彼は最後に微笑んだ

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177話 ※

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 キスがどんどん深くなると、エルヴィンはニルスの隣からニルスの上へと体を移動させた。
 以前はニルスの上に座るなど到底できそうにないと思っていたのに、体に触れあう回数が増えるごとにこういったことに抵抗がなくなっていくのか、今ではかなり平気だったりする。

 むしろ……よりくっつけて嬉しい、かも。

 男同士だろうがそれこそ男が上に乗れば重いだろうと最初の頃は気遣っていたが、ニルスいわく「重みも嬉しい」らしい。何が嬉しいのかよくわからないものの、ニルスが嬉しくない時には「嬉しい」と言わないことだけはわかるため、気にするのはやめた。

「は……」

 ニルスの上で向かい合い、さらにキスを深める。
 婚約パーティーが終わった後、エルヴィンとニルスは夜遅いとはいえ馬車を走らせて本宅からさほど離れてはいないアルスラン家の別宅に来ていた。もちろん下心しかない。婚約したわけだしエルヴィンには下心しか、ない。
 家族にその下心までもバレてしまったら居たたまれないものの、幸い父親のウーヴェが「せっかくだから旅行にでも行くといい」などと提案してきてくれたのでその案に乗らせてもらった。
 今日は一旦この別宅で休み、明日二人は改めて馬車で出かける。
 派閥の件でごたついている時ならばそれでも遠慮していただろうが、ニルスやリックたちがかなり頑張ったのもあり、過激派貴族たちはおそらく皆検挙できたようだ。第一王子派、第二王子派という派閥自体は過激派ではないならば特に問題視していないようで、これまで通りデニスが王となるまで続くのだろう。もしくはデニスが王となってからも存在はなくならないかもしれない。それでも無理やりどちらかを殺害したりどうこうしたりして強引にことを進めようとする者はもういないはずだとリックも言っていた。
 とにかく一時期かなり忙しそうだったニルスも、新たにエルヴィンの専属騎士となったエルヴィンもリックから休みをもらっている。補佐と専属騎士の二人が同時に休むのは問題しかないのではとエルヴィンがリックに言えば「君たちがいないと成り立たないようなところで俺が日々、枕を高くして眠るとでも思ってるの?」と鼻で笑われた。

「だいたいどんなお祝いの品も受け取ってくれないんでしょ?」
「ニルスのご両親から山のように頂いていますし、リックには普段から世話になっているんです。お気持ちだけで十分です」
「ほんっと楽しくない」
「いや、何で」
「とにかく、品物は受け取らないって言うならこういうお祝いにするしかないじゃない。俺からの気持ちなんだから、いい加減これくらい受け取って休暇楽しんできて。もっと長期であげられなくて申し訳ないけどね」
「数日で十分です……! では……ありがたく受け取らせていただきます」

 長期であげられないと言いつつもリックは一週間の休暇と最初は言ってきた。だがそれはエルヴィンだけでなくニルスも受け取れないようでふるふると首を振り「三日」と指定した。

「三日? 三日で何すんの。俺がケチと思われるでしょ。っていうか一週間でも少ないくらいなのに。本当は最低でも二週間は休ませてあげたかったんだけど他の者たちに反対されちゃってね」

 当たり前だろう。第二王子であるリックのそばで守ったり世話をしたり仕事をする人間が二人そろって休むだけでも普通なら反対される。
 結局エルヴィンすら口を挟めないリックとニルスの押し問答の結果、五日間の休暇となった。ありがたく受け取り、五日間丸ごと充足するためにも遠出をするつもりはなく、少し離れた田園地帯でニルスとゆっくり過ごす予定だ。静かで美しい風景を楽しみながらゆっくり別荘で過ごしてもいいし、多少あるだろう商店などを巡ってもいい。

 でも今は……。

 エルヴィンはニルスの首筋にも唇を這わせながら思った。

 ニルスを貪りたいし、ニルスに貪られたい。

 乱されていく自分の服をエルヴィンは自らも取り払っていく。ニルスの指や唇で触れられた箇所はどこもすぐに熱を持った。

「あ……、ニルス……」

 胸先が硬く尖っているのが自分でもわかる。そこを唇で咥えられるとふるりと体が震えた。

「し、た……触って……」
「……ああ」

 すらりとしつつもごつごつとした指の腹ですでにもたげていた自分のものに触れられると、エルヴィンは思わずキスしていたニルスの肩に歯を立てた。だがニルスは痛がる様子もなく続けてくる。

「ぁ、あ……、っなぁ、ニル、ス……」
「うん」
「今日こそ、最後、まで……する、よな?」
「……だが疲れてるのでは」
「は、あっ、そこ……やめ、ないで……! ぁ……、っつ、かれて、無理、ならこんな、ことも……しない、しっ」

 すでに水音の聞こえるそれを扱かれながら指の腹でぐりっと亀頭の先を撫でられ、エルヴィンは自然と腰が動いていた。ニルスは体勢を変えようとしていたのか一旦手を離す素振りを見せていたが、やめないでと言われてさらに続けてくれている。

「最後、まで……したい……」
「エルヴィン……。じゃ、あ……まず慣らして……みよう」
「うん、して……」

 今さら「俺が入れられる方なのか」という驚きはないし、元々どちらでもよかった。
 だが向き合って座っている状態でゆっくりと後ろからどの指かわからないものの中に入ってきても痛みはなく、むしろ前が扱かれたままだったのもありすぐ達してしまったエルヴィンは「受け入れる素質ありすぎかよ」と自分に内心突っ込みながらニルスの肩に顔を沈めた。
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