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71話
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アルスラン家が一家全滅するより前に発覚しなかったものの、ラヴィニアの父親が後ろ暗いことを行っていたのは遡る前のリックにもわかっていた。とりあえずその証拠を集めるのに今は相変わらずちょくちょく、こっそり帰国しては調べていた。その度にニルスからは「本当に勉強しているのか?」と言われる。
「それに以前エルヴィンからラヴィニアのことについて言われたって通信機で話したことあるが……」
「そうだね」
「あの場では話してなかったが、その時うっかり、あまりミス・ラヴィニアが殿下やリックに近づくことのないよう俺も気にしていようって言ってしまったんだぞ」
「どういう意味?」
「お前と当たり前のように会っている感覚で答えてしまった。幸いエルヴィンは考えごとがたくさんあったのかそれに気づいてなかったが」
「あー確かに普通なら俺は留学していていないんだし、そういう言い方にならないよねえ。はは」
「笑いごとか? 頻繁にお前が帰ってくるとエルヴィンに言うぞ」
「んー、まあ言われても駄目なわけじゃないけどもね……でも俺、こうして帰国してもやることあるからあまりエルヴィンやニアキスにも会えないからねえ」
「……お前がどう忙しいのか、やはり俺にはわからないんだが」
「仮にも俺は王子様だからさあ、忙しいんだよ、これでも」
「……」
「まあ近々公に一時帰国するよ。ウーヴェ総長に渡す書類もあるし」
「何の書類?」
「軍関連だよ。これでもほんと、ちゃんと勉強してるんだよ」
ニルスに言った通り、実際にリックは公に一時帰国した。ヒュープナー家に関する証拠がそろったからというのもある。リック専用の間者を忍び込ませ、取引関連の収支明細表も手に入れていた。
遡る前も実はニルスの父親であり王の補佐をしているデトレフの執務室に紛れ込んでいた書類でもある。ただあの頃はニルスもリックの仕事をしていてデトレフの仕事はそこまで手伝っていなかった。そのため山のように仕事を抱えたデトレフやその周りが見落としてしまったようだ。その後アルスラン家が潰れてしまってからリックがヒュープナー家について調べてようやく発覚した。
今回は絶対そんなこと、させない。
そのため自然に任せることなくあらかじめリックはその書類を手に入れてわざと紛れさせたし、それらが見落とされることのないよう注意を払う。
とりあえずこの書類が公に出ると、間違いなくヒュープナー家への家宅捜査が入るだろう。その前に怪しい書類などの証拠を全部処分されないよう、一部は念のため男爵家の中とはいえ別のところへ移動させてもいる。
リック本人がこの証拠を提出し突き付けてしまうと、手に入れた過程に疑わしさしかない。だがデトレフの執務室なら問題はないし遡る前も実際紛れ込んでいた。国政関連以外にも貴族からの報告書もそこに集まる。
後はデトレフかニルスが見つけるだけだ。見漏れがないようニルスにはいくつかの書類に目を通しておいてくれとそれとなく指示している。リックが言っても問題ない内容の書類だし、それらの中に紛れているはずだ。
ただ、デトレフもニルスも基本業務に忙しいのもあり、緊急でない書類関連の仕事は後回しになりがちだ。リックが言った書類も至急対応のものではない。今回もそのまま紛れてしまう可能性はなくもない。
そのためエルヴィンたちも使わせてもらった。
軍関連の書類をエルヴィンの父親、ウーヴェに渡す際に、当たり障りのない国政関連の書類を紛れこませた。多分それに気づいたウーヴェはエルヴィンを使うだろうとは予測していた。
過去に直接関わらないような業務や案件に関しては、今のウーヴェとリックはわりにやり取りしている。遡る前も留学から戻ってきて現状を知ってからは協力し合っていたが、今は少々違うものの親しくやり取りしていた。
書類が紛れることのないよういくつも仕込んでおいたのもあり、不正は明るみになった。案の定書類は今のところ見落とされていたものの、エルヴィンが最初に見つけてくれたようだ。あれほどラヴィニアを気にしているエルヴィンだけに、ヒュープナーの名前は申し訳ないながらにさぞかし否応なしに目に飛び込んできたことだろう。
不正が発覚したことにより最終的にヒュープナー家は没落し、どこかへ姿を消した。もちろん行方については調べさせ、そこそこ離れた国で庶民として暮らしているようだとわかった。商才がないわけではないため、その日暮らしというほどでもなく、それなりに暮らしてはいるようだ。
リックとしても男爵自身に直接恨みがあったわけではない。小悪党かもしれないが徹底的に破滅させたいわけではない。だから商売をするにあたっての資金をどうしたのかなど、そっとさせておいた。あとはラヴィニアがこちらへ近づかないよう気をつけるくらいだろうか。
これで完全に二つ目を潰した。三つ目に関してもこれでほぼ潰れたと言える。
だが「ほぼ」では駄目だ。徹底的に潰さないとと、リックは留学先でやるべきことをすべてやり終え、帰国準備にかかりながら思った。
三つ目の父親であり王であるラフェドの死。
これに関しても遡る前に徹底的に調べ上げてはいた。だが状況証拠ばかりだった。それでもラヴィニアによる毒殺だとは踏んでいた。
ラウラを毒殺した時のように直接自分では手を下さず、ラフェドの時も人を使っていた。王と関りのあるとある公爵家の子息だ。
「それに以前エルヴィンからラヴィニアのことについて言われたって通信機で話したことあるが……」
「そうだね」
「あの場では話してなかったが、その時うっかり、あまりミス・ラヴィニアが殿下やリックに近づくことのないよう俺も気にしていようって言ってしまったんだぞ」
「どういう意味?」
「お前と当たり前のように会っている感覚で答えてしまった。幸いエルヴィンは考えごとがたくさんあったのかそれに気づいてなかったが」
「あー確かに普通なら俺は留学していていないんだし、そういう言い方にならないよねえ。はは」
「笑いごとか? 頻繁にお前が帰ってくるとエルヴィンに言うぞ」
「んー、まあ言われても駄目なわけじゃないけどもね……でも俺、こうして帰国してもやることあるからあまりエルヴィンやニアキスにも会えないからねえ」
「……お前がどう忙しいのか、やはり俺にはわからないんだが」
「仮にも俺は王子様だからさあ、忙しいんだよ、これでも」
「……」
「まあ近々公に一時帰国するよ。ウーヴェ総長に渡す書類もあるし」
「何の書類?」
「軍関連だよ。これでもほんと、ちゃんと勉強してるんだよ」
ニルスに言った通り、実際にリックは公に一時帰国した。ヒュープナー家に関する証拠がそろったからというのもある。リック専用の間者を忍び込ませ、取引関連の収支明細表も手に入れていた。
遡る前も実はニルスの父親であり王の補佐をしているデトレフの執務室に紛れ込んでいた書類でもある。ただあの頃はニルスもリックの仕事をしていてデトレフの仕事はそこまで手伝っていなかった。そのため山のように仕事を抱えたデトレフやその周りが見落としてしまったようだ。その後アルスラン家が潰れてしまってからリックがヒュープナー家について調べてようやく発覚した。
今回は絶対そんなこと、させない。
そのため自然に任せることなくあらかじめリックはその書類を手に入れてわざと紛れさせたし、それらが見落とされることのないよう注意を払う。
とりあえずこの書類が公に出ると、間違いなくヒュープナー家への家宅捜査が入るだろう。その前に怪しい書類などの証拠を全部処分されないよう、一部は念のため男爵家の中とはいえ別のところへ移動させてもいる。
リック本人がこの証拠を提出し突き付けてしまうと、手に入れた過程に疑わしさしかない。だがデトレフの執務室なら問題はないし遡る前も実際紛れ込んでいた。国政関連以外にも貴族からの報告書もそこに集まる。
後はデトレフかニルスが見つけるだけだ。見漏れがないようニルスにはいくつかの書類に目を通しておいてくれとそれとなく指示している。リックが言っても問題ない内容の書類だし、それらの中に紛れているはずだ。
ただ、デトレフもニルスも基本業務に忙しいのもあり、緊急でない書類関連の仕事は後回しになりがちだ。リックが言った書類も至急対応のものではない。今回もそのまま紛れてしまう可能性はなくもない。
そのためエルヴィンたちも使わせてもらった。
軍関連の書類をエルヴィンの父親、ウーヴェに渡す際に、当たり障りのない国政関連の書類を紛れこませた。多分それに気づいたウーヴェはエルヴィンを使うだろうとは予測していた。
過去に直接関わらないような業務や案件に関しては、今のウーヴェとリックはわりにやり取りしている。遡る前も留学から戻ってきて現状を知ってからは協力し合っていたが、今は少々違うものの親しくやり取りしていた。
書類が紛れることのないよういくつも仕込んでおいたのもあり、不正は明るみになった。案の定書類は今のところ見落とされていたものの、エルヴィンが最初に見つけてくれたようだ。あれほどラヴィニアを気にしているエルヴィンだけに、ヒュープナーの名前は申し訳ないながらにさぞかし否応なしに目に飛び込んできたことだろう。
不正が発覚したことにより最終的にヒュープナー家は没落し、どこかへ姿を消した。もちろん行方については調べさせ、そこそこ離れた国で庶民として暮らしているようだとわかった。商才がないわけではないため、その日暮らしというほどでもなく、それなりに暮らしてはいるようだ。
リックとしても男爵自身に直接恨みがあったわけではない。小悪党かもしれないが徹底的に破滅させたいわけではない。だから商売をするにあたっての資金をどうしたのかなど、そっとさせておいた。あとはラヴィニアがこちらへ近づかないよう気をつけるくらいだろうか。
これで完全に二つ目を潰した。三つ目に関してもこれでほぼ潰れたと言える。
だが「ほぼ」では駄目だ。徹底的に潰さないとと、リックは留学先でやるべきことをすべてやり終え、帰国準備にかかりながら思った。
三つ目の父親であり王であるラフェドの死。
これに関しても遡る前に徹底的に調べ上げてはいた。だが状況証拠ばかりだった。それでもラヴィニアによる毒殺だとは踏んでいた。
ラウラを毒殺した時のように直接自分では手を下さず、ラフェドの時も人を使っていた。王と関りのあるとある公爵家の子息だ。
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