彼は最後に微笑んだ

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189話 ※

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 エルヴィンの中は思っていた以上に狭い。あれだけ解したはずだというのに、自分のものを挿入するにあたってニルスはかなりきつさを感じた。先を入れるだけでもなかなか厳しいというのに、この中に全部入るものなのだろうかと疑問さえ生じる。だが、こんなに入れづらいのは気が急いているからかもしれない。ニルスの鼓動は自分でも煩いと思っていたし、頭の中では「早く入れたい」という欲まみれだった。ともすれば欲望のまま思いきり深く挿入して動かしたくなる。

 エルヴィンがとても苦しそうで不安そうなのに……。

 乱れそうになる息をニルスは何とか整えつつ、同じく何とか少しでも冷静になれるようマヴァリージのいくつもある法典の暗唱を心の中で行った。

「ニルス……」

 そのエルヴィンが苦しそうな様子で呼びかけてきた。顔を向けると「もっと早く入ってきていい、から」などと、やはり苦しげだというのに言ってくれる。

 かわいい……好きだ……けど、そんなこと言われたら……。

「エルヴィン……煽らないで……くれ……」

 何とか口にすると、エルヴィンがかろうじて首を振ってきた。苦しそうな様子が申し訳ないしかわいそうだと思うというのに、反面そんなエルヴィンすらかわいくてニルスはどうにかなりそうだった。

「わ、るい……」

 なるべく感謝の気持ちを伝えようと思ったところとはいえ、さすがに今は「ありがとう」より「悪い」としか言えない。

「ひ、どく……したく、はない、けど……」

 エルヴィンの中の狭さによってニルスも少々苦しげな声になりつつ口にしていると「わか、ってる。いい、から……もっと入って、きて」とエルヴィンが腹筋を使って体を少し起こし、手を伸ばしてニルスの首に回してきた。一見さほど筋肉質に見えなくとも間違いなく鍛えられたエルヴィンの体を実感するだけでなく、ニルスを引き寄せそっと抱きしめてくれるところに優しさと男らしさを感じた。申し訳ないことにそんなことですら簡単に、エルヴィンの中へゆっくりと入っていっているニルスのものは大きくなってしまう。

「っく」

 案の定、エルヴィンがまた苦しげに思わずといった風に声を漏らしてきた。

「エルヴィ……」
「だ、いじょうぶ。大丈夫だから」

 実際、先を入れ始めた時より引っかかりはないものの、相変わらず中はきつい。エルヴィンの腸壁がニルスのものを搾り取ろうとするかのようにうねり、締めつけてくる。とはいえ今ここで一旦抜いたほうがエルヴィンはきついかもしれない。ニルスは「エルヴィンに痛い苦しい思いをさせてしまう」という状態をさらに進めることへの覚悟を決めた。せめて少しでも楽になるよう、挿入したまま粘り気のあるローションを何度も接合部へ垂らしては少し引いて、また中へ進めるというのを繰り返した。
 まだ途中までしか入っていないものの、正直これだけでも達しそうではある。エルヴィンの腸壁が締めつけてくるだけでなく、襞がニルスのそれをもみ込むかのようにぎゅうぎゅうと刺激を与えてくる。ニルスは浅い息をはきながら何とか堪らない感覚を逃そうとした。
 ある程度入ると、渾身の気合いで動きを止める。

「ニルス……? 何で止める、んだ……?」
「お前が……慣れる、まで……」

 慣れるというか、慣れないだろうとは思うが、少しでも俺のものがそこになじんで苦しさや痛さが和らぐまでだろうか。

 本音を言えばこのままさらに奥へ進めたいし、激しく抽挿したい。だが陰茎を多少抜き差しするだけでもまだきっと苦しいだろうから、ニルスとしてはそこは堪えたい。

「大丈夫、だから……ニルス、つらいだろ……? 動いて」
「問題、ない……」
「ある。お前もつらい、だろうし……俺はもっとニルスを……感じたい……。大丈夫、あんなに解して、くれたから……破れる、とかもないし……」

 やはりどこか苦しそうに言うエルヴィンに「そんな様子なのにできるわけない」と言いたいところだったが、苦しいながらに言ってきてくれたことを無下にもしたくないともニルスは思った。

「エルヴィン……愛してる」

 何とかそう囁くと、ニルスはゆっくりと抽挿を始めた。

「あ……、ぅ、あ……」

 エルヴィンから漏れる声はおそらく苦しいせいで勝手に漏れる声なのだろうとはニルスでもわかる。だがまるで喘いでくれているかのように思えて勝手に気持ちが盛り上がってしまう。
 このままではおかまいなしにひどくしてしまいそうで、ニルスは手を動かすことで自分の気をほんの少しそらせるためと、何よりエルヴィンに少しでも気持ちよくなってもらうため、二人の間でまだかろうじて硬いまま揺れていたエルヴィンのものを利き手ではないほうの手で触れた。利き手はずっと尻の穴を弄っていたからあまりエルヴィンの他のところに触れないほうがいい気がするし、何より利き手でないために器用に動かないであろう分、多少でも気がそれる。

「っあ、あ、あ、あっ、あっ」

 エルヴィンから漏れる声も先ほどと少し変わってきた。そして中の具合も少し緩急がついてきた。多少楽になってくれたのかもしれない。ただ、緩急がついてきたせいでニルスとしてはますます堪らなくはなった。

「……っわ、るい……エルヴィン……先に、達してしま、うかもしれ、ない」
「ん、ぁっ、あ……、ニルス……、ニルス……俺、も……」

 中の具合がよすぎるせいもあるが、ただでさえ扇情的だったエルヴィンが前を弄ることでますます官能的になってきて、ニルスとしてもこれ以上は我慢がきかなかった。

「エ、ル……ッ」
「あっ、待っ、そんなに擦った、ら……っ、ん、ぁっ、あっ」

 だが幸いというのだろうか、エルヴィンもニルスの手の中で達してくれたようだ。
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