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52話
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フォルアがチート過ぎてちょっと何だかわからないまま、とりあえずアルスたちはその場から離れた。
その日の夕暮れ、焚火をしようとしていたファインが「ちょっとフォルア」と、地面に木の枝で何やら描いていたフォルアを呼んでいる。ちなみに何を描いていたのだろうとアルスは見てみたが、何が何だかやはりわからない。
「お前、もしかして風と土以外も普通に自由自在に使えんの?」
ファインの問いかけに対し、フォルアはいつものように首を傾げている。
「……なぁ、フォルア。お前の戦闘時を見ていると馬鹿ではないと思うんだけど、ひょっとしてやっぱりちょっと何か足りないとか……」
「ファイン、中々に失礼なこと聞いてるぞ。あと俺が思うに多分フォルアって選択肢を狭めないとあまり話してくれないんじゃないかなって」
アルスが苦笑しながら言えば、ファインは怪訝そうな顔で「どういう意味だよ」と聞き返してきた。
「もしかしたら本当にわかってない時もあるのかもだけど……フォルアを見てるとたくさん話すのが基本面倒だから反応しないって時もあるように思えて」
「んだそら。マジで?」
「あ、いや、悪気はなさそうでしかないし、多分無意識なんだとは思うんだけど、どこかそういう感じもあるなぁ、って」
「……はぁ。やっぱりある意味どこか足りないだろそんなん……。ったく。仕方ねえなぁ。あのさ、フォルア。お前、自分の属性以外に水も詠唱なしで使ってただろ」
ファインの言葉に今度はコクリと頷いてきた。
「あれ、もしかして火も使えんのか?」
今度もコクリと頷いてきた。
「やっぱ使えんのか」
「やっぱ、ってどいうこと、ファイン」
属性が風なのに土以外に他の属性である火も使えるのかと思いながらも、フォルアなら使えそうかもとアルスは即思ったのでそういう意味でなら「やっぱり」だが、ファインの言っている「やっぱり」は違う部分にかかっているような気がした。
「いや、な、こいつ自分で属性は風と土っつっただろ」
「うん」
「でもよく考えてみろよ。土が苦手な属性って風だぞ」
「あ」
ファインに言われてアルスも気づいた。確かにそうだ。ちなみに火は風に強くて水に弱い。水は火に強くて雷に弱い。雷は水に強くて土に弱い。土は雷に強くて風に弱い。そして風は土に強くて火に弱い。
「……土に強い風のが得意だし上位魔法使える」
やはりアルスたちが話している内容は基本的に把握しているようだ。大抵首を傾げてくるのはどう答えていいのかわからないとか、何に答えればいいのかわからないとかそういった意味なのだろう。あとはたくさん答えるのが面倒くさいか。アルスもフォルアを見ていると自分は無口ではないと言えるが、一般的にはよく喋るほうではないため、フォルアのそういったところは何となくわからないでもない。
今のフォルアの言葉に対してファインは「そういう問題じゃねえんだよ」と即答していた。
「自分の属性が既にそんな風なんだからな……こいつには強い、弱いっつーエレメントの基本的なルールが当てはまらねえのかもしんない」
「魔力が強すぎるから?」
「わからねえけどな。それもあるのかもな。何しかフォルアの魔力に関しては普通の魔法常識が通じねえ気がする。……フォルア、この焚火用の薪に火をつけてみてくれ」
言いながらファインはアルスを引き寄せ抱えてくると、剣を取り出して何やら呟き簡単な魔法壁を作っている。よほど以前吹き飛ばされたのが心に残っているのかもしれない。あれは多分、たまたまだとアルスは思っている。フォルアはそれまで特に魔力を調整して生活面で使うことをあまりしなかったのではないだろうか。
フォルアはまた頷くと、やはり詠唱なしで火をつけてきた。暴走することも足りないこともなく、薪は綺麗に燃え出す。
「……お前、以前俺を上昇気流とともに巻き上げたの、わざとじゃねえだろな……」
今度は首を傾げてきた。
「いや、そこも首振るとこだろ……! アルス、こいつ悪気マジねえんだろうか」
「はは。いやでも、うん、ないと思うよ」
フォルアの灯した火はファインの火と少し違う感じがした。あまり魔法が得意ではないアルスの主観かもしれないが、ファインの灯す生活系での火は明るくてとても暖かい。フォルアの火はそれよりもじんわりと優しい気がする。とは言っても風や何やらの少々の障害では消えなさそうな強さも感じられる。
「俺、フォルアの火、好きだな」
もちろんファインが灯してくれる火が大好きなのは前提だが、思わずそう呟いているとファインが何故かショックを受けたように頭を抱えている。
今、ショックを受けるような何か、俺言ったか?
怪訝に思っているとフォルアがアルスに近づいてきて座り、アルスの頭を無言で撫でてきた。懐いてくれているのだろうか。何だかほわほわとした気持ちになっていると「フォルア、ちょっとアルスからもうちょい離れてて」と頭を抱えたままファインが呟いている。
「何言ってんだ、ファイン? また何か試すのか?」
「……違う。いや、うん、まあ、何でもねえよ。それにオレもフォルアの火、好きだよクソ」
後で抱えたままの頭をフォルアに撫でられていて、ファインは複雑そうな顔をしながらフォルアに「ありがとうな……」とまた呟いていた。
その日の夕暮れ、焚火をしようとしていたファインが「ちょっとフォルア」と、地面に木の枝で何やら描いていたフォルアを呼んでいる。ちなみに何を描いていたのだろうとアルスは見てみたが、何が何だかやはりわからない。
「お前、もしかして風と土以外も普通に自由自在に使えんの?」
ファインの問いかけに対し、フォルアはいつものように首を傾げている。
「……なぁ、フォルア。お前の戦闘時を見ていると馬鹿ではないと思うんだけど、ひょっとしてやっぱりちょっと何か足りないとか……」
「ファイン、中々に失礼なこと聞いてるぞ。あと俺が思うに多分フォルアって選択肢を狭めないとあまり話してくれないんじゃないかなって」
アルスが苦笑しながら言えば、ファインは怪訝そうな顔で「どういう意味だよ」と聞き返してきた。
「もしかしたら本当にわかってない時もあるのかもだけど……フォルアを見てるとたくさん話すのが基本面倒だから反応しないって時もあるように思えて」
「んだそら。マジで?」
「あ、いや、悪気はなさそうでしかないし、多分無意識なんだとは思うんだけど、どこかそういう感じもあるなぁ、って」
「……はぁ。やっぱりある意味どこか足りないだろそんなん……。ったく。仕方ねえなぁ。あのさ、フォルア。お前、自分の属性以外に水も詠唱なしで使ってただろ」
ファインの言葉に今度はコクリと頷いてきた。
「あれ、もしかして火も使えんのか?」
今度もコクリと頷いてきた。
「やっぱ使えんのか」
「やっぱ、ってどいうこと、ファイン」
属性が風なのに土以外に他の属性である火も使えるのかと思いながらも、フォルアなら使えそうかもとアルスは即思ったのでそういう意味でなら「やっぱり」だが、ファインの言っている「やっぱり」は違う部分にかかっているような気がした。
「いや、な、こいつ自分で属性は風と土っつっただろ」
「うん」
「でもよく考えてみろよ。土が苦手な属性って風だぞ」
「あ」
ファインに言われてアルスも気づいた。確かにそうだ。ちなみに火は風に強くて水に弱い。水は火に強くて雷に弱い。雷は水に強くて土に弱い。土は雷に強くて風に弱い。そして風は土に強くて火に弱い。
「……土に強い風のが得意だし上位魔法使える」
やはりアルスたちが話している内容は基本的に把握しているようだ。大抵首を傾げてくるのはどう答えていいのかわからないとか、何に答えればいいのかわからないとかそういった意味なのだろう。あとはたくさん答えるのが面倒くさいか。アルスもフォルアを見ていると自分は無口ではないと言えるが、一般的にはよく喋るほうではないため、フォルアのそういったところは何となくわからないでもない。
今のフォルアの言葉に対してファインは「そういう問題じゃねえんだよ」と即答していた。
「自分の属性が既にそんな風なんだからな……こいつには強い、弱いっつーエレメントの基本的なルールが当てはまらねえのかもしんない」
「魔力が強すぎるから?」
「わからねえけどな。それもあるのかもな。何しかフォルアの魔力に関しては普通の魔法常識が通じねえ気がする。……フォルア、この焚火用の薪に火をつけてみてくれ」
言いながらファインはアルスを引き寄せ抱えてくると、剣を取り出して何やら呟き簡単な魔法壁を作っている。よほど以前吹き飛ばされたのが心に残っているのかもしれない。あれは多分、たまたまだとアルスは思っている。フォルアはそれまで特に魔力を調整して生活面で使うことをあまりしなかったのではないだろうか。
フォルアはまた頷くと、やはり詠唱なしで火をつけてきた。暴走することも足りないこともなく、薪は綺麗に燃え出す。
「……お前、以前俺を上昇気流とともに巻き上げたの、わざとじゃねえだろな……」
今度は首を傾げてきた。
「いや、そこも首振るとこだろ……! アルス、こいつ悪気マジねえんだろうか」
「はは。いやでも、うん、ないと思うよ」
フォルアの灯した火はファインの火と少し違う感じがした。あまり魔法が得意ではないアルスの主観かもしれないが、ファインの灯す生活系での火は明るくてとても暖かい。フォルアの火はそれよりもじんわりと優しい気がする。とは言っても風や何やらの少々の障害では消えなさそうな強さも感じられる。
「俺、フォルアの火、好きだな」
もちろんファインが灯してくれる火が大好きなのは前提だが、思わずそう呟いているとファインが何故かショックを受けたように頭を抱えている。
今、ショックを受けるような何か、俺言ったか?
怪訝に思っているとフォルアがアルスに近づいてきて座り、アルスの頭を無言で撫でてきた。懐いてくれているのだろうか。何だかほわほわとした気持ちになっていると「フォルア、ちょっとアルスからもうちょい離れてて」と頭を抱えたままファインが呟いている。
「何言ってんだ、ファイン? また何か試すのか?」
「……違う。いや、うん、まあ、何でもねえよ。それにオレもフォルアの火、好きだよクソ」
後で抱えたままの頭をフォルアに撫でられていて、ファインは複雑そうな顔をしながらフォルアに「ありがとうな……」とまた呟いていた。
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