彼は最後に微笑んだ

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127話 ※

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「寝るはずだったろ」
「うん」
「結局やっぱり一緒じゃゆっくり眠れてないじゃないか」
「うん」

 エルヴィンの言葉に頷いてくるものの、ニルスはエルヴィンの体に触れるのをやめない。

 ほんと何やってんの俺ら。

 風呂から出てニルスの部屋へ向かい、ベッドにダイブして少しだけ睡眠をとる予定だった。だが決行できたのはダイブまでだった。ニルスの匂いに包まれたエルヴィンが眠れるはずもなく。
 どうしようかともぞもぞしつつ思っていたら、ニルスも眠れない様子で、気づけばまた絡み合っていた。
 少しでも気をそらそうとニルスに背を向けていたのだが、背後から抱きしめられ首筋にキスされながら体に触れられた。何か言おうと振り向けば唇にキスされる。気づけばまた服を乱し合っていた。
 とはいえさすがに眠さもかなりある。匂いに包まれて眠れなかったくせに、いざ行為に及ぼうとすると睡魔が激しく襲ってくる現象は何なのだろうか。

「ニルス、俺眠い」
「ああ」
「お前も眠いだろ?」
「ああ」
「じゃあ寝ようよ」
「そうだな」

 そうだなと同意しながら俺の胸、後ろから触るのやめない?

 だいたい、胸で気持ちよくなるはずなんてなかった。遡る前に性的なことをする機会はそこそこあったが、相手の女性から胸を責められることはまずなかった。それに先入観かもしれないが、同性同士だと下だけ刺激すればいいように思っていた。
 だが一晩中絡み合っていた時散々ニルスに触れられたり舐められたり吸われたりしているうちに、少し触れられても反応して乳首が硬くなってしまうようになり、正直戸惑っている。
 今も耳にキスしながらニルスの少し硬い指の腹で撫でるように触れられ、胸先どころか下半身も完全に反応してしまっている。指の感触がたまらなく気持ちよくて、脳が感じ取る快楽の許容量を超えてしまいそうになる。

 これ、駄目なやつだ。絶対超えたら駄目なやつ……!

 逃れようとするが相変わらずさりげにニルスの力が強いからか、逃れられない。抱きしめられても全然締めつけや痛みなどはないというのに、いざ逃れようとすればがんじがらめに抱擁されていたのだと気づく。
 せめて変な声が出ないようにあえて深い息を吐くと、さらに後ろからがっちり足でホールドされた。

「こ、れじゃ……俺、身動きできない」
「うん」
「お前に好き勝手されるだけになる」
「うん」

 また頷きながら、ニルスの空いているほうの手がエルヴィンのすでに反応しているものに伸びてきた。

「どっちも触るの反則……!」
「何故?」
「……気持ちよくてすぐいっちゃうだろ、俺が」

 とはいえ、乳首だけに触れられていた時よりは危機感は薄れた。エルヴィンの脳も「安心して射精していいからね」と言っている気がする。乳首だけの時は射精の伴わない、わけのわからない内側の何かに襲われそうになっていた。それはエルヴィンの知識を超えているし味わってはいけないような気がして仕方なかったため、一応射精感にはホッとする。
 ただ、さすがに射精もしすぎな気がする。

「そうだな」
「そうだな、じゃないんだよ。それなら俺だってお前にしたいって一晩中言ってるだろ」
「ああ」
「あと、そろそろもう出るもん、ないんだけど」
「大丈夫……出てる」

 これが証拠と言わんばかりにニルスの手は動きながら水音を立ててくる。

「ニルス……もう、ほんと……、……ぁ、っわかった。じゃあ、一方的にいかされたら、今度こそ俺、お前の咥えるから」
「……っ」

 いままでは何となくしか感じていなかった背後の硬いものが急にはっきり感じられるようになった。

 何だよ、心臓に悪いとかいいながら、すでに硬かったはずのもの、さらにおっきくしてるじゃないか。

 絶対お前、ムッツリだろと少し思った。だがそれはそれでありな気がしてくるどころか少し嬉しささえ感じる程度には、やはりエルヴィンは堪らなくニスルのことが好きらしい。結局、今もやめて欲しくない。
 一瞬戸惑ったように手が止まったニルスの手を、エルヴィンはそれぞれ包み込むように触れて促した。

「やめるの? 俺、もう堪らなくて……いきそう」

 背後から息を飲む音が聞こえてきたかと思うと先ほどよりも動きが早くなった。乳首の刺激が相まって、今にも射精してしまいそうだ。

「あ……、あっ、あ……っ」

 完全に馬鹿になっている。でももうそれでいい。
 それ以上何も考えられず、エルヴィンはびくびくと体を震わせながら達した。

 ……やっぱり……薄い……。

 ほとんど出てない気がする。あと達したせいで今度こそ死ぬほど眠い。

 でも寝ないからな。お前の、咥えていかせるまで。

 もぞもぞと動くと、エルヴィンは自分と同じくガウンだけまとっているニルスの下半身に顔を近づけるとガウンをめくりあげた。

 ……顎、外れないかな……。

 ニルスのものを改めて間近で見たおかげで少し目が覚めた。

「エルヴィン……駄目だ」

 ぼそりと苦しげな声が聞こえた。駄目と言うものの、ちゃんとそこはまだ触れてもいないというのに思いきり反応している。

「駄目? これが?」

 そこから顔を上げて笑いかけるとニルスが口元に手を当てて顔を少しそらしてきた。ニルスにしては珍しい反応かもしれない。

 期待、してくれてる、のかな?

 だといいけれども、とエルヴィンは恐る恐る口を開けた。大好きだし愛しいし、だからニルスのこの凶悪そうな男らしい硬くて熱いものも好きだ。
 だがいざ口に含むとなると緊張にも似た何かを感じる。自分についているものと同じこれを自分は本当に咥えて愛撫できるのだろうかと頭に過る。

 いや、いける。大丈夫。俺ならいける。

 少し舌を出しながらまず先のほうを口に含んだ。それだけだった。
 だがその瞬間、エルヴィンの口の中に温かいながらに何となくイガイガしたものが広がっていくのを感じた。
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