャラ男の大宮司から亮が理香と付き合ってるんじゃないかと疑われてしまうことに。そうこうしているうちに和樹の様子がおかしくなって?口の悪い高校生男子の学生ライフ/男女CPあります。

【完結】遍く、歪んだ花たちに。

古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。 和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。 「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」 No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。

処理中です...