ニコラシカ

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19話 ※

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 簡単に、むしろなにも考えなければいいのに。

 郭夜は朝哉に抱き着かれながら思った。

 朝哉は馬鹿なのだから。いや、もちろんあの大学に入学している時点で勉強はできる。だが、馬鹿なのだから。ただ、流されたらいい。

 そう思いながらも実際軽率に流されてくれる朝哉を思い、少し笑いが漏れた。

「なに?」
「いや……。……ん、ぅ」

 静かに首を振ると朝哉からキスをしてきた。

 親友はこんなこと、しない。

 郭夜は心の中で囁きながらそのキスに答える。お互いの口の中で舌を絡めあいながら、お互いの服を乱していく。

「なあ、後ろ、まだ痛い?」

 郭夜の既に昂っているものをゆっくりと扱きながら、朝哉がおもむろに聞いてきた。なにを聞いてくるんだ、と微妙になりながら答えないでいると「なぁー」としつこい。その上指で昂りの先を強く弄ってくる。

「っやめろ……」
「なんで? ここ、かぐちゃん好きだろ?」
「かっ、」

 かぐちゃんと言うな。そう言おうとしたが込み上げてくる射精感に思わず唇を噛みしめる。

「ねー、教えてよ。後ろ」
「ふ、っく……」

 教えろと言うくせに手を止めてくることがない。ひたすら裏筋に指を添えるようにしながら扱き、時折鈴口の辺りをぐり、っと弄る。
 朝哉とこういうことをするのに異論はない。どちらかといえば襲ってもいいくらい積極的にしたいと思う。後ろに挿れられることすら構わない。
 それでも翻弄されるだけは嫌だし、変な声を漏らしたりするのも嫌だ。口を手で抑えながら思い切り睨みつけると、むしろヘラリと笑ってきた。

「イきそ? いいよ、イって」

 お前の許可なんていらない。

 そんな一言すら口にできず、郭夜がさらに堪えようとしたところでまた指で先を強めに弄られ、とうとう耐えられずに熱を放出した。ガクガクと脱力し、倦怠感に包まれる。そっと深いため息をついた。

「気持ちかった?」

 郭夜の出したもので濡れた手を見ながら、朝哉がニッコリと聞いてくる。

 こいつ、これで男無理とか俺とは無理とか言ってくるんだから腹立つな。

 そんなことを思いつつも朝哉の濡れた手を郭夜はつかんだ。

「この手、使わせろ」
「へ?」
「……聞きたいんだろ? 後ろ」
「え? あ、ああ、うん。でもそれと手とどう関係……」

 ポカンとしてくる朝哉に構わず、郭夜は朝哉の手を自分の後ろに回す。

「お前、俺の中に指、入れられる? いつも俺が自分で事前に解してたけど、ここ、お前が解せる?」

 ニヤリと笑いながら聞くと、多少は引くだろうかと思った朝哉が赤くなり、抵抗するどころか自ら指でその付近を撫でるように触れてきた。

「そ、そういえばまだ触れたこと、なかった。いつもお前が自分でやっちゃってたし。俺が触っていいならそりゃ触るよ。俺の指でお前がヤベーことになんの、見てえもん」
「……お前、ほんとそれでも」
「なに?」
「いや?」

 あくまでも俺を親友だと言い張り、男は無理だとか言うのかと言いかけ、やめた。なんだかもう、このままでもいいような気、すらする。このままだろうが、朝哉は面白いほど流されてくれるし、こうして体を求めあえる。恋人という明確な関係でなくても、親友で大事な存在だとは少なくとも思っているようだ。
 もちろんずっとこのままがいいとは思わないが、急がなくてもこうして自分の手のひらで転がしていると簡単にころころと流されこちらに落ちてくれる、というか自覚してくれるような気がする。

「なんだよ」
「煩い。俺を翻弄、してくれんだろ?」

 笑みを向けながら朝哉の首に両腕を回した。すると赤い顔をしたまま朝哉は少し戸惑いつつも「うん」と笑みを返してくる。

「一応勉強はしたけど……痛かったりしたら言えよ」

 そう言いながら、朝哉は郭夜の出したものでまだ濡れたままの指をゆっくりと中に入れてきた。

「途中でローション、足して」

 ピクリ、と反応しながら郭夜が囁くように言うと、少し掠れた声で「うん」と素直に頷いてくる。
 最初の頃は自分の指すら痛かったそこは、朝哉自身を何度も受け入れているのもあって指の一本や二本くらい軽く飲み込む。とはいえ何も感じない訳もなく、朝哉の指が触れているという感情的感覚と実際に感じる感触に郭夜は熱い息を吐き出した。

「中、熱い」

 朝哉が掠れた声で囁いてくる。その言葉や耳に響く、かかる吐息のような音にさえ反応しながら、郭夜はまた変な声が出ないようそっと唇を噛みしめた。
 だが指がとある部分に触れてくると我慢できずに声を漏らしてしまった。体もビクリと震える。

「ここ? ねえ、かぐちゃん、ここ、気持ちいーの?」

 かぐちゃん言うな。

 声に出せずに心の中で思いながらも郭夜はまた唇を目と共にぎゅっと閉じる。

「もー、ちゃんと言ってよ! 声も聞かせろよ」
「む、り」
「なんで! 意味わかんねーよ。変なとこですげー積極的なくせになんで声聞かれんのヤなの?」
「……低、いし」
「はっ?」

 ポカンとした後で朝哉が赤くなりながら指をさらに動かしてきた。

「っ……」
「なに言ってんの? んなもん逆に郭夜の声が高かったほうが俺、びびるわ! 低くたって、男の声だって、感じてる声、ちゃんとエロい!」
「う、るさ……、んっ」

 散々中で蠢かせてきた指を抜かれ、その感触にまた背筋に電気が走ったようになり、変な声が出そうになった。

「入れるからね」

 朝哉はそう言うと郭夜の太ももの裏をつかみ、持ち上げてきた。

「っちょ、待て。後ろ向……」
「ダメ! いっつもバックばっかだけど前からもしたい」

 前だと顔が見えるだろうが、と言わんばかりに郭夜が睨みつけるも、素知らぬ振りをして朝哉が触れてもないのに熱く硬くなっているそれで周辺を擦り付けてくる。顔を見られながらするとか落ち着かない。そう思っているとそれが挿ってきた。

「っは、ぁ……っ」

 痛みこそなくなったが最初はやはり苦しい。

「痛い……?」

 朝哉が心配そうに聞いてきた。郭夜は少し目を細めながらもなんとか笑いかける。

「もっと、奥、来れるだろ」
「……っ」

 絞り出すように言うと、朝哉が赤い顔のまま思い切り突き上げてきた。その衝動に一瞬息が止まりそうになったが同時に表現し難い疼きが下半身から広がってくる。その疼きが肉を貫かれるといった表現が似合いそうな感覚と共に満たされていき、郭夜はくらくらとした。
 自分の襞がひたすら押し広げられ擦り上げられてくる。かというと今度はそれが引いていき排泄感にも似た、だが例えようのない感覚が襲い掛かってくる。

「っぁ、あっ」

これ以上声を堪えることもできず、郭夜は体を仰け反らせて耐え難い程の快楽に溺れた。

「ほら……、わかる、だろ? 痛い、訳……あるか。……もっと、激しく、してみろよ……」

 まるでそれらの快感に負けてなるものかといった気持にさえなり、郭夜は挑発するように朝哉を見上げた。途端、中の質量が増す。

「かぐちゃん……、郭夜、郭夜……っ」

 朝哉がまるで呼ばなければどうにかなる、とばかりに名前を呼んできた。そして正直これ以上はおかしくなる、というくらい思い切り腰を突き上げてくる。
 途中からはもうよくわからないまま、郭夜は必死になって受け止めた。自分が射精したことすらよくわからない程の快楽に息継ぎすらできず、最後は疲れ切って意識を飛ばした。
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