エクストリーム

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8話

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 軽く何度かしてきた後に己悠はニッコリとしながら喜一から離れる。

「ジュース、それでよかった?」

 喜一はポカンとしていたがそう言われ、ハッとなって慌ててコクコクと頷く。

「そう、よかった」

 己悠はまたニッコリと笑うとキスを続けてきた。暫くはやはりされるがままだった喜一もようやく反応し、むしろ己悠を引き離した。

「っちょ、ま、待ってくださ……」
「なんで。イチくん、キス嫌い? それともジュース先に飲みたかった?」
「いや、ジュースはさておき、キスが嫌いなんてことは到底ありえなく……! でもいきなり過ぎてその……」

 真っ赤になってしどろもどろになっていると今度は軽く鼻にキスをしてきた後で己悠が喜一の足の間に入りさらに微笑む。

「あーイチくんほんと可愛いな」

 先輩が積極的だ……。

 喜一は胸が破れそうなほど心臓をドキドキいわせつつひたすら内心葛藤していた。
 こんなに積極的な人だと思っていなかったが、もちろんそんな己悠が嫌いな訳ない。むしろありがとうございますとお礼を言いたい。だが可愛い己悠にキスをされて自分の理性はあまり頑張れるとは思えない。頑張れないといって襲っていいとはそして思えない。付き合いたてだというのにちょっとそれは己悠に申し訳ない気がする。
 その上、喜一は男同士の知識があまりない。もっと勉強しておくんだった、と後悔した後にだが「いやいやいやその後悔おかしいだろ俺……! なにヤる気になってんだよ」と内心微妙になる。
 そんなことを考えて固まっていると、己悠がさらに顔を近づけて喜一の首筋にキスをしてきた。キスをしながら喜一のシャツをめくりあげてくる。

「っ?」

 一体何を……と喜一が動揺しているとペロリ、と乳首を舐められた。

 ……どうしよう、意味がわからない……!

 喜一は赤い顔のまま固まる。いや、何をされたのかくらいはわかる。乳首を、舐められた。意味がわからないのは、己悠が何故喜一の乳首を舐めてきたのかということだ。なんの膨らみもなく面白くもなんともない男の胸なのに、と思ったところで喜一の脳内に、実際目の当たりにしたことはないのであくまでも想像でしかないが己悠の体が浮かぶ。
 途端、とてつもなくドキドキとした。ただそれは相手が己悠だからだ、と思う。喜一のようにどうみても可愛くないがっしりした男だったら喜一も多分ドキドキしない。

「……やっぱりイチくん、いい体してるよな」

 はぁ、とどこか満足げにため息をつきながら己悠が少々潤んだ目で喜一を見上げてきた。ちなみに潤んだ、というのはあくまでも喜一主観の捉え方に過ぎない。だがそう見えた。

「そ、そ、そ、そ、ぅっすか?」

 どもりながらも喜一はなんとなく理解した。多分、己悠は喜一のどちらかといえばがっしりした体に好感を覚えてくれているのかもしれない。だから触れたくなったのかもしれない。それならなんとなく理解できる、と思っていると今度は口で先を含まれて舌で愛撫される。

「っあ、あの」

 大好きな己悠にそういうことをされているという事実に興奮はするが、喜一自身男なので胸を愛撫されても感じることはない。

「ん?」
「な、なんでそういう、こと……俺、お、男なんでそこ、なんとも……」
「ああ。大丈夫、これからだんだんよくなっていけばいいよ」
「へ?」
「開発。したらきっとイチくんのここ、すごくよくなると思うな、俺」

 可愛い顔でサラリとなんだかとんでもないことを言われたような気がして、喜一はポカンと己悠を見た。

 積極的にもほどがある……?

 赤くなればいいのか少々引いてもいいのかと戸惑っていると、己悠が続けてきた。その上に手がゆっくりと喜一の下腹部へと這っていく。そんなところを触られたら本当に我慢できないとしか思えない。喜一は改めて「待ってください……!」と己悠を引き離した。

「どうしたんだよ」

 己悠は怪訝そうに喜一を見てくる。むしろ怪訝そうな顔になりたいのはこっちだとそっと思いつつ、喜一はなんとか言葉を探した。

「えっと、あの、ひ、姫先輩がその、なんでそ、そういうことしてくるのかわからないです、が、あまりそういうことされたら、俺……」
「? わからない? 好きだからに決まってるだろ。お前、俺が好きでもないヤツにこういうことするとでも思ってる?」 
「い、いえ! とんでもない……!」

 慌てて掌を己悠に向けながら喜一はぶんぶんと頭を振った。そんなこともちろん思ったこともない。

 というか、姫先輩、なんだろう、雰囲気、違う……? 気のせいだろうか。

「だったらいいだろ。ああ、男は初めて? 大丈夫、痛くないようにしてやるから」

 ね? と、とてつもなく可愛らしい笑みを浮かべてコテンと小首を傾げる己悠は相変わらず可愛くて仕方がないのだが、雰囲気や話し方だけでなく今の言葉にはさらにどこか引っかかるものがある。

 ……なんだろう。
 …………「痛く」?
 痛い、とは。

 喜一は悶々と考える。まさか付き合って早々にこんな風なことになっただけじゃなく、もしかして実際己悠は喜一のものに何かしてくるのだろうかと考えてみる。

 キツめに扱く、とか? も、もしや、く、口でしてくれたりで噛まないようにするねってこと? ……いやいや、そんなことある訳――

 また真っ赤になりながら勝手な妄想にドキドキしていると、いつの間にか下を脱がされていたようでそこになにかひんやりとした違和感を感じた。

「っつめたっ?」
「んー、イチくんの、デカくていい形してんのな。とろとろにしたらエロ……」
「えっ? えっ?」

 今、とてつもなく可愛い顔で、とてつもないことを言ってこなかったか、と喜一は把握できていないまま意味がわからな過ぎて体を小さく震わせる。恐る恐る自分の下肢に視線をやれば、なにかを自分自身にかけられたのか、そこは実際トロリと濡れていた。

「ひ、姫せんぱ……」
「こ、は、る」
「え?」
「恋人なんだからさ、名前で呼べよな」
「で、でも……っぁ?」

 姫先輩を呼び捨てなんて、と言いかけたところで喜一は体を大きくビクリと震わせる。

「っちょ、ほんっとあのっ」

 トロリと濡らされた自分のものを、己悠はゆっくりと扱いてきた。
ただでさえぬるぬるとした感触の上に、それを握っているのが己悠だと思うと、喜一のものは一気に痛い程硬くそそり立つ。

「っぁ、あ……っ」
「ん、やっぱ可愛いなあ、イチくんは。沢山、イかせてやるよ。後ろも痛くないよう、ゆっくりしてやるから安心して」

 ちゅ、ちゅっと己悠は涙目になっている喜一の目元にキスをしながら囁いてくる。

「ん、ぅ……っ、……、…………っはぁ?」

 あまりの気持ちよさに、このままひたすら己悠の手に翻弄され、達しそうだと思いながら喜一はギュッと目を瞑った後に己悠の口から出た聞き捨てならないことがようやく脳内に浸透してきた。倒れそうになっていた体を思い切り起こす。

「っおい、いきなりなんだよ」
「あ、すいませ……、じゃなくてあの! う、うし、ろ?」

 思わず間抜けなくらい自分のものがガチガチにそそり立った状態で、膝立ちした喜一は動揺を隠せないまま己悠を見る。

「? うん。後ろ」
「……っええ?」

 またコテンと首を傾げた己悠が可愛い。
 いや、それよりも自分のおっ勃てたものをさらけ出したままのこの状態が恥ずかしいし居たたまれない。というよりズキズキ痛い程なのでできれば出したい。かといって己悠にしてもらうなんて、嬉しいけれども恥ずかしい。

 じゃなくて! 後ろって、なに……! 俺が、下っ?

 喜一の頭の中はひたすらぐるぐるとまとまらないまま、思わず身動きもとれないままその場で固まっていた。
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