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19話
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しばらくはお互いに抜き合うだけだった。それでも十分気持ちがよかったし、それ以上のことをする一歩が中々踏み出せなかったというのもある。
信太が。
だって尻の穴だぞ。もはや暴力だろ……。
とはいえこの間はお互いやたら盛り上がって、ついそれ以上のこともしたくなった。だが何も準備などしていなかったし、そもそも詳しくもない。
その際に「人間の男同士って結局どうするものなんだ」と利一に聞かれた。
「別にこうやって抜き合うだけのやつらもいるみたいだけど……」
「けど?」
「尻の穴使う、とか」
ドン引きするか役割の取り合いだろうなと内心苦笑していると一言だけ返ってきた。
「なるほどな」
「……それだけ?」
まぁ実感湧かないだろうしな。
「だけ、って言われても。確かに人とかの行為は穴に突っ込み突っ込まれ、だったなあって納得したというか」
「ま、ぁ」
そういえばこいつは電車と摩訶不思議な行為に及べるやつだった、と信太は微妙な顔を利一に向けた。
「じゃあ信太が俺に入れるの?」
「っえ、な、何で?」
むしろ入れてみたいと言われるかと信太は思っていた。
「いや、別にどっちでもいいけど……お前は人としたことあるだろ」
「むしろ人としかないけどな」
「その経験あるほうが安全かなって。あとこんな穴にうんこより太いもん出し入れするとか、ちょっと理解が及ばないし怪我するかもだろ。ならお前にさせるより俺が受けもったほうがいいかなって」
「……何か中学以来初めてお前が兄さんに見えた……」
「待ってほんとに俺のこと好きなの?」
結局その日はそれ以上のことはしなかったが、お互い調べて次までに備えようということになった。
平和的解決や決定はいいが兄弟という、障害しかない付き合いとは思えない気軽で明るい流れに、信太は未だに戸惑いがなくならない。世間にもし自分たち以外にも兄弟で恋愛をしている人たちがいるのなら、絶対こんなではないはずだ。もっと悩み、苦しみ、荒波に揉まれているのではないだろうか。
それを陽平に言えば「確かにもし他にもいるならどろどろしてそうだよなー」と苦笑された。
「でもどろどろしないにこしたことないし、君らはそれでいいんじゃないか」
ちなみに信太の先輩である勝正にはもちろん打ち明けてもいない。たまに「例の好きな人とは上手くいってんのか」とニコニコ聞かれるが「はい」と信太もニコニコ頷くだけだ。勝正のことは尊敬しているし先輩兼友人としてとても好きだ。だからこそ言いたくない。改めてさらりと陽平に告げた利一のことを、ある意味化け物だなと思う。
「信太」
日勤だと断然利一より早く終わるので、珍しくお互い明日は休みという日に信太は先に利一の家へ行き、いつものように夕食の準備などを終わらせていた。
「おかえり、兄さん」
「ただいま。今日は何。匂いでわからないんだけど」
「野生児かよ。今日はお腹に優しいふわとろ親子丼」
「うまそ。でもお腹に優しいって、何。別に俺、壊してないけど。信太壊したのか?」
「いや……その、今日、する、だろ?」
「ああ、セッ」
「口に出さなくていいから。後ろ、使うならあまり刺激物じゃないほうがいいかな、と……その」
「なるほどな! そんなの思いつきもしなかったよ俺」
相変わらず呑気というか屈託のない様子に信太は「お前、入れられるのわかってる? ほんと大丈夫?」とつい聞いてしまった。
「大丈夫。とりあえず風呂入ってくる。お前も入ったら」
「……先に入らせてもらった」
「ほんと? やる気満々だな」
「うるさい! とっとと入れ」
利一が風呂に入っている間に下ごしらえしておいた具を使って親子丼を完成させた。それを風呂から出た利一と一緒にゆっくり食べた。その後もいつものように適当にテレビを見ながら喋ったりした。
「信太、そろそろ布団入ろ」
「え、あ、うん……」
抜き合うだけなら慣れてきたのもあって自然にできていたが、今日は違うのだと思うと今さらながらに少し緊張する。付き合って初めての行為の時は今までもそういうところはあったが、利一相手だとそれこそ男同士というのも初めてなので余計かもしれない。
「お前、緊張とかしないの」
いつもと変わらない様子でベッドへ向かう利一に聞けば「ちょっとはするけど」とニコニコ言われた。しているとは思えない。
「怖くないの?」
引っ張られるようにしてベッドへ雪崩れ込み、いつものようにキスをし合いながらまた聞くと、耳元にキスされながら囁かれた。
「怖くはないかな。楽しみ」
「……一応、ちゃんと調べて用意もした、けど……。あ、ローションとコンドーム、ちょっと取ってくる」
「あーいいよ。ここにあるから。俺も用意してたし、何ならそのローションでいつもめっちゃ慣らしてたし」
「何て」
「用意、してる」
「その後」
「慣らしてた」
「ほん、とに? 自分で?」
「そりゃ俺しかいないし。最初は難しかったんだけどさ、慣れてきたら自分の指でもいい感じに解せるどころか気持ちよくなってきてさ。抜くついでに後ろも弄ってたわ」
屈託なさすぎだろと呆れつつも信太もやはり男というか、好きな相手が自慰で後ろに指を、と思うと結構興奮した。
「それ、見たいかも……」
「いいよ。今?」
軽いな。
ただいつもならドン引き案件かもしれないが、これに関してはかなり歓迎かもしれない。歴代の彼女は見せてくれるどころか自分でなんてしてくれなかった。
「今見ちゃったらまたお互い抜くだけで満足しそうだから次の楽しみにする……」
信太が。
だって尻の穴だぞ。もはや暴力だろ……。
とはいえこの間はお互いやたら盛り上がって、ついそれ以上のこともしたくなった。だが何も準備などしていなかったし、そもそも詳しくもない。
その際に「人間の男同士って結局どうするものなんだ」と利一に聞かれた。
「別にこうやって抜き合うだけのやつらもいるみたいだけど……」
「けど?」
「尻の穴使う、とか」
ドン引きするか役割の取り合いだろうなと内心苦笑していると一言だけ返ってきた。
「なるほどな」
「……それだけ?」
まぁ実感湧かないだろうしな。
「だけ、って言われても。確かに人とかの行為は穴に突っ込み突っ込まれ、だったなあって納得したというか」
「ま、ぁ」
そういえばこいつは電車と摩訶不思議な行為に及べるやつだった、と信太は微妙な顔を利一に向けた。
「じゃあ信太が俺に入れるの?」
「っえ、な、何で?」
むしろ入れてみたいと言われるかと信太は思っていた。
「いや、別にどっちでもいいけど……お前は人としたことあるだろ」
「むしろ人としかないけどな」
「その経験あるほうが安全かなって。あとこんな穴にうんこより太いもん出し入れするとか、ちょっと理解が及ばないし怪我するかもだろ。ならお前にさせるより俺が受けもったほうがいいかなって」
「……何か中学以来初めてお前が兄さんに見えた……」
「待ってほんとに俺のこと好きなの?」
結局その日はそれ以上のことはしなかったが、お互い調べて次までに備えようということになった。
平和的解決や決定はいいが兄弟という、障害しかない付き合いとは思えない気軽で明るい流れに、信太は未だに戸惑いがなくならない。世間にもし自分たち以外にも兄弟で恋愛をしている人たちがいるのなら、絶対こんなではないはずだ。もっと悩み、苦しみ、荒波に揉まれているのではないだろうか。
それを陽平に言えば「確かにもし他にもいるならどろどろしてそうだよなー」と苦笑された。
「でもどろどろしないにこしたことないし、君らはそれでいいんじゃないか」
ちなみに信太の先輩である勝正にはもちろん打ち明けてもいない。たまに「例の好きな人とは上手くいってんのか」とニコニコ聞かれるが「はい」と信太もニコニコ頷くだけだ。勝正のことは尊敬しているし先輩兼友人としてとても好きだ。だからこそ言いたくない。改めてさらりと陽平に告げた利一のことを、ある意味化け物だなと思う。
「信太」
日勤だと断然利一より早く終わるので、珍しくお互い明日は休みという日に信太は先に利一の家へ行き、いつものように夕食の準備などを終わらせていた。
「おかえり、兄さん」
「ただいま。今日は何。匂いでわからないんだけど」
「野生児かよ。今日はお腹に優しいふわとろ親子丼」
「うまそ。でもお腹に優しいって、何。別に俺、壊してないけど。信太壊したのか?」
「いや……その、今日、する、だろ?」
「ああ、セッ」
「口に出さなくていいから。後ろ、使うならあまり刺激物じゃないほうがいいかな、と……その」
「なるほどな! そんなの思いつきもしなかったよ俺」
相変わらず呑気というか屈託のない様子に信太は「お前、入れられるのわかってる? ほんと大丈夫?」とつい聞いてしまった。
「大丈夫。とりあえず風呂入ってくる。お前も入ったら」
「……先に入らせてもらった」
「ほんと? やる気満々だな」
「うるさい! とっとと入れ」
利一が風呂に入っている間に下ごしらえしておいた具を使って親子丼を完成させた。それを風呂から出た利一と一緒にゆっくり食べた。その後もいつものように適当にテレビを見ながら喋ったりした。
「信太、そろそろ布団入ろ」
「え、あ、うん……」
抜き合うだけなら慣れてきたのもあって自然にできていたが、今日は違うのだと思うと今さらながらに少し緊張する。付き合って初めての行為の時は今までもそういうところはあったが、利一相手だとそれこそ男同士というのも初めてなので余計かもしれない。
「お前、緊張とかしないの」
いつもと変わらない様子でベッドへ向かう利一に聞けば「ちょっとはするけど」とニコニコ言われた。しているとは思えない。
「怖くないの?」
引っ張られるようにしてベッドへ雪崩れ込み、いつものようにキスをし合いながらまた聞くと、耳元にキスされながら囁かれた。
「怖くはないかな。楽しみ」
「……一応、ちゃんと調べて用意もした、けど……。あ、ローションとコンドーム、ちょっと取ってくる」
「あーいいよ。ここにあるから。俺も用意してたし、何ならそのローションでいつもめっちゃ慣らしてたし」
「何て」
「用意、してる」
「その後」
「慣らしてた」
「ほん、とに? 自分で?」
「そりゃ俺しかいないし。最初は難しかったんだけどさ、慣れてきたら自分の指でもいい感じに解せるどころか気持ちよくなってきてさ。抜くついでに後ろも弄ってたわ」
屈託なさすぎだろと呆れつつも信太もやはり男というか、好きな相手が自慰で後ろに指を、と思うと結構興奮した。
「それ、見たいかも……」
「いいよ。今?」
軽いな。
ただいつもならドン引き案件かもしれないが、これに関してはかなり歓迎かもしれない。歴代の彼女は見せてくれるどころか自分でなんてしてくれなかった。
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