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147話
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「エルヴィン……もう少し我慢して……今の様子からして、俺の魔法じゃ火に油かもしれない。かといって強い魔法は副作用が怖くてかけられないし……ニルスがもう少ししたら帰ってくるから。だからもう少し頑張って」
「や……だってこれ、きつ……」
「うん、うん、きついね……でもいい子だから。俺が助けてあげてもいい、というか助けてあげたいけど……」
「じゃ、あ、助け……」
「でも駄目……」
「たの、む……おねが……」
「ごめんね……意地悪でじゃないんだよ……できるなら俺だってしてあげたいけど……俺は君だけじゃなくニルスも大好きなんだ。君とニルスとはね、これからも俺はいい感じに付き合っていきたいから……」
そろそろリックが何を言っているのかさえわからなくなってきた。今エルヴィンに考えられることは「とにかく出したい」だ。ひたすらもうそれしかない。
あまりにきつくて涙さえ出てきた。顔も体もどこもかしこも熱い。
もういっそ、自分で……。
楽になってしまいたいあまり、自らズボンを寛げて処理しようとした。だがリックの「エルヴィン、頑張って」というどこか切羽詰まってそうでいて、それでも穏やかな声にぎりぎりハッとなる。
今俺は何しようとした……? リックの目の前であろうことか自慰……嘘だろ……。
血の気が引きそうな感じはだがすぐ、訪れたさらなる大波のような感覚にあっという間に飲み込まれた。いっそ血の気が引いてくれたほうがよかったというのに、ますます熱くなる。
「い、やだ……」
風前の灯火のような理性にエルヴィンは必死にすがっていた。これがぷつんと切れてしまったらもう最後だと思った。
きっとリックが見てようが無茶苦茶に自分のものを扱いてしまう。もしくはリックに襲いかかってしまうかもしれない。
襲いかかっ……何で駄目? だって……お互い男じゃないか。尻を使わなければ男だし……心に傷なんて……だから……いいよな? だってしたい。
じゃない、馬鹿やろ……しっかりしろよ俺……リックに何しようとして……ううん、別に俺がしなくてもしてもらっても、いいだろ……そうだよ、してもらうなら俺は襲わないしまだ……、じゃないだろ……!
「リ……ック」
「クソ……! ああ……頼む、ニルス早く……」
「せ、めて抱き、し……」
抱きしめてもらえればマシにならないだろうか。落ち着かないだろうか。
抱きしめて……ああ、そのまま抱きしめて俺をめちゃくちゃに……じゃな、い……!
言いかけたエルヴィンを、リックは少し躊躇してからぎゅっと抱きしめてくれた。だが強く抱きしめるだけで、やはり何もしない。
抱きしめられた瞬間は少し体や心が弛緩した気がしたが、結局これも火に油だ。
「む、り……」
目が回りそうだ。いや、回っているのは頭の中か。もう訳がわからない。わかるのはただひたすら熱を冷ましたいということだけだ。頭の中がもうとにかくごちゃごちゃとして正直目に入ってくる視界すら自分の中で把握できなくなってきた。聴覚もしかりだ。
冷まさないとこれは、まずいの、では……?
そう、冷ましたい、すっきりしたいんだよ、そう……すっきり……したい楽になりたい抜きたい出したい出したい出したい出したい──
その後のことは正直もうわからなかった。幸いというのだろうか、意識を保てなくなったのかもしれない。もしくは気絶してはいないものの理性が飛びすぎて記憶できていないだけかもしれない。どのみちそうだとしても最終的には気を保つことができなかったのだろう。気づけばエルヴィンはベッドにいて目を覚ました状態だった。
恐る恐る体を起こす。あの時は何だったのかと信じられないくらい、嘘みたいに体も心も何もかも、正常だと思えた。またもや恐る恐る布団をめくりあげて自分の体を見てみたが、着ていた服ではないものの、ちゃんと清潔なおそらく部屋着を身に着けている。そのさらりとした布の感触が心地いいし、当然体に触れていても訳のわからない欲に突き動かされはしない。
エルヴィンはホッとため息をついた。そして辺りを見渡す。
「……誰の、部屋だ……?」
少なくとも自分の部屋ではなかったし、宮殿にある休憩室や医務室でもない。おまけにニルスの部屋でもなかった。
……まさか。
シックな雰囲気ではあるが、やたらと大きなベッドも、周りの調度品もはっきり言って見るからに相当高級そうであることがすぐさまわかる。この室内全てのものどころか一つ二つ程度でさえ、エルヴィンなら自分で買いそろえることをためらいそうなほど高級なものだとわかった。
「まさか……まさか」
今度こそ本当に血の気が引いた。動揺し固まっているとノックが聞こえてくる。
「は……い」
喉がひりつく。声が出ないかと思ったが何とか出た。しかしその声は相当枯れている。ただしこれの原因は動揺と緊張だけではなさそうだ。
待って、神様。ほんと待って。
「エルヴィン? もう大丈夫?」
「ああ、神よ……!」
入ってきた相手を見た途端、エルヴィンは声を振り絞りながら叫びつつ、ベッドにまだ座ったまま両手で顔を覆いつくした。覆う前に相手が思いきりビクッとしたのが見えた。
「だ、大丈夫じゃ、ないのかな……」
頭は、頭は大丈夫……頭は、な。
エルヴィンは心の中で相手に向かって呟いた。
部屋に入ってきたのは、多分おそらくそうだろうなと思いつつ、そうではありませんようにと願った相手、リックだった。
「や……だってこれ、きつ……」
「うん、うん、きついね……でもいい子だから。俺が助けてあげてもいい、というか助けてあげたいけど……」
「じゃ、あ、助け……」
「でも駄目……」
「たの、む……おねが……」
「ごめんね……意地悪でじゃないんだよ……できるなら俺だってしてあげたいけど……俺は君だけじゃなくニルスも大好きなんだ。君とニルスとはね、これからも俺はいい感じに付き合っていきたいから……」
そろそろリックが何を言っているのかさえわからなくなってきた。今エルヴィンに考えられることは「とにかく出したい」だ。ひたすらもうそれしかない。
あまりにきつくて涙さえ出てきた。顔も体もどこもかしこも熱い。
もういっそ、自分で……。
楽になってしまいたいあまり、自らズボンを寛げて処理しようとした。だがリックの「エルヴィン、頑張って」というどこか切羽詰まってそうでいて、それでも穏やかな声にぎりぎりハッとなる。
今俺は何しようとした……? リックの目の前であろうことか自慰……嘘だろ……。
血の気が引きそうな感じはだがすぐ、訪れたさらなる大波のような感覚にあっという間に飲み込まれた。いっそ血の気が引いてくれたほうがよかったというのに、ますます熱くなる。
「い、やだ……」
風前の灯火のような理性にエルヴィンは必死にすがっていた。これがぷつんと切れてしまったらもう最後だと思った。
きっとリックが見てようが無茶苦茶に自分のものを扱いてしまう。もしくはリックに襲いかかってしまうかもしれない。
襲いかかっ……何で駄目? だって……お互い男じゃないか。尻を使わなければ男だし……心に傷なんて……だから……いいよな? だってしたい。
じゃない、馬鹿やろ……しっかりしろよ俺……リックに何しようとして……ううん、別に俺がしなくてもしてもらっても、いいだろ……そうだよ、してもらうなら俺は襲わないしまだ……、じゃないだろ……!
「リ……ック」
「クソ……! ああ……頼む、ニルス早く……」
「せ、めて抱き、し……」
抱きしめてもらえればマシにならないだろうか。落ち着かないだろうか。
抱きしめて……ああ、そのまま抱きしめて俺をめちゃくちゃに……じゃな、い……!
言いかけたエルヴィンを、リックは少し躊躇してからぎゅっと抱きしめてくれた。だが強く抱きしめるだけで、やはり何もしない。
抱きしめられた瞬間は少し体や心が弛緩した気がしたが、結局これも火に油だ。
「む、り……」
目が回りそうだ。いや、回っているのは頭の中か。もう訳がわからない。わかるのはただひたすら熱を冷ましたいということだけだ。頭の中がもうとにかくごちゃごちゃとして正直目に入ってくる視界すら自分の中で把握できなくなってきた。聴覚もしかりだ。
冷まさないとこれは、まずいの、では……?
そう、冷ましたい、すっきりしたいんだよ、そう……すっきり……したい楽になりたい抜きたい出したい出したい出したい出したい──
その後のことは正直もうわからなかった。幸いというのだろうか、意識を保てなくなったのかもしれない。もしくは気絶してはいないものの理性が飛びすぎて記憶できていないだけかもしれない。どのみちそうだとしても最終的には気を保つことができなかったのだろう。気づけばエルヴィンはベッドにいて目を覚ました状態だった。
恐る恐る体を起こす。あの時は何だったのかと信じられないくらい、嘘みたいに体も心も何もかも、正常だと思えた。またもや恐る恐る布団をめくりあげて自分の体を見てみたが、着ていた服ではないものの、ちゃんと清潔なおそらく部屋着を身に着けている。そのさらりとした布の感触が心地いいし、当然体に触れていても訳のわからない欲に突き動かされはしない。
エルヴィンはホッとため息をついた。そして辺りを見渡す。
「……誰の、部屋だ……?」
少なくとも自分の部屋ではなかったし、宮殿にある休憩室や医務室でもない。おまけにニルスの部屋でもなかった。
……まさか。
シックな雰囲気ではあるが、やたらと大きなベッドも、周りの調度品もはっきり言って見るからに相当高級そうであることがすぐさまわかる。この室内全てのものどころか一つ二つ程度でさえ、エルヴィンなら自分で買いそろえることをためらいそうなほど高級なものだとわかった。
「まさか……まさか」
今度こそ本当に血の気が引いた。動揺し固まっているとノックが聞こえてくる。
「は……い」
喉がひりつく。声が出ないかと思ったが何とか出た。しかしその声は相当枯れている。ただしこれの原因は動揺と緊張だけではなさそうだ。
待って、神様。ほんと待って。
「エルヴィン? もう大丈夫?」
「ああ、神よ……!」
入ってきた相手を見た途端、エルヴィンは声を振り絞りながら叫びつつ、ベッドにまだ座ったまま両手で顔を覆いつくした。覆う前に相手が思いきりビクッとしたのが見えた。
「だ、大丈夫じゃ、ないのかな……」
頭は、頭は大丈夫……頭は、な。
エルヴィンは心の中で相手に向かって呟いた。
部屋に入ってきたのは、多分おそらくそうだろうなと思いつつ、そうではありませんようにと願った相手、リックだった。
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