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24話 ※
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ただ一緒にいたかっただけというのも本当だろう。少なくとも春夜はあからさまな嘘はつかない。隠しごとはそれこそ溢れるほどしてそうだが、例えついても嘘は決して上手くないだろう。それほど器用なら普段ももっと器用に生きているはずだ。それこそ充以外にもいい顔できるだろうし、充にも笑うか謝る以外の対応でもっと上手く誤魔化してくるはずだ。
それでも充は少し非難するように春夜を見た。
「……しないんじゃ、なかったのか」
「そ、そういうつもりじゃなかったのはほんとだよ? ほんと。それにできることっていうのがそういうことじゃないのもわかってる。でも……だってみっちゃんが好きなんだ」
焦ったように言いながら、春夜は切なそうな顔で充を見てきた。どこか苦しそうで、でもそんな表情でも春夜は綺麗な顔をしていた。特に意識したこともなく、あえてどちらかといえばと考えれば綺麗な顔というよりは春夜はかわいいタイプなのだろうと充は思っていた。だが今ふと見ると、綺麗な顔立ちだと気づく。整っていて、大人しそうにも見えるし挑戦的にも見える顔立ちだ。それに元々地毛が薄い色の髪はさらさらしている。
充より二センチほど高い身長は中の上辺りだと思うが、体の線は中学からサッカーをやってきているはずなのに細身かもしれない。
充からすればそれでもどう見ても男だし男に興味はない前提で「ああ、目をつけられ性的な感情をぶつけられるのもおかしくはないのかもしれない」と心の片隅で思ってしまい、そんな自分にぞっとした。
「みっちゃん……?」
「……悪い」
「え、何が?」
「いや……」
「みっちゃんがそんなこと言うの珍しいね? それに……悪いって言うのは俺のほうじゃない?」
「何で」
「だって」
春夜はにっこり笑った。その笑みはいつも充に向けてくるかわいらしい感じというよりは、優しげなのにどこか挑戦的な感じがした。
笑みを浮かべながら、春夜は充の腕をつかんでくる。
「今からするからだよ」
そのまま春夜は充を押し倒してきた。
「ちょ、待て、俺はいいって言ってない」
「大丈夫、優しくするよ? とても優しく、みっちゃんの全部を余すことなく大事に大事に奪ってあげる……大丈夫、優しくするから」
「そういう問題じゃないだろ!」
充より背はあっても、充より華奢な気さえする。なのに全く力で敵わない。制服も簡単に乱された。
「好き……大好き」
「しゅん……!」
カッターシャツをはだけさせられ、直接肌に何度もキスをしてくる春夜を充は押し退けようとするが、やはり敵わない。
「……ダメ? 俺を拒否する?」
春夜はちゅっと充の胸に唇をつけながら聞いてきた。表情は見えなかったが、普段はどちらかと言えば少し高めの声がほんのり低くて、充は思わず息を飲んだ。
「拒否とか……そんなんじゃ」
「無理やりは、しない……よ。ねぇ、ダメ?」
切なそうに歪ませた顔を上げてきた春夜に、充は駄目だと言えなかった。
「っあ、あ……っ」
かなり丁寧に解されたとはいえ、まだ二回目のはずの性交は信じられないほど痛みを伴わなかった。昨日、初めてされて後でガタガタになったはずだ。尻の穴だって後から痛かった。今日も本調子ではなかった。先ほど解す時にも「……まだ赤いね、痛い?」と春夜が心配そうに聞いてきていた。痛くはなかったが、赤くなっているならまだ無理なはずではないのかと充は腕で顔を隠しながら思う。
「ん、んっ」
「みっちゃん……気持ちいい? ねぇ、ここ、好き?」
だというのに、間違いなく充は快楽を得ていた。違和感や異物感よりも快感の方がさらに感覚として勝っていた。
顔を隠したまま無言で顔を横に振ると「でも、勃ってるよ? こんなに……濡らして」と腰を動かしながら切なげな声で春夜が囁いてきた。
言わないで欲しい。
耐えがたい羞恥を感じながら、充はまた横に顔を振る。
もう嫌だ。
そう思いながらも間違いなく自分が感じているのは充もわかっている。
こんな屈辱的で羞恥しか感じられないことに快楽を覚えている自分が信じられない。と同時に、屈辱的で羞恥に陥る行為を春夜は暴力として嫌な相手から無理やり受けていたことを思い出し、胸が苦しくなる。
目から少し溢れる涙は、生理的なものだけでなく春夜を思ってもあるだろう。ただ、哀れみの感情など多分春夜は欲していない。羞恥心もあるが、それもあってなおさら充は顔から腕を退けられなかった。
「ん、ぅ、う、う、ぁっ」
「みっちゃん……充、大好き……大好き」
「は、んぅ、は……ぁっ」
「かわいい……すごくかわいい……大好き……充、充……」
春夜の律動が速まってきた。ぐっと奥まで入ってきては思い切り引いていくそれに、充は気が変になりそうなほど感じていた。
「い、ぁっ、あ、あ……っ、も……、あっ、無理、無理……っあ、あっ」
びくびく体が震える。勢いよく白濁を先から吐き出すと、一気に力が抜けていく。と同時に、中で春夜の精液が吐き出されたのをなんとなく感じた。
快楽を感じてようが、やはり終わるとぐったりする。
「みっちゃん……ごめんね……大丈夫……?」
さんざん遠慮なく腰を動かしてきたくせに、春夜が心配そうに覗き込んできた。目も拭っているしと充は腕を退けてじろりと春夜を睨んだ。
「大切とか大事とか言いながら、昨日に引き続き生でした上で中で出すとか……」
「えっ、あ……ご、ごめんね……。……あ、そっか……コンドームつけないとダメなんだ、ね……」
当たり前のように性的な行為をしてきた春夜が当たり前のことに対して無知であるところが、妙に充の心臓を切なくさせた。
それでも充は少し非難するように春夜を見た。
「……しないんじゃ、なかったのか」
「そ、そういうつもりじゃなかったのはほんとだよ? ほんと。それにできることっていうのがそういうことじゃないのもわかってる。でも……だってみっちゃんが好きなんだ」
焦ったように言いながら、春夜は切なそうな顔で充を見てきた。どこか苦しそうで、でもそんな表情でも春夜は綺麗な顔をしていた。特に意識したこともなく、あえてどちらかといえばと考えれば綺麗な顔というよりは春夜はかわいいタイプなのだろうと充は思っていた。だが今ふと見ると、綺麗な顔立ちだと気づく。整っていて、大人しそうにも見えるし挑戦的にも見える顔立ちだ。それに元々地毛が薄い色の髪はさらさらしている。
充より二センチほど高い身長は中の上辺りだと思うが、体の線は中学からサッカーをやってきているはずなのに細身かもしれない。
充からすればそれでもどう見ても男だし男に興味はない前提で「ああ、目をつけられ性的な感情をぶつけられるのもおかしくはないのかもしれない」と心の片隅で思ってしまい、そんな自分にぞっとした。
「みっちゃん……?」
「……悪い」
「え、何が?」
「いや……」
「みっちゃんがそんなこと言うの珍しいね? それに……悪いって言うのは俺のほうじゃない?」
「何で」
「だって」
春夜はにっこり笑った。その笑みはいつも充に向けてくるかわいらしい感じというよりは、優しげなのにどこか挑戦的な感じがした。
笑みを浮かべながら、春夜は充の腕をつかんでくる。
「今からするからだよ」
そのまま春夜は充を押し倒してきた。
「ちょ、待て、俺はいいって言ってない」
「大丈夫、優しくするよ? とても優しく、みっちゃんの全部を余すことなく大事に大事に奪ってあげる……大丈夫、優しくするから」
「そういう問題じゃないだろ!」
充より背はあっても、充より華奢な気さえする。なのに全く力で敵わない。制服も簡単に乱された。
「好き……大好き」
「しゅん……!」
カッターシャツをはだけさせられ、直接肌に何度もキスをしてくる春夜を充は押し退けようとするが、やはり敵わない。
「……ダメ? 俺を拒否する?」
春夜はちゅっと充の胸に唇をつけながら聞いてきた。表情は見えなかったが、普段はどちらかと言えば少し高めの声がほんのり低くて、充は思わず息を飲んだ。
「拒否とか……そんなんじゃ」
「無理やりは、しない……よ。ねぇ、ダメ?」
切なそうに歪ませた顔を上げてきた春夜に、充は駄目だと言えなかった。
「っあ、あ……っ」
かなり丁寧に解されたとはいえ、まだ二回目のはずの性交は信じられないほど痛みを伴わなかった。昨日、初めてされて後でガタガタになったはずだ。尻の穴だって後から痛かった。今日も本調子ではなかった。先ほど解す時にも「……まだ赤いね、痛い?」と春夜が心配そうに聞いてきていた。痛くはなかったが、赤くなっているならまだ無理なはずではないのかと充は腕で顔を隠しながら思う。
「ん、んっ」
「みっちゃん……気持ちいい? ねぇ、ここ、好き?」
だというのに、間違いなく充は快楽を得ていた。違和感や異物感よりも快感の方がさらに感覚として勝っていた。
顔を隠したまま無言で顔を横に振ると「でも、勃ってるよ? こんなに……濡らして」と腰を動かしながら切なげな声で春夜が囁いてきた。
言わないで欲しい。
耐えがたい羞恥を感じながら、充はまた横に顔を振る。
もう嫌だ。
そう思いながらも間違いなく自分が感じているのは充もわかっている。
こんな屈辱的で羞恥しか感じられないことに快楽を覚えている自分が信じられない。と同時に、屈辱的で羞恥に陥る行為を春夜は暴力として嫌な相手から無理やり受けていたことを思い出し、胸が苦しくなる。
目から少し溢れる涙は、生理的なものだけでなく春夜を思ってもあるだろう。ただ、哀れみの感情など多分春夜は欲していない。羞恥心もあるが、それもあってなおさら充は顔から腕を退けられなかった。
「ん、ぅ、う、う、ぁっ」
「みっちゃん……充、大好き……大好き」
「は、んぅ、は……ぁっ」
「かわいい……すごくかわいい……大好き……充、充……」
春夜の律動が速まってきた。ぐっと奥まで入ってきては思い切り引いていくそれに、充は気が変になりそうなほど感じていた。
「い、ぁっ、あ、あ……っ、も……、あっ、無理、無理……っあ、あっ」
びくびく体が震える。勢いよく白濁を先から吐き出すと、一気に力が抜けていく。と同時に、中で春夜の精液が吐き出されたのをなんとなく感じた。
快楽を感じてようが、やはり終わるとぐったりする。
「みっちゃん……ごめんね……大丈夫……?」
さんざん遠慮なく腰を動かしてきたくせに、春夜が心配そうに覗き込んできた。目も拭っているしと充は腕を退けてじろりと春夜を睨んだ。
「大切とか大事とか言いながら、昨日に引き続き生でした上で中で出すとか……」
「えっ、あ……ご、ごめんね……。……あ、そっか……コンドームつけないとダメなんだ、ね……」
当たり前のように性的な行為をしてきた春夜が当たり前のことに対して無知であるところが、妙に充の心臓を切なくさせた。
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