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14.家飲み
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数日ぶりに残業もなく終わり、明日は休みだしと律は着替えた後に心地よく伸びをした。
「おつかれ、律」
「お疲れ様、藤堂さん」
海に声をかけられたので微笑みながら振り向くと「亨と家で飲むんだけどお前もおいで」とニッコリ言われた。
「え、でもりおが待ってるだろうし」
「何言ってんの、弟は待たせてなんぼだって」
「……何それ、藤堂さん……」
微妙な顔で海を見上げると「いいから」と首に腕を回された。
「この間、今度は三人でって言っただろ? 明日休みだし泊まってったらいいし」
ニコニコ言われ、律は「はぁ……」と頷くしかできなかった。
「そうと決まれば善は急げ。行くよ」
「あ、ちょっと待って、りおに電話……」
「車の中でするといいよ」
利央に電話を、と言いかけると海はまるでそれを遮るように律の腕をひっぱってきた。
「わ、わかったからそんなにひっぱらなくても……」
今日はまたいつにもましてマイペース、というか強引だなと苦笑しながら律は海についていく。そして会社専用の小さな駐車場に止めてある海の車の助手席に乗り込んだ。
いつも思うが海の車は乗り心地がいい。スムーズな走りや座席の心地よさと共に運転技術がいいからだろうと思うが、律はあまり海に車のことは言わないようにしている。前に一度「いいね」と言ったら暫く延々と日本語であって日本語でないことを続けられたからだ。
「このタイプは本当に中低速での走行もストレスないし足回りも丁度いい味つけなんだよね。エンジンとモーターの状態も車体の遮音がしっかりしているから静かだろ。ターボが効いてるみたいに気持ちよく加速するフィーリングが堪らないんだよね。とはいえモーターの出力はちょっと低いんだけ……」
ストレスと言われた辺りから既に耳から耳に流れる感じだった律はひたすら楽しげに話している海を遮るのも悪いと思い、そのまま喋ってもらっていた。しかし延々と続き終わらないようなので、一旦区切れにきたのだろうかと思われる辺りで正直に「ごめん……藤堂さん、俺あまり車、詳しくないから……」と水を差すしかなかった。その際はショックを受けられることもなく笑われ「そりゃそうだな」と言ってくれたが、とりあえず今後はあまり振らないようにしようと律は心底思った。そのため今も乗り心地がいいと思いつつも何も言っていない。
途中コンビニエンスストアへ寄って買い物をした後でまた車に乗り込むと、ふと海が「そういえば」と切り出してきた。
「電話、まだしてなかったよね? してくれていいよー」
車が動き出して暫くは仕事の話していてそのままだった。
「そうだね、じゃあ」
律はニッコリしてポケットから取り出し、利央の番号にかける。数回のコールの後すぐに利央が出た。
『兄貴どうしたの? 遅くなるとか?』
「ううん。今日はもう終わったんだけど今から藤堂さんの家で藤堂さんとその友だちとで飲もうって話に……」
『は? ちょ、待て。それって職場のあの人だよな? 海って名前の! っち。……って、もしかして友だちって亨兄じゃねぇだろな』
律が言いかけると利央が何故か途中で苛ついたような慌てたような様子で聞いてきた。律はポカンとしつつも「何でわかったの?」と笑いながら聞く。
『笑ってる場合じゃ……、いや、あれだ、やめとけって、あいつら煩いだろし疲れるだけだって兄貴』
「あいつらって……。今車で藤堂さんの家に向かってるところなんだ。職場で電話しようと思ったんだけどちょっと暇なくて」
苦笑しながら言うと今度は電話先で舌打ちだけが聞こえてきたような気がした。ここ数日少し思っていたことだが、やはり最近の利央はどこか怖いし、変だと律は首を傾げた。
怖いと言っても本気で怖くはない。今でもやはりかわいい我が弟なのだが、たまに何らかのスイッチが入ったようになる気がする。
「りお?」
『それ絶対海さんが兄貴電話かけようとしたの邪魔しただろ』
「え、なんでわかるの? っていうかいつのまに名前呼び? 知り合いだっけ? 亨兄だっていうのも何か当ててきたし……」
まさか弟は亨と海が恋人だと知っているのだろうかと律はまた首を傾げた。その横で何故か海は笑いながら運転している。
『兄貴絶対行かない方がいいって! 悪の巣窟だからほんっと』
「え、ちょっと何言ってんのかわからないんだけど……りおどうしたの? あれだよ、帰り危ないって言うなら藤堂さんが泊まって行ったらいいって言うし……」
『余計悪い……!』
「? あの……りお……?」
利央の反応が本当によくわからなく、律の怪訝な気持ちは声にも出ていたようだ。
『あ、いや悪い……。兄貴、藤堂さんの家の場所知ってる?』
「ううん、初めて行くから……」
『そっか。……酒、勧められてもあまり飲み過ぎるなよ。それとそいつらが変なこと……』
利央が何か言いかけている時に律はとんとん、と肩を叩かれた。海を見ると「着いたよ」とニッコリされた。
「あ、着いたみたい。飲み過ぎないよ、それは大丈夫だから。ごめんね、晩御飯、また一人で食べてもらわないとで、ほんとごめん。明日はお詫びに久しぶりに俺が作るから」
『いや、それはいいから……それよりそいつら……』
「ごめん、とりあえず藤堂さんが何か言ってるからもう切るね。また電話する」
律は謝るともう一度「また後でかけるから」と言って電話を切った。
「ごめん、藤堂さん。ずっと話してて。何?」
「いや、別にいいのに切らなくても。でも悪いな、俺が話しかけたからか。ちょっと車駐車するからここで降りて待っててもらえる?」
「了解」
少人数世帯向けマンションだからか機械式駐車場のため、海も降りて機械操作していた。
「その駐車って何か凄いよね」
エレベーターに乗って海の家に向かっている時に律がポツリと言うと何故か笑われた。
「ただいまー、律連れてきたよ」
「おかえり、知ってんよ」
家の中には既に亨がいた。
「え? 一緒に住んでるの? 亨兄、実家いつ出てたの?」
「え、何で知ってんの? 驚かせようと思ったのに」
「二人同時に言うな。半同棲な、律。実家とこっち行き来してるだけ。あと海、あれだ、利央が『ざけんな』だってさ」
亨は淡々と言った後で海の首に片手を回して少し屈ませる。そして律がポカンとしている中、堂々と二人はキスした。軽く唇を合わせただけだったが、律にとってはけっこうな衝撃シーンすぎて固まる。
「お前ら兄弟って何つーかたまに逆だよな」
律の反応に気づくと、亨は楽しそうに言いながら居間の奥へ歩いていった。
「え、どういう意味……」
固まったまま赤くなっていると海も笑いながら「気にするな」と律の頭を撫でて中へ促してくる。
「ていうか利央くん、電話かけてきたんだ。何て?」
コンビニエンスストアの袋をコーヒーテーブルの上に置きながら海が聞くと、亨がその中のものを物色しつつ出しながら笑う。
「この場所教えろ、だってさ。この間は車だったからどう行けばいいかわからないからって」
「え? りお来るの?」
先ほどからひたすらポカンとしている律は相変わらずポカンとしつつ怪訝な顔を亨へ向けた。
「んー、来るんじゃね?」
「あはは、心配なんだねえ弟くん」
海は呑気に笑っている。何が一体心配なのだろうと律は怪訝に思った。会社の同僚に昔から知っている幼馴染み。律には利央から心配される要素が全くわからない。
俺があまり兄と思われていないからとか?
それほど頼りないのだろうか。何となく切なくなりつつも、律はとりあえず勧められるままクッションの置いてある床へ座った。
二人がビールを選ぶ中、律は飲みやすそうだと思った甘いチュウハイを手にとった。乾杯して、とりあえず皆飲む。二人がごくごくと半分以上飲んでいるのを尻目に律は一口飲んだだけで既に喉が熱く感じていた。
「律と飲むとか初めてじゃね? まあっつってもあまり飲めなさそうだけどな」
亨がニヤリと笑いかけてきた。久しぶりにあったのだが、性格は全然変わっていなさそうで律はニッコリ笑う。
「うん、あんまりね。亨兄、久しぶりに見たらカッコよくっていうか綺麗になってびっくりしたけどやっぱ中身は変わらないな」
「まあ、そうそう性格変わるかよ。つかお前いいこと言うねー。ほんとお前こそ相変わらずいい子!」
亨はぐしゃぐしゃと律の頭を撫でた。
「ちょ、亨兄にしても藤堂さんにしても俺を子ども扱いするのやめてくれない? 俺もそれなりの歳なんだから」
「だってかわいいからねえ」
「そうそう。いい子でかわいい」
二人に「かわいい」と言われ律は苦笑する。
「かわいいもやめて。ていうか二人が付き合ってるってこの間藤堂さんに聞いてびっくりした」
「俺、昔からゲイなんだけど知らなかった?」
亨が頬づえをつきながらニッコリ律を見る。丁度惣菜の一つである出汁巻き卵を口にしようとしてた律はまたポカンと亨を見た。
「そうだったの?」
「そ。ああ、安心しろ、利央預かってても何もしてねぇしそんな気になったことねぇぞ」
「そんな心配は聞いた今でもしないよ!」
「じゃあさー、俺が利央くんといたらさすがにちょっと心配する?」
二本めの缶ビールに手を出しながら海がニッコリ聞いてきた。律はため息をつく。
「するわけないだろ。変な事聞いてくるなぁ。俺、そんなに偏見持ってそうだったりお堅そうに見える?」
「いや、むしろおっとりしすぎてて何でもありに見える」
二人は笑いながら答えてきた。
「それはそれでどうなの……。ていうかだったら何で……」
「利央は心配で堪らねえみたいだからな」
ニヤニヤ亨が言った丁度その時、インターフォンからチャイムとともに「オートロック解除しろ」という利央の声が聞こえてきた。
「おつかれ、律」
「お疲れ様、藤堂さん」
海に声をかけられたので微笑みながら振り向くと「亨と家で飲むんだけどお前もおいで」とニッコリ言われた。
「え、でもりおが待ってるだろうし」
「何言ってんの、弟は待たせてなんぼだって」
「……何それ、藤堂さん……」
微妙な顔で海を見上げると「いいから」と首に腕を回された。
「この間、今度は三人でって言っただろ? 明日休みだし泊まってったらいいし」
ニコニコ言われ、律は「はぁ……」と頷くしかできなかった。
「そうと決まれば善は急げ。行くよ」
「あ、ちょっと待って、りおに電話……」
「車の中でするといいよ」
利央に電話を、と言いかけると海はまるでそれを遮るように律の腕をひっぱってきた。
「わ、わかったからそんなにひっぱらなくても……」
今日はまたいつにもましてマイペース、というか強引だなと苦笑しながら律は海についていく。そして会社専用の小さな駐車場に止めてある海の車の助手席に乗り込んだ。
いつも思うが海の車は乗り心地がいい。スムーズな走りや座席の心地よさと共に運転技術がいいからだろうと思うが、律はあまり海に車のことは言わないようにしている。前に一度「いいね」と言ったら暫く延々と日本語であって日本語でないことを続けられたからだ。
「このタイプは本当に中低速での走行もストレスないし足回りも丁度いい味つけなんだよね。エンジンとモーターの状態も車体の遮音がしっかりしているから静かだろ。ターボが効いてるみたいに気持ちよく加速するフィーリングが堪らないんだよね。とはいえモーターの出力はちょっと低いんだけ……」
ストレスと言われた辺りから既に耳から耳に流れる感じだった律はひたすら楽しげに話している海を遮るのも悪いと思い、そのまま喋ってもらっていた。しかし延々と続き終わらないようなので、一旦区切れにきたのだろうかと思われる辺りで正直に「ごめん……藤堂さん、俺あまり車、詳しくないから……」と水を差すしかなかった。その際はショックを受けられることもなく笑われ「そりゃそうだな」と言ってくれたが、とりあえず今後はあまり振らないようにしようと律は心底思った。そのため今も乗り心地がいいと思いつつも何も言っていない。
途中コンビニエンスストアへ寄って買い物をした後でまた車に乗り込むと、ふと海が「そういえば」と切り出してきた。
「電話、まだしてなかったよね? してくれていいよー」
車が動き出して暫くは仕事の話していてそのままだった。
「そうだね、じゃあ」
律はニッコリしてポケットから取り出し、利央の番号にかける。数回のコールの後すぐに利央が出た。
『兄貴どうしたの? 遅くなるとか?』
「ううん。今日はもう終わったんだけど今から藤堂さんの家で藤堂さんとその友だちとで飲もうって話に……」
『は? ちょ、待て。それって職場のあの人だよな? 海って名前の! っち。……って、もしかして友だちって亨兄じゃねぇだろな』
律が言いかけると利央が何故か途中で苛ついたような慌てたような様子で聞いてきた。律はポカンとしつつも「何でわかったの?」と笑いながら聞く。
『笑ってる場合じゃ……、いや、あれだ、やめとけって、あいつら煩いだろし疲れるだけだって兄貴』
「あいつらって……。今車で藤堂さんの家に向かってるところなんだ。職場で電話しようと思ったんだけどちょっと暇なくて」
苦笑しながら言うと今度は電話先で舌打ちだけが聞こえてきたような気がした。ここ数日少し思っていたことだが、やはり最近の利央はどこか怖いし、変だと律は首を傾げた。
怖いと言っても本気で怖くはない。今でもやはりかわいい我が弟なのだが、たまに何らかのスイッチが入ったようになる気がする。
「りお?」
『それ絶対海さんが兄貴電話かけようとしたの邪魔しただろ』
「え、なんでわかるの? っていうかいつのまに名前呼び? 知り合いだっけ? 亨兄だっていうのも何か当ててきたし……」
まさか弟は亨と海が恋人だと知っているのだろうかと律はまた首を傾げた。その横で何故か海は笑いながら運転している。
『兄貴絶対行かない方がいいって! 悪の巣窟だからほんっと』
「え、ちょっと何言ってんのかわからないんだけど……りおどうしたの? あれだよ、帰り危ないって言うなら藤堂さんが泊まって行ったらいいって言うし……」
『余計悪い……!』
「? あの……りお……?」
利央の反応が本当によくわからなく、律の怪訝な気持ちは声にも出ていたようだ。
『あ、いや悪い……。兄貴、藤堂さんの家の場所知ってる?』
「ううん、初めて行くから……」
『そっか。……酒、勧められてもあまり飲み過ぎるなよ。それとそいつらが変なこと……』
利央が何か言いかけている時に律はとんとん、と肩を叩かれた。海を見ると「着いたよ」とニッコリされた。
「あ、着いたみたい。飲み過ぎないよ、それは大丈夫だから。ごめんね、晩御飯、また一人で食べてもらわないとで、ほんとごめん。明日はお詫びに久しぶりに俺が作るから」
『いや、それはいいから……それよりそいつら……』
「ごめん、とりあえず藤堂さんが何か言ってるからもう切るね。また電話する」
律は謝るともう一度「また後でかけるから」と言って電話を切った。
「ごめん、藤堂さん。ずっと話してて。何?」
「いや、別にいいのに切らなくても。でも悪いな、俺が話しかけたからか。ちょっと車駐車するからここで降りて待っててもらえる?」
「了解」
少人数世帯向けマンションだからか機械式駐車場のため、海も降りて機械操作していた。
「その駐車って何か凄いよね」
エレベーターに乗って海の家に向かっている時に律がポツリと言うと何故か笑われた。
「ただいまー、律連れてきたよ」
「おかえり、知ってんよ」
家の中には既に亨がいた。
「え? 一緒に住んでるの? 亨兄、実家いつ出てたの?」
「え、何で知ってんの? 驚かせようと思ったのに」
「二人同時に言うな。半同棲な、律。実家とこっち行き来してるだけ。あと海、あれだ、利央が『ざけんな』だってさ」
亨は淡々と言った後で海の首に片手を回して少し屈ませる。そして律がポカンとしている中、堂々と二人はキスした。軽く唇を合わせただけだったが、律にとってはけっこうな衝撃シーンすぎて固まる。
「お前ら兄弟って何つーかたまに逆だよな」
律の反応に気づくと、亨は楽しそうに言いながら居間の奥へ歩いていった。
「え、どういう意味……」
固まったまま赤くなっていると海も笑いながら「気にするな」と律の頭を撫でて中へ促してくる。
「ていうか利央くん、電話かけてきたんだ。何て?」
コンビニエンスストアの袋をコーヒーテーブルの上に置きながら海が聞くと、亨がその中のものを物色しつつ出しながら笑う。
「この場所教えろ、だってさ。この間は車だったからどう行けばいいかわからないからって」
「え? りお来るの?」
先ほどからひたすらポカンとしている律は相変わらずポカンとしつつ怪訝な顔を亨へ向けた。
「んー、来るんじゃね?」
「あはは、心配なんだねえ弟くん」
海は呑気に笑っている。何が一体心配なのだろうと律は怪訝に思った。会社の同僚に昔から知っている幼馴染み。律には利央から心配される要素が全くわからない。
俺があまり兄と思われていないからとか?
それほど頼りないのだろうか。何となく切なくなりつつも、律はとりあえず勧められるままクッションの置いてある床へ座った。
二人がビールを選ぶ中、律は飲みやすそうだと思った甘いチュウハイを手にとった。乾杯して、とりあえず皆飲む。二人がごくごくと半分以上飲んでいるのを尻目に律は一口飲んだだけで既に喉が熱く感じていた。
「律と飲むとか初めてじゃね? まあっつってもあまり飲めなさそうだけどな」
亨がニヤリと笑いかけてきた。久しぶりにあったのだが、性格は全然変わっていなさそうで律はニッコリ笑う。
「うん、あんまりね。亨兄、久しぶりに見たらカッコよくっていうか綺麗になってびっくりしたけどやっぱ中身は変わらないな」
「まあ、そうそう性格変わるかよ。つかお前いいこと言うねー。ほんとお前こそ相変わらずいい子!」
亨はぐしゃぐしゃと律の頭を撫でた。
「ちょ、亨兄にしても藤堂さんにしても俺を子ども扱いするのやめてくれない? 俺もそれなりの歳なんだから」
「だってかわいいからねえ」
「そうそう。いい子でかわいい」
二人に「かわいい」と言われ律は苦笑する。
「かわいいもやめて。ていうか二人が付き合ってるってこの間藤堂さんに聞いてびっくりした」
「俺、昔からゲイなんだけど知らなかった?」
亨が頬づえをつきながらニッコリ律を見る。丁度惣菜の一つである出汁巻き卵を口にしようとしてた律はまたポカンと亨を見た。
「そうだったの?」
「そ。ああ、安心しろ、利央預かってても何もしてねぇしそんな気になったことねぇぞ」
「そんな心配は聞いた今でもしないよ!」
「じゃあさー、俺が利央くんといたらさすがにちょっと心配する?」
二本めの缶ビールに手を出しながら海がニッコリ聞いてきた。律はため息をつく。
「するわけないだろ。変な事聞いてくるなぁ。俺、そんなに偏見持ってそうだったりお堅そうに見える?」
「いや、むしろおっとりしすぎてて何でもありに見える」
二人は笑いながら答えてきた。
「それはそれでどうなの……。ていうかだったら何で……」
「利央は心配で堪らねえみたいだからな」
ニヤニヤ亨が言った丁度その時、インターフォンからチャイムとともに「オートロック解除しろ」という利央の声が聞こえてきた。
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