水晶の涙

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35話 ※

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 何故そんなに動揺するのだろうと不思議に思う。

「ファイン……お前俺のこと相当脳筋だと思ってるみたいだけど……さすがにそれくらいは俺でもわかるよ」
「そ、そうか! そうか、ならよかった。うん、よかった。あの、えっと、もう話す時も震えた声じゃねーし、もう大丈夫だな、オレ、離れるわ」

 あはは、と変な笑い方をしながらファインが離れようとする。途端にもの凄く凍りつきそうな冷たい風が布団の中に入ってきたような気がした。

「ちょっと待って。魔力はもう使わなくていいけどやっぱりもう少しくっついててよ。まだお前離れたら寒い」
「じゃ、じゃあ服着てから」
「駄目。だってそれ結局離れるってことだろ。もうちょっとだけ。お願い」
「ああクソ! お前の願いは叶えてやりてーけどな、つかだいたい気持ち悪くねぇのかよ。男同士で裸でくっついておまけに相手勃起してんだぞっ?」

 くっついていると反抗期か、たまに変なことでムスッとしたり怒ったりしているが、今回の怒り方は珍しくあからさまだ。よほど嫌なのだろう。それともやはり今すぐ抜かないときついのだろうか。アルスは「そんなにくっつくの嫌なら仕方ない、いいよ」と呟いた。

「違っ、嫌じゃねーよ! もう! わからねぇやつだな。お前が気持ち悪かったり嫌な思いしねーよーに離れようとしてんだろ」
「……何で」
「は?」
「何で俺がファインのこと、気持ち悪く思ったりするんだよ。嫌な思いするんだよ」
「だぁかぁらぁ! 裸で密着してるだけじゃなくて俺のちんこが大変なことになってんだろが! 気持ち悪いだろが」
「それは生理的現象だから仕方ないだろ。抜いてきていいって言ったけど、お前がちょっと離れたらめちゃくちゃ寒かったんだよ。でもそんなにきついなら抜いてきたらいいよ。何とか布団の中で丸まって我慢する」

 ファインを離し、自ら丸まろうとするとファインが「なあ」と呼びかけてきた。

「お前、抜くとか本当に知ってんの?」
「知ってるよ。俺を何だと思ってんの。赤ちゃんの作り方だって知ってるのに」
「おしべめしべレベルだろうが」
「確かにそういう知識にレベルがあるとは知らなかったけど、さすがに自分にもついてるものだし、何となくはわかるよ」
「……じゃあどうやって抜くかは知らないんだな? お前は抜いたことないんだな?」
「……まぁ」

 何故そんなことを追求してくるのか。改めて「脳筋だな」とでも言いたいのか。微妙な気持ちになったが、ファインは何故か少しホッとしている。

「何でホッとしてんの」
「いや、その、誰かに変なこと教えられたんじゃなさそうで」
「はぁ?」

 相変わらずたまによくわからないことを言いだすなと、今度は怪訝な気持ちになってアルスはファインを見た。するとファインは今度は何やら葛藤しているように見える。

「そんなに悩むくらいならいいよ。抜いてきて。俺は大丈夫。丸まったら何とかなる気がするし、戻ったらまたくっついて」
「いや……、うん……」
「ファイン?」
「その、あの、な? お前とくっついたままでしかも俺は抜くことができるっていう画期的な方法があるんだけど」
「そうなのか。さすがだな、ファイン。何でもよく知ってる。じゃあそうしていいよ」
「でもそうするとお前も汚れる。あ、精神的なって意味じゃなくてな、実際にって、いやまあ精神的にも穢れるかもだけど」
「何言ってんの?」

 本気で何を言っているのだろうか。大丈夫だろうか。

「そんな痛いものを見るような目で見ないで。ああもう、駄目だ。オレの理性が保てない。ごめん、アルス。先に謝る。ごめん」
「え、何で──」

 聞き返そうとしていると正面からもぞもぞと動かれ、背中にぴったりとファインがくっついてきた。そして硬いものをファインの足の間に入れてくる。

「何やってんの?」
「太もも貸してくれ、そんでオレをできれば軽蔑しないで欲しい。あとできれば、終わってからはもう忘れて欲しいし、絶対誰にも言わないで欲しい」
「願いだらけだな」
「悪い」

 ファインの息が荒い。アルスはそんな風になったことがないからわからないが、そこがここまで硬くなるとよほど辛いのかもしれない。硬い分、痛いとかなのかもしれない。

「いいよ、わかった。好きにするといい。その代わりぎゅっとくっついてて」
「ああもう、クソ! 煽らないで」
「は? な──」

 何をまた言っているのかと言いかけたところでファインの腰が変に動いてきたのがわかった。布団やシーツが擦れる音だけでなく、ベッドが軋む音が、ファインの荒い息遣いと共に聞こえる。

「……ファイン。俺はこのままでいいのか?」
「う、ん……でもできれば足をぎゅっと閉じててくれたら」
「わかった」

 言われた通りぎゅっと閉じる。ファインは時折「ごめん。ごめんな」と謝りながらも変な声を小さく上げたりしてきた。そしてたまに「アルス……」と名前を呼び掛けてくる。答えていいものかもよくわからず、アルスは足に集中して黙っていた。
 するとただでさえファインの硬いものが太ももに擦れることにどうしても違和感を覚えていたというのに、さらに自分のそれを変に擦ってきて何だかもぞもぞとしてくる。それがどうにも落ち着かなくて、アルスはファインが終わるまでひたすら頭の中で剣の素振りをしていた。

「っぁ、く……」

 しばらくして小さく息を飲むような声が聞こえてきたかと思うと、何かアルスの足の間が濡れたような感覚がした。
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