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179話
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っていうか……。
一応眠ったものの疲れが体にこびりついているような感覚が拭えないエルヴィンは、朝というよりは昼に近い今、爽やかな日差しを窓から浴びながらパンとサラダ、そして蒸した鳥の肉を惰性で口に放り込んでいる。
あれだけ解してニルスのもの入れないなんてこと、ある?
惰性で放り込んだ後は口の中に入っているからという理由だけでもぐもぐと咀嚼する。そして目が少々虚ろかもしれないのは延々と尻の穴を弄られていたために拭いきれない疲れのせい、もあるが何よりも心理的なものだとエルヴィンは思う。
そんなこと、ある? いやほんと、え? だって婚約したし尻解したのに? え? ほんとに?
もう許して、なんて三流の官能小説かよと言いたくなるようなことすら最後は口にしていた気がするくらい、散々解された。それはもう、解された。自分の穴がもしかして尻の穴ではなく突如発生した女性のそれなのではないのかと錯覚しそうなくらい、主にローションでどろどろにされ解され倒された挙句、快楽を覚えるどころか快楽に溺れる勢いにさえなった気がする。
だというのに、本番、なし? そんなこと、ある?
「……エルヴィン、大丈夫か? やはりその……疲れた?」
確かに疲れた。婚約パーティーの後というだけでなく、ほぼ一晩中触れ合ったのちに延々と解されたのだ、疲れない人なんているだろうか。その上最後までしていない。意味がわからなさすぎて精神的な疲れが追い打ちをかけている。
「……大丈夫だよ」
とはいえ「突っ込んでくれなかったから落ち込んでる」とも「解されすぎて疲れた」とも言いたくない。突っ込まれたすぎて落ち込むなんて言葉にすれば、どんな男好きなのかと思われそうな勢いでアレだし、解されすぎて疲れたなど口にしようものなら、むしろエルヴィンを思って次からしてくれなくなる可能性がある。それはそれで嫌だ。
「大丈夫そうに見えない」
そうか、と返ってくると思いきや首を振られ、エルヴィンは「あー」と目をそらせた。
「えっと……その、あー……、俺ら、婚約、した、よな?」
「うん」
心なしか嬉しそうに頷かれたような気がする。
ちゃんと俺のこと、好きでいてくれてる、んだよな。でもほんとじゃあ、何でしないんだ?
気になって仕方ない。これではまるでニルスとすることしか考えていないようだし、実際少なくとも今はそれしか考えていないが、本音としてはニルスと繋がることで心から、言い方は少々違うものの肺腑をえぐられるほどに、一緒になれたと実感したい。
自分が乙女思考のようで少々引くが、いつの間にか本当に、本当にニルスが好きすぎてこればかりはどうしようもない。
「何でしなかったんだ?」
そして言いたくないと思っていたくせに結局口にしている。
「……しなかった?」
「その……最後まで」
「ああ……ちゃんと解してから、と……」
はい?
いやもうどれだけするのってくらい解してたよな? 俺の尻がどろどろに溶けたのではって思っちゃいそうなくらい、解してたよな?
「十分すぎるくらい、解された気がするんだけど」
「俺はお前に怪我のひとつすらして欲しくない」
俺だってニルスにはして欲しくないし、わかる、わかる、けど……!
「あんだけ解し倒したら十分すぎるだろ……そりゃニルスのはちょっと人よりでかいかもだけど」
少なくとも俺のよりな……。
「……何故人のより大きいと知っているんだ……まさか他の誰かとそういう……?」
「っそんなわけないだろ……! 正真正銘の童貞処女だしキスすらお前が初め……ごほ」
ニルスにそう思われたくなさすぎて、言わなくていいことまで口にしてしまっていた。慌てて咳き込むが「そう、か……キスも……」と完全に全て聞かれてしまっていた。
「ああもう……さすがにそこまで知られたくなかったのに。とにかく、ほんと初めてだから! それにお前の指を受け入れるの早すぎたのだって、尻に指入れたことあるからじゃないからな!」
というか俺はそろそろ黙ろうか。
エルヴィンはまた思わず言ってしまった後に手で顔を覆った。
「尻に指……」
「……忘れて」
「できない」
そこは「そうか」って言ってくれよ。
まだ顔を覆っていたが、その後ニルスが何も言ってこないので手の隙間からニルスをそっと覗いてみた。すると心なしか困った様子をしているように見える。というか悲しそうとも見える。エルヴィンは気づけば顔から手を下ろし、椅子から立ち上がると対面に座っているニルスのそばまで向かっていた。
「どうしたんだニルス」
「……え?」
「お前、何か困ってる? 俺の気のせい? 俺、何かした?」
「……」
エルヴィンの問いに、ニルスは黙ったままじっとエルヴィンを見てきた。もしかしたら内心で饒舌になっているのかもしれない。
「ニルスが大丈夫ならいい。でももし何か困ってるとか、俺が何かしたっていうなら教えてくれると……」
「本当に申し訳ない……」
「え?」
そこで謝罪が来るとは思っていなかったエルヴィンは唖然とした顔でニルスを見た。
「お前の尻は……すでに俺が……」
え? え? え?
「指で犯してしまっている……」
待って言い方……!
混乱しつつもエルヴィンは顔がとてつもなく熱くなるのがわかった。だがツッコミどころをどうこう考えている場合ではない。
「どういう、ことだ?」
昨日より以前に尻を弄られた記憶はない。一体? と思いニルスの言葉をエルヴィンは根気よく待った。
一応眠ったものの疲れが体にこびりついているような感覚が拭えないエルヴィンは、朝というよりは昼に近い今、爽やかな日差しを窓から浴びながらパンとサラダ、そして蒸した鳥の肉を惰性で口に放り込んでいる。
あれだけ解してニルスのもの入れないなんてこと、ある?
惰性で放り込んだ後は口の中に入っているからという理由だけでもぐもぐと咀嚼する。そして目が少々虚ろかもしれないのは延々と尻の穴を弄られていたために拭いきれない疲れのせい、もあるが何よりも心理的なものだとエルヴィンは思う。
そんなこと、ある? いやほんと、え? だって婚約したし尻解したのに? え? ほんとに?
もう許して、なんて三流の官能小説かよと言いたくなるようなことすら最後は口にしていた気がするくらい、散々解された。それはもう、解された。自分の穴がもしかして尻の穴ではなく突如発生した女性のそれなのではないのかと錯覚しそうなくらい、主にローションでどろどろにされ解され倒された挙句、快楽を覚えるどころか快楽に溺れる勢いにさえなった気がする。
だというのに、本番、なし? そんなこと、ある?
「……エルヴィン、大丈夫か? やはりその……疲れた?」
確かに疲れた。婚約パーティーの後というだけでなく、ほぼ一晩中触れ合ったのちに延々と解されたのだ、疲れない人なんているだろうか。その上最後までしていない。意味がわからなさすぎて精神的な疲れが追い打ちをかけている。
「……大丈夫だよ」
とはいえ「突っ込んでくれなかったから落ち込んでる」とも「解されすぎて疲れた」とも言いたくない。突っ込まれたすぎて落ち込むなんて言葉にすれば、どんな男好きなのかと思われそうな勢いでアレだし、解されすぎて疲れたなど口にしようものなら、むしろエルヴィンを思って次からしてくれなくなる可能性がある。それはそれで嫌だ。
「大丈夫そうに見えない」
そうか、と返ってくると思いきや首を振られ、エルヴィンは「あー」と目をそらせた。
「えっと……その、あー……、俺ら、婚約、した、よな?」
「うん」
心なしか嬉しそうに頷かれたような気がする。
ちゃんと俺のこと、好きでいてくれてる、んだよな。でもほんとじゃあ、何でしないんだ?
気になって仕方ない。これではまるでニルスとすることしか考えていないようだし、実際少なくとも今はそれしか考えていないが、本音としてはニルスと繋がることで心から、言い方は少々違うものの肺腑をえぐられるほどに、一緒になれたと実感したい。
自分が乙女思考のようで少々引くが、いつの間にか本当に、本当にニルスが好きすぎてこればかりはどうしようもない。
「何でしなかったんだ?」
そして言いたくないと思っていたくせに結局口にしている。
「……しなかった?」
「その……最後まで」
「ああ……ちゃんと解してから、と……」
はい?
いやもうどれだけするのってくらい解してたよな? 俺の尻がどろどろに溶けたのではって思っちゃいそうなくらい、解してたよな?
「十分すぎるくらい、解された気がするんだけど」
「俺はお前に怪我のひとつすらして欲しくない」
俺だってニルスにはして欲しくないし、わかる、わかる、けど……!
「あんだけ解し倒したら十分すぎるだろ……そりゃニルスのはちょっと人よりでかいかもだけど」
少なくとも俺のよりな……。
「……何故人のより大きいと知っているんだ……まさか他の誰かとそういう……?」
「っそんなわけないだろ……! 正真正銘の童貞処女だしキスすらお前が初め……ごほ」
ニルスにそう思われたくなさすぎて、言わなくていいことまで口にしてしまっていた。慌てて咳き込むが「そう、か……キスも……」と完全に全て聞かれてしまっていた。
「ああもう……さすがにそこまで知られたくなかったのに。とにかく、ほんと初めてだから! それにお前の指を受け入れるの早すぎたのだって、尻に指入れたことあるからじゃないからな!」
というか俺はそろそろ黙ろうか。
エルヴィンはまた思わず言ってしまった後に手で顔を覆った。
「尻に指……」
「……忘れて」
「できない」
そこは「そうか」って言ってくれよ。
まだ顔を覆っていたが、その後ニルスが何も言ってこないので手の隙間からニルスをそっと覗いてみた。すると心なしか困った様子をしているように見える。というか悲しそうとも見える。エルヴィンは気づけば顔から手を下ろし、椅子から立ち上がると対面に座っているニルスのそばまで向かっていた。
「どうしたんだニルス」
「……え?」
「お前、何か困ってる? 俺の気のせい? 俺、何かした?」
「……」
エルヴィンの問いに、ニルスは黙ったままじっとエルヴィンを見てきた。もしかしたら内心で饒舌になっているのかもしれない。
「ニルスが大丈夫ならいい。でももし何か困ってるとか、俺が何かしたっていうなら教えてくれると……」
「本当に申し訳ない……」
「え?」
そこで謝罪が来るとは思っていなかったエルヴィンは唖然とした顔でニルスを見た。
「お前の尻は……すでに俺が……」
え? え? え?
「指で犯してしまっている……」
待って言い方……!
混乱しつつもエルヴィンは顔がとてつもなく熱くなるのがわかった。だがツッコミどころをどうこう考えている場合ではない。
「どういう、ことだ?」
昨日より以前に尻を弄られた記憶はない。一体? と思いニルスの言葉をエルヴィンは根気よく待った。
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