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165話
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心の中でひたすら「かわいいかわいい」とファインは先ほどから悶えているが、さすがに表に出すわけにいかない。気持ちはばれているとはいえ、ちょっとしたことで絶えず「かわいい」と思ってしまうところまでばれてしまうのはさすがに引かれる気がする。それはできれば避けたいため、むしろムッとした顔になりながらファインはアルスを見返した。
「アルスはでもここ、駄目だろ」
「ムッとしながら言うくらい、ここ気に入ってんのか? 別にここってわけじゃなくて、こういう雰囲気ね」
それに対し苦笑しているアルスに、内心「わかってるけど、かわいいって思ってんの隠そうとしたらそんな感じになっただけだ」と言いつつ実際には「うん、雰囲気いいよな」とだけ繰り返しておいた。
「そういえばアルスとファインっていつかはどこかに定住するの?」
簡単に荷物を整理してまとめ終えたカースが夜具に入りながら聞いてきた。ちなみにフォルアはすでに眠っている。出会った頃はいつ眠るのだろうかというくらい気配に敏感だったはずだが、ファインたちに慣れてくれた上にカースもいるからか、今では誰よりも眠っている気がする。
「まあ、いつかはな」
「うん、いつかは」
「はは。いつかは、ね。やっぱ一緒に暮らすんだ?」
「な、んだよ」
「そのつもり、だけど……え、あ、待って」
夜具にくるまり、もこもこになっていたアルスが勢いよく体を起こしてきた。それだけたくさんの布に絡まるようにくるまった上でその動きはさすが、結構な腹筋の力だよなとファインは思わず内心惚れ惚れする。
「ん? どうかした?」
カースに聞かれ、アルスは座った状態でまた夜具の中に思い切りくるまり直しながら「いや、前まではさ、ずっとファインと一緒にいるつもりだけど、ファインに好きな人ができたらどうなるんだろうなとかさ、思ってて」と困惑したように話してきた。
「え、オレ?」
「あー。なるほど。でもファインが好きなのは、ねえ?」
カースがファインの気持ちを知っているのをアルスも知っているため、コクリと頷く。
「え、何? オレの公開処刑なのか?」
アルスに気持ちがバレてもずっと変わらず一緒にいてくれるとわかり、むしろバレてよかったとさえ思っているものの、さすがに今のような状況は落ち着かない。
「何言ってんだろなファインは。普段すごく察しいいのにアルスが絡むと馬鹿になるよねえ」
「あ? 誰が馬鹿だって?」
「あの、ち、違うよ。公開処刑ってむしろどういうこと。えっと、さ。だからその、ファインが俺のこと好きでいてくれるなら、これから先もずっと一緒でいられるんだなって実感して」
アルスの言葉を聞いたとたん、顔を覆ってマットレスに頭を打ちつけたファインに、アルスが思い切りビクリとしている。
「ファイン?」
「気にすんな……ちょっと気分転換だ」
「え」
「ぶは。どんな気分転換だよ、やっぱ馬鹿だろ」
「うるせぇ、カースは黙ってろ。……アルス」
「え、っと、うん」
「むしろお前はオレとずっと一緒でいいのか」
「当たり前だろ」
「だってお前のこと……、はぁ」
ぶち抜く勢いで上がっていたテンションが急激に落ちた。ずっと一緒にいたいと思ってくれていることは当然とてつもなく嬉しいが、どう考えてもアルスが好きだというファインに対し、全く意識していないからこそ言えることでもあるのだと実感したからだろう。
ちょっと前までは一生気持ち伝えないし、そばにいるだけで十分って満足してたってのにこれだ。欲深かよオレ。
「ファイン、どうしたんだよ」
「あはは。ファインはね、アルスがずっと一緒にいたいと思ってくれることにものすごく嬉しく思う反面、邪な気持ち抱いてるファインのこと全く意識してくれてないからこそだなと実感して悲しく思ってもいるんだよ」
「え」
「……カースはそろそろ黙ろうか」
顔を覆ったまま、ファインはこれ以上低くなりようがないくらい低い声をカースに対して絞り出した。それに対しカースが何か言う前にアルスが「い、意識してなくないよ!」とファインの腕を持ってきた。思わずファインは力が抜けたように手を下ろす。
「うわ、今日こそどうにかして部屋を別に取っとくべきだったねえ」
「カースほんと黙れ。……アルス、してなくない、って?」
「……ファインに好きだって言われてから、ずっと俺、気にしてる」
ファインの下ろした腕を持ったままのアルスは、その手こそ夜具から出ているが、顔は俯き加減のせいもあるが夜具に隠れてよく見えない。
顔が、見たい。
ついそう思ってしまう。今のアルスが言った言葉はどうとでも受け取れる。
「ま、まあずっと昔から一緒の家族同然の幼馴染からそんな気持ち持たれてたって知ったら、そりゃ気になるわ、な」
「ファインはやっぱ馬鹿だよな」
「カース黙れ」
「違うよ、違う。確かにそういう意味でも気になるのかもだけど、そうじゃなくて、その、ファインとかカースが言うみたいに意識、ちゃんとしてる、から……」
「え」
「その、俺ほんとそういうの、疎いし……わからないことだらけだし……適当な気持ちをファインに伝えるとかしたくないから、その、何も言ってなかった、かもだけど……さすがに意識しないわけ、ない」
四人一緒の部屋でむしろよかったとファインは思った。そうでないと、アルスからちゃんとした気持ちを聞いたわけでもないのにてんぱってしまい、下手したら襲っていたかもしれない。
「アルスはでもここ、駄目だろ」
「ムッとしながら言うくらい、ここ気に入ってんのか? 別にここってわけじゃなくて、こういう雰囲気ね」
それに対し苦笑しているアルスに、内心「わかってるけど、かわいいって思ってんの隠そうとしたらそんな感じになっただけだ」と言いつつ実際には「うん、雰囲気いいよな」とだけ繰り返しておいた。
「そういえばアルスとファインっていつかはどこかに定住するの?」
簡単に荷物を整理してまとめ終えたカースが夜具に入りながら聞いてきた。ちなみにフォルアはすでに眠っている。出会った頃はいつ眠るのだろうかというくらい気配に敏感だったはずだが、ファインたちに慣れてくれた上にカースもいるからか、今では誰よりも眠っている気がする。
「まあ、いつかはな」
「うん、いつかは」
「はは。いつかは、ね。やっぱ一緒に暮らすんだ?」
「な、んだよ」
「そのつもり、だけど……え、あ、待って」
夜具にくるまり、もこもこになっていたアルスが勢いよく体を起こしてきた。それだけたくさんの布に絡まるようにくるまった上でその動きはさすが、結構な腹筋の力だよなとファインは思わず内心惚れ惚れする。
「ん? どうかした?」
カースに聞かれ、アルスは座った状態でまた夜具の中に思い切りくるまり直しながら「いや、前まではさ、ずっとファインと一緒にいるつもりだけど、ファインに好きな人ができたらどうなるんだろうなとかさ、思ってて」と困惑したように話してきた。
「え、オレ?」
「あー。なるほど。でもファインが好きなのは、ねえ?」
カースがファインの気持ちを知っているのをアルスも知っているため、コクリと頷く。
「え、何? オレの公開処刑なのか?」
アルスに気持ちがバレてもずっと変わらず一緒にいてくれるとわかり、むしろバレてよかったとさえ思っているものの、さすがに今のような状況は落ち着かない。
「何言ってんだろなファインは。普段すごく察しいいのにアルスが絡むと馬鹿になるよねえ」
「あ? 誰が馬鹿だって?」
「あの、ち、違うよ。公開処刑ってむしろどういうこと。えっと、さ。だからその、ファインが俺のこと好きでいてくれるなら、これから先もずっと一緒でいられるんだなって実感して」
アルスの言葉を聞いたとたん、顔を覆ってマットレスに頭を打ちつけたファインに、アルスが思い切りビクリとしている。
「ファイン?」
「気にすんな……ちょっと気分転換だ」
「え」
「ぶは。どんな気分転換だよ、やっぱ馬鹿だろ」
「うるせぇ、カースは黙ってろ。……アルス」
「え、っと、うん」
「むしろお前はオレとずっと一緒でいいのか」
「当たり前だろ」
「だってお前のこと……、はぁ」
ぶち抜く勢いで上がっていたテンションが急激に落ちた。ずっと一緒にいたいと思ってくれていることは当然とてつもなく嬉しいが、どう考えてもアルスが好きだというファインに対し、全く意識していないからこそ言えることでもあるのだと実感したからだろう。
ちょっと前までは一生気持ち伝えないし、そばにいるだけで十分って満足してたってのにこれだ。欲深かよオレ。
「ファイン、どうしたんだよ」
「あはは。ファインはね、アルスがずっと一緒にいたいと思ってくれることにものすごく嬉しく思う反面、邪な気持ち抱いてるファインのこと全く意識してくれてないからこそだなと実感して悲しく思ってもいるんだよ」
「え」
「……カースはそろそろ黙ろうか」
顔を覆ったまま、ファインはこれ以上低くなりようがないくらい低い声をカースに対して絞り出した。それに対しカースが何か言う前にアルスが「い、意識してなくないよ!」とファインの腕を持ってきた。思わずファインは力が抜けたように手を下ろす。
「うわ、今日こそどうにかして部屋を別に取っとくべきだったねえ」
「カースほんと黙れ。……アルス、してなくない、って?」
「……ファインに好きだって言われてから、ずっと俺、気にしてる」
ファインの下ろした腕を持ったままのアルスは、その手こそ夜具から出ているが、顔は俯き加減のせいもあるが夜具に隠れてよく見えない。
顔が、見たい。
ついそう思ってしまう。今のアルスが言った言葉はどうとでも受け取れる。
「ま、まあずっと昔から一緒の家族同然の幼馴染からそんな気持ち持たれてたって知ったら、そりゃ気になるわ、な」
「ファインはやっぱ馬鹿だよな」
「カース黙れ」
「違うよ、違う。確かにそういう意味でも気になるのかもだけど、そうじゃなくて、その、ファインとかカースが言うみたいに意識、ちゃんとしてる、から……」
「え」
「その、俺ほんとそういうの、疎いし……わからないことだらけだし……適当な気持ちをファインに伝えるとかしたくないから、その、何も言ってなかった、かもだけど……さすがに意識しないわけ、ない」
四人一緒の部屋でむしろよかったとファインは思った。そうでないと、アルスからちゃんとした気持ちを聞いたわけでもないのにてんぱってしまい、下手したら襲っていたかもしれない。
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