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151話
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ようやく自分も楽になり、ニルスはエルヴィンを抱えて浴室へ向かうことにした。多分この様子ではちょっとやそっとでは目を覚まさないだろう。
エルヴィンをとりあえずざっと綺麗にしてからその体を一旦ソファーに横たえさせ、ベッドのシーツを取り除く。一瞬それを持ち帰りたくなったことに我ながら引きつつ、証拠隠滅とばかりに暖炉に押し込むようにして放り込み自分のささやかな火魔法で燃やした。明日、シーツのないベッドにベッドメイキングに来たメイドが唖然とするかもだが、どろどろに汚れたシーツの処理をさせるよりましだろう。
浴室でエルヴィンの体を綺麗にしている間、またきつくなってきたが何とか堪えられた。エルヴィンがこんなことになるのが、あの一夜を過ごした後でよかったとニルスは少し思う。そうでないとニルスがまだ何も知らないままだったであろうエルヴィンの全てを暴いて貪りたくて堪らなくて、とても我慢できそうになかった気がする。
あと、俺が大人になってからでよかった。
思春期だったとしても我慢できずに襲っていたかもしれない。成人している今ですら、何とか堪えているくらいだ。
悶々とした苦しい思いはそれでも抱えざるを得ない。何度も小さくため息をつきつつ、ニルスはようやくまたエルヴィンを抱えて浴室を出た。そしてリックがまだ手をつけていない、いくつもある新品の部屋着から、エルヴィンが入りそうなものを見つけて着させた。勝手に借りることに今さら罪悪感はない。仕事が立て込んでそのままリックの寝室にあるソファーで眠ったこともニルスは多々ある。その際にも遠慮なく浴室を借りたし部屋着も使わせてもらっていた。リックもそれに対し当たり前だと思っているのか気にする様子すらなかった。
またエルヴィンを抱えるとベッドに横たえさせる。布団を被せてようやくニルスは人心地ついた気になった。今までは下手に動かして怪我をしないよう、また油断して自分が妙なことをエルヴィンにしでかさないよう、度々息をつめていたようだ。
ホッとしてエルヴィンの顔をもう一度窺った。あれだけ動かしたり湯に浸からせたり着替えさせたりしても全然目を覚ます様子がなかったエルヴィンは今も小さな寝息を立てて眠っている。おそらくよほど疲れたのだろう。
多分俺でもぐったりするな……。
何度達していたか、途中からもう数えてもいない。人がそんなに射精して大丈夫なのかと心配になるくらい、エルヴィンは達していた。明日以降、何か悪い影響がどこかに出なければいいがという心配がまだあるものの、とりあえずは泥のようにひたすら眠りたいだけぐっすり眠って欲しいと思う。
「……おやすみ、エルヴィン」
顔を覗き込んでいたニルスはそっとエルヴィンの頬にキスをした。唇にしてしまったらまだ少々くすぶっている自分を止められない可能性がある。
その後、ニルスはソファーへ向かった。リックと違って恋人であるエルヴィンと一緒のベッドを使うことはおかしなことではないだろうし、むしろ一緒に眠りたい。だがこれも自分に歯止めがかからなくなる可能性があるので諦めた。
ソファーでもしばらく悶々としていたものの、今眠らなければ明日に影響があると戒めて深呼吸を繰り返すなどでその後眠ることはできた。
翌朝、目が覚めてベッドをさっと見る。エルヴィンはまだ眠っているようだった。
ニルスは起き上がり、近づいた。カーテンの隙間から漏れる朝日に照らされたエルヴィンを見るのが妙に居たたまれない。多分昨夜自分がほぼ意識のないエルヴィンにしたことが影響しているのだろうとニルスは思った。
不可抗力とはいえ、あんなに様々なことをしてしまった……俺が……エルヴィンに……。
片手で目を覆うも、ニルスは頭を振ってからベッドを離れた。
こんな清々しい朝だというのに、エルヴィンを見ていると昨夜のことが思い出される上に、朝日に照らされたエルヴィンが尊すぎて、なおさら居たたまれない。おまけにまた悶々としそうでもある。
とりあえず身支度を整えるとニルスは部屋を出た。
「おはよう、ニルス」
すると執務室で普段なら絶対こんな朝からいないリックがにこやかにソファーで茶を飲んでいる。
「……早いな」
「そりゃあ幼馴染たちが心配で」
「心配なら、その訳知り顔をまず、やめろ」
とはいえエルヴィンが心配なのは本当だろう。
「いい夜を過ごせた?」
「……あのエルヴィを目の当たりにしておいて、本当にそう思うのか?」
「はは。彼は大丈夫?」
「ああ、多分。今はまだ眠ってる」
「起きるまでいてあげて。仕事はそれからでいいよ。俺はまた別の執務室使うし」
「……いや。やらなければならないことをする。あと……」
「何?」
「……その、エルヴィンと顔を合わせづらい」
ぼそりと言えば、ポカンとした後でリックがまた訳知り顔となった。少々忌々しい。
「なるほど。でも今乗り越えないとずっと合わせづらかったらどうするの?」
それはニルスも少し考えた。だがとりあえずまだ今のうちは自分を取り繕えないだけだという結論は出ている。
「昼過ぎまでには自分を取り戻して落ち着かせる」
「はは。了解。じゃあエルヴィンが起きる気配したら、俺が顔を出すからね?」
「むしろ頼む。具合が大丈夫そうか、見て欲しい」
エルヴィンをとりあえずざっと綺麗にしてからその体を一旦ソファーに横たえさせ、ベッドのシーツを取り除く。一瞬それを持ち帰りたくなったことに我ながら引きつつ、証拠隠滅とばかりに暖炉に押し込むようにして放り込み自分のささやかな火魔法で燃やした。明日、シーツのないベッドにベッドメイキングに来たメイドが唖然とするかもだが、どろどろに汚れたシーツの処理をさせるよりましだろう。
浴室でエルヴィンの体を綺麗にしている間、またきつくなってきたが何とか堪えられた。エルヴィンがこんなことになるのが、あの一夜を過ごした後でよかったとニルスは少し思う。そうでないとニルスがまだ何も知らないままだったであろうエルヴィンの全てを暴いて貪りたくて堪らなくて、とても我慢できそうになかった気がする。
あと、俺が大人になってからでよかった。
思春期だったとしても我慢できずに襲っていたかもしれない。成人している今ですら、何とか堪えているくらいだ。
悶々とした苦しい思いはそれでも抱えざるを得ない。何度も小さくため息をつきつつ、ニルスはようやくまたエルヴィンを抱えて浴室を出た。そしてリックがまだ手をつけていない、いくつもある新品の部屋着から、エルヴィンが入りそうなものを見つけて着させた。勝手に借りることに今さら罪悪感はない。仕事が立て込んでそのままリックの寝室にあるソファーで眠ったこともニルスは多々ある。その際にも遠慮なく浴室を借りたし部屋着も使わせてもらっていた。リックもそれに対し当たり前だと思っているのか気にする様子すらなかった。
またエルヴィンを抱えるとベッドに横たえさせる。布団を被せてようやくニルスは人心地ついた気になった。今までは下手に動かして怪我をしないよう、また油断して自分が妙なことをエルヴィンにしでかさないよう、度々息をつめていたようだ。
ホッとしてエルヴィンの顔をもう一度窺った。あれだけ動かしたり湯に浸からせたり着替えさせたりしても全然目を覚ます様子がなかったエルヴィンは今も小さな寝息を立てて眠っている。おそらくよほど疲れたのだろう。
多分俺でもぐったりするな……。
何度達していたか、途中からもう数えてもいない。人がそんなに射精して大丈夫なのかと心配になるくらい、エルヴィンは達していた。明日以降、何か悪い影響がどこかに出なければいいがという心配がまだあるものの、とりあえずは泥のようにひたすら眠りたいだけぐっすり眠って欲しいと思う。
「……おやすみ、エルヴィン」
顔を覗き込んでいたニルスはそっとエルヴィンの頬にキスをした。唇にしてしまったらまだ少々くすぶっている自分を止められない可能性がある。
その後、ニルスはソファーへ向かった。リックと違って恋人であるエルヴィンと一緒のベッドを使うことはおかしなことではないだろうし、むしろ一緒に眠りたい。だがこれも自分に歯止めがかからなくなる可能性があるので諦めた。
ソファーでもしばらく悶々としていたものの、今眠らなければ明日に影響があると戒めて深呼吸を繰り返すなどでその後眠ることはできた。
翌朝、目が覚めてベッドをさっと見る。エルヴィンはまだ眠っているようだった。
ニルスは起き上がり、近づいた。カーテンの隙間から漏れる朝日に照らされたエルヴィンを見るのが妙に居たたまれない。多分昨夜自分がほぼ意識のないエルヴィンにしたことが影響しているのだろうとニルスは思った。
不可抗力とはいえ、あんなに様々なことをしてしまった……俺が……エルヴィンに……。
片手で目を覆うも、ニルスは頭を振ってからベッドを離れた。
こんな清々しい朝だというのに、エルヴィンを見ていると昨夜のことが思い出される上に、朝日に照らされたエルヴィンが尊すぎて、なおさら居たたまれない。おまけにまた悶々としそうでもある。
とりあえず身支度を整えるとニルスは部屋を出た。
「おはよう、ニルス」
すると執務室で普段なら絶対こんな朝からいないリックがにこやかにソファーで茶を飲んでいる。
「……早いな」
「そりゃあ幼馴染たちが心配で」
「心配なら、その訳知り顔をまず、やめろ」
とはいえエルヴィンが心配なのは本当だろう。
「いい夜を過ごせた?」
「……あのエルヴィを目の当たりにしておいて、本当にそう思うのか?」
「はは。彼は大丈夫?」
「ああ、多分。今はまだ眠ってる」
「起きるまでいてあげて。仕事はそれからでいいよ。俺はまた別の執務室使うし」
「……いや。やらなければならないことをする。あと……」
「何?」
「……その、エルヴィンと顔を合わせづらい」
ぼそりと言えば、ポカンとした後でリックがまた訳知り顔となった。少々忌々しい。
「なるほど。でも今乗り越えないとずっと合わせづらかったらどうするの?」
それはニルスも少し考えた。だがとりあえずまだ今のうちは自分を取り繕えないだけだという結論は出ている。
「昼過ぎまでには自分を取り戻して落ち着かせる」
「はは。了解。じゃあエルヴィンが起きる気配したら、俺が顔を出すからね?」
「むしろ頼む。具合が大丈夫そうか、見て欲しい」
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