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180話
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ニルスのたどたどしいと言っても過言ではない説明で、以前エルヴィンがザイフォンクプアスを口にして大変な目に遭った時に触られたのだとようやく把握した。
「あ、あー……」
実際「あー」しか言えない。あれは本当に自分がやらかしたとエルヴィンは思っているし、ニルスやリックに申し訳ないことしたとかなり思っている上で「そんなことされてたなんて」と語尾にハートでもつきそうなくらいには少しドキドキしている。
「……本当にすまない」
「えっ? 何で謝るんだよ」
「お前の意識がちゃんとしていない時に……許可なく触れた。おまけに……打ち明けられて、いない」
「いやいやいや、また蒸し返す気か? 仕方ないっていうか、むしろ助けてくれたんだよニルスは! だから頼むから謝らないで。第一言えないってのも仕方ないっていうか……俺だってニルスの立場なら言いにくいからそれ。それにその……擦りすぎて痛くなんじゃって心配してくれて、別の刺激くれたってこと、だし……ありがと、う」
感謝しかない。もちろん恥ずかしさはあるし、尻弄ってくれてありがとうと言っているようで口にしにくいが、礼の気持ちは伝えたい。
そもそも謝られるならこちらが「俺のために尻穴まで弄らせてごめん」と謝るべきだろう。ただ昨日あれほど抵抗なくというか、散々弄り倒してくれた様子からして、ニルスは少なくともエルヴィンの尻を弄ることにちゃんと性的な目線になってくれていると嫌でもわかったため、謝る気はない。ひたすら「俺を助けてくれてありがとう」と感謝したい。
何より尻穴の違和感は勘違いじゃなかったのと、昨日自分の慣れっぷりにドン引きだったが、一応すでに結構弄られていたからだとわかり、気持ちが何というのだろう、あえて言うなら、楽になった。
エルヴィンにありがとうと言われ、ニルスはまた少し困惑したような何とも言えない様子を感じさせつつ、ただコクリと頷いてきた。
とにかく、ニルスが悲しそうにさえ見えたのは間違っていなくて、「エルヴィンの尻を許可なく勝手に弄ったしそれについて話せていなかった」という罪悪感的なものだったのだと理解した。エルヴィンが昨日や今、何かしてしまって迷惑をかけたのでないならもう問題ない。
問題は入れてくれないことだよ……。
とはいえまた蒸し返すのも「どれだけやりたいんだ」と思われそうで言いにくい。実際やりたい訳だが、エルヴィンとしては根本はさらなる心の繋がり的なことを求めているわけで、セックス自体を何が何でもしたいというのとは少々違う。とはいえこんなことを説明するのも何か違う。
とりあえず今はせっかく二人きりの旅行中なんだし、それを楽しまないとな。
ニルスもエルヴィンとしたくないわけではなく、心配しすぎでしかないが怪我のないよう慎重になっているだけだと少なくともわかった。これで食事に集中できそうだとエルヴィンは改めてナイフを手に皿を見るとパンの欠片が乗っているだけだった。事務的に口へ運んでいただけだというのにほぼ完食していたようだ。
食事を終えて少しゆっくりしてからようやく二人は出発した。向かうのはこの別宅からさほど遠い場所ではないし、乗っている馬車はリックが魔法をかけてくれているらしく、通常の馬車より移動が速い。そんなものすごい魔法が使えるなら以前の出張旅行でも使ってくれたらと一瞬思ったが、すぐに「それは無理か」と思い直した。
今より全然遠い距離を乗っていた分、使う魔力も増えただろう。今でさえ、どれほどの魔力を使えばこんな魔法が使えるのか不思議だったりする。リックは風の上位魔法が使えるようだし、この魔術はおそらく風魔法の応用だろうとは思うが、それにしたって結構な力を使う気がする。
あと無理だと思い直したのはその理由だけではない。
もはや尻が痛いレベル……!
移動が速い分、車内での衝撃もそれだけ大きくなると知った。ニルスとの情事で尻が痛くなるなら大歓迎だが、馬車ではできれば遠慮したい。
それでもがんばって表情に出ないよう心がけておとなしく座っていたつもりだったが、対面に座っていたニルスが手をエルヴィンに差し出してきた。何だろうと思いつつ、つい反射的に握ると引っ張られた。
「な、に?」
ニルスは無言でそのままエルヴィンを自分の膝の上に乗せる。
「ちょ……」
「まだマシ、では」
表情に出ないよう心がけていたものの、大いに出てたらしい。女性ではないニルスの太ももはちっとも柔らかくないものの、確かに直接馬車の座席に座るよりは楽だとわかった。とはいえこれは落ち着かない。
「あ、りがとう。でもその、は、ずかしいから……」
「この中は俺とエルヴィンしかいない」
そうですけども……! 誰かに見られるのは何より恥ずかしいけどお前に対しても俺、恥ずかしいんだってば!
「ニルスがいる、だろ……」
「俺……? 何故」
婚約者であるニルスに何が恥ずかしいのかと多分言いたいのだろう。むしろエルヴィンのほうが「何故」と言いたいが、実直なニルスは多分こういうことでエルヴィンのように恥ずかしくなったりしないのだろう。
「好きだから恥ずかしいの! わかって」
「……そうか」
頷きながら、何故かわかってと言う前よりニルスはエルヴィンをぎゅっと背後から抱きしめてきた。
「あ、あー……」
実際「あー」しか言えない。あれは本当に自分がやらかしたとエルヴィンは思っているし、ニルスやリックに申し訳ないことしたとかなり思っている上で「そんなことされてたなんて」と語尾にハートでもつきそうなくらいには少しドキドキしている。
「……本当にすまない」
「えっ? 何で謝るんだよ」
「お前の意識がちゃんとしていない時に……許可なく触れた。おまけに……打ち明けられて、いない」
「いやいやいや、また蒸し返す気か? 仕方ないっていうか、むしろ助けてくれたんだよニルスは! だから頼むから謝らないで。第一言えないってのも仕方ないっていうか……俺だってニルスの立場なら言いにくいからそれ。それにその……擦りすぎて痛くなんじゃって心配してくれて、別の刺激くれたってこと、だし……ありがと、う」
感謝しかない。もちろん恥ずかしさはあるし、尻弄ってくれてありがとうと言っているようで口にしにくいが、礼の気持ちは伝えたい。
そもそも謝られるならこちらが「俺のために尻穴まで弄らせてごめん」と謝るべきだろう。ただ昨日あれほど抵抗なくというか、散々弄り倒してくれた様子からして、ニルスは少なくともエルヴィンの尻を弄ることにちゃんと性的な目線になってくれていると嫌でもわかったため、謝る気はない。ひたすら「俺を助けてくれてありがとう」と感謝したい。
何より尻穴の違和感は勘違いじゃなかったのと、昨日自分の慣れっぷりにドン引きだったが、一応すでに結構弄られていたからだとわかり、気持ちが何というのだろう、あえて言うなら、楽になった。
エルヴィンにありがとうと言われ、ニルスはまた少し困惑したような何とも言えない様子を感じさせつつ、ただコクリと頷いてきた。
とにかく、ニルスが悲しそうにさえ見えたのは間違っていなくて、「エルヴィンの尻を許可なく勝手に弄ったしそれについて話せていなかった」という罪悪感的なものだったのだと理解した。エルヴィンが昨日や今、何かしてしまって迷惑をかけたのでないならもう問題ない。
問題は入れてくれないことだよ……。
とはいえまた蒸し返すのも「どれだけやりたいんだ」と思われそうで言いにくい。実際やりたい訳だが、エルヴィンとしては根本はさらなる心の繋がり的なことを求めているわけで、セックス自体を何が何でもしたいというのとは少々違う。とはいえこんなことを説明するのも何か違う。
とりあえず今はせっかく二人きりの旅行中なんだし、それを楽しまないとな。
ニルスもエルヴィンとしたくないわけではなく、心配しすぎでしかないが怪我のないよう慎重になっているだけだと少なくともわかった。これで食事に集中できそうだとエルヴィンは改めてナイフを手に皿を見るとパンの欠片が乗っているだけだった。事務的に口へ運んでいただけだというのにほぼ完食していたようだ。
食事を終えて少しゆっくりしてからようやく二人は出発した。向かうのはこの別宅からさほど遠い場所ではないし、乗っている馬車はリックが魔法をかけてくれているらしく、通常の馬車より移動が速い。そんなものすごい魔法が使えるなら以前の出張旅行でも使ってくれたらと一瞬思ったが、すぐに「それは無理か」と思い直した。
今より全然遠い距離を乗っていた分、使う魔力も増えただろう。今でさえ、どれほどの魔力を使えばこんな魔法が使えるのか不思議だったりする。リックは風の上位魔法が使えるようだし、この魔術はおそらく風魔法の応用だろうとは思うが、それにしたって結構な力を使う気がする。
あと無理だと思い直したのはその理由だけではない。
もはや尻が痛いレベル……!
移動が速い分、車内での衝撃もそれだけ大きくなると知った。ニルスとの情事で尻が痛くなるなら大歓迎だが、馬車ではできれば遠慮したい。
それでもがんばって表情に出ないよう心がけておとなしく座っていたつもりだったが、対面に座っていたニルスが手をエルヴィンに差し出してきた。何だろうと思いつつ、つい反射的に握ると引っ張られた。
「な、に?」
ニルスは無言でそのままエルヴィンを自分の膝の上に乗せる。
「ちょ……」
「まだマシ、では」
表情に出ないよう心がけていたものの、大いに出てたらしい。女性ではないニルスの太ももはちっとも柔らかくないものの、確かに直接馬車の座席に座るよりは楽だとわかった。とはいえこれは落ち着かない。
「あ、りがとう。でもその、は、ずかしいから……」
「この中は俺とエルヴィンしかいない」
そうですけども……! 誰かに見られるのは何より恥ずかしいけどお前に対しても俺、恥ずかしいんだってば!
「ニルスがいる、だろ……」
「俺……? 何故」
婚約者であるニルスに何が恥ずかしいのかと多分言いたいのだろう。むしろエルヴィンのほうが「何故」と言いたいが、実直なニルスは多分こういうことでエルヴィンのように恥ずかしくなったりしないのだろう。
「好きだから恥ずかしいの! わかって」
「……そうか」
頷きながら、何故かわかってと言う前よりニルスはエルヴィンをぎゅっと背後から抱きしめてきた。
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