彼は最後に微笑んだ

Guidepost

文字の大きさ
上 下
192 / 193

192話 ※

しおりを挟む
「あ、っあ、は……っ、ニルス、ニルス、も……っ、ぁあっ、駄目、イ……、くっ」

 ニルスのものがエルヴィンの弱いところを擦りながら、突き上げてはまた引いていく。完全にニルスの形となっているそこは、硬くて熱いニルスのそれがあまりに的確な動きで抽挿してくるせいでいつも容易に痙攣するように収縮し、絶頂を迎える。
 今もビクビクと、中だけでなく腰も震えながらエルヴィンは深く達した。だがニルスどころかエルヴィンもまだ射精はしていないからか、構わずニルスは動いてくる。

「ニル、ス……! イった、イったから……!」
「ああ……。……かわいい……。それにまだ出してない」
「出てないけどイった!」
「ああ」

 ああ、と頷きながらニルスがキスしてきた。おかげで「達したから一旦やめて」とこれ以上伝えられなくなる。キスで口を塞がれたまま、ニルスはさらに抽挿を繰り返してきた。それもじわじわと早くなっていく。

「んんっぅ、んっ」

 射精を何度も繰り返すのもきついが、中イキしたばかりでのこれも中々にきつい。だというのにニルスのものがだんだん激しく抜き差ししてくるたびに、エルヴィンの穴が疼きながら締まるのが自分でもわかった。また達してしまうと思う間もなく、エルヴィンは思いきりビクビク体を震わせる。

「っふ、ぅっ」

 鼻が塞がれているわけでもないのに、息が乱れているせいでキスされたまま達することに苦しささえ覚える。だがそれすら今のエルヴィンは快感として拾ってしまい、ビクビク震えるのが止まらない。生理的な涙まで出てきた。
 以前は泣いていることに気づくとニルスがおろおろしたように行為を中断して「痛かったか?」「嫌だったか?」「つらかったか?」などと聞いてきたものだった。だが最近ではこういう時の涙は問題ないのだと学習したようだ。ちっともやめてくれない。どのみち聞かれても答えづらいし流れによれば中断されるとそれはそれでつらい時もあるので学習してくれたのはありがたいが、今は少なくともやめて欲しい。

「んんっ、んっ、ぅ」

 だがわかってないのか、わかってなのか、ニルスはやはりやめてくれない。二度、立て続けに達してしまい敏感になりすぎるくらいなっているエルヴィンの中はまた快楽を容易に拾ってきた。
ようやくニルスも達するのか、深いながらも小刻みに思いきり突き上げてくる。もうどうにかなりそうだった。あまりの刺激にエルヴィンは意識を飛ばしそうになっている。目が裏返りそうだと思っているとニルスがようやくキスをやめてきた。だが抽挿はやめてくれないばかりか、エルヴィンの硬いままのそれを動きながら扱いてきた。思い切り息を吸い込みつつ、気が変になりそうなくらいにエルヴィンの何もかもが快感に侵される。

「っあああっ、あっ、あっ、ああああっ」

 中だけでなくとうとう暴発する勢いで射精すると、ニルスもエルヴィンの中で果てたようだ。
 ようだ、というのは気づけなかったからではなく、案の定エルヴィンは意識を保てなかったからだった。

「……ニルス。俺を殺す気なの……」

 ようやく目覚めると体が綺麗になっていた。だがひどい倦怠感にぐったりしながらエルヴィンが何とか口にすると、ニルスはふるふる首を振ってくる。

「あり得ない」
「比喩ってわかってて首振ってるだろ。やめてって言ったのに」
「言ってない。イった、とは言ってた」
「中イキしてすぐはきついから一旦やめて欲しいって今までも何度も言ってるし……」
「……悪い」

 素直に謝られるとエルヴィンはそれ以上何も言えなくなる。

「いいけど……ほんと毎回毎回……」
「すまない……気持ちよくてつらそうなお前や、気持ちよくて泣いてるお前がかわいくて……」
「何て?」

 最近のニルスは、昔エルヴィンがブローチを使って知った饒舌である心の中のニルスにほんの少し近づいたような気が少々しないでもない。それとも一緒に住むようになってエルヴィンがそんな風に感じるだけだろうか。もしくはリックがくれたブローチなくとも、ある程度ならニルスの気持ちがわかるようになってきたからかもしれない。
 それでも今のような言葉は、少なくとも昔はほぼ口にすることなどなかったような気がする。

「……絶対懲りてないだろ、ニルス」
「……、……そんなことない」
「懲りてないな! もう……」

 ベッドでぐったりとしたまま、エルヴィンは呆れたようにニルスを見た。とはいえ、無表情ながらに落ち込んでいるようにちゃんと見えるからだろうか、元々大好きなニルスに弱いエルヴィンは最近ますます絆されてしまっている気がする。結局、次もまた行為に及んだ時ニルスのしたいようにさせてしまうのだろう。エルヴィンがこの行為に慣れてくるのと比例して、ニルスの性欲が増していっている気がしてならない。

「でも、今晩は絶対駄目だからな。明日は久しぶりにラウラたちに会いに行くんだから」

 昨夜も散々したのに朝、目が覚めた途端襲われていた。どうやら寝言でニルスの名前をエルヴィンが呼んだから、らしい。最後までしてくれないと嘆いていた時代もあったよねとエルヴィンは遠い目になりそうだ。

「ああ、わかっている」

 実際、ラウラとは長らく会っていない。妹とはいえ嫁に行った女性の元へ頻繁に会いにいくのは不躾だからだが、ラウラの夫がエルヴィンの親友であるニアキスだけに、よその家族よりはまだ会っているほうがもしれない。
 明日久しぶりに会うのは、しばらく会うのを控えていたからだ。そして明日久しぶりに会いにいく理由は、ニアキスとラウラの間にできた子にとうとう会えるからだ。
 結婚から数年後、ラウラが妊娠したと聞いた時エルヴィンは久しぶりに泣いた。何度かは様子を窺いに行ったりもしたが、長居しないよう心掛けていたしあまり出歩けないラウラのために外の様子を語ってきかせるくらいしか話せていない。
 そして会うのを控えるようになってから少しして、無事出産したことも聞いていた。だが母体と新生児を思って、エルヴィンはすぐに会いたいながらに会いに行くのをがんばって堪えていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。 実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので! おじいちゃんと孫じゃないよ!

【BL】こんな恋、したくなかった

のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】  人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。  ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。 ※ご都合主義、ハッピーエンド

不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに

はぴねこ
BL
美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。 金髪碧眼美幼児のリヒトの前世は、隠れゲイでBL好きのおじさんだった。 享年52歳までプレイしていた乙女ゲーム『星鏡のレイラ』の攻略対象であるリヒトに転生したため、彼は推しだった不憫な攻略対象:カルロを不運な運命から救い、幸せにすることに全振りする。 見た目は美しい王子のリヒトだが、中身は52歳で、両親も乳母も護衛騎士もみんな年下。 気軽に話せるのは年上の帝国の皇帝や魔塔主だけ。 幼い推しへの高まる父性でカルロを溺愛しつつ、頑張る若者たち(両親etc)を温かく見守りながら、リヒトはヒロインとカルロが結ばれるように奮闘する! リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。 カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。 魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。 オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。 ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。

あなたの隣で初めての恋を知る

ななもりあや
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師の松本コウさんに描いていただきました。

貧乏Ωの憧れの人

ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。 エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの

転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~

槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。 最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者 R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

処理中です...