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逃げない豹 ※
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自分のハンカチを取ってくれたせいで渉が二階から落ちて大けがをした。そんな重要なことを忘れていたなんてと、実は事件の後も颯一はまだ落ち込んでいた。
だが、颯一の傍にいなかったせいで酷い目に合わせたと友悠が悩み落ち込んでいるのを知ると、ようやく渉が言っていたことが心底わかった。
誰のせいでもない。いや、自分のせいだとしか思えないが、が相手は相手で自分のせいだと思うものなのだと。そして相手が「自分のせいで」と落ち込んでいるのを見るのはつらいものなのだと。
友悠にそんなことで悩んで欲しくなかったからそう伝えたし、自分もくよくよしないようにしようと思えた。
そして。
改めて落ち着くと、今度は渉をまともに見れなくなった。どう考えてもおかしい。あれほど「そうちゃん」とやってきては絡んでくる渉が気持ち悪かったのに。
いや、思い返すと以前からどんどん渉に対する違和感がなくなっていっていたのはわかる。だがそれは慣れ……慣れたくないが、慣れなのだろうと思っていたし、元々幼馴染だからだろうとも思っていた。
とはいえむしろ大事な親友である友悠に対しては逆に妙に意識してしまったし、他の生徒に対してもある程度なら慣れてきていただろうが、当然額などにキスされていればかなり拒否反応が出そうな気がする。
キス。
そしてさらに思い出した。いくら薬のせいとは言え、自分から「抜いて」と頼み、あんなことをしてもらった。
颯一はあり得ないほど顔が熱くなる。その時にキスもされた。それを思い出すと顔だけでなく体まで熱くなるのがわかった。
事故で友悠としたキスとは全然違う。相手は変態の渉なのにと思いながらも、本当はわかっていた。
普段何だかんだで本当にあり得ないくらい変なことばかりしてくる渉だが、いざとなるといつだって頼りがいあって実は優しくて、色んな意味で、強い。
「俺は……」
多分そうなのだろうとはいえ、自覚してしまえばますます落ち着かなくなった。こんな気持ちは慣れない。というか今まで自分はまともなキスやつき合いどころか、人を好きになったことすらもしやなかったのだろうかと少し微妙な気持ちになった。
落ち着かない。渉が少しでも傍にいるだけで色んな気分になって、落ち着かない。嬉しいのか怖いのか楽しいのかつらいのか幸せなのか悲しいのか。多分それ全部なのかもしれない。渉の一挙一動が颯一の気分を色んなものに変えてしまう。
そして少しでも触れられるとさらに落ち着かなくなった。こんなのは自分じゃないと思う反面、こんな自分も悪くないとも思う。ただ、やはり慣れなさ過ぎて気分の上下に疲れる。
それならいっそ、渉とセックスすれば解決するじゃないかとある日とうとう颯一は思い立った。
何ていうのだろう、強行突破?
その短絡的な発想を友悠が聞けば心の底から呆れられるだろうが、颯一にとってはベストのような気がした。だらだら悩んだり考えるのは性に合わない。
それにこの間触れられたのはちっとも嫌じゃなかった。だからというのもある。ちゃんと薬のせいじゃない状態で、ちゃんと渉としたいと思った。
なので思い切って真っ赤になりながらも威勢よく言ったというのに、肝心の渉にはとてつもなく微妙な顔をされた。
「何でそんな顔で見てくんだよ! お前だって俺が好きなんだったら」
「そうちゃん……。いや、嬉しいけど……。それにあれだよ、その、そういうことはちゃんと結婚してからにしよう」
「は? いや俺、お前好きだって気づきはしたけど……結婚て! 無理だろ」
「無理じゃないよ、俺は将来そうちゃんをお嫁に貰う。前から言ってるだろ?」
どう考えてもふざけたあり得ないこと言っているにも関わらず、まっすぐに颯一を見てくる渉がなぜか恰好よく見えてしまい、颯一はまた赤くなると同時に腹立たしく思った。
「わけわかんねぇことカッコよく言ってくんな……。それに関してはちょっと今じゃあ置いてて。俺がいいって言ってんだからいいんだよ!」
「好きって自覚したばかりなのに?」
「だからなの! 何か俺、落ち着かないし色々わけわかんないしお前男だしそわそわするしお前男だし……俺ぐだぐだ考えたり慣れなくてビビんのとかはヤなの。今まではお前から本気で逃げてたからいいけど、俺今はお前好きだと思うから……逃げんのとか落ち着かないのとか……ヤなんだよ……」
「そうちゃん……」
「だからスパッとやって」
「…………そうちゃん……」
また微妙な顔された。なぜなのだろうと颯一はムッとしながら考える。
かわいく言えばしてくれるのか?
とはいえかわいくなど到底できないし、いくら渉が好きだとわかっても、自分は変えたくない。颯一はどう逆立ちしても男だしかわいい振りなどできない。代わりに颯一は渉をキッと見た。そして目を瞑って渉にキスする。
顔が熱いし絶対間抜けなほど顔が赤くなっているのが自分でもわかった。しかも唇の着地点をミスった。目を瞑ってたとはいえ、渉の顎にしてしまった。居たたまれない。相手がもし女子なら颯一は今即座に床を粉砕してでも穴を開けて入りたいと願ったと思われる。自分でも情けなくて涙が出そうだった。
本当はセックスとか経験したことないし怖い。気持ちのいいものというイメージはあるが、男同士で何するのかはわからないし怖い。
それでも俺は渉としたいと確かに思ったから言ったのに。色んな理由はあるけれども、したいという気持ちは間違いないのに。
「も……いい……」
俯き、踵を返すと颯一はそこから立ち去ろうとした。
「そうちゃん……ごめん。俺もそうちゃんが大好きだから凄く、したいよ」
顎にキスされてなぜか固まっていた渉が慌てたように駆け寄ると後ろから優しく抱きしめ、囁いてきた。今度は颯一が涙目のまま固まる。
「そうちゃんもしたいと思ってくれるのなら本当に嬉しい。だけどやっぱりあれはすごくそうちゃんに負担がかかるし……」
「……俺、男だし……がんばる、から……」
俯きながら何とかそう言うと、そのまま抱きあげられた。
「わかった。でも今日はやめておこう? 俺、そうちゃんが大事だから大切にしたい」
「大丈……」
言いかけたところでキスされた。そのままベッドにそっと体を横たえさせられる。
「せめてゆっくり、していきたい。そうちゃんが言ってくれるのは本当に嬉しいよ。俺だって男だし初夜までとか言いながらもいつだってそうちゃんが欲しいよ。でも無茶はしたくない。だから、ゆっくり……」
最後は囁くように言うと、また渉は颯一にキスしてきた。ゆっくりと颯一に押しつけるようにした後、舌で唇を舐められて颯一はピクリと体を少し震わせた。その舌で歯列をなぞられ、堪らなくなって小さく声を漏らす。
「嫌だったり気持ち悪くなったら、言ってくれ」
渉はまた囁いた後で、開いた颯一の咥内にゆっくり舌を差し入れてきた。その舌が至るところをなぞり、颯一の舌をもなぞった後で絡めてくる。
舌と舌が触れあう感触すら颯一は初めてだった。一瞬感じた異物が触れる感覚はすぐに気持ちよさへと変わっていく。
「っふ、ぁ……、ん、んん」
キスだけでこんなにおかしくなりそうなのだとしたら、先へ進んだら自分はもっとおかしくなるかもしれない。それを思うとやはり怖いのだが、好奇心のが勝る。もっと知りたいし、もっと渉を感じてみたいと思った。
咥内を弄られ続け、自分の唾液と渉の与えてくる唾液が混じり合う。飲み込みきれない唾液が口の端からつ、と流れ頬を伝っていく。
全然気持ち悪くなかった。男同士なのに。渉なのに。好きだとこんなにも変わるものなのだとどこかで思いながらもキスに溺れる。
渉はキスを続けながら颯一のベストを上にたくしあげ、器用にシャツのボタンを外してきた。唇が颯一の耳へと移った際に「俺の上、脱がせるの……何で……?」と掠れて出にくい声で聞いてみる。
「そうちゃんの胸に触れたいから」
渉の声が耳元で聞こえ、その近さと言われたことにピクンと体が小さく震えた。
「……男、なの、に?」
「ん。男も何も関係ないよ。そうちゃんの体はどこだって触れたいよ」
耳朶にキスされながら、渉の指先が颯一の乳首を転がしてきたのを感じた。一瞬の妙な違和感の後にモゾモゾと広がる何とも言えない痺れるような感覚に、颯一はまた体を震わせた。
「変、な気分、する……」
「慣れたら気持ちよくなるよ、そうちゃん。ちゃんとここも、俺が慣らしていってあげる……どこもかしこも気持ちよくなれるように」
急がないからと渉はニッコリ笑い、今度は颯一の下を脱がせてきた。
急がない?
どういうことなのだろう。今したこと以外にも何か胸にされたり今後もされるということだろうか。そして颯一はそれにだんだん慣れていくと気持ちよくなるのだろうか。
ぼんやり想像すると、何とも堪らない気分になった。
早く……慣れたい。
そんな風に思っていると、渉の手が颯一の硬くなったペニスに触れてきた。
「っぁ……」
変な声が出た。颯一はハッとなり口を押さえる。顔が、とてつもなく熱かった。
「そうちゃん……かわいい」
渉がその手をどけてまたキスしてきた。そのまま手を動かしてくる。自分の乳首とペニスを弄られ、颯一はすでにおかしくなりそうだった。それにはだけさせられた今の自分の状態にすら興奮させられた。
「ふ、ぅう。ぅ、ん、んん」
この間は薬のせいで簡単に達してしまったのだと思っていた。でも違った。
渉の手で、それは簡単にあっという間に堪えられなくなる。何度か擦られたソレは堪らずに勢いよく白濁したトロリとしたものを飛ばした。自分で触ったこともあるが、渉にされるとこんなに気持ちいいものなのだと颯一は惚けながら思った。
「あ、ゆむは……? しない、の……?」
気持ちよさと興奮で涙目になりつつ息を切らせながら聞く。
「じゃあ次する時は一緒に」
「一緒?」
「うん。俺のとそうちゃんのを一緒に握らせて。合わさって擦ると気持ちいい部分が当たってきっとそうちゃんも気持ちいいよ」
既にそう聞いただけで颯一はどこか堪らない気持ちになる。
「で、でもその……。せ、セックスってこれだけ……? もっと色々すんじゃないの? 男女だったら……」
「そうちゃん。お互いが気持ちよかったら何だって十分なんだよ。それに色々はうん、ゆっくり、慣れていこう。俺はそうちゃんが俺を好きになってくれてしかもこんなことまでさせてくれただけで堪らなく、嬉しいよ」
渉はそういってニッコリ笑ってきた。その笑顔は颯一にとって、思い切って言った甲斐がとてつもなくあったと思えた。
だが、颯一の傍にいなかったせいで酷い目に合わせたと友悠が悩み落ち込んでいるのを知ると、ようやく渉が言っていたことが心底わかった。
誰のせいでもない。いや、自分のせいだとしか思えないが、が相手は相手で自分のせいだと思うものなのだと。そして相手が「自分のせいで」と落ち込んでいるのを見るのはつらいものなのだと。
友悠にそんなことで悩んで欲しくなかったからそう伝えたし、自分もくよくよしないようにしようと思えた。
そして。
改めて落ち着くと、今度は渉をまともに見れなくなった。どう考えてもおかしい。あれほど「そうちゃん」とやってきては絡んでくる渉が気持ち悪かったのに。
いや、思い返すと以前からどんどん渉に対する違和感がなくなっていっていたのはわかる。だがそれは慣れ……慣れたくないが、慣れなのだろうと思っていたし、元々幼馴染だからだろうとも思っていた。
とはいえむしろ大事な親友である友悠に対しては逆に妙に意識してしまったし、他の生徒に対してもある程度なら慣れてきていただろうが、当然額などにキスされていればかなり拒否反応が出そうな気がする。
キス。
そしてさらに思い出した。いくら薬のせいとは言え、自分から「抜いて」と頼み、あんなことをしてもらった。
颯一はあり得ないほど顔が熱くなる。その時にキスもされた。それを思い出すと顔だけでなく体まで熱くなるのがわかった。
事故で友悠としたキスとは全然違う。相手は変態の渉なのにと思いながらも、本当はわかっていた。
普段何だかんだで本当にあり得ないくらい変なことばかりしてくる渉だが、いざとなるといつだって頼りがいあって実は優しくて、色んな意味で、強い。
「俺は……」
多分そうなのだろうとはいえ、自覚してしまえばますます落ち着かなくなった。こんな気持ちは慣れない。というか今まで自分はまともなキスやつき合いどころか、人を好きになったことすらもしやなかったのだろうかと少し微妙な気持ちになった。
落ち着かない。渉が少しでも傍にいるだけで色んな気分になって、落ち着かない。嬉しいのか怖いのか楽しいのかつらいのか幸せなのか悲しいのか。多分それ全部なのかもしれない。渉の一挙一動が颯一の気分を色んなものに変えてしまう。
そして少しでも触れられるとさらに落ち着かなくなった。こんなのは自分じゃないと思う反面、こんな自分も悪くないとも思う。ただ、やはり慣れなさ過ぎて気分の上下に疲れる。
それならいっそ、渉とセックスすれば解決するじゃないかとある日とうとう颯一は思い立った。
何ていうのだろう、強行突破?
その短絡的な発想を友悠が聞けば心の底から呆れられるだろうが、颯一にとってはベストのような気がした。だらだら悩んだり考えるのは性に合わない。
それにこの間触れられたのはちっとも嫌じゃなかった。だからというのもある。ちゃんと薬のせいじゃない状態で、ちゃんと渉としたいと思った。
なので思い切って真っ赤になりながらも威勢よく言ったというのに、肝心の渉にはとてつもなく微妙な顔をされた。
「何でそんな顔で見てくんだよ! お前だって俺が好きなんだったら」
「そうちゃん……。いや、嬉しいけど……。それにあれだよ、その、そういうことはちゃんと結婚してからにしよう」
「は? いや俺、お前好きだって気づきはしたけど……結婚て! 無理だろ」
「無理じゃないよ、俺は将来そうちゃんをお嫁に貰う。前から言ってるだろ?」
どう考えてもふざけたあり得ないこと言っているにも関わらず、まっすぐに颯一を見てくる渉がなぜか恰好よく見えてしまい、颯一はまた赤くなると同時に腹立たしく思った。
「わけわかんねぇことカッコよく言ってくんな……。それに関してはちょっと今じゃあ置いてて。俺がいいって言ってんだからいいんだよ!」
「好きって自覚したばかりなのに?」
「だからなの! 何か俺、落ち着かないし色々わけわかんないしお前男だしそわそわするしお前男だし……俺ぐだぐだ考えたり慣れなくてビビんのとかはヤなの。今まではお前から本気で逃げてたからいいけど、俺今はお前好きだと思うから……逃げんのとか落ち着かないのとか……ヤなんだよ……」
「そうちゃん……」
「だからスパッとやって」
「…………そうちゃん……」
また微妙な顔された。なぜなのだろうと颯一はムッとしながら考える。
かわいく言えばしてくれるのか?
とはいえかわいくなど到底できないし、いくら渉が好きだとわかっても、自分は変えたくない。颯一はどう逆立ちしても男だしかわいい振りなどできない。代わりに颯一は渉をキッと見た。そして目を瞑って渉にキスする。
顔が熱いし絶対間抜けなほど顔が赤くなっているのが自分でもわかった。しかも唇の着地点をミスった。目を瞑ってたとはいえ、渉の顎にしてしまった。居たたまれない。相手がもし女子なら颯一は今即座に床を粉砕してでも穴を開けて入りたいと願ったと思われる。自分でも情けなくて涙が出そうだった。
本当はセックスとか経験したことないし怖い。気持ちのいいものというイメージはあるが、男同士で何するのかはわからないし怖い。
それでも俺は渉としたいと確かに思ったから言ったのに。色んな理由はあるけれども、したいという気持ちは間違いないのに。
「も……いい……」
俯き、踵を返すと颯一はそこから立ち去ろうとした。
「そうちゃん……ごめん。俺もそうちゃんが大好きだから凄く、したいよ」
顎にキスされてなぜか固まっていた渉が慌てたように駆け寄ると後ろから優しく抱きしめ、囁いてきた。今度は颯一が涙目のまま固まる。
「そうちゃんもしたいと思ってくれるのなら本当に嬉しい。だけどやっぱりあれはすごくそうちゃんに負担がかかるし……」
「……俺、男だし……がんばる、から……」
俯きながら何とかそう言うと、そのまま抱きあげられた。
「わかった。でも今日はやめておこう? 俺、そうちゃんが大事だから大切にしたい」
「大丈……」
言いかけたところでキスされた。そのままベッドにそっと体を横たえさせられる。
「せめてゆっくり、していきたい。そうちゃんが言ってくれるのは本当に嬉しいよ。俺だって男だし初夜までとか言いながらもいつだってそうちゃんが欲しいよ。でも無茶はしたくない。だから、ゆっくり……」
最後は囁くように言うと、また渉は颯一にキスしてきた。ゆっくりと颯一に押しつけるようにした後、舌で唇を舐められて颯一はピクリと体を少し震わせた。その舌で歯列をなぞられ、堪らなくなって小さく声を漏らす。
「嫌だったり気持ち悪くなったら、言ってくれ」
渉はまた囁いた後で、開いた颯一の咥内にゆっくり舌を差し入れてきた。その舌が至るところをなぞり、颯一の舌をもなぞった後で絡めてくる。
舌と舌が触れあう感触すら颯一は初めてだった。一瞬感じた異物が触れる感覚はすぐに気持ちよさへと変わっていく。
「っふ、ぁ……、ん、んん」
キスだけでこんなにおかしくなりそうなのだとしたら、先へ進んだら自分はもっとおかしくなるかもしれない。それを思うとやはり怖いのだが、好奇心のが勝る。もっと知りたいし、もっと渉を感じてみたいと思った。
咥内を弄られ続け、自分の唾液と渉の与えてくる唾液が混じり合う。飲み込みきれない唾液が口の端からつ、と流れ頬を伝っていく。
全然気持ち悪くなかった。男同士なのに。渉なのに。好きだとこんなにも変わるものなのだとどこかで思いながらもキスに溺れる。
渉はキスを続けながら颯一のベストを上にたくしあげ、器用にシャツのボタンを外してきた。唇が颯一の耳へと移った際に「俺の上、脱がせるの……何で……?」と掠れて出にくい声で聞いてみる。
「そうちゃんの胸に触れたいから」
渉の声が耳元で聞こえ、その近さと言われたことにピクンと体が小さく震えた。
「……男、なの、に?」
「ん。男も何も関係ないよ。そうちゃんの体はどこだって触れたいよ」
耳朶にキスされながら、渉の指先が颯一の乳首を転がしてきたのを感じた。一瞬の妙な違和感の後にモゾモゾと広がる何とも言えない痺れるような感覚に、颯一はまた体を震わせた。
「変、な気分、する……」
「慣れたら気持ちよくなるよ、そうちゃん。ちゃんとここも、俺が慣らしていってあげる……どこもかしこも気持ちよくなれるように」
急がないからと渉はニッコリ笑い、今度は颯一の下を脱がせてきた。
急がない?
どういうことなのだろう。今したこと以外にも何か胸にされたり今後もされるということだろうか。そして颯一はそれにだんだん慣れていくと気持ちよくなるのだろうか。
ぼんやり想像すると、何とも堪らない気分になった。
早く……慣れたい。
そんな風に思っていると、渉の手が颯一の硬くなったペニスに触れてきた。
「っぁ……」
変な声が出た。颯一はハッとなり口を押さえる。顔が、とてつもなく熱かった。
「そうちゃん……かわいい」
渉がその手をどけてまたキスしてきた。そのまま手を動かしてくる。自分の乳首とペニスを弄られ、颯一はすでにおかしくなりそうだった。それにはだけさせられた今の自分の状態にすら興奮させられた。
「ふ、ぅう。ぅ、ん、んん」
この間は薬のせいで簡単に達してしまったのだと思っていた。でも違った。
渉の手で、それは簡単にあっという間に堪えられなくなる。何度か擦られたソレは堪らずに勢いよく白濁したトロリとしたものを飛ばした。自分で触ったこともあるが、渉にされるとこんなに気持ちいいものなのだと颯一は惚けながら思った。
「あ、ゆむは……? しない、の……?」
気持ちよさと興奮で涙目になりつつ息を切らせながら聞く。
「じゃあ次する時は一緒に」
「一緒?」
「うん。俺のとそうちゃんのを一緒に握らせて。合わさって擦ると気持ちいい部分が当たってきっとそうちゃんも気持ちいいよ」
既にそう聞いただけで颯一はどこか堪らない気持ちになる。
「で、でもその……。せ、セックスってこれだけ……? もっと色々すんじゃないの? 男女だったら……」
「そうちゃん。お互いが気持ちよかったら何だって十分なんだよ。それに色々はうん、ゆっくり、慣れていこう。俺はそうちゃんが俺を好きになってくれてしかもこんなことまでさせてくれただけで堪らなく、嬉しいよ」
渉はそういってニッコリ笑ってきた。その笑顔は颯一にとって、思い切って言った甲斐がとてつもなくあったと思えた。
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