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7話
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エルヴィンはリックの招待を受け、来てくれた。その際に別の見知らぬ少年を伴ってきて、ニルスとしてはそれが誰でどういった関係か少々気になった。
「普通に友だちでしょ。他にどういう関係があるというの」
「……リック。お前は魔力が高すぎてまさか人の考えが読める能力を身につけたんじゃないだろうな……」
考えていたことをそのまま言われたようなものだ。ドン引きしたようにニルスはリックを見た。
「まさか。たかだが八歳のいたいけな少年がそんなことできると思う? にしても考えが読める……か。面白いね」
白々しいもの言いにニルスは無言のまま微妙な顔をリックへ向けた。リックはにこにこと見返してくる。
「多分あれはバウム家のご長男だよ」
性格はアレでも、腐っても第二王子だ。少なくともニルスよりは知っている貴族も多いのかもしれない。それにバウム家なら名前は知っている。納得し、ニルスは頷いた。
ちなみにニルスも王族ではある。父親デトレフ・ウィスラーが王の補佐をしているだけでなく、ラフェド王の腹違いの弟でもあるからだ。家柄は大公爵の家ではあるが、ニルスの上にユルゲン・ウィスラーという五歳上の兄がいるため、跡継ぎではない。それもあり、今のところ気楽にリックのおつきとして仕えている。
実際エルヴィンからも「ニアキス・バウム。私の友人です」と紹介された。本人の口から淡々とした様子で聞くとさらに納得できた。ニアキスは少し気の強そうなところはありそうだが、明るくはきはきとした様子でおそらく人からの好感度も高いだろう。
だがそれでも何となくニルスとしてはすっきりしないようなもやもやとするようなよくわからない気分にさせられたので少々逆恨みしそうだ。なので無難にも少し離れておいた。
しばらくの間エルヴィンはニアキスと一緒に軽食をとっていたが、改めてリックが話に行こうとした時は一人で何やら考えているようだった。
「もしかして具合でも悪いのかな? だとしたらそんな日に誘ってしまって申し訳ないんだけど」
ニルスも無言のままリックのそばについていたが、具合が悪いのだろうかと内心心配になっていた。だがハッとした様子のエルヴィンは笑顔を見せてくる。
「殿下、とんでもない。誘ってもらって嬉しいですし、具合も悪くありません。多分少々緊張してしまったんだと思います」
「緊張はいらないよ。公的な場ではないからね。どうか気楽にして俺とも接して欲しいな」
「しかし……」
でた。リックの無茶ぶりだ。こいつ絶対自分の立場わかってていつも無茶ぶりしてくるとしか思えないんだが。
微妙な気持ちになりながらも会話に口を挟むことなくニルスは黙っていた。だがひたすら積極的に無茶ぶりしているリックと、実際困ってそうなエルヴィンを見ているとそれ以上は黙っていられなくなった。
「リック……いい加減にしろ」
ため息をつきながら言えば、リックは不満そうに見返してきた。反面、エルヴィンは明らかにホッとした様子で見てくる。その視線が妙に落ち着かなくてニルスは顔をそらした。するとどこか楽しげにリックが余計なことを言ってくる。
「いい加減にするのはニルスでしょ。そんな顔と態度ではエルヴィンに誤解されちゃうよ? エルヴィン、安心して。ニルスはこんなだけど君のことは本当に感謝していた上にかなり好意的なんだから」
「リック……!」
なんてことを言うんだとニルスが慌ててリックの口を塞いでやろうと考えているとエルヴィンが「え? そ、そうなんですか?」とニルスを見てくる。きっと好意的などと言われて戸惑っているのだろう。少なくとも引いたように見てこられなくてよかったと内心ホッとしてため息がまた出た。
「悪い。俺は無口だし顔にもあまり出ないらしい。だが確かに感謝している」
なるべく不審がられないよう心を配りながら口にし、ニルスは手を差し出した。するとエルヴィンがまた笑顔で「感謝なんて」と言いながらその手を握り返してきた。
その後はニアキスも加わり、四人で茶を楽しみながら会話した。と言ってもニルスはほぼ無言だったが。
ただ、エルヴィンの瞳から目が離せなくて困った。自分でもよくわからない。だがずっと見ていたい気にさせられた。
リックがそんなニルスを見てきて微笑んでくる。その笑みは度々見せられる何か裏がありそうな笑みとかではなく、純粋に微笑んだといった感じの笑みで、ニルスとしては二重に意味がわからない。とはいえエルヴィンとニアキスがいる中で「何だよ」とリックに詰め寄るわけにもいかない。ついでにエルヴィンに「何故か君から目が離せないんだ」とも言えない。ニルスはひたすらこっそり首を傾げるに留めていた。
とりあえずその茶会以降、エルヴィンとついでにニアキスとはリックともども親しく付き合うようになった。元々年の近い子ども同士だ。気づけば親友と呼んでも差し支えないような関係になったのではとニルスは思う。
ただ、王宮などは落ち着かないというエルヴィンとついでにニアキスに、四人は集まる場合エルヴィンかニアキスの屋敷で集まることが増えた。エルヴィンもニアキスも騎士の家系でもあるため、集まって会話を楽しむだけでなく、剣を交えることもよくあった。エルヴィンの屋敷で集まる時はたまにそこにエルヴィンの弟であるヴィリーが加わることもあった。
「普通に友だちでしょ。他にどういう関係があるというの」
「……リック。お前は魔力が高すぎてまさか人の考えが読める能力を身につけたんじゃないだろうな……」
考えていたことをそのまま言われたようなものだ。ドン引きしたようにニルスはリックを見た。
「まさか。たかだが八歳のいたいけな少年がそんなことできると思う? にしても考えが読める……か。面白いね」
白々しいもの言いにニルスは無言のまま微妙な顔をリックへ向けた。リックはにこにこと見返してくる。
「多分あれはバウム家のご長男だよ」
性格はアレでも、腐っても第二王子だ。少なくともニルスよりは知っている貴族も多いのかもしれない。それにバウム家なら名前は知っている。納得し、ニルスは頷いた。
ちなみにニルスも王族ではある。父親デトレフ・ウィスラーが王の補佐をしているだけでなく、ラフェド王の腹違いの弟でもあるからだ。家柄は大公爵の家ではあるが、ニルスの上にユルゲン・ウィスラーという五歳上の兄がいるため、跡継ぎではない。それもあり、今のところ気楽にリックのおつきとして仕えている。
実際エルヴィンからも「ニアキス・バウム。私の友人です」と紹介された。本人の口から淡々とした様子で聞くとさらに納得できた。ニアキスは少し気の強そうなところはありそうだが、明るくはきはきとした様子でおそらく人からの好感度も高いだろう。
だがそれでも何となくニルスとしてはすっきりしないようなもやもやとするようなよくわからない気分にさせられたので少々逆恨みしそうだ。なので無難にも少し離れておいた。
しばらくの間エルヴィンはニアキスと一緒に軽食をとっていたが、改めてリックが話に行こうとした時は一人で何やら考えているようだった。
「もしかして具合でも悪いのかな? だとしたらそんな日に誘ってしまって申し訳ないんだけど」
ニルスも無言のままリックのそばについていたが、具合が悪いのだろうかと内心心配になっていた。だがハッとした様子のエルヴィンは笑顔を見せてくる。
「殿下、とんでもない。誘ってもらって嬉しいですし、具合も悪くありません。多分少々緊張してしまったんだと思います」
「緊張はいらないよ。公的な場ではないからね。どうか気楽にして俺とも接して欲しいな」
「しかし……」
でた。リックの無茶ぶりだ。こいつ絶対自分の立場わかってていつも無茶ぶりしてくるとしか思えないんだが。
微妙な気持ちになりながらも会話に口を挟むことなくニルスは黙っていた。だがひたすら積極的に無茶ぶりしているリックと、実際困ってそうなエルヴィンを見ているとそれ以上は黙っていられなくなった。
「リック……いい加減にしろ」
ため息をつきながら言えば、リックは不満そうに見返してきた。反面、エルヴィンは明らかにホッとした様子で見てくる。その視線が妙に落ち着かなくてニルスは顔をそらした。するとどこか楽しげにリックが余計なことを言ってくる。
「いい加減にするのはニルスでしょ。そんな顔と態度ではエルヴィンに誤解されちゃうよ? エルヴィン、安心して。ニルスはこんなだけど君のことは本当に感謝していた上にかなり好意的なんだから」
「リック……!」
なんてことを言うんだとニルスが慌ててリックの口を塞いでやろうと考えているとエルヴィンが「え? そ、そうなんですか?」とニルスを見てくる。きっと好意的などと言われて戸惑っているのだろう。少なくとも引いたように見てこられなくてよかったと内心ホッとしてため息がまた出た。
「悪い。俺は無口だし顔にもあまり出ないらしい。だが確かに感謝している」
なるべく不審がられないよう心を配りながら口にし、ニルスは手を差し出した。するとエルヴィンがまた笑顔で「感謝なんて」と言いながらその手を握り返してきた。
その後はニアキスも加わり、四人で茶を楽しみながら会話した。と言ってもニルスはほぼ無言だったが。
ただ、エルヴィンの瞳から目が離せなくて困った。自分でもよくわからない。だがずっと見ていたい気にさせられた。
リックがそんなニルスを見てきて微笑んでくる。その笑みは度々見せられる何か裏がありそうな笑みとかではなく、純粋に微笑んだといった感じの笑みで、ニルスとしては二重に意味がわからない。とはいえエルヴィンとニアキスがいる中で「何だよ」とリックに詰め寄るわけにもいかない。ついでにエルヴィンに「何故か君から目が離せないんだ」とも言えない。ニルスはひたすらこっそり首を傾げるに留めていた。
とりあえずその茶会以降、エルヴィンとついでにニアキスとはリックともども親しく付き合うようになった。元々年の近い子ども同士だ。気づけば親友と呼んでも差し支えないような関係になったのではとニルスは思う。
ただ、王宮などは落ち着かないというエルヴィンとついでにニアキスに、四人は集まる場合エルヴィンかニアキスの屋敷で集まることが増えた。エルヴィンもニアキスも騎士の家系でもあるため、集まって会話を楽しむだけでなく、剣を交えることもよくあった。エルヴィンの屋敷で集まる時はたまにそこにエルヴィンの弟であるヴィリーが加わることもあった。
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