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163話
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そう返ってくるとはさすがに予想していなかった。確かにそれはわかるが、そうじゃない。
「い、いや。そうじゃなくて、えっと男同士のやり方っていうか」
苦笑しながら言えば、おそらく怪訝そうな顔をされた。そんなに怪訝そうな顔をされる難しいことを言っただろうかとエルヴィンのほうが怪訝な気持ちになる。
「……別に男女別云々は知らないが……単に俺は……いや……」
その上今まで性的なことだろうが淡々と口にしていたニルスが言い淀んでいる。
「単に?」
「……何でもない」
何でもなくは、ないよね? むしろ余計気になるだろ。
とはいえこの様子ではニルスはこのまま言わなさそうでしかない。
「とにかく、別に性別を気にして考えて、なかった」
ニルスらしい答えではある。だがどうにも気になる。あとついでに、性別を考えてないのはいいが、男相手にというか、肛門相手に気軽に突っ込めるものだと思われていてもそれはそれで困る。
え、どうしよう……ちょっとだけ、ちょっとだけならいいだろうか……?
迷っている素振りを自分自身に見せても仕方ないのだが、一応迷う素振りを出しつつエルヴィンはさっとポケットからケースを取り出した。そしてそれこそ迷うことなく制服につける。
「今、何故それを……?」
見ていたニルスがおそらく怪訝そうな顔をまたしているようだし、怪訝に思うだろうなとはエルヴィンも痛いほどわかる。話の途中でこれは、不審者なレベルで怪訝な行動だろう。だがとりあえずエルヴィンはニルスに笑いかけた。
「そういえば持ってるのにつけてなかったなと思って」
嘘は好きじゃないし得意でもない。だがこれくらいならエルヴィンとて処世術を身につけた貴族の端くれなので対応できる。
「そうか」
あとニルスはリックや俺に対して簡単に納得しすぎじゃない?
少々心配になりつつ、エルヴィンはそっとニルスの腕辺りに不自然じゃない程度に手を触れさせた。
『突然ブローチをつけたくなる気持ちは全然わからないけど、訳のわからないエルヴィンもかわいい』
反射的に顔が熱くなり、エルヴィンは触れていた手を離して顔を覆う。
「エルヴィン?」
「な、んでもない」
お前は俺が何してもかわいい、なのか? っていうか訳のわからない俺と思われてる……。
「そうか」
この「そうか」というのも本当に納得していることもあるのだろうが、単に気にしていないだけだったりもするのだなと改めて実感した。少なくとも今がそれだったと思われる。性的な話などをしつつ突然ブローチを取り出してケースから出してつけ出す訳のわからない男だと思っても、まさかの「かわいい」が付く、「そうか」だった。
気を取り直してエルヴィンはもう一度そっと手をニルスの腕にそっと触れさせた。だがひたすら「かわいい」としか聞こえてこない。
「あー……えっと、ほんとさっきは男女別は知らないけど単に何って言いかけたの?」
『単に俺がお前に欲情してお前のことをすべて貪りたくて堪らなくて、欲しくて堪らなくて、男同士だろうが男女だろうが関係なくお前に入れたくて堪らない、んだが、そんな自分勝手で最低なこと言えるはずがないから……』
「言って!」
「えっ?」
思わず口にしてしまい、また怪訝そうに見られた。だが今の質問の続きなのだろうと納得してくれたようで「……本当に、その……何でも、ない」と言いにくそうな様子で口にしてきた。
紳士なのはいいが、そういった激しい部分も全然出してくれて構わないのにとエルヴィンは思う。日頃から激しいところしかない人ならさすがにエルヴィンも引くだろうしついていけないが、ニルスならむしろたまに見せて欲しい。だが勝手に気持ちを読んでいるため、言えるはずもない。
「……あと、その……男女別は知らないって言うけど、その……尻は勝手に、その、濡れないし、簡単に解れないと思う、んだけ、ど」
そろそろこれは何プレイだろうかと思えてきた。今後のことも考えて明確にしておきたくはあるが、こういう方法ではなくもっと上手いやり方があるのではないだろうか。
「ああ、そうだろうな」
『もちろん、いずれする時はエルヴィンが傷つかないよう、永遠ともいう時間をかけて優しく解したい』
「それはそれで俺が死ぬ……」
色んな意味で。あと、どうやらニルスの中ではやはりというか、完全に役割は決まっているようだ。先ほどからの心の声で、それだけは間違いない。
っていうか、ニルス……知ってるんだ。あのニルスが? このニルスが? エッチなことを? 逆に何で知ってんの?
とはいえ聞けない前提でもし聞いたとしても「性教育で」と返ってきそうな気、しかしない。
「え? エルヴィンが死……?」
「死? は、はは。まさか。聞き違いじゃないかな」
はははと笑うとニルスからはまた「そうか」と返ってきたし心の中でも『そうか』と言っていた。心の中は表と違ってびっくりするくらい饒舌だが、基本的に裏表がないところがまた大好きだとエルヴィンは思う。そして自分のしていることに罪悪感を覚えた。
「い、いや。そうじゃなくて、えっと男同士のやり方っていうか」
苦笑しながら言えば、おそらく怪訝そうな顔をされた。そんなに怪訝そうな顔をされる難しいことを言っただろうかとエルヴィンのほうが怪訝な気持ちになる。
「……別に男女別云々は知らないが……単に俺は……いや……」
その上今まで性的なことだろうが淡々と口にしていたニルスが言い淀んでいる。
「単に?」
「……何でもない」
何でもなくは、ないよね? むしろ余計気になるだろ。
とはいえこの様子ではニルスはこのまま言わなさそうでしかない。
「とにかく、別に性別を気にして考えて、なかった」
ニルスらしい答えではある。だがどうにも気になる。あとついでに、性別を考えてないのはいいが、男相手にというか、肛門相手に気軽に突っ込めるものだと思われていてもそれはそれで困る。
え、どうしよう……ちょっとだけ、ちょっとだけならいいだろうか……?
迷っている素振りを自分自身に見せても仕方ないのだが、一応迷う素振りを出しつつエルヴィンはさっとポケットからケースを取り出した。そしてそれこそ迷うことなく制服につける。
「今、何故それを……?」
見ていたニルスがおそらく怪訝そうな顔をまたしているようだし、怪訝に思うだろうなとはエルヴィンも痛いほどわかる。話の途中でこれは、不審者なレベルで怪訝な行動だろう。だがとりあえずエルヴィンはニルスに笑いかけた。
「そういえば持ってるのにつけてなかったなと思って」
嘘は好きじゃないし得意でもない。だがこれくらいならエルヴィンとて処世術を身につけた貴族の端くれなので対応できる。
「そうか」
あとニルスはリックや俺に対して簡単に納得しすぎじゃない?
少々心配になりつつ、エルヴィンはそっとニルスの腕辺りに不自然じゃない程度に手を触れさせた。
『突然ブローチをつけたくなる気持ちは全然わからないけど、訳のわからないエルヴィンもかわいい』
反射的に顔が熱くなり、エルヴィンは触れていた手を離して顔を覆う。
「エルヴィン?」
「な、んでもない」
お前は俺が何してもかわいい、なのか? っていうか訳のわからない俺と思われてる……。
「そうか」
この「そうか」というのも本当に納得していることもあるのだろうが、単に気にしていないだけだったりもするのだなと改めて実感した。少なくとも今がそれだったと思われる。性的な話などをしつつ突然ブローチを取り出してケースから出してつけ出す訳のわからない男だと思っても、まさかの「かわいい」が付く、「そうか」だった。
気を取り直してエルヴィンはもう一度そっと手をニルスの腕にそっと触れさせた。だがひたすら「かわいい」としか聞こえてこない。
「あー……えっと、ほんとさっきは男女別は知らないけど単に何って言いかけたの?」
『単に俺がお前に欲情してお前のことをすべて貪りたくて堪らなくて、欲しくて堪らなくて、男同士だろうが男女だろうが関係なくお前に入れたくて堪らない、んだが、そんな自分勝手で最低なこと言えるはずがないから……』
「言って!」
「えっ?」
思わず口にしてしまい、また怪訝そうに見られた。だが今の質問の続きなのだろうと納得してくれたようで「……本当に、その……何でも、ない」と言いにくそうな様子で口にしてきた。
紳士なのはいいが、そういった激しい部分も全然出してくれて構わないのにとエルヴィンは思う。日頃から激しいところしかない人ならさすがにエルヴィンも引くだろうしついていけないが、ニルスならむしろたまに見せて欲しい。だが勝手に気持ちを読んでいるため、言えるはずもない。
「……あと、その……男女別は知らないって言うけど、その……尻は勝手に、その、濡れないし、簡単に解れないと思う、んだけ、ど」
そろそろこれは何プレイだろうかと思えてきた。今後のことも考えて明確にしておきたくはあるが、こういう方法ではなくもっと上手いやり方があるのではないだろうか。
「ああ、そうだろうな」
『もちろん、いずれする時はエルヴィンが傷つかないよう、永遠ともいう時間をかけて優しく解したい』
「それはそれで俺が死ぬ……」
色んな意味で。あと、どうやらニルスの中ではやはりというか、完全に役割は決まっているようだ。先ほどからの心の声で、それだけは間違いない。
っていうか、ニルス……知ってるんだ。あのニルスが? このニルスが? エッチなことを? 逆に何で知ってんの?
とはいえ聞けない前提でもし聞いたとしても「性教育で」と返ってきそうな気、しかしない。
「え? エルヴィンが死……?」
「死? は、はは。まさか。聞き違いじゃないかな」
はははと笑うとニルスからはまた「そうか」と返ってきたし心の中でも『そうか』と言っていた。心の中は表と違ってびっくりするくらい饒舌だが、基本的に裏表がないところがまた大好きだとエルヴィンは思う。そして自分のしていることに罪悪感を覚えた。
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