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39.大事な兎のため(番外編)
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「わあ、今日もお弁当作ってきてくれたの? いつもありがとう善高!」
優史が嬉しそうにニッコリ笑いかけてくる。善高もニッコリとしてそんな優史の頭を撫でた。
「俺の優のためだからな!ほら、この卵焼きも俺特製の出汁使ってんだぜ」
「へえ! ……うん、凄くおいしいよ、俺善高の作った料理、凄い好きだな」
出汁巻きを食べた優史が本当に美味しそうに善高を見上げてきた。
凄い好き、か。俺もだよ。
善高はまたニッコリ笑う。
そんなことを教室でやってると呆れたように見ていた周りがまたいつものように聞いてきた。
「なー、絶対お前ら付き合ってんだろ?」
「マジで付き合ってないの?」
「うるせーな。違うっつってんだろ。なんだ? 付き合ってて欲しいのか? 優、俺、優好きだぜ!」
ジロリと周りを見た後で面倒そうに善高はため息をつく。そして優史を見てはっきり言う。
「俺も善高大好きだよ! 大事な親友だ」
すると優史が嬉しそうにコクコク頷きながら言ってきた。そんな優史を優しげに見ながら善高はまた優史の頭を撫でる。
「……そうだな。うん、俺の大事な親友だもんな優は。つーことだ、わかったかお前ら」
そう言うと周りは「えー? うんー」「まーそーゆってんもんな」などと言いながらも納得いかなさそうだ。善高はさておき、嘘がつけなさそうな優史がニコニコ「親友」だと言っているなら実際そうなのだろうなと周りは思いつつも、何となく納得がいかないといった感じだろうか。
「俺たち何で付き合ってるって思われるんだろうね」
後で優史がおかしそうに言ってきた。
「さーな! でもまあ付き合ってるって勘違いされる方が優史にはいいかもだな」
「え? 何で?」
優史は意味がわからないといった風に怪訝な表情を向けてきた。そんな顔つきは小学生の頃よく女子に間違われていた片鱗が残っているのか、相変わらずどこかかわいらしい。
中学でだんだん背が伸びてきた優史は今ではどちらかと言えば長身の部類だ。女にもモテていて、この間も電車でいつも一緒の車両に乗っていたという女子高生に告白されていた。だというのに未だに男からもそういう目で見られやすいのはこの顔なのか、まとっている優しい雰囲気からか。もしくは男子高にいるせいかもしれない。校内でもそういう目で見ている生徒がわりといるのを善高は知っている。
「……何でだろうな。まあ優は気にするな」
だが男からそういう意味で好かれていると知れば、小さい頃から「女みたい」「変な趣味」「男らしくしなさい」などと言われてきた優史は傷つくかもしれない。
善高は優史の肩をポンと叩いた。
「? うん、わかった」
優史は善高を信頼してくれているからか、善高の言う事をいつもこうやって素直に聞いてくれる。ニッコリ笑顔で頷いてくれる。
……そして俺は純粋に向けられるそんな信頼を裏切れるわけない。
善高は優しげに笑いながら思う。
大切な優史。大好きだ。とても大切。
だからこそ見守りたい。
大事で大事で。
優史にいつも笑っていて欲しいし、悲しいことがあるなら何があっても助けたい。支えたい。
もう泣き虫優史ではなくなったけれども、それでもつらいことがあっても我慢してしまう子だから。
だから優史に好きな子ができたらいつだって応援するし、万が一別れたら全力で慰める。そしてまた好きな子ができるよう応援する。
「どうしたの、善高?」
「お? どうもしないぞ? あれだ、明日は何作ってこようかなって思ってた!」
「そっか! 楽しみだなあ。今度の休みは善高の家で俺も練習させてね」
「いいぞ!」
好きだよ優史。だから絶対に打ち明けない。男から、しかも親友だと思っている幼馴染から言われて困るお前は見たくない。
だからずっと友達でいような。
友達で。
「会いたいんだ。でも連絡しても何も返してくれない。善高、俺、俺ね、好きな人ね、男なんだ」
そして今、いつだって泣くのを我慢していた幼馴染はこうして無防備に泣きじゃくっている。
泣いて、そして好きな人が男だと、言う。
何てことなんだ。
善高はそれを聞いた瞬間体が固まり、そして崩れ落ちるかと思った。震えそうになる自分の手、腕、そして心を何とか戒める。そのままギュッとさらに優史を抱きしめた。
「俺も好きだ、好きだった、ずっと好きだったんだ」
ともすれば喉から飛び出てしまいそうなそんな言葉をグッと飲み込んだ。そのせいで喉が痛い。
いや、言葉を飲み込んだからでなく、多分色んな感情を飲み込んだからかもしれない。なにか硬い大きな異物を飲み込んだかのように喉が痛かった。
言ってどうする。こんなに傷ついて、自分の前では決して泣かなくなっていた優史がボロボロ泣いている時に追い打ちをかけてどうする。
善高は唇を噛みしめた。
大好きで大切で大事な優史。ああ、俺は……お前の気持ちを無視してでもあの頃打ち明けてるべきだったんだろうか。打ち明けていたら何か変っていただろうか。
そんな風に思いながら少し抱擁を緩める。考えても仕方ない。結局のところ善高は言わないことを選択したわけだし、優史が誰かを好きになる場合はいつだって応援すると誓った。
大事な優史。
そのまま抱擁を解いた善高は、まだ泣いている優史の唇にやさしくキスをした。そっとキスをしてから、すぐに離す。泣いていた優史は目を真っ赤にしながらポカンとしている。
「……今の、何……?」
「ん? 何でもない。あれだ、元気、出せ」
「う、うん。いつもありがとう、そしてごめんな、善高」
「バカだな、何言ってんだ。俺はお前の親友だろ? 何だって言ってきていいんだし、どんな風なお前を見せてきてもいいんだぞ!」
「……っうん、うん……、ありがとう」
最初で最後のキスだ。
善高は笑って優史の頭をポンと優しく叩いた。
大事な……親友。
優史が嬉しそうにニッコリ笑いかけてくる。善高もニッコリとしてそんな優史の頭を撫でた。
「俺の優のためだからな!ほら、この卵焼きも俺特製の出汁使ってんだぜ」
「へえ! ……うん、凄くおいしいよ、俺善高の作った料理、凄い好きだな」
出汁巻きを食べた優史が本当に美味しそうに善高を見上げてきた。
凄い好き、か。俺もだよ。
善高はまたニッコリ笑う。
そんなことを教室でやってると呆れたように見ていた周りがまたいつものように聞いてきた。
「なー、絶対お前ら付き合ってんだろ?」
「マジで付き合ってないの?」
「うるせーな。違うっつってんだろ。なんだ? 付き合ってて欲しいのか? 優、俺、優好きだぜ!」
ジロリと周りを見た後で面倒そうに善高はため息をつく。そして優史を見てはっきり言う。
「俺も善高大好きだよ! 大事な親友だ」
すると優史が嬉しそうにコクコク頷きながら言ってきた。そんな優史を優しげに見ながら善高はまた優史の頭を撫でる。
「……そうだな。うん、俺の大事な親友だもんな優は。つーことだ、わかったかお前ら」
そう言うと周りは「えー? うんー」「まーそーゆってんもんな」などと言いながらも納得いかなさそうだ。善高はさておき、嘘がつけなさそうな優史がニコニコ「親友」だと言っているなら実際そうなのだろうなと周りは思いつつも、何となく納得がいかないといった感じだろうか。
「俺たち何で付き合ってるって思われるんだろうね」
後で優史がおかしそうに言ってきた。
「さーな! でもまあ付き合ってるって勘違いされる方が優史にはいいかもだな」
「え? 何で?」
優史は意味がわからないといった風に怪訝な表情を向けてきた。そんな顔つきは小学生の頃よく女子に間違われていた片鱗が残っているのか、相変わらずどこかかわいらしい。
中学でだんだん背が伸びてきた優史は今ではどちらかと言えば長身の部類だ。女にもモテていて、この間も電車でいつも一緒の車両に乗っていたという女子高生に告白されていた。だというのに未だに男からもそういう目で見られやすいのはこの顔なのか、まとっている優しい雰囲気からか。もしくは男子高にいるせいかもしれない。校内でもそういう目で見ている生徒がわりといるのを善高は知っている。
「……何でだろうな。まあ優は気にするな」
だが男からそういう意味で好かれていると知れば、小さい頃から「女みたい」「変な趣味」「男らしくしなさい」などと言われてきた優史は傷つくかもしれない。
善高は優史の肩をポンと叩いた。
「? うん、わかった」
優史は善高を信頼してくれているからか、善高の言う事をいつもこうやって素直に聞いてくれる。ニッコリ笑顔で頷いてくれる。
……そして俺は純粋に向けられるそんな信頼を裏切れるわけない。
善高は優しげに笑いながら思う。
大切な優史。大好きだ。とても大切。
だからこそ見守りたい。
大事で大事で。
優史にいつも笑っていて欲しいし、悲しいことがあるなら何があっても助けたい。支えたい。
もう泣き虫優史ではなくなったけれども、それでもつらいことがあっても我慢してしまう子だから。
だから優史に好きな子ができたらいつだって応援するし、万が一別れたら全力で慰める。そしてまた好きな子ができるよう応援する。
「どうしたの、善高?」
「お? どうもしないぞ? あれだ、明日は何作ってこようかなって思ってた!」
「そっか! 楽しみだなあ。今度の休みは善高の家で俺も練習させてね」
「いいぞ!」
好きだよ優史。だから絶対に打ち明けない。男から、しかも親友だと思っている幼馴染から言われて困るお前は見たくない。
だからずっと友達でいような。
友達で。
「会いたいんだ。でも連絡しても何も返してくれない。善高、俺、俺ね、好きな人ね、男なんだ」
そして今、いつだって泣くのを我慢していた幼馴染はこうして無防備に泣きじゃくっている。
泣いて、そして好きな人が男だと、言う。
何てことなんだ。
善高はそれを聞いた瞬間体が固まり、そして崩れ落ちるかと思った。震えそうになる自分の手、腕、そして心を何とか戒める。そのままギュッとさらに優史を抱きしめた。
「俺も好きだ、好きだった、ずっと好きだったんだ」
ともすれば喉から飛び出てしまいそうなそんな言葉をグッと飲み込んだ。そのせいで喉が痛い。
いや、言葉を飲み込んだからでなく、多分色んな感情を飲み込んだからかもしれない。なにか硬い大きな異物を飲み込んだかのように喉が痛かった。
言ってどうする。こんなに傷ついて、自分の前では決して泣かなくなっていた優史がボロボロ泣いている時に追い打ちをかけてどうする。
善高は唇を噛みしめた。
大好きで大切で大事な優史。ああ、俺は……お前の気持ちを無視してでもあの頃打ち明けてるべきだったんだろうか。打ち明けていたら何か変っていただろうか。
そんな風に思いながら少し抱擁を緩める。考えても仕方ない。結局のところ善高は言わないことを選択したわけだし、優史が誰かを好きになる場合はいつだって応援すると誓った。
大事な優史。
そのまま抱擁を解いた善高は、まだ泣いている優史の唇にやさしくキスをした。そっとキスをしてから、すぐに離す。泣いていた優史は目を真っ赤にしながらポカンとしている。
「……今の、何……?」
「ん? 何でもない。あれだ、元気、出せ」
「う、うん。いつもありがとう、そしてごめんな、善高」
「バカだな、何言ってんだ。俺はお前の親友だろ? 何だって言ってきていいんだし、どんな風なお前を見せてきてもいいんだぞ!」
「……っうん、うん……、ありがとう」
最初で最後のキスだ。
善高は笑って優史の頭をポンと優しく叩いた。
大事な……親友。
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