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191話
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五日間の休暇だが、最終日はニルスの屋敷でゆっくり過ごそうと考えていたため、あと丸一日ゆっくりできる日はニルスとようやく初めて体を重ねた翌日のみという予定だった。
婚約パーティーの夜は一旦アルスラン家の別宅で休み、休暇初日は昼過ぎに起きたのと馬車でぐったりしたのもあり移動だけで終わった。二日目はピクニックをして、そしてとうとうニルスと最後までできた。
予定では三日目に近くの市場や店をその周辺の風景ともども楽しみ、四日目に寄り道しながらまた移動して五日目はニルスの屋敷で休むはずだった。
「悪い……ほんと、ごめん……」
だが三日目の朝、エルヴィンはベッドから動いていない。というかしばらく動けそうになかった。
「お前が謝ることじゃない……俺が謝ることだ……本当にすまない」
「それこそニルスが謝ることじゃないだろ……。俺がもう少し頑丈で柔軟だったらよかったんだけど」
とにかく尻が痛い。我慢できない痛さというほどではないが、下手に動いたら尻穴としての本来の機能が駄目になるのではと考えてしまいそうな程度にはズキズキしている。あと関節なども痛い。体を鍛えてきてはいたが、案外エルヴィンの体は柔らかくないようだ。とはいえ女性より男性のほうがホルモンバランスや筋肉量により股関節の筋肉は硬くなりがちだとは思う。だというのにいきなり普段動かしたり曲げたり開いたりしないような体勢になったからだろう、あちこちが痛む。
おまけに鍛えているはずだというのに、突然足腰が弱ったかのように足に力が入らない。
日常に戻ったら俺、ストレッチしよう……。
今までは騎士として剣だけでなく動くために体を鍛えること中心にやってきたが、これからどんな体勢になったとしても、腸腰筋や股関節などに疲労がたまって違和感や痛みを感じたりしないよう股関節周りの筋肉を解していきたいとエルヴィンは新たに目標を立てた。女性より男性のほうが骨盤は狭くて縦長なので、ちゃんと鍛えていれば開脚するにも向いているはずだ。
尻だけはさすがに鍛え方わからないけど……こればかりは多分回数をこなすしかないような?
そしてそう思ってから顔が一気に熱くなった。
「エルヴィン? まさか無茶させすぎて熱が……」
「違うから……久しぶりにそう来たか。前から言ってるだろ、俺は体、弱くないから。たださすがにその……初めてなので……」
「……、……やはりお前を大切にしたいから、煽るのは……ちょっとやめてもらえたら……」
「いや、今のどこをどう取ったらそうなった? とにかく、実際俺がこんなだからせっかくここに来たのに観光できないし」
「それは気にするな」
ニルスがふるふると首を振ってきた。
「でも今日は市場とか見て回る予定だったのに」
「別に見て回らなくても俺はエルヴィンといられるならそれで問題ない」
何て嬉しいことを言ってくれるのだろうとエルヴィンは顔がにやけてきた。ニルスはそんなエルヴィンを見て少し首を傾げた後に頭を撫でてくる。するとますます満たされた気分になった。どうやら自分はニルスの相変わらずすらりとしつつごつごつもしている手も、その手で撫でられるのも、いつの間にか相当好きになっているようだ。笑みを浮かべるとベッドに横たわったままエルヴィンはニルスの手を両手で包み込むと彼を見上げた。
「そう言ってくれるなら、今日はずっとベッドでお前と過ごしてもいいか?」
「……、……問題ない」
今、溜めがあったような気がするのだが。
「えっと、本当に問題ない?」
「ああ」
「実はここだけは行きたかった、とか、そういうの、ない?」
「ない」
「ずっとベッドにいるの、嫌じゃない?」
「……大丈夫だ」
ここか。
エルヴィンはそっと自分に頷いた。
「ああでもずっとベッドは退屈だよな。せめてこの屋敷の周りを散策とか、しよう。でも、それはもう少しだけ回復してから……」
「エルヴィン。本当に嫌じゃない。退屈なわけない」
「でも」
「……ただ、お前とずっとベッドで過ごすのは中々に……忍耐が」
忍耐?
え、本当に俺と過ごすの嫌じゃないのかそれ?
思わずポカンとした後にエルヴィンは少し顔が熱くなった。
じゃなくて、もしかしてそういう……したくなるとか、そういう意味?
自意識過剰だろうか。だがエルヴィンといられれば問題ない、他に行きたいとかもないしベッドにいること自体は嫌じゃないというのならば、そういうことではないだろうかと思ってしまう。
「……未熟ですまない」
「な、何言ってんだよ、そんなの! あの、俺とずっとベッドで過ごしたらその、したくなるからってこと、でいい、んだよな?」
「……ああ」
ニルスにそう思われるのはとてつもなく嬉しい。
「じゃ、じゃあやっぱり散策とか、しようか。その、俺もニルスとベッドにずっといたらしたくなる、きっと。でもさすがに今日は厳しい、し」
「当然だ」
「う、うん。だからもう少し様子見て、回復してきたら散策とか、その、しよう」
「エルヴィンが本当に問題なければ」
「わかった。大丈夫そうになったら言うよ。……それに、その、もし何だったら回復、してきたらその、最後まではしなくても、その、さ、イチャイチャとかして過ごすくらいなら……できそうかも、だし……それも、悪くない、んじゃ?」
部屋にこもってイチャイチャするのは地元に戻ってから十分できる。遠出とは言えないものの、せっかくこうして休暇をもらって出てきているのだからせめて散策するのが正解だろうとエルヴィンの理性は言っているし、多分ニルスもそう思うのではないだろうか。
うん。つい本能がむき出ちゃったけど、理性を優先す──
「悪くない」
よし、本能優先で。
婚約パーティーの夜は一旦アルスラン家の別宅で休み、休暇初日は昼過ぎに起きたのと馬車でぐったりしたのもあり移動だけで終わった。二日目はピクニックをして、そしてとうとうニルスと最後までできた。
予定では三日目に近くの市場や店をその周辺の風景ともども楽しみ、四日目に寄り道しながらまた移動して五日目はニルスの屋敷で休むはずだった。
「悪い……ほんと、ごめん……」
だが三日目の朝、エルヴィンはベッドから動いていない。というかしばらく動けそうになかった。
「お前が謝ることじゃない……俺が謝ることだ……本当にすまない」
「それこそニルスが謝ることじゃないだろ……。俺がもう少し頑丈で柔軟だったらよかったんだけど」
とにかく尻が痛い。我慢できない痛さというほどではないが、下手に動いたら尻穴としての本来の機能が駄目になるのではと考えてしまいそうな程度にはズキズキしている。あと関節なども痛い。体を鍛えてきてはいたが、案外エルヴィンの体は柔らかくないようだ。とはいえ女性より男性のほうがホルモンバランスや筋肉量により股関節の筋肉は硬くなりがちだとは思う。だというのにいきなり普段動かしたり曲げたり開いたりしないような体勢になったからだろう、あちこちが痛む。
おまけに鍛えているはずだというのに、突然足腰が弱ったかのように足に力が入らない。
日常に戻ったら俺、ストレッチしよう……。
今までは騎士として剣だけでなく動くために体を鍛えること中心にやってきたが、これからどんな体勢になったとしても、腸腰筋や股関節などに疲労がたまって違和感や痛みを感じたりしないよう股関節周りの筋肉を解していきたいとエルヴィンは新たに目標を立てた。女性より男性のほうが骨盤は狭くて縦長なので、ちゃんと鍛えていれば開脚するにも向いているはずだ。
尻だけはさすがに鍛え方わからないけど……こればかりは多分回数をこなすしかないような?
そしてそう思ってから顔が一気に熱くなった。
「エルヴィン? まさか無茶させすぎて熱が……」
「違うから……久しぶりにそう来たか。前から言ってるだろ、俺は体、弱くないから。たださすがにその……初めてなので……」
「……、……やはりお前を大切にしたいから、煽るのは……ちょっとやめてもらえたら……」
「いや、今のどこをどう取ったらそうなった? とにかく、実際俺がこんなだからせっかくここに来たのに観光できないし」
「それは気にするな」
ニルスがふるふると首を振ってきた。
「でも今日は市場とか見て回る予定だったのに」
「別に見て回らなくても俺はエルヴィンといられるならそれで問題ない」
何て嬉しいことを言ってくれるのだろうとエルヴィンは顔がにやけてきた。ニルスはそんなエルヴィンを見て少し首を傾げた後に頭を撫でてくる。するとますます満たされた気分になった。どうやら自分はニルスの相変わらずすらりとしつつごつごつもしている手も、その手で撫でられるのも、いつの間にか相当好きになっているようだ。笑みを浮かべるとベッドに横たわったままエルヴィンはニルスの手を両手で包み込むと彼を見上げた。
「そう言ってくれるなら、今日はずっとベッドでお前と過ごしてもいいか?」
「……、……問題ない」
今、溜めがあったような気がするのだが。
「えっと、本当に問題ない?」
「ああ」
「実はここだけは行きたかった、とか、そういうの、ない?」
「ない」
「ずっとベッドにいるの、嫌じゃない?」
「……大丈夫だ」
ここか。
エルヴィンはそっと自分に頷いた。
「ああでもずっとベッドは退屈だよな。せめてこの屋敷の周りを散策とか、しよう。でも、それはもう少しだけ回復してから……」
「エルヴィン。本当に嫌じゃない。退屈なわけない」
「でも」
「……ただ、お前とずっとベッドで過ごすのは中々に……忍耐が」
忍耐?
え、本当に俺と過ごすの嫌じゃないのかそれ?
思わずポカンとした後にエルヴィンは少し顔が熱くなった。
じゃなくて、もしかしてそういう……したくなるとか、そういう意味?
自意識過剰だろうか。だがエルヴィンといられれば問題ない、他に行きたいとかもないしベッドにいること自体は嫌じゃないというのならば、そういうことではないだろうかと思ってしまう。
「……未熟ですまない」
「な、何言ってんだよ、そんなの! あの、俺とずっとベッドで過ごしたらその、したくなるからってこと、でいい、んだよな?」
「……ああ」
ニルスにそう思われるのはとてつもなく嬉しい。
「じゃ、じゃあやっぱり散策とか、しようか。その、俺もニルスとベッドにずっといたらしたくなる、きっと。でもさすがに今日は厳しい、し」
「当然だ」
「う、うん。だからもう少し様子見て、回復してきたら散策とか、その、しよう」
「エルヴィンが本当に問題なければ」
「わかった。大丈夫そうになったら言うよ。……それに、その、もし何だったら回復、してきたらその、最後まではしなくても、その、さ、イチャイチャとかして過ごすくらいなら……できそうかも、だし……それも、悪くない、んじゃ?」
部屋にこもってイチャイチャするのは地元に戻ってから十分できる。遠出とは言えないものの、せっかくこうして休暇をもらって出てきているのだからせめて散策するのが正解だろうとエルヴィンの理性は言っているし、多分ニルスもそう思うのではないだろうか。
うん。つい本能がむき出ちゃったけど、理性を優先す──
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よし、本能優先で。
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