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7話
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翌日、貴はいつものように実央よりも朝早くに家を出て行った。いつものように見送りしてから、実央はベッドへ戻り、パタンと倒れこむかのごとく横になる。ふかふかした布団に顔を埋めていると貴の匂いを感じてさらに顔を擦りつけた。しばらく貴の存在をそこで堪能した後で思い切り鼻で息を吸い込んで口から吐く。
……昨日は俺、すげぇ気持ちよかった……。
しみじみ思った後に口元を少し歪めて笑う。
貴くんのやたら健康的なマッサージでな。
昨日は眠さを堪え、思う存分尻の穴を弄ってもらうつもりだった。万が一、貴が用意していない可能性も考慮し、あらかじめローションだって用意していた。もちろん店で直接買うなんて実央には絶対できないので、そこは通販だ。通販様々だ。調子に乗って同じサイトにある見た目もエッチな尻用の玩具も買いかけたが、そこは何とか思い留まった。そこで思い留まれた自分はグッジョブだと実央は思う。どう考えても届いた途端、大いに後悔しかしない代物だった。
何はともあれ無事ローションだって準備していたのだが結局それが登場する余地などなかった。
「息吸って」
「は?」
「ほら、みぃ、早く」
ベッドまで運んでくれた貴は実央を転がすとそんなことを言ってきた。おまけに怪訝な顔をしていると「早く」とくすぐってくる。
「は、っやめ、ぁ、んんんっ、ちょ、も、あ、ぁ、ぁ、あははははっ」
撫でられたりと触れられるのはとてつもなく気持ちがいいし好きだが、くすぐられるとやはり弱い。耐えられなくて喘ぎ声ならぬ笑い声を思い切り上げていると「ほら、今度は吐いて」と言われた。確かに笑った時に息を吸い込んだけど……! などと思いながら実央は仕方なく言われた通りに息を吐く。
「いいね。はい、もう一回」
何をさせられているのだろうと思いながらも実央は吸って吐いてを繰り返した。特に吐くのは二、三回などに分けるように言われてその通りにする。
「うん、いいね。とりあえずお風呂に入って温めてはいたけど、もう一度、今度は蒸しタオルをお尻にあてようか」
「貴くん……俺、何させられてんの? ストレッチ? エステ?」
「違うよ、お尻、広げてく練習」
どこが? と大いに問いかけたいが、実央は大人しくされるがままでいた。ぺろりとお尻をむき出しにされた時は内心ちょっと興奮したが、そこにレンチンする際にラップを巻いて作られた蒸しタオルをあてられると、正直寛いだし普通に気持ちよかった。
「じゃあ次は準備体操をしようね」
「あの、俺マジで今何されて何する感じなの。エステじゃねえならヨガ?」
「まさか。お尻を広げてく練習だよ」
どこが? とそろそろ口に出して言ってもいいような気がしてくる。
「はい、ぎゅっとお尻締めて、はい、緩めるー。もう一回。いいね。もう一回しよう、よし、あともう一回。えらいね、みぃは」
えらいのか?
「じゃあ次にマッサージをしてくね」
ようやくか、と実央は貴の言葉に胸を躍らせかけた。だがうつ伏せにされ、貴がしてきたのは尻の外側周りから優しくさすることだった。もちろん、とても気持ちいい。ああ、尻って凝るんだなと思わされる勢いでとても気持ちいい。だがこれはマッサージ違いではないだろうか。おまけにそれが終わると今度は緩く握った手で尻全体を優しく叩いてきた。これがまた気持ちいい。叩くだけではなく、くるくると優しく押しながら撫でてもくる。はっきり言ってこのままずっと委ねたいくらいには気持ちいい。
だがそれはそれ、これはこれだ。実央が求めているのは尻の穴のマッサージであって、尻のエステでも凝りを解すマッサージでもない。やはり抗議すべきかと実央が体をひねりかけた時に、貴の手が実央の会陰部辺りに触れた。
「ん、ぁ」
これは違う意味というか求めている意味で、きた。
そう、そうなんだって貴くん! まじ俺、そっちの意味の気持ちいいことやりつつ尻の穴を、ね──
その手が会陰部から今度は足の付け根辺りへ伸びていく。これはこれでまた気持ちがいい。体が少しゾクゾクとして、腰をもぞもぞと動かしたくなる。
「っ貴、くん……」
「よし。いい感じだね。じゃあ今日はここまでにしようか」
「……え?」
とろんとしかけた顔を、実央は一気にポカンとさせた。
「しばらくこれ、続けようね」
「そ、れはそれで気持ちいいし俺的には嬉しい、けどあの! でも俺がして欲しかったのは……」
「わかってるよ、みぃ」
ニッコリと見惚れるような笑みを浮かべながら貴は実央に甘く優しいキスをしてくる。
「肛門がね、一番狭い門だから。そこさえ突破したら直腸内って案外広くなってるみたいなんだ」
「は、ぁ……」
ポカンとし過ぎて思わず他人行儀な相槌を打ってしまう。
「だからどんなに太いものでもそこ通ってしまえばそんなに苦しくない、はず。要はカリの部分ね」
カリ……貴くんのカリ……。
美形の口から洩れた卑猥とまで言えない言葉にすら興奮を覚えてしまい、実央は少し自分に微妙になる。
「で、肛門も筋肉あるからね、肛門括約筋っていう。それをまずは解していこうかなって。ほら、体の硬い人もストレッチなどで柔らかくなるだろう」
ああ、なるほどそうか!
なんてかわいく思えるはずもなく。とはいえ「みぃの体だから本当に大事にしたいんだ」などと言われたら「四の五の言わずその指まず突っ込んでこい」などと言い返せるわけなかった。なのでとりあえず「貴くん知ってるだろけど俺、空手やってたから体、めっちゃ柔らかいよ……」とだけ、せめて反撃しておいた。
そんな昨夜のことを思い返した後のため息だが、実央はとりあえずついでに深呼吸を繰り返した後に尻をぎゅっと締めたりゆるめたりしてみた。
……昨日は俺、すげぇ気持ちよかった……。
しみじみ思った後に口元を少し歪めて笑う。
貴くんのやたら健康的なマッサージでな。
昨日は眠さを堪え、思う存分尻の穴を弄ってもらうつもりだった。万が一、貴が用意していない可能性も考慮し、あらかじめローションだって用意していた。もちろん店で直接買うなんて実央には絶対できないので、そこは通販だ。通販様々だ。調子に乗って同じサイトにある見た目もエッチな尻用の玩具も買いかけたが、そこは何とか思い留まった。そこで思い留まれた自分はグッジョブだと実央は思う。どう考えても届いた途端、大いに後悔しかしない代物だった。
何はともあれ無事ローションだって準備していたのだが結局それが登場する余地などなかった。
「息吸って」
「は?」
「ほら、みぃ、早く」
ベッドまで運んでくれた貴は実央を転がすとそんなことを言ってきた。おまけに怪訝な顔をしていると「早く」とくすぐってくる。
「は、っやめ、ぁ、んんんっ、ちょ、も、あ、ぁ、ぁ、あははははっ」
撫でられたりと触れられるのはとてつもなく気持ちがいいし好きだが、くすぐられるとやはり弱い。耐えられなくて喘ぎ声ならぬ笑い声を思い切り上げていると「ほら、今度は吐いて」と言われた。確かに笑った時に息を吸い込んだけど……! などと思いながら実央は仕方なく言われた通りに息を吐く。
「いいね。はい、もう一回」
何をさせられているのだろうと思いながらも実央は吸って吐いてを繰り返した。特に吐くのは二、三回などに分けるように言われてその通りにする。
「うん、いいね。とりあえずお風呂に入って温めてはいたけど、もう一度、今度は蒸しタオルをお尻にあてようか」
「貴くん……俺、何させられてんの? ストレッチ? エステ?」
「違うよ、お尻、広げてく練習」
どこが? と大いに問いかけたいが、実央は大人しくされるがままでいた。ぺろりとお尻をむき出しにされた時は内心ちょっと興奮したが、そこにレンチンする際にラップを巻いて作られた蒸しタオルをあてられると、正直寛いだし普通に気持ちよかった。
「じゃあ次は準備体操をしようね」
「あの、俺マジで今何されて何する感じなの。エステじゃねえならヨガ?」
「まさか。お尻を広げてく練習だよ」
どこが? とそろそろ口に出して言ってもいいような気がしてくる。
「はい、ぎゅっとお尻締めて、はい、緩めるー。もう一回。いいね。もう一回しよう、よし、あともう一回。えらいね、みぃは」
えらいのか?
「じゃあ次にマッサージをしてくね」
ようやくか、と実央は貴の言葉に胸を躍らせかけた。だがうつ伏せにされ、貴がしてきたのは尻の外側周りから優しくさすることだった。もちろん、とても気持ちいい。ああ、尻って凝るんだなと思わされる勢いでとても気持ちいい。だがこれはマッサージ違いではないだろうか。おまけにそれが終わると今度は緩く握った手で尻全体を優しく叩いてきた。これがまた気持ちいい。叩くだけではなく、くるくると優しく押しながら撫でてもくる。はっきり言ってこのままずっと委ねたいくらいには気持ちいい。
だがそれはそれ、これはこれだ。実央が求めているのは尻の穴のマッサージであって、尻のエステでも凝りを解すマッサージでもない。やはり抗議すべきかと実央が体をひねりかけた時に、貴の手が実央の会陰部辺りに触れた。
「ん、ぁ」
これは違う意味というか求めている意味で、きた。
そう、そうなんだって貴くん! まじ俺、そっちの意味の気持ちいいことやりつつ尻の穴を、ね──
その手が会陰部から今度は足の付け根辺りへ伸びていく。これはこれでまた気持ちがいい。体が少しゾクゾクとして、腰をもぞもぞと動かしたくなる。
「っ貴、くん……」
「よし。いい感じだね。じゃあ今日はここまでにしようか」
「……え?」
とろんとしかけた顔を、実央は一気にポカンとさせた。
「しばらくこれ、続けようね」
「そ、れはそれで気持ちいいし俺的には嬉しい、けどあの! でも俺がして欲しかったのは……」
「わかってるよ、みぃ」
ニッコリと見惚れるような笑みを浮かべながら貴は実央に甘く優しいキスをしてくる。
「肛門がね、一番狭い門だから。そこさえ突破したら直腸内って案外広くなってるみたいなんだ」
「は、ぁ……」
ポカンとし過ぎて思わず他人行儀な相槌を打ってしまう。
「だからどんなに太いものでもそこ通ってしまえばそんなに苦しくない、はず。要はカリの部分ね」
カリ……貴くんのカリ……。
美形の口から洩れた卑猥とまで言えない言葉にすら興奮を覚えてしまい、実央は少し自分に微妙になる。
「で、肛門も筋肉あるからね、肛門括約筋っていう。それをまずは解していこうかなって。ほら、体の硬い人もストレッチなどで柔らかくなるだろう」
ああ、なるほどそうか!
なんてかわいく思えるはずもなく。とはいえ「みぃの体だから本当に大事にしたいんだ」などと言われたら「四の五の言わずその指まず突っ込んでこい」などと言い返せるわけなかった。なのでとりあえず「貴くん知ってるだろけど俺、空手やってたから体、めっちゃ柔らかいよ……」とだけ、せめて反撃しておいた。
そんな昨夜のことを思い返した後のため息だが、実央はとりあえずついでに深呼吸を繰り返した後に尻をぎゅっと締めたりゆるめたりしてみた。
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