126 / 193
126話
しおりを挟む
結局ニルスはそのまま翌日までエルヴィンの部屋にいた。食事もニルスが手配したのか部屋に二人分運ばれてきた。いや、ニルスよりはリックのほうがこういうことを陰でしそうだが、エルヴィンとしてはリックがそこまで考慮して手配しているとは考えたくない。
さすがに入浴は浴槽を運んでもらうなどむしろしたくないため部屋から出ないとだが、二人して風呂に入ったのは朝方だった。それまで最低限のしなければならないことをする以外ずっと二人はベッドにいた。
食事が運ばれてきた時はニルスがガウンを羽織ってドアまで出たのもあり、エルヴィンはトイレへ行く以外本当に動いていない。こんな怠惰なことなど、病気などで寝込んでいた時以外今までしたことがないかもしれない。ひたすらベッドで過ごすだけでなく、ずっと絡み合うなど何て怠惰で、そして淫靡的で官能的でけだるい快楽なのだろう。
今まで禁欲的というか、健全なお付き合いをひたすらしていた二人だからだろうか、本当にずっと絡み合っていた。
とはいえベッドでしたのは絡み合いつつも体中への触れ合いやキスや抜き合うくらいだろうか。どちらかがどちらかに挿入するという行為はしていないどころか口でもしていない。エルヴィンがしようとしたら「まだ心臓に悪い」とよくわからないことを言われた。仕返しに、ニルスが「俺がする」と言ってきてもお預けにさせてもらった。
……俺は何となく知ってるけど……ニルスは知ってんのかな。尻の穴に入れる行為。
別に入れなくとも抜きあうだけでも十分気持ちいいし心も交わせている気がするので問題はない。ただ、してみたい好奇心はある。あるが、もし入れられる側なのだとしたらあれほどのものが自分の尻穴に入るのかという謎と、入れて大丈夫なのかという恐怖心もある。
なら自分が入れる側でいいのではと思うが、ニルスとのやり取りで、明確に「入れたい」と言われたことも思われたこともないが何となくエルヴィンは受け入れる側に想定されているような気はしている。
でも、もし実はニルスが挿入まで考えてないなら、俺が入れるのもありかな。
とはいえ恐怖心はあるものの、ニルス相手なら正直どちらでもいい。譲れない何かは、ない。
朝方に入浴しに行ったのは、散々絡み合ってその時間になってしまったのもあるが、絡み合い続けたせいでお互い何となくどろどろになっている気がするせいもある。誰にも会わずに入浴してしまいたかった。
だいたい、何度抜き合ったかもうわからないんだけど。
連続してではなく、射精して気だるい体のままお互い抱き合い、キスをして触れ合っていくうちにまた次第にその気になって、を繰り返していたと思う。エルヴィンもおそらくニルスも体力には自信あるほうだったが、さすがに疲れた。
でも最高によかった……。
朝方でも熱い湯が用意されていることを喜びつつ入浴しながら思い出し、エルヴィンはまた自身がもたげそうになっていることに気づいて呆れた。
俺、馬鹿になったの? いや、これは仕方ないよな……だってずっと清い関係だったし。なのにニルスはいつ見てもカッコいいしかわいいし、何ならエロいしで。
いざ絡み合ってなおさらニルスそのものがエルヴィンの劣情を煽りたててくることに気づいた。何なら休みをもらっている今日一日ずっと絡み合っていてもまだ足りない勢いかもしれない。
それもいいのではと思ってしまうが、そんな風に過ごしてしまうと明日以降日常生活に復帰できる自信がない。きっとこのまま永遠に絡み合いたいと思ってしまいそうだ。
「ニルス」
「うん」
「あんだけベッドでその、絡み合ったんだし、さすがに俺が倒れるのではなんてもう思ってないよな?」
「……うん」
間があったのでニルスを見たが、顔を逸らしているのかただでさえわかりにくい表情だけでなく、顔色すらわからない。
まあ、いいや。
「なら一眠りしたら改めて町にでも出る?」
さすがに多少は寝ないとまずいだろう。絡み合いながら、少しうとうとはしたが、ちゃんと眠っていない。
「ああ」
エルヴィンは真面目だしニルスも真面目だ。だがこういう時に「体調を心配して休みをもらっているのに遊びに出かけるなんて」とは言わないし思わない。いい人だが生真面目過ぎるフリッツなら言いそうだが、こういうところも合うよなあとエルヴィンはしみじみ思った。
真面目だけど、気を抜くとこは抜く。
風呂から出ると二人はニルスの部屋へ向かった。さすがにあからさまな痕跡は残していないつもりだが、乱れに乱れたシーツを見てしまうと風呂上りに合わないというか、風呂に入った意味なくまた何かやらかしてしまいそうだ。
でもニルスの部屋も結局よくなかったかも。
ここに滞在している間だけ使わせてもらっている部屋だ。それでもニルスのものが置かれている部屋だし、なによりそこで基本眠っているニルスの匂いがベッドについている気がする。
本人がそばにいるだけでなくベッドでニルスの匂いに包まれる状況は、ニルスの味を占めてしまったエルヴィンにとっては毒ですらある。
「俺、自分の部屋に戻ろうかな」
「何故?」
「いや、お互いゆっくり眠りたいだろ?」
「お前がいても眠れる」
俺は眠れなさそうなの、わかって。
「でもほら……」
「……ずっとあんなことをしていた俺と一緒は嫌か……?」
表情はほぼ変わらないくせに、切なげに落ち込んだニルスが見えた気がしてエルヴィンは思いきり頭を横にぶんぶんと振っていた。
「そんなわけないだろ! 一緒に寝るよ、寝るに決まってる!」
「うん」
何言っちゃってんの俺。
これで眠れないまま今日を過ごすことはほぼ決定になった。
さすがに入浴は浴槽を運んでもらうなどむしろしたくないため部屋から出ないとだが、二人して風呂に入ったのは朝方だった。それまで最低限のしなければならないことをする以外ずっと二人はベッドにいた。
食事が運ばれてきた時はニルスがガウンを羽織ってドアまで出たのもあり、エルヴィンはトイレへ行く以外本当に動いていない。こんな怠惰なことなど、病気などで寝込んでいた時以外今までしたことがないかもしれない。ひたすらベッドで過ごすだけでなく、ずっと絡み合うなど何て怠惰で、そして淫靡的で官能的でけだるい快楽なのだろう。
今まで禁欲的というか、健全なお付き合いをひたすらしていた二人だからだろうか、本当にずっと絡み合っていた。
とはいえベッドでしたのは絡み合いつつも体中への触れ合いやキスや抜き合うくらいだろうか。どちらかがどちらかに挿入するという行為はしていないどころか口でもしていない。エルヴィンがしようとしたら「まだ心臓に悪い」とよくわからないことを言われた。仕返しに、ニルスが「俺がする」と言ってきてもお預けにさせてもらった。
……俺は何となく知ってるけど……ニルスは知ってんのかな。尻の穴に入れる行為。
別に入れなくとも抜きあうだけでも十分気持ちいいし心も交わせている気がするので問題はない。ただ、してみたい好奇心はある。あるが、もし入れられる側なのだとしたらあれほどのものが自分の尻穴に入るのかという謎と、入れて大丈夫なのかという恐怖心もある。
なら自分が入れる側でいいのではと思うが、ニルスとのやり取りで、明確に「入れたい」と言われたことも思われたこともないが何となくエルヴィンは受け入れる側に想定されているような気はしている。
でも、もし実はニルスが挿入まで考えてないなら、俺が入れるのもありかな。
とはいえ恐怖心はあるものの、ニルス相手なら正直どちらでもいい。譲れない何かは、ない。
朝方に入浴しに行ったのは、散々絡み合ってその時間になってしまったのもあるが、絡み合い続けたせいでお互い何となくどろどろになっている気がするせいもある。誰にも会わずに入浴してしまいたかった。
だいたい、何度抜き合ったかもうわからないんだけど。
連続してではなく、射精して気だるい体のままお互い抱き合い、キスをして触れ合っていくうちにまた次第にその気になって、を繰り返していたと思う。エルヴィンもおそらくニルスも体力には自信あるほうだったが、さすがに疲れた。
でも最高によかった……。
朝方でも熱い湯が用意されていることを喜びつつ入浴しながら思い出し、エルヴィンはまた自身がもたげそうになっていることに気づいて呆れた。
俺、馬鹿になったの? いや、これは仕方ないよな……だってずっと清い関係だったし。なのにニルスはいつ見てもカッコいいしかわいいし、何ならエロいしで。
いざ絡み合ってなおさらニルスそのものがエルヴィンの劣情を煽りたててくることに気づいた。何なら休みをもらっている今日一日ずっと絡み合っていてもまだ足りない勢いかもしれない。
それもいいのではと思ってしまうが、そんな風に過ごしてしまうと明日以降日常生活に復帰できる自信がない。きっとこのまま永遠に絡み合いたいと思ってしまいそうだ。
「ニルス」
「うん」
「あんだけベッドでその、絡み合ったんだし、さすがに俺が倒れるのではなんてもう思ってないよな?」
「……うん」
間があったのでニルスを見たが、顔を逸らしているのかただでさえわかりにくい表情だけでなく、顔色すらわからない。
まあ、いいや。
「なら一眠りしたら改めて町にでも出る?」
さすがに多少は寝ないとまずいだろう。絡み合いながら、少しうとうとはしたが、ちゃんと眠っていない。
「ああ」
エルヴィンは真面目だしニルスも真面目だ。だがこういう時に「体調を心配して休みをもらっているのに遊びに出かけるなんて」とは言わないし思わない。いい人だが生真面目過ぎるフリッツなら言いそうだが、こういうところも合うよなあとエルヴィンはしみじみ思った。
真面目だけど、気を抜くとこは抜く。
風呂から出ると二人はニルスの部屋へ向かった。さすがにあからさまな痕跡は残していないつもりだが、乱れに乱れたシーツを見てしまうと風呂上りに合わないというか、風呂に入った意味なくまた何かやらかしてしまいそうだ。
でもニルスの部屋も結局よくなかったかも。
ここに滞在している間だけ使わせてもらっている部屋だ。それでもニルスのものが置かれている部屋だし、なによりそこで基本眠っているニルスの匂いがベッドについている気がする。
本人がそばにいるだけでなくベッドでニルスの匂いに包まれる状況は、ニルスの味を占めてしまったエルヴィンにとっては毒ですらある。
「俺、自分の部屋に戻ろうかな」
「何故?」
「いや、お互いゆっくり眠りたいだろ?」
「お前がいても眠れる」
俺は眠れなさそうなの、わかって。
「でもほら……」
「……ずっとあんなことをしていた俺と一緒は嫌か……?」
表情はほぼ変わらないくせに、切なげに落ち込んだニルスが見えた気がしてエルヴィンは思いきり頭を横にぶんぶんと振っていた。
「そんなわけないだろ! 一緒に寝るよ、寝るに決まってる!」
「うん」
何言っちゃってんの俺。
これで眠れないまま今日を過ごすことはほぼ決定になった。
1
お気に入りに追加
497
あなたにおすすめの小説
伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃんでした。
実際に逢ってみたら、え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこいー伴侶がいますので!
おじいちゃんと孫じゃないよ!
【BL】こんな恋、したくなかった
のらねことすていぬ
BL
【貴族×貴族。明るい人気者×暗め引っ込み思案。】
人付き合いの苦手なルース(受け)は、貴族学校に居た頃からずっと人気者のギルバート(攻め)に恋をしていた。だけど彼はきらきらと輝く人気者で、この恋心はそっと己の中で葬り去るつもりだった。
ある日、彼が成り上がりの令嬢に恋をしていると聞く。苦しい気持ちを抑えつつ、二人の恋を応援しようとするルースだが……。
※ご都合主義、ハッピーエンド
不憫な推しキャラを救おうとしただけなのに
はぴねこ
BL
美幼児&美幼児(ブロマンス期)からの美青年×美青年(BL期)への成長を辿る長編BLです。
金髪碧眼美幼児のリヒトの前世は、隠れゲイでBL好きのおじさんだった。
享年52歳までプレイしていた乙女ゲーム『星鏡のレイラ』の攻略対象であるリヒトに転生したため、彼は推しだった不憫な攻略対象:カルロを不運な運命から救い、幸せにすることに全振りする。
見た目は美しい王子のリヒトだが、中身は52歳で、両親も乳母も護衛騎士もみんな年下。
気軽に話せるのは年上の帝国の皇帝や魔塔主だけ。
幼い推しへの高まる父性でカルロを溺愛しつつ、頑張る若者たち(両親etc)を温かく見守りながら、リヒトはヒロインとカルロが結ばれるように奮闘する!
リヒト… エトワール王国の第一王子。カルロへの父性が暴走気味。
カルロ… リヒトの従者。リヒトは神様で唯一の居場所。リヒトへの想いが暴走気味。
魔塔主… 一人で国を滅ぼせるほどの魔法が使える自由人。ある意味厄災。リヒトを研究対象としている。
オーロ皇帝… 大帝国の皇帝。エトワールの悍ましい慣習を嫌っていたが、リヒトの利発さに興味を持つ。
ナタリア… 乙女ゲーム『星鏡のレイラ』のヒロイン。オーロ皇帝の孫娘。カルロとは恋のライバル。
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
転生するにしても、これは無いだろ! ~死ぬ間際に読んでいた小説の悪役に転生しましたが、自分を殺すはずの最強主人公が逃がしてくれません~
槿 資紀
BL
駅のホームでネット小説を読んでいたところ、不慮の事故で電車に撥ねられ、死んでしまった平凡な男子高校生。しかし、二度と目覚めるはずのなかった彼は、死ぬ直前まで読んでいた小説に登場する悪役として再び目覚める。このままでは、自分のことを憎む最強主人公に殺されてしまうため、何とか逃げ出そうとするのだが、当の最強主人公の態度は、小説とはどこか違って――――。
最強スパダリ主人公×薄幸悪役転生者
R‐18展開は今のところ予定しておりません。ご了承ください。
【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。
モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中
risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。
任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。
快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。
アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——?
24000字程度の短編です。
※BL(ボーイズラブ)作品です。
この作品は小説家になろうさんでも公開します。
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる