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44話 ※
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こんなことってあるだろうか。
あれほど散々、五歳の頃から乙女ゲーム展開にならないようひたすら警戒し対応し逃げ倒してきたというのに、まだその攻略対象から告白さえされていないというのに、しかもゲームで一番王道だったらしい相手にそれも当然男相手に自ら落ちるなんて、こんなことってあるだろうか。
俺自ら攻略されに行っている、だ、と……!
しかもなんてチョロいんだと自分をひたすら貶したい。チョロい。チョロすぎる。助けにきたヒーローに落ちるヒロインそのものかよと罵倒し倒したい。いや、もしかしたらその前から何か前兆はあった可能性もあるが、それでも決定打は絶対助けにきたヒーローだ。多分、きっとそうだ。これだから童貞はと壁に頭を打ち付けたい。そして頭を抱えてひたすら「あああ」と叫びながら床を転がり倒したい。
フィンリーがわなわなと小さく手などを震わせながら、転がるのを必死で堪えていると「お待たせして申し訳ありません」とカリッドが胡散臭い笑顔をフィンリーに振り撒きながら戻ってきた。
自覚したてだからだろうか。胡散臭いはずのカリッドが眩しくて直視できない。
「フィンリー? どうされました?」
「どうもされません、問題ありません。あとお手を煩わせてしまいますが俺を誰か手の空いている方に送ってもらえるよう手配して頂けないでしょうか」
とりあえず逃げよう。
フィンリーが咄嗟に思ったのはそれだった。だがハッとなる。気づけばぼんやりしてカリッドのことを考えてしまう原因というか理由がわかったからとはいえ、改めて礼を述べることまで端折るべきではない。
「あと、改めてと申しますか、今さらと申しますか……助けて頂き、本当にありがとうございました」
「お礼の言葉なら当日と翌日にそなたからもう頂きましたよ」
言ったっけ? 言ったかもしれない。
「その、でも改めて申し上げたいな、と」
「……お礼なら……では、そうですね、欲しいものがあります」
皇族の欲しいもの、とは。
フィンリーは内心ごくりと喉を鳴らした。いくら公爵子息とはいえ私用で自由に使える額にはまだ限界がある。小遣いで賄える範囲でありますようにとそっと願う。
「そなたの気持ちを頂きたい」
「は? ああ、ええっと、言葉はもういいから何か品を、ということです、よね? もちろん、何かを献上させて──」
「はは。そんなもの、私には不要です」
「ではどういう……」
「そなたが欲しい」
「ああ、俺で……すかっ?」
「そなたは時折面白い言葉の区切り方をしますよね。まるでこの国の言葉が母国語ではないみたいだ」
ある意味そうだったけれども……!
何も言い返せず、動揺し過ぎて口をぽかんと開けていたらカリッドが近づいてきた。フィンリーの手を取り、椅子から立たせてくる。そしていきなり横抱きにしてきた。
ヒロインのお姫様抱っことか、あるある過ぎであっても女だったらそりゃテンションも上がったかもしれないけども……!
「お、おろしてください」
「嫌です。おろしたらそなたは逃げてしまうかもしれない」
「その時は逃がしてあげてくださいよ……」
「駄目です。私はこれでも結構猶予をそなたに差し上げたと思うんですよね。思うがまま選べるよう。そうしたらどうです? そなたはとうとう平民とまでイチャイチャし出して。ハラハラとさせられるようなことばかりな挙句、拉致監禁ですよ。こんなことなら私がさっさとそなたを奪ってそばに置いてしまえばよかったと、助けに行く道すがらどれほど思ったか」
「何の話ですか……!」
だいたいカリッドまでもがアートとの間をそんな風に見ているのかとフィンリーは微妙な顔になった。誰もアートとの仲をわかってくれない。というかさすが元乙女ゲームの世界というか、恋愛脳しかこの世界にはいないのか。リースの兄、ルカスですら自分は男対象外のくせにフィンリーとリースやカリッドの仲を疑っていた。
そう思えばアートとの友情は何て貴重で素晴らしいものかと改めて実感できる。明日にでも久しぶりに会いに行こうとフィンリーが思っていると「平民の方のことを考えてます?」とにっこり笑われた。ぎくりとなる。
「……。……私は元々自己中心的でしてね。ですので今からフィンリー、そなたを奪います。例えそなたが嫌だと言っても」
そして笑顔のまま宣言され、ベッドに転がされた。
ここで俺様特徴出してくるの……!
抵抗はいくらでもできたと思う。前回と違って薬は盛られていないし当然だが拘束されている訳でもない。だというのにフィンリーはされるがままだった。
何で俺もタイミングよく自覚なんてしちゃうのかな! 自覚しちゃったらそんなのいくらカリッドが男でも俺──
「っあ、あ……っ」
「また後ろで達しましたね……上手ですよ。可愛いですね、フィンリーは本当に」
「さす、がに可愛くは、ねー……」
散々後ろの穴を弄られた挙句、弱いところを既に薬漬けの時に知り尽くされているからか、あっという間に何度も達してしまい、思わず地を出しつつ息を整えようとしていると腰をひょいと持ち上げられた。まさか、と緊張が体を走る暇もなく、後ろからカリッドの硬いものがフィンリーの中にゆっくりと入ってくる。
「う、嘘……」
「は、ぁ……あれほど解してもやっぱりキツイですね……なのにそなたの中は私のものを締め付けながら困惑しそうなほど迎え入れてくれる……」
「む、り。そんな……、俺、そんなの、え、待って、む……っんぁあっ」
さらにグッと奥まで入ってくると、カリッドが腰を動かしてきた。想像を絶する痛みはさすがにないものの、圧迫感と未知の世界過ぎて怖い気持ちが半端ない。
「い、や……待って、苦し……ぁ、あ……」
「苦しいだけ? ね、フィンリー……ここは?」
ぐり、っと先ほど散々泣かされた部分を抉るように突かれ、フィンリーは顔を枕に押し付けながら唸るような声を何とか堪えた。
「ああ、好きなんですね……声、もっと出してくださっていいんですよ、可愛いフィンリー」
「いや、いやだ、っん、ぁ、っあ、あっ、ああっ」
「何て可愛いんだろう。そなたをもう絶対に放しません。どうか好きだと言ってください。フィンリー……は、ぁ……」
「い、や……っは、ぁっ、ああ」
童貞のまま男に尻を掘られているだけじゃなく、それが堪らなく興奮してしまう上に喘ぎ倒したいのをむしろ必死に我慢している。おまけにその相手のことを男でそれも絶対にあり得ないと避け倒した攻略対象だというのに軽率に好きになってしまい、だからこそ余計に気持ち良くて嬉しくてもっと欲しいと思ってしまっている。
認められるか。こんなの、絶対に認められるか……!
「っあ、ああ……っ」
「お願いです、どうか、好きだと。私はフィンリー、そなたを私だけのそなたにしたい。……愛してます、フィンリー、愛してる」
「ひ……っ」
必死になって堪えていたというのに「愛してる」というカリッドの言葉でタガが外れてしまった。痙攣しそうなほどに体を震わせ、フィンリーはまた激しく達してしまった。感情すら崩壊しそうだ。
「も……クソ……ああもう……無理……もう……クソ! 好きだよ! 何なら大好きだよ!」
その後意識を手放してしまった。
あれほど散々、五歳の頃から乙女ゲーム展開にならないようひたすら警戒し対応し逃げ倒してきたというのに、まだその攻略対象から告白さえされていないというのに、しかもゲームで一番王道だったらしい相手にそれも当然男相手に自ら落ちるなんて、こんなことってあるだろうか。
俺自ら攻略されに行っている、だ、と……!
しかもなんてチョロいんだと自分をひたすら貶したい。チョロい。チョロすぎる。助けにきたヒーローに落ちるヒロインそのものかよと罵倒し倒したい。いや、もしかしたらその前から何か前兆はあった可能性もあるが、それでも決定打は絶対助けにきたヒーローだ。多分、きっとそうだ。これだから童貞はと壁に頭を打ち付けたい。そして頭を抱えてひたすら「あああ」と叫びながら床を転がり倒したい。
フィンリーがわなわなと小さく手などを震わせながら、転がるのを必死で堪えていると「お待たせして申し訳ありません」とカリッドが胡散臭い笑顔をフィンリーに振り撒きながら戻ってきた。
自覚したてだからだろうか。胡散臭いはずのカリッドが眩しくて直視できない。
「フィンリー? どうされました?」
「どうもされません、問題ありません。あとお手を煩わせてしまいますが俺を誰か手の空いている方に送ってもらえるよう手配して頂けないでしょうか」
とりあえず逃げよう。
フィンリーが咄嗟に思ったのはそれだった。だがハッとなる。気づけばぼんやりしてカリッドのことを考えてしまう原因というか理由がわかったからとはいえ、改めて礼を述べることまで端折るべきではない。
「あと、改めてと申しますか、今さらと申しますか……助けて頂き、本当にありがとうございました」
「お礼の言葉なら当日と翌日にそなたからもう頂きましたよ」
言ったっけ? 言ったかもしれない。
「その、でも改めて申し上げたいな、と」
「……お礼なら……では、そうですね、欲しいものがあります」
皇族の欲しいもの、とは。
フィンリーは内心ごくりと喉を鳴らした。いくら公爵子息とはいえ私用で自由に使える額にはまだ限界がある。小遣いで賄える範囲でありますようにとそっと願う。
「そなたの気持ちを頂きたい」
「は? ああ、ええっと、言葉はもういいから何か品を、ということです、よね? もちろん、何かを献上させて──」
「はは。そんなもの、私には不要です」
「ではどういう……」
「そなたが欲しい」
「ああ、俺で……すかっ?」
「そなたは時折面白い言葉の区切り方をしますよね。まるでこの国の言葉が母国語ではないみたいだ」
ある意味そうだったけれども……!
何も言い返せず、動揺し過ぎて口をぽかんと開けていたらカリッドが近づいてきた。フィンリーの手を取り、椅子から立たせてくる。そしていきなり横抱きにしてきた。
ヒロインのお姫様抱っことか、あるある過ぎであっても女だったらそりゃテンションも上がったかもしれないけども……!
「お、おろしてください」
「嫌です。おろしたらそなたは逃げてしまうかもしれない」
「その時は逃がしてあげてくださいよ……」
「駄目です。私はこれでも結構猶予をそなたに差し上げたと思うんですよね。思うがまま選べるよう。そうしたらどうです? そなたはとうとう平民とまでイチャイチャし出して。ハラハラとさせられるようなことばかりな挙句、拉致監禁ですよ。こんなことなら私がさっさとそなたを奪ってそばに置いてしまえばよかったと、助けに行く道すがらどれほど思ったか」
「何の話ですか……!」
だいたいカリッドまでもがアートとの間をそんな風に見ているのかとフィンリーは微妙な顔になった。誰もアートとの仲をわかってくれない。というかさすが元乙女ゲームの世界というか、恋愛脳しかこの世界にはいないのか。リースの兄、ルカスですら自分は男対象外のくせにフィンリーとリースやカリッドの仲を疑っていた。
そう思えばアートとの友情は何て貴重で素晴らしいものかと改めて実感できる。明日にでも久しぶりに会いに行こうとフィンリーが思っていると「平民の方のことを考えてます?」とにっこり笑われた。ぎくりとなる。
「……。……私は元々自己中心的でしてね。ですので今からフィンリー、そなたを奪います。例えそなたが嫌だと言っても」
そして笑顔のまま宣言され、ベッドに転がされた。
ここで俺様特徴出してくるの……!
抵抗はいくらでもできたと思う。前回と違って薬は盛られていないし当然だが拘束されている訳でもない。だというのにフィンリーはされるがままだった。
何で俺もタイミングよく自覚なんてしちゃうのかな! 自覚しちゃったらそんなのいくらカリッドが男でも俺──
「っあ、あ……っ」
「また後ろで達しましたね……上手ですよ。可愛いですね、フィンリーは本当に」
「さす、がに可愛くは、ねー……」
散々後ろの穴を弄られた挙句、弱いところを既に薬漬けの時に知り尽くされているからか、あっという間に何度も達してしまい、思わず地を出しつつ息を整えようとしていると腰をひょいと持ち上げられた。まさか、と緊張が体を走る暇もなく、後ろからカリッドの硬いものがフィンリーの中にゆっくりと入ってくる。
「う、嘘……」
「は、ぁ……あれほど解してもやっぱりキツイですね……なのにそなたの中は私のものを締め付けながら困惑しそうなほど迎え入れてくれる……」
「む、り。そんな……、俺、そんなの、え、待って、む……っんぁあっ」
さらにグッと奥まで入ってくると、カリッドが腰を動かしてきた。想像を絶する痛みはさすがにないものの、圧迫感と未知の世界過ぎて怖い気持ちが半端ない。
「い、や……待って、苦し……ぁ、あ……」
「苦しいだけ? ね、フィンリー……ここは?」
ぐり、っと先ほど散々泣かされた部分を抉るように突かれ、フィンリーは顔を枕に押し付けながら唸るような声を何とか堪えた。
「ああ、好きなんですね……声、もっと出してくださっていいんですよ、可愛いフィンリー」
「いや、いやだ、っん、ぁ、っあ、あっ、ああっ」
「何て可愛いんだろう。そなたをもう絶対に放しません。どうか好きだと言ってください。フィンリー……は、ぁ……」
「い、や……っは、ぁっ、ああ」
童貞のまま男に尻を掘られているだけじゃなく、それが堪らなく興奮してしまう上に喘ぎ倒したいのをむしろ必死に我慢している。おまけにその相手のことを男でそれも絶対にあり得ないと避け倒した攻略対象だというのに軽率に好きになってしまい、だからこそ余計に気持ち良くて嬉しくてもっと欲しいと思ってしまっている。
認められるか。こんなの、絶対に認められるか……!
「っあ、ああ……っ」
「お願いです、どうか、好きだと。私はフィンリー、そなたを私だけのそなたにしたい。……愛してます、フィンリー、愛してる」
「ひ……っ」
必死になって堪えていたというのに「愛してる」というカリッドの言葉でタガが外れてしまった。痙攣しそうなほどに体を震わせ、フィンリーはまた激しく達してしまった。感情すら崩壊しそうだ。
「も……クソ……ああもう……無理……もう……クソ! 好きだよ! 何なら大好きだよ!」
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