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26.ずれている鼠
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指だけじゃなかった……!
終わった後まず思ったのはそれだった。ベッドの上に座ってぼんやりしていると、一瞬どこかへ行っていた五月先生が戻ってきた。そして僕に近づき「あまりそんな顔を見せてくるとまたしますよ」と僕の顔を上へ向けてキスをしてきた。
「っひ」
途端僕は慌てて逃げようとし、腰とお尻の痛さに慄いた。
「全く。相変わらずですね」
ズキズキ痛むのをこらえてベッドの隅でブルブル震えているとクスリと笑われた。
あ、敬語に戻ってる。
僕は何となくそう思った。あんなことをされている最中は確か敬語じゃなくなってたような気がする。そして名前で呼ばれたような。
あんなこと。
……あんなこと……。
「ぅぁ……」
ほんっと僕は何されたんだ……っ?
どう考えてもあれは世間でいうセックスというものではないのだろうか。僕は童貞のまま処女を奪われたということになるのだろうか。
男性に……?
男性に!
いや、もちろん女性が僕の処女を奪うわけないのだけれども。
……男性に僕は……。……何だろうこれ、ちょっと落ち込んでもおかしくないよ、ね……?
「大丈夫ですか?」
「……っ大丈夫じゃ、ない、です……! な、何で、なんであんな、こと……?」
落ち込みつつもされたことを思い出し顔が熱くなる。それでもとりあえず五月先生を何とか見上げ、キッと睨んだはずだけれども「またそんな顔をして」と言われキスをされた。もうほんとどうしていいかわからない。
ここは泣くところなんですか?
叫ぶところ?
怒るところ?
どうしたらいいのかわからない。とりあえず、五月先生は怖い。
睨んだ筈なのに五月先生には一体どんな顔に見えたというのだろう。なぜそこからキスという流れになるのだろう。
「ほら、そんなにビクビクしないで。とりあえず体、綺麗にしてあげますんで。立てますか?」
怖いのでビクビクしてしまうのは仕方ないんです。
そう思いながら僕は首を傾げた。
綺麗に?
改めて自分の体を見てほぼ裸だったことに今さら気づいた。そして僕が出したものが既にドロドロを通り越してサラサラしたものになっているとは言え、あちこちに付いているのにも気づいた。
「す、すみません、ベ、ベッドを汚し……っ」
僕は慌ててベッドから降り、またもや腰とお尻の痛さに蹲った。
「……本当にあなたは。ベッドは今さらですよ。それに俺がしたことですから。ほら、やはり少しキツそうですので俺が運びましょう」
五月先生は呆れたような声で言うと、あろうことか蹲っていた僕に手を回すとそのまま抱き上げてきた。
これはさらに辛いかも、しれない。
男性のアレお尻の穴に突っ込まれた上に、その人に僕は軽々と抱えられている。それも僕がとても怖いと思って避けているはずの人に。
「降ろしてください……」
「すぐですよ。先ほどお湯を溜めに行ってたんです。そろそろある程度溜まってるだろう」
僕は決して背は低くない。普通にあると思う。だのにいくら五月先生の背が高いからといってこうも軽々運ばれると、とても色々複雑すぎる。
かといってやみくもに暴れるのは危ないとわかる程度には大人として理解しているし、まずだいたい体が痛いから暴れられない。
結果、僕は大人しく運ばれ、お風呂場に入れられるとざっと体を流された後、湯船に浸けられた。
ああ、やっぱりお湯って、いい。
ほぅっとため息ついていると、頭上で五月先生が笑うのが感じられハッとなる。
僕は何を寛いでいるのか。それにしても何だろう、子ども扱いをされているわけでもないようなのだが、この扱いは。
僕を湯に浸けると出ていってしまった五月先生を思い、僕は首を傾げる。やはりよくわからない人だと思う。普段から僕を苛めてくるけれども、まさかあんなことまでされるとは思わなかった。
だというのに僕の体を気遣っているのか、こうして運んできてくれた上にお風呂を使わせてくれている。何を考えておられるのかさっぱりわからない。
……あんなこと……。
僕はまた先ほどの行為を思い出してしまい、落ち込む以前にとても顔が熱くなった。
あれは痛かった。だけれども、信じられないことにとても気持ちよかった。世間の人は皆あんなことを日常的にしているのだろうか。
生徒たちですら、きっと今時の子どもたちだしとっくに経験済みな子が沢山いるんだろうな。僕はこの歳になってもキスすらしたことなかったと言うのに。
そんな風に考えた後でまたハッとなる。僕は少しずれている。男性にあんなことされたのだ。そこをもっとこう、落ち込むなり悲しむなり怒るなりするべきだ。
でも気持ちはよかった。
とはいえ、五月先生はやはり怖い。どこに重点を置いて考えるべきか。
暖かくて気持ちのいいお湯に浸かりながらそんなことを考えていると、ドアが開くのに気づいた。
「お湯、本当に気持ちよさそうに浸かりますね」
「……っひ?」
何で五月先生も入ってくるの?
僕は湯船の中で体が縮こまるのがわかった。
せっかく一人で寛いでいたのに。
ああいや、訂正。一人で、されたことやら何やら色々考えていたのに。
「お湯の中でガタガタ震える人初めて見た」
五月先生は面白そうに言ってくる。
だってあなたが怖いんです。
僕はそう思いながら思わず五月先生をジッと見てしまった。あんなに今まで色々されていると言うのに、五月先生の裸を見たのは初めてかもしれない。前に酔っ払ってしまった時お風呂に入れてくれたらしいが、僕は覚えていないし。
五月先生の体は男の僕からみても惚れぼれするような、カッコいい筋肉の引き締まったものだった。
何だろう、ずるい。絶対にずるい。
「またきっと見当違いなこと考えてたんでしょうけれども、ほら、お湯から出て。そろそろ体もほぐれたでしょう。俺が今から先生を綺麗に洗ってあげますから」
「ひ? っい、いえ結構です……!」
「そう言わず」
五月先生がニッコリ笑って、縮こまっている僕をお湯から引き出した。
「何です、そんなガタガタ震えて。大丈夫ですよ、洗うだけです。石鹸の泡は穴によくありませんし、これ利用して突っ込もうなんて思ってませんから」
誰か、助けて。
終わった後まず思ったのはそれだった。ベッドの上に座ってぼんやりしていると、一瞬どこかへ行っていた五月先生が戻ってきた。そして僕に近づき「あまりそんな顔を見せてくるとまたしますよ」と僕の顔を上へ向けてキスをしてきた。
「っひ」
途端僕は慌てて逃げようとし、腰とお尻の痛さに慄いた。
「全く。相変わらずですね」
ズキズキ痛むのをこらえてベッドの隅でブルブル震えているとクスリと笑われた。
あ、敬語に戻ってる。
僕は何となくそう思った。あんなことをされている最中は確か敬語じゃなくなってたような気がする。そして名前で呼ばれたような。
あんなこと。
……あんなこと……。
「ぅぁ……」
ほんっと僕は何されたんだ……っ?
どう考えてもあれは世間でいうセックスというものではないのだろうか。僕は童貞のまま処女を奪われたということになるのだろうか。
男性に……?
男性に!
いや、もちろん女性が僕の処女を奪うわけないのだけれども。
……男性に僕は……。……何だろうこれ、ちょっと落ち込んでもおかしくないよ、ね……?
「大丈夫ですか?」
「……っ大丈夫じゃ、ない、です……! な、何で、なんであんな、こと……?」
落ち込みつつもされたことを思い出し顔が熱くなる。それでもとりあえず五月先生を何とか見上げ、キッと睨んだはずだけれども「またそんな顔をして」と言われキスをされた。もうほんとどうしていいかわからない。
ここは泣くところなんですか?
叫ぶところ?
怒るところ?
どうしたらいいのかわからない。とりあえず、五月先生は怖い。
睨んだ筈なのに五月先生には一体どんな顔に見えたというのだろう。なぜそこからキスという流れになるのだろう。
「ほら、そんなにビクビクしないで。とりあえず体、綺麗にしてあげますんで。立てますか?」
怖いのでビクビクしてしまうのは仕方ないんです。
そう思いながら僕は首を傾げた。
綺麗に?
改めて自分の体を見てほぼ裸だったことに今さら気づいた。そして僕が出したものが既にドロドロを通り越してサラサラしたものになっているとは言え、あちこちに付いているのにも気づいた。
「す、すみません、ベ、ベッドを汚し……っ」
僕は慌ててベッドから降り、またもや腰とお尻の痛さに蹲った。
「……本当にあなたは。ベッドは今さらですよ。それに俺がしたことですから。ほら、やはり少しキツそうですので俺が運びましょう」
五月先生は呆れたような声で言うと、あろうことか蹲っていた僕に手を回すとそのまま抱き上げてきた。
これはさらに辛いかも、しれない。
男性のアレお尻の穴に突っ込まれた上に、その人に僕は軽々と抱えられている。それも僕がとても怖いと思って避けているはずの人に。
「降ろしてください……」
「すぐですよ。先ほどお湯を溜めに行ってたんです。そろそろある程度溜まってるだろう」
僕は決して背は低くない。普通にあると思う。だのにいくら五月先生の背が高いからといってこうも軽々運ばれると、とても色々複雑すぎる。
かといってやみくもに暴れるのは危ないとわかる程度には大人として理解しているし、まずだいたい体が痛いから暴れられない。
結果、僕は大人しく運ばれ、お風呂場に入れられるとざっと体を流された後、湯船に浸けられた。
ああ、やっぱりお湯って、いい。
ほぅっとため息ついていると、頭上で五月先生が笑うのが感じられハッとなる。
僕は何を寛いでいるのか。それにしても何だろう、子ども扱いをされているわけでもないようなのだが、この扱いは。
僕を湯に浸けると出ていってしまった五月先生を思い、僕は首を傾げる。やはりよくわからない人だと思う。普段から僕を苛めてくるけれども、まさかあんなことまでされるとは思わなかった。
だというのに僕の体を気遣っているのか、こうして運んできてくれた上にお風呂を使わせてくれている。何を考えておられるのかさっぱりわからない。
……あんなこと……。
僕はまた先ほどの行為を思い出してしまい、落ち込む以前にとても顔が熱くなった。
あれは痛かった。だけれども、信じられないことにとても気持ちよかった。世間の人は皆あんなことを日常的にしているのだろうか。
生徒たちですら、きっと今時の子どもたちだしとっくに経験済みな子が沢山いるんだろうな。僕はこの歳になってもキスすらしたことなかったと言うのに。
そんな風に考えた後でまたハッとなる。僕は少しずれている。男性にあんなことされたのだ。そこをもっとこう、落ち込むなり悲しむなり怒るなりするべきだ。
でも気持ちはよかった。
とはいえ、五月先生はやはり怖い。どこに重点を置いて考えるべきか。
暖かくて気持ちのいいお湯に浸かりながらそんなことを考えていると、ドアが開くのに気づいた。
「お湯、本当に気持ちよさそうに浸かりますね」
「……っひ?」
何で五月先生も入ってくるの?
僕は湯船の中で体が縮こまるのがわかった。
せっかく一人で寛いでいたのに。
ああいや、訂正。一人で、されたことやら何やら色々考えていたのに。
「お湯の中でガタガタ震える人初めて見た」
五月先生は面白そうに言ってくる。
だってあなたが怖いんです。
僕はそう思いながら思わず五月先生をジッと見てしまった。あんなに今まで色々されていると言うのに、五月先生の裸を見たのは初めてかもしれない。前に酔っ払ってしまった時お風呂に入れてくれたらしいが、僕は覚えていないし。
五月先生の体は男の僕からみても惚れぼれするような、カッコいい筋肉の引き締まったものだった。
何だろう、ずるい。絶対にずるい。
「またきっと見当違いなこと考えてたんでしょうけれども、ほら、お湯から出て。そろそろ体もほぐれたでしょう。俺が今から先生を綺麗に洗ってあげますから」
「ひ? っい、いえ結構です……!」
「そう言わず」
五月先生がニッコリ笑って、縮こまっている僕をお湯から引き出した。
「何です、そんなガタガタ震えて。大丈夫ですよ、洗うだけです。石鹸の泡は穴によくありませんし、これ利用して突っ込もうなんて思ってませんから」
誰か、助けて。
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